【BARKS編集部レビュー】何から何まで独創的、オーリソニックスのカスタムIEM AS-1b

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いわゆるリファレンス系といわれる「フラットな特性を魅力とする高解像度を誇るモデル」か、あるいは「聴いて楽しいド派手なドンシャリ系」か、多くのモデルがこの2タイプに大分されてしまうカスタムIEMの世界において、ダイナミックに音楽を鳴らす温かいかまぼこサウンドのカスタムIEMが現れた。意外とありそうでなかった、実はとても貴重なサウンドを奏でる個性派の登場だ。

◆オーリソニックスAS-1b画像

▲オーリソニックスAS-1b。半透明のクリアシェルだが、その素材、触感、実際のサウンドからサウンド調整機能の保有まで、一般的なカスタムIEMとは一線を画する個性派。15mmサイズのダイナミックドライバーを搭載し、温かなサウンドに芳醇な低域を絡ませる。

▲フェイスプレートにはASというブランドロゴが刻印されているが、パッと見は分からないほど地味。

▲フェイスプレートはネジ留め。ちなみに付属するポート調整用ドライバーとは形状が違うので合わない。開けたい衝動にかられたが、メーカーからDo not try to open…とたしなめられた。

▲フェイスプレート、シェル全体にわたり指紋状の細かな凹凸加工が施されているのがお分かりだろうか。

▲カナル部にはめられたリング状のラバー。遮音性と装着感の向上を狙っての設計と思われる。

▲こちらがアンビエント調整ポートとベース調整ポート。赤丸で囲った部分に、ドライバーから伸びた血管のようなポート管がうっすらと透けて見える。

▲アンビエント調整ポートはこちらに貫通している。

▲付属品は、Otter製ハードケース、布袋、ポート調整用専用ドライバー、取説、カード。ケーブルはWestoneのESケーブルと同等のクリアタイプが付いてくる。

このカスタムIEMは、2011年に米ナッシュビルに誕生したオーリソニックスのフラッグシップモデルAS-1b。800Hz~1.2KHzあたりに特徴的な強いピークを持ち、派手さはないけれどじわじわとクセになる温かいトーンを持っている。低域は跳ねるように弾力のあるもので、量感は多い。エージングに随分と時間がかかり、最初は高域も伸びず、低域も緩めのサウンドであるが、それらはじきに改善され、最終的には個性的な中域の張りを持ったまま、引きずりまわすような重低音がお目見えする。高域の表現は控えめでヌケは良くないので、クリアでハイファイというイメージとは対極の、ゆるやかで温かく中域が濃厚なまったりとしたサウンドだ。高域が派手に鳴るサウンドが好みであれば、AS-1bは受け入れられないところだろうが、こんなサウンドを出すカスタムIEMは、他にお見かけしたことがない。

一般的なリファレンス系CIEMは歯切れよく現代的なサウンドなので、ギターサウンドで言えば30インチ×4発のスタックを鳴らすエドワード・ヴァン・ヘイレンとすると、このAS-1bはコンボ・キャビをフルドライブさせるブライアン・メイといった感じであろうか。パワー管でいえば前者がはじけるようにビビッドなEL34サウンド、後者がウォームに粘るEL84サウンドというイメージだ。

特徴的なのはそのウォームなサウンドだけではない。そもそもAS-1は、15mm口径のダイナミック・ドライバーを1発搭載したカスタムIEMなのだ。他ブランドに例がないわけではないが、そもそもダイナミック1発のみという構造が稀有であり、やはりバランスド・アーマチュア搭載の一般カスタムIEMとは、明らかにサウンドを異としている。

その上で、AS-1の設計は実に独創的で、他に例を見ない特徴をたくさん備えている。AS-1を基本に、さらに末尾にa、b、cを持つ全4種類のバリエーションを有しており、AS-1が基本形でシンプルなノーマル構造。AS-1aは、AS-1にアンビエント調整機能を搭載したもの、AS-1bは、アンビエント調整機能とベース調整ポートの両方を有する最高スペック、そしてAS-1cは、AS-1と同じ基本スペックのまま、ケーブルを耳掛けではなくストレートに下に出す仕様のものだ。

AS-1全モデル共通なのが材質の特異性で、詳細は分からないが一見して一般的なカスタムIEMのアクリルとは異とした半透明のプラスティックっぽい材質である。写真ではぷにぷにしたシリコン製のソルトシェルのような雰囲気に見えなくもないが、実際は硬質でアクリル素材と比べると粘度が高い素材のようだ。

シェルの表面は指紋のような細かい波状の凹凸が刻まれており、さらっとした触感と耳へのフィット性を向上しているように見える。スリガラスのように表面が加工されているために半透明になっているが、もともとの材質はクリアなものと思われる。フェイスプレートも同材質で、何とネジ留め。このメカメカしさは男子心をくすぐる魅力を持っている。ちなみに現時点ではカラーバリエーションは全く有していない。カナル部分には黒いゴム状のリングが埋め込まれているが、耳の穴の感覚が鈍感ゆえに使用感の良し悪しは何も分からなかった。カナル部分もさらさらしているためにピタッと吸い付くような感触ではないので、このリングでフィット感、あるいは遮音性を向上させているのだと思われる。

そして、何より独創的なのはシェル内の構造だ。一般的なカスタムIEMのシェルは金魚鉢のように中身が空洞になっておりそこにドライバーやネットワーク回路、配線などが設置されるわけだが、AS-1は、果たしてどれほどの空間が空いているのか良く分からない。シェル内に空洞空間はほとんど残されていないようにも見える。どうやら、カバーに覆われたダイナミックドライバーが丸ごとプラスティックのシェルの中に埋没しているような状況で、カバーの中から突き抜けてきた2本のチューブが、まるで血管のように伸びて外部へ繋がっているのだ。そこの途中にそれぞれ打ち込まれているネジがアンビエンスポートとベースポートの調整機構だ。

2つのポートのうち、上部についているのがアンビエントポートだ。ダイナミックドライバーの背面から細い管が伸びており、シェルを突き抜けて外部へ貫通している小さな穴がこのポートで、その途中でポートをせき止めるように打ち込まれているネジがアンビエント調整機能である。デフォルトではネジは完全にねじ込まれた状態で、ポートを完全にふさいでいる。この状態では耳にはめたときにドライバーのダイヤフラムがペコペコ・クチャクチャと音をたてる。外耳道の空気圧が高まることでダイヤフラムが動くときの音だ。そこでこのポートのネジを4分の1回転ほど緩めると、ポートに空気がもれるようになり、ダイヤフラムのペコペコ泣きがウソのように消え去る。ほんのちょっとの空気の流れで、ドライバーの動きもずいぶん影響を受けることがわかって面白い。このポートをさらに開けていくと、若干の低域が弱まると同時に、ほんの少しではあるものの、外音が漏れ入るようになる。基本的に遮音性は高いままだが、外音を気にしたい時やちょっと開放的なトーンを味わいたい時に、このポートが面白い変化を与えてくれる。

もうひとつのポートはダイナミックドライバーからシェル内部を通り、打ち込まれた調整用ネジまで伸びている。これがAS-1bの最大の売りでもあるベース調整ポートで、こちらもデフォルトでは締め込まれてポートはふさがれた状態となっており、ポートが開いていない状態を基本サウンドとしているようだ。だがここから4分の1程度緩めることで低域の量感が増加する。ちょうどゼンハイザーIE8やIE80に搭載されているベース・チューニングのつまみと同じような効能と思ってもらえればいいだろう。

カスタムでこの機能を搭載するために、通常のアクリルとは違う材質が起用されたのだろう。とはいえ、非常に繊細な構造のためネジの締め過ぎには細心の注意が必要だ。

なお、このオーリソニックスの場合、購入にあたってインプレッション(耳型)採取キットを無料で送ってくれるのもうれしいサービスのひとつ。近くに耳型採取できるサービス店がないという人や耳型採取代を削減したい人には願ってもないもの。ただし、個人による耳型採取は全て自らの責任の元で行なうものなので、万全の体制で臨んでいただきたいものだ。私自身は、自分でインプレッションを上手く取れる自信がなかったので、事前に採取したインプレッションを送ることで、インプレッション採取キットは請求しなかった。その分、1往復分の時間を短縮することができた。

また、オーリソニックスには、AS-1と同等スペックと思しきASG-1というモデルもある。こちらはGeneric Fit IEMと掲げられている通り、イヤーチップの付いたユニバーサルモデル(個人用カスタム形状ではなく、誰でも使える一般仕様のこと)もラインナップされている。インプレッション不要で$299.00($1=80円換算で約24000円)という手の出しやすい価格なので、カスタムならではフィット感やAS-1bの持つ各ポート調整機能にこだわらなければ、いい選択かもしれない。

付属品には、しっかりとしたOtter製のハードケースに、布袋、ポート調整用専用ドライバー、取説、カードが付属する。

text by BARKS編集長 烏丸

AURISONICS AS-1
AS-1 :$399.00
AS-1a:$499.00
AS-1b:$599.00
AS-1c:$449.00
・15mmダイナミックドライバー
・周波数特性:8Hz~25kHz
・インピーダンス:32Ω +/- 10%@1kHz
・感度:121dB@1mW

◆AURISONICS AS-1サイト
◆AURISONICSサイト

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