【ライブレポート】シド、<SID 10 th Anniversary LIVE>にヨコハマ大激震「こんな雨でも音の問題がないのが何よりでしょ」

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爆弾低気圧が日本列島を縦断した4月6日、横浜スタジアムでは直撃する大雨をものともしない熱いライブが展開されていた。シドの結成10周年記念ライブ、その名も<SID 10 th Anniversary LIVE>である。

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2003年春にボーカリストのマオとベーシストの明希を中心に結成、着実に大規模なホールやドームへと動員数を伸ばしてきたシドだが、バンドの10年の歴史の中で唯一中止となったライブがある。2011年3月、震災直後の横浜アリーナ2デイズがそれだ。“リベンジ”の意も込め、同じ横浜の地で行われる本公演を、彼ら4人は並々ならぬ決意をもって迎えたはずである。

あいにくの雨の中でもクリアな2つの巨大ビジョンに2003、2004、2005~とムービー仕立ての映像が映し出され、タキシード姿のメンバー4人が颯爽とステージに向かってくる。スタジアムを埋め尽くしたオーディエンスの興奮はすでに最高潮。豪華なステージセットからは白い鳩が大量に飛び立ち、特効の爆発音が響くと、ステージにタキシードではないオリジナル衣装でメンバーが登場と、息もつかせぬサプライズの連続だ。

そのまま勢いのある楽曲で攻めてくるかと思いきや、1曲目はしっとりと聴かせる「ハナビラ」。スタンドにセットされたベースを明希が指で情緒たっぷりに奏でると、“キャー!”という嬌声が沸き上がる。“四月の風香る…”“花びら散る季節…”そんな歌詞に耳を傾ける観客は、雨の中、ほぼ全員が白いレインコート姿。まるでたくさんの白いハナビラが揺れているようだった。

「ヨコハマー! 今日はよく晴れたなー!(笑)」

マオがとびっきり明るい声で初MC。いきなりのメンバー紹介では「初心にかえりまして、(呼び名を)マオにゃん、でお願いします!」と左手でネコ耳のポーズをみせる。結成から10年経とうが、ベテランと称されようが、この変わらぬ茶目っ気も彼が愛される所以だ。ゆうやの軽快なリズムから「循環」へと繋がり、サビではコート姿のファン達が水しぶきを上げながらくるくると回転。数万人もの一斉“循環”はそれはもう圧巻で、地面も揺れ出し、ヨコハマ大激震である。

“激震”はこの日何度も起こった。6曲目「モノクロのキス」の後、 4人がスロープをライトスタンド方向に進み、用意されたミニステージで「アリバイ」を披露。そのステージはアリーナ外周を移動し、センター後方を廻って、レフトスタンド側では「サーカス」を演奏した。懐かしい名曲の連続と、間近に見るメンバーの麗しさに、スタンド席のファンも感激ひとしおだ。その興奮もさめやらぬうち、巨大ビジョンにはカードゲームに興じるクールな4人の姿が映し出される。1人1人が切ったカードが裏返され、そこに曲名が。「必要悪」と大きく映し出された途端、 キャーッ!という歓声と楽曲とが混じり合う、という現象が4曲に渡って繰り広げられる。「ノイロヲゼパアティー」「できそこない」、4枚目はなんと「吉開学17歳(無職)」だ。結成の2003年夏に限定MDとして発売された伝説の楽曲であり、シドにおけるハードコアナンバーとも言える大激震ナンバーで、スタジアム全体がヘドバン&逆ダイの嵐に。「すごいでしょ、セットリスト!」と思わず叫んだマオだが、まさにこの4曲は4人の“切り札”だったわけだ。

もう雨なんて演出のひとつに過ぎない、そう言わんばかりに水浸しのステージを走りまわるShinjiがドラムセットよりも高い位置までリフターで上がると、なんと「Dear Tokyo」のギターソロではヘッドの先から派手に火花が噴出。ポジティブかつ軽快なプレイに相応しいサプライズで、会場中が笑顔になる。また、その曲を弾き終えた明希はまるでメーターを振り切ったようにベースをステージに投げつけた。本編ラスト「眩暈」まで、激情のロックバンドであり、至高のメロディーメーカーであり、それぞれが個性的なプレイヤーであるシドの魅力をふんだんに詰め込んだ16曲だった。

雨足がさらに強くなってきたアンコールでは、歌うマオの息が白くなるほど気温が低下。しかし反比例するように「妄想日記」「夏恋」とステージは熱気を増し続け、明希はついに上半身ハダカになってその肉体美を惜しげもなく披露した。まるでシャワーを楽しむように両手で髪をかき上げる仕草は誰が見ても“水も滴るいい男”だ。

「夏恋」では、「ヨコハマ、会いたかったよー」というマオの声を合図に、なんと雨空に特大の打ち上げ花火が! 豪雨の中を鮮やかに彩るその花火や、本編でのShinjiのギターからの花火など、演出する側のプロ根性も見てとれた。途中のMCで「こんな雨でも、機材トラブルとか、音の問題がないのが何よりいいことでしょ?」とマオも自画自賛していたが、特に弦楽器隊はずぶ濡れになりながらのプレイという悪条件によって、少なからず運指などに影響があったはずなのに、一糸乱れぬ演奏はさすがとしか言いようがない。「ドラムセットの上だけ屋根があっていいよね(笑)」とマオに揶揄されていたゆうやだが、 そのリズムはあたたかく時に激しく演奏をリードし、スタジアム全体を安心感で包み込んだ。また、身体の冷えから喉が開きにくくなるのでは?との心配もマオには不要、ラスト「微熱」まで歌声はよく伸び、タフなボーカリストというイメージをさらにアップさせた。

シドというバンドは、“こうありたい”“こうなりたい”という高い理想が4人それぞれにあり、プレイヤーとしての己との闘い、またコンポーザーとしてのメンバー内での熾烈な闘いが、アーティストとしての力量や魅力をどんどん高めていく集団だと認識している。だからこそ、ライブを観る度に新しい発見があるし、こんな音も出すんだ! こんな表情もするんだ!という嬉しい驚きに満たされる。マオは、屈託なく笑ってこう言った。

「気持ちいーね! この恵みの雨…(苦笑)。今日は(2011年の)横浜アリーナのリベンジでもあるから、雨がまた邪魔してきたか~と思ったけど、みんなのおかげでリベンジ果たせたと思ってます。どうもありがと!」

もし神様がいるとしたら、この荒天はシドに高いハードルを超えさせるための試験のようなものだったのかもしれない。しかし、それを笑顔で一発クリアしてみせた彼らには幸福の太陽がまた降り注ぐに違いない。大きな拍手の音のように降り続いた雨と、その中で輝き続けた4人を一生忘れることはないだろう。

取材・文◎伊藤美保
撮影◎江隈麗志

<SID 10 th Anniversary LIVE>
2013.4.6@横浜スタジアムSETLIST
01. ハナビラ
02. 循環
03. one way
04. 恋におちて
05. 嘘
06. モノクロのキス
07. アリバイ
08. サーカス
09. 必要悪
10. ノイロヲゼパアティー
11. できそこない
12. 吉開学17歳(無職)
13. and boyfriend
14. smile
15. Dear Tokyo
16. 眩暈
<ENCORE>
17. 白いブラウス 可愛い人
18. 走馬灯
19. V.I.P
20. 妄想日記
21. 夏恋
22. 微熱

New Single「恋におちて」
2013.4.10 Release
1. 恋におちて
2. 絶望の旗
3. Café de Bossa (Live from TOUR 2012『M&W』extra in台湾)

【初回生産限定盤A(CD+DVD)】KSCL2229-30 \1,700(税込)
初回特典DVD
TOUR 2012『M&W』extra in台湾ライブ映像 Ver. A
※初回AとBで収録内容は異なります
○ネオンカラー紙ジャケット仕様
○シド10th Anniversary スペシャルキャンペーン応募券 #04封入
【初回生産限定盤B(CD+DVD)】KSCL2231-32 \1,700(税込)
初回特典DVD
TOUR 2012『M&W』extra in台湾ライブ映像 Ver. B
※初回AとBで収録内容は異なります
○ネオンカラー紙ジャケット仕様
○シド10th Anniversary スペシャルキャンペーン応募券 #04封入
【通常盤(CD)】KSCL2233 \1,250(税込)
初回仕様
ネオンカラー紙ジャケット仕様
シド10th Anniversary スペシャルキャンペーン応募券 #04封入

<SID 10th Anniversary Projects 2013>
【Project #5】New Single 7月発売決定

【Project #6】SID 10th Anniversary TOUR 2013 開催
■2013年7月27日(土) 福岡 海の中道海浜公園 野外劇場
OPEN 14:00 / START 16:00
■2013年8月3日(土) 宮城 スポーツランドSUGO SP広場
OPEN 14:00 / START 16:00
■2013年8月10日(土) 大阪 万博記念公園もみじ川芝生広場
OPEN 14:00 / START 16:00
■2013年8月24日(土)・25日(日) 富士急ハイランド コニファーフォレスト
OPEN 14:00 / START 16:00
チケット6,800円(立ち位置指定/税込)
※福岡・大阪公演は、入園料込
※当日券 7,500円(立ち位置指定/税込/福岡・大阪公演は、入園料込)
※雨天決行、荒天中止
※4才以上有料
※一般発売日 2013年6月22日(土)

◆シド オフィシャルサイト
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