【BARKS編集部レビュー】<春のヘッドフォン祭2012>、キャパオーバーの物欲刺激を受け、思わずFA-004をお持ち帰り

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5月12日、<春のヘッドフォン祭2012>が盛大に開催となった。おそらく過去最大の来場者数を記録したであろう今回の<ヘッドフォン祭>、全国からこれだけの人々を引き寄せたのは、各イベントの魅力もさることながら、ここで発表された新製品/参考出品アイテムの求心力に他ならない。

◆Fischer Audio FA-004画像

▲ゼンハイザーHD 700@Tokyo Headphone Festival 2012 Spring(撮影:FujiyaAVIC)

ゼンハイザーは待望のHD 700と、HD 650と同等以上の音質を誇るというワイヤレスヘッドホンRS 220を、デノンからはMusic Maniacシリーズ、パイオニアはハイエンドポータブルヘッドフォンSE-MJ591を、beyerdynamicからはDT100、T90とカスタム・シリーズ、SCOSHCEのREALMからはオンイヤーのRH656、フォーカルSpirit One、パロットZik…と、チェックすべきアイテムがあちらこちらで激しく息巻いており、まさしく枚挙に暇がない状況だ。

イヤホン周りもエキサイティングだ。ZERO AUDIOは、カーボン素材を取り入れた新作CARBO BASSO、CARBO TENOREという2機種を参考出品、安価に提供したいとダイナミック・ドライバーを起用し音質向上に鎬を削っていた。TDKはマグネチック・アーマチュアと名付けられた一次極性ドライバーを独自開発しており、MA700として低価格で発売するという。抜ける高域と引き締まった低域が心地よい傑作で、オルトフォンe-q7を脅かすダークホースとしてチェックしておくべきアイテムだ。

JVCケンウッドの新シリーズHA-FXD80/FXD70/FXD60/FRD60の大ヒットも間違いないし、参考出展されていたSOUL by Ludacrisの新イヤホンも異彩を放っていた。ケーブルが脱着式でワイヤードにもBluetoothにも付け替えられるもので、コネクタはMMCX式。サウンドはSL99系列を引き継ぐとか。

位相補正チューブが強烈なアイデンティティを放つ音茶楽のFlat4-粋は、会場限定で一部先行販売されたものの、開場まもなくジュッと蒸発するように完売。えらい注目度だ。

iPhone4専用のヘッドホンアンプだったGO-DAP Unit4.0から大きく進化したGo-DAP Xもお目見えした。専用ジャケットの様式から脱却することでiPhone/iPod touchとの接続も可能とし、USB DAC機能も搭載。バッテリー機能も引き継いでいるというエポックな仕様で、要はHP-P1やアルゴリズム・ソロに対する猛烈なカウンターパンチが目前に迫っていることになる。7月発売で価格は3万円前後というから、激震が走るぞ。HiFiMANのHM-901や、JABENのブースで見つけたHippo Cricriと同サイズの超小型オーディオプレーヤーもご機嫌だった。

▲Fischer Audio FA-004

▲今回リニューアルされ、ヘッドキャップのデザインが変わり、アメリカン・クラシカルな雰囲気となった。

▲デフォルトの小穴があいたレザーに加え、ベロアとレザーのパットがそれぞれ付属するのが嬉しい。サウンドの違いも楽しめる。

▲大きさ比較。左からSHURE SRH940、Fischer Audio FA-004、クリプシュReference One。右2つの大きさの違いはほんのちょっとだが、ここに耳を完全に覆うか覆わないかの差がある。

▲付属品の数々。ケースの中には、収納袋も同梱されている。

▲こんな状態で販売されている。

今更ながらJH-3A&JH16のサウンドの美麗さや、カナルワークスCW-L51、FitEar MH335DWへの期待の高さを胸に秘めながらの祭会場の散策だったわけだが、魅力的な製品の多くが参考出品&開発途中の未発表・未発売モノのため、逸品に出会っては「これ欲しーい!」と興奮するも「すべておあずけ」という生殺し状態。こりゃ毒抜きしないと身体に悪いと言い訳をつぶやきながら、物欲をなだめるべくギラついた目で会場内を物色、この日私はFischer Audio FA-004をお持ち帰りした。

一時的とはいえ、話題の新製品情報の山々を探検し目も耳も肥えている状況下にありながらも、Fischer Audio FA-004は、私にとって必要十分に魅力的な一本だった。

そもそもFA-004は2010年に日本上陸したモデルで、ブラックとブラウンカラーがリリースされていた。こと欧米では高い評価とともに大いなる人気を博したモデルだが、今回ちょうど<春のヘッドフォン祭2012>で、リニューアルして再登場というタイミングになっていた。基本的な造作に変化はないが、カラーがブラックとホワイトの2択になり、カップ部分のプリントデザインが変更となっている。大きな変更はないと聞いていたものの、スペック値に変化が表れている点と、ケーブルが3mのストレートから今回はカールコードに変更されていることもあり、多少ながらサウンドも変わっているかもしれない。

このレトロデザインを「おしゃれ」とみるか「激しくダサい」とみるかは感性によるところだが、私が気に入っている点はずばりふたつ、「イヤーパッドのサイズ」と「サウンド」だ。デザインは評価外でお願いします。

この微妙な…ではなく絶妙なサイズが何にも代えがたいお気に入りポイントで、私の場合、御あつらえのようにしっぽりと耳に納まってくれちゃうのである。耳介の大きさや形によってフィット感も大きく変わるところであろうから、人によってはオンイヤーにもなればアラウンドイヤーにもなるところだとは思うが、実のところ、このサイズのヘッドホンは決して多くない。

私の場合、オンイヤー型の装着感や使い心地は嫌いではないものの、すぐに耳介に痛みが出てしまい長い間使い続けることができない。側圧が強いとてきめんで、仕事上長時間音楽に触れている毎日において、これはちょっと致命的。フルサイズの大型密閉型ではなく、「コンパクトで軽く圧迫感のない装着感の密閉型、もちろんサウンドにも妥協せず」というテーマで、ばっちりなヘッドホンって、実はまだ出会えていなかったのだ。

FA-004のサウンドが私好みなのも高ポイントだ。中域から高域寄りのはつらつとしたサウンドで、眠たさが一切ない。重厚さ、重心の低さという点では、例えばクリプシュImage One/Reference Oneなどのほうが上手だし、低域の押し出しなどは全くかなわないが、引き締まっている分、量感が乏しくても音楽表現という意味では不足感を感じさせない不思議なバランスの良さを持っている。中域もすっきりとしているので、男性ボーカル/女性ボーカル問わず、生々しく心地よく聞かせてくれる。

そして何よりお気に入りなのは10kHzあたりであろう高音域の心地よい再生力で、いわゆるシズル感とその空気感がたまらなく心地よい。この高域は、フィッシャー・オーディオというブランドが持つ特徴的なトーンのひとつで、彼らが本気でいい音を出そうとするとかならず顔を出すポイントのような気がする。カナル型イヤホンのDBA-02 Mk2や、ウッドカップを持ったオーバーヘッドのFA-002Wなど、形式が全く違うものでも全く同じ香りを放っているから、「どんなに上手に隠れても、黄色いあんよが見えてるよ」って感じだ。

機会があれば、是非ともこのサウンドと付け心地を試してみてほしい。私の耳はごく標準駅な大きさと形とのことなので、意外に多くの人がばっちりフィットするのではないかとも思っている。遮音性はさほど高くはないのだけれど、耳を無理に押さえつけず耳介を潰さない装着方法で最小限のコンパクトさは、普段使いに最高なのだ。まるで開放型のような解放感と詰まり感のない高域までスコーンと抜ける使い心地は、もしかしてFA-004ならでは、ワンアンドオンリーの美徳なのではないかとも思っている。

装着感/使用感はとても重要な要素で、愛用できるかどうかの重要なファクターであることは、経験者であればそれだけ身に染みていることだろう。さりげなく、絶妙に高バランスを成しているフィッシャーオーディオFA-004も、ひとつお見知りおきを。<春のヘッドフォン祭2012>を境に、次々と新製品ラッシュになるからね。

text by BARKS編集長 烏丸

●Fischer Audio FA-004
・販売価格:9,800円
・周波数特性:20~20000 Hz
・音圧レベル:95±3% dB
・インピーダンス:32±15%Ohm
・最大入力:200mW
・付属品:6.3mmステレオアダプター
・保証:1年間

◆Fischer Audio FA-004オフィシャルサイト
◆FujiyaAVIC Facebook
◆<春のヘッドフォン祭2012>オフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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