【インタビュー】アーティストとしての闘い、ヴィジュアル系バンドとしての誇り。MUCC最新アルバム『シャングリラ』が放つジャンルを凌駕した魅力
◆ヴィジュアル系はヴィジュアルでしか勝負できないのか?
▲逹瑯(Vo) |
▲ミヤ(G) |
▲YUKKE(B) |
▲SATOち(Dr) |
逹瑯:ううん。まったくない。むしろ、そのシューゲイザー的なジャンルなんて知りもしないし。なんとなく鼻歌で歌って、コード拾って作った曲だったしね、「ブレアラビット」は。気がついてみたら、“Aメロとサビ一緒だな。サビ、ちょっと転調してるだけだな”みたいな。たしかにみんなに聴かせたら、ディレクターから“なんか狙ってやってるインテリロックみたい”って言われた(笑)。マニュピレーターの人にも、“不思議な転調してますね”って言われたからね。でも、それを狙ってやってないっていうね。俺、ジャンル的なものはまったく解らないし、リフみたいなのも解んないからさ。そういうのでいいのかなって思う。SATOち(Dr)と作り方が似てるのかなって思う。自分で唄メロ決めて、リズムをカッチリ作っちゃうっていう作り方だからね。今回のアルバムで言ったら、「狂乱狂唱~21st Century Baby~」と「Marry You」は、リズムパターンから作ったからね。「Marry You」は、タンタンタカタカタンタンタカタカっていうリズムパターンが、ずっと昔からやりたかったんだけど、なぜかずっと形にできてなくて。今回やっと形にできたんだよね。そのリズムパターンとAメロのネタしかなかったんだけど、そっから鼻歌でコード拾って、そこに音程が一定のところでステイするメロディを加えて構成していったの。たとえば、ちょっと古い曲だとチューリップの「虹とスニーカーの頃」とか、最近のだとAKB48の「Beginner」とか、音程がステイするメロディって哀愁あっていいよね。で、「狂乱狂唱~21st Century Baby~」も、ダンダダカダンダンダダカダンっていうリズムパターンをループさせたいってとこから作ってった曲だったんだよね。あとは、お経みたいなメロとシャウトと子供のコーラスがあったらいいなっていう、そこを1つにまとめていった感じ。
――なるほどね。今回それぞれのメンバーの楽曲を受けてどう感じた?
逹瑯:それぞれやりたいことをやれてるのかなって思ったよ。YUKKE(B)にしても、「MOTHER」(Sg/2012年10月31日発売) のカップリングだった「ネガティブダンサー」なんかは、韓流を意識した曲作りだったみたいだし、アルバム曲の「ピュアブラック」とかも、YUKKEが普段好きな音楽がYUKKEのフィルターを通して出て来たモノだなって感じたしね。なんかね、YUKKEも俺もなんだけど、ヴィレッジヴァンガードで売れてそうなサブカル的な音楽や物が好きだったりするからね。そういうYUKKEが今回の楽曲にはすごく溢れてたんじゃないかな。結構遊べてたんじゃないかな。その点、SATOちは硬派だよね。一番曲で遊ばないと思う。自分の好きなモノが徹底してるというか、ストレートだね。
――SATOちの曲は、結果ライブでいつも泣ける曲になるのが不思議。
逹瑯:なんか解るな、それ。きっとね、SATOちの曲ってストレートな定番な曲に、SATOち節なメロディが乗るから、そこに乗ってくる歌詞ってすごく素直になるからね。ぶっ飛んだ遊んだメロには、ぶっ飛んで遊んだ歌詞が乗るけど、SATOちの曲にはストレートで素直な言葉が乗るからね。それで泣ける曲になるんだと思うよ。歌っててもそう思う。今回のアルバムでは俺、そういう意味では突飛な曲の歌詞ばっか担当したから、歌詞的な遊びは大きかったかなって思うよ。「夜空のクレパス」は唯一普通のテンションで素直に書いた歌詞だったけど。他は結構、突飛だったね。
――「ハニー」はミヤくんでしかない歌詞だったしね。
逹瑯:そうだね。俺からは絶対に出て来ない歌詞だね。
――でも、そこまで個性が違うのに、不思議と一貫性を感じるのはどうしてだろう?
逹瑯:まぁ、そこは俺のキャパの広さじゃない(笑)? キャラとね。いろんな曲や歌詞のタイプを違和感のなく収められる自分のキャラクターって得してるなって思うんだよね(笑)。
――そうだね。少し話しが変わるけど、逹瑯くんさっき、曲を作る上でジャンルは関係ないし、意識してないって言ってたけど、【ヴィジュアル系はヴィジュアルでしか勝負できないのか?】についてはどう思う?
逹瑯:どうなの? 知らんがな(笑)。でもね、いろいろと一緒にやってみて思うけど、ある程度の友好関係は結べるけど、結果、共存はできないと思う。ひとつ屋根の下には暮らせないと思うな。やっぱね、パンクシーンやラウドシーンって、すごくチケット代が安いのね。だから、ヴィジュアル系シーンと対バンすることで、見れる時間も短くなるし、チケット代は高くなるしだと、そこにわざわざ来ないでしょ。そこも大きいと思うよ。バンドとしては、一緒にやりたいし、ウチらは向こうさえ良ければ全然絡みたいけど、ウチらが向こうのフィールドで勝負するのも難しいと思うし、向こうがこっちのフィールドで勝負するのも難しいと思うよ。それは、お客さん的な問題としてね。バンドとしては、音楽としては、どんどん絡んでいった方がいいと思うけど、そのチケット代の問題とかもあるから、結果、共存はできないと思うんだよね。育ってきてる環境が違うし、食いたいもんが違うっていうね。そんな感じかな。
――なるほど。素晴しく解りやすい説明でした、逹瑯先生。
逹瑯:でしょ。うん。そうだと思うよ。
⇒Page3:MUCCは脱ヴィジュアル系を狙っているのか?
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