【BARKS編集部レビュー】Unique Melody Mageの清涼感は、買いか否か?

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先日、世界中でも最も人気の高いカスタムIEMのひとつ、Unique Melody(ユニーク・メロディ 以下UM)のMerlinを取り上げたが、今回紹介するのはMageと名付けられた3ユニット4ドライバーのモデルだ。

◆Unique Melody Mage画像

▲Mageは、Unique Melodyからリリースされている5モデルの中でちょうど真ん中に位置するモデル。639ドル。

▲Mageは3ウェイ3ユニット4ドライバーという贅沢なスペックを持ち、世界でも人気の高いモデルのひとつ。ぶっとく引き締まった低域を叩き出す大型のドライバーknowles製CI22955を2発も搭載し、そのヘッドルームは広大だ。中域と高域には定番の高級ドライバーknowles TWFK-30017が使用されている。

▲3ウェイにもかかわらず、ノズル先端から1cm手前あたりで音導孔がひとつにまとめられている。サウンド・チューニングの結果の仕様であることは間違いないだろう。

▲ネットワークには基盤が使用されている。空中配線の方が品質的には有利との話もあるが、Ultimate Earsのフラッグシップ機種UE 18 Proも基盤が用いられており、いずれも素晴らしいサウンドを奏でる。

▲右のドでかいのが2発の低域用ドライバー。見た目とは裏腹に低域の量はごくごく常識的で低音過多になることはない。

▲左がMage、右がWestone4。同じ4ドライバー搭載とはいえ、これだけサイズが違えば、比較するのがナンセンス。逆に、Wesotone4の設計&技術力の凄さを思い知らされるというもの。

▲こちらはいずれも4ドライバーを搭載したモデル。左からUM Mage、FitEar MH334、カナルワークスCW-L31。高域の爽やかさはMageが一番、バランスはMH334、中域の押し出しはCW-L31が勝っている。

▲左がUM Mage、右がHeir Audio Heir 3.A。Mageから低域ドライバーをひとつ取って3ドライバーにすると、Heir 3.Aと同じ構成になる。Heir 3.Aが男性的でワイルドで切れが良いのに対し、Mageの方がデリケートできめ細かい丁寧な鳴りに聴こえる。

▲UMの製品には周波数特性のグラフが付属する。とはいえ、非常に大雑把な傾向は推し量れるものの、グラフからサウンドを想像することは極めて困難。

▲大型の立派な化粧ケースに、カタログや説明書、保証書、クリーニングツール、ケーブルクリップ、周波数特性グラフが付属する。

UMにはMiracle(ミラクル:6ドライバー)という評価高きフラッグシップと、ノリ良く聞くならこいつに限ると評価の高いMerlin(マーリン:ハイブリッド5ドライバー)という2大モデルに人気が集まることもあり、それらの下にちょこんと位置するMage(メイジ:4ドライバー)は、どうにも微妙な立ち位置にいる。

そもそもカスタムIEMというものが、SHURE SE535やWestone4、ゼンハイザーIE8/IE80…など、市販モデルの最高級モデルからのステップアップで手にする人が多いことから、自ずと「手持ちのイヤホンよりも高スペックのモデルにしか興味を示さない」という状況に至りやすい。つまりUMで言えば、2ドライバーのMarvelや3ドライバーAeroといったエントリー・モデルは、SHURE SE535やWestone4よりも格下と見下される傾向にすらあり、なかなかスポットが当たりにくい。これまでも散々お伝えしてきたように、スペックの上下とサウンドの好みは全く別物なのだけど…。

そんな状況下、MageはUMのラインナップでは中央に位置するスペックだけど、購入層の興味対象の中では下限のスペックと位置付けされ、まるでエントリーモデルのように初めてのカスタムIEMにMageが薦められることも少なくない。そういう意味では「(エントリーモデルにしては)凄く音が良いじゃん!」と高く評価する意見が出揃う。一方で、639ドルの4ドライバーモデルという冷静な立場からの評価には、シビアな意見もぽつぽつと噴出する。これはMageに限らず多くのオーディオ機器に対して十人十色の意見が闘われるという当たり前の雑多な意見だ。そして、Mageはこの両評価を別角度から浴びせられる状況にあり、評価レイヤーが全く違う意見が同一線上に並べられるという、いびつな評価を受け入れている状況にある。要は人気ブランドならではの特異な現象をMageが一身に背負っている状況だ。

639ドルの4ドライバーというのは、決してローエンドモデルではない。むしろ必要にして十分な高スペックであり、国内ブランドを見ればカナルワークスでもFitearでも3ウェイ4ドライバーはハイエンドに位置するものだ。

そんなMageのサウンドの一番の特徴は「鮮やかな高域」だと思う。一言で言えば「清涼感」という言葉が最も似合う。ただし透明感というと多少イメージが異なってくる。高域は伸び心地よい爽やかさがあるのだけれど、超低域から高域まで綺麗に出すハイエンドなモデルと聞き比べると、実は中高域は抜け切らないところがある。透き通るようなクリアさにはおぼつかなく、そこがフラッグシップモデルに及ばない決定的な差異だ。高域にディップが存在するのか、1本の導管にまとめられた時点で超高域がスポイルされてしまっているのか…その要因は分からないが、くすんだトーンが透明感につながる超高域の倍音をマスキングしてしまっているように聞こえる。しかしながら、実はここが曲者で、綺麗に高域まで伸びながらも耳に痛い歯擦音を一切発生させないという、実に絶妙なバランスを生みだしている一端でもある気がするのだ。

素晴らしいサウンドと心地よい高域の伸びの裏には、歯擦音の人知れぬ制御が隠されているのかもしれない。透明感に翳りは出たものの最終的にデザインされたそのサウンドは、一言で「清涼感」と言いたくなるサウンドに仕上がっており、やはりMageは十分に魅力的だ。

そういう意味では、初めてのカスタムIEMとして選ぶのにもいい。既に複数のカスタムIEMを所有しているような人であれば、敢えて薦める理由は希薄だが、「あれもいいこれもいい」と悩み・悔み・喜びながら、サウンドの経験と知識を積み重ねることに面白みを感じるのであれば、「何故にこの清涼感なのか」は、手に入れて堪能する奥深さがある。Mageの音に耳を傾けながらその魅力にスポンとハマレば、他では代替えのきかないワンアンドオンリーの魅力を携えていることにお気付きだと思う。MiracleよりもMageの方が好きという人が少なくないのもまた歴とした事実なのだ。

Mageは、音楽ジャンルは選ばない。人によって評価に多少の差異はあるだろうが、室内で聴く以上不満のない綺麗なフラットなトーンが楽しめる。基本はあっさりしたサウンドで、決して濃厚な音ではないため、外できくと往々にしてローもハイも物足りなくなる。ただ、あっさりしながらも全帯域に音はしっかりつまっておりバランスが取れているのは間違いない。オールジャンルOKというキャパシティの広さは、これといったウイークポイントがないことの証でもある。

なお、低域はスペックの割には中庸なバランスに留まっているが、低域ブーストのゴキゲンアンプJADE TO GOや、EQなどで低域を押し出すと、余裕で追従する秘めたる底力を見せる。普段はおとなしいけど脱いだら凄いとでもいう感じか、使い方によって化ける素養をひっそりと持ち合わしているのは、Mageの隠れた美徳だ。

ちなみにショップで一般販売している4ドライバーモデルと言えば、何よりWestone4だが、サイズも違えば作りも違うのでサウンドは比較すること自体ナンセンスなほど違うのだけど、実は、中域と高域のドライバーは両者同じものだ。どちらもknowles TWFK-30017という中域と高域を2ウェイで出力できる高級ドライバーが搭載されている。低域用には2発のドライバーを搭載しているという設計も共通で、MageはCI22955というドでかいドライバーを2発、Westone4はDTECがセットされている。ただ、出てくるサウンドのクオリティーはMageが圧倒している。あれだけ高品質にフラットさを叩き出すWestone4だが、Mageに慣れた耳で聴き直すと、全体が曇って覇気のないサウンドに聴こえてしまうから罪なものだ。

なお、UM人気ゆえか、Miracle、Merlin、Mageのどれがいいか意見を求められることがある。個人的には、Merlinをお薦めしたい思いもあるが、ごく普通のカスタムIEMを所有してこそのMerlinの魅力だとも思うので二の足を踏む。初めての車を買うという人に、「コルベットが良いぜ。アクセル踏んだ時のぶっといトルクがたまらん」とアドバイスしているようで、ちょっとヒクでしょ?

そういう意味ではMageこそ、買い物にもドライブにも使いやすい燃費の優れた日本製のファミリーカーに位置付けられるキャラだと思う。高級車のようなラグジュアリーな要素はないが、そこはMiracleの守備範囲だし、コンパクトカーのような小回り(2ドライバーモデルのようなサウンドのタイトさ)はないが、日常使いに便利で何かとオールラウンドに使える最も使いやすい実践的なモデルというところ。もちろん極端な加速力があるわけでもなし、ゴージャスな贅沢仕様でもないので、一部特化の魅力を求めて手にすると不満が噴出するだろう。

今さらだが、UMのモデルには、Miracle(ミラクル=奇跡)、Merlin(マーリン=預言者/魔術師)、Mage(メイジ=魔法使い)、他にもAero(エアロ=空気)、Marvel(マーベル=驚異)といった名前が付けられている。だからどうしたと言われても困るけど、ほとんどのオーディオブランドが理路整然とした味気ないモデルナンバーを付与しているだけのところで、このような愛称の存在は、親しみを創出しキャラも形成、その魅力を浸透させてくれる意外な力を持っていると思う。

そしてもうひとつ、UMの魅力には、サポートの質の高さがある。我々ユーザーの問い合わせやリクエストに対応してくれるスタッフのレスポンスが非常に素早く迅速・丁寧・確実なのだ。もちろん日本語に対応しているわけではないので英語でのやり取りとなるが、こちらのたどたどしい英語でも真意を汲み、的確な返答を返してくれる。サポートを担当している彼の名はStephen(ステファン:stephenguo@live.com)。海外との個人取引で不安要素は多岐にわたることだろうが、ステファンがコミュニケーションの不安を大きく取り除いてくれることだろう。日本でUMが人気ブランドになった一端には、商品の魅力のみならずトータルサービスの質の高さも大きく寄与していることと思う。

text by BARKS編集長 烏丸

●Unique Melody Mage
$639.00
4 drivers
Low:バランスドアーマチュア×2
Mid:バランスドアーマチュア×1
High:バランスドアーマチュア×1
入力感度:114dB spl(1mW)@1kHz
再生周波数:20Hz~18,000Hz
インピーダンス:21Ω
遮音性:-25dB
付属品:50" ケーブル、化粧ボックス、クリーニングツール、キャリングケース、保証書、周波数特性グラフ、取説、ケーブルクリップ
保証:2年、リフィット60日
※問い合わせはStephenへ:stephenguo@live.com

◆Unique Melodyオフィシャルサイト
◆Unique Melody Facebook

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)
◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)
◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)
■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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