【インタビュー】K、641日間の兵役を経てミニアルバム『641』が完成「人として得たものや感じたことが音楽へ直接的に繋がった」

ポスト

■今はこうやって話せるけど、-17度の屋外で演奏するのは本当につらかった
■軍隊でカン・ユンソンというひとりの人間がいろいろな経験をしたことで成長した

──音楽的にはハーモニカ以外に軍楽隊に所属した経験が活かされたものもありますか?

K:「What's your problem?」や「Directors' Cut」のホーンもそうですね。軍楽隊では、パレードやブラスバンドなど、自分にとって新しい音楽ジャンルとの出会いもあったし、実際にテナーサックスを吹いたりもしたんです。隊では自分の好きな曲を好きなように演奏することはできないけど、決められた曲の中で自分なりにクリエイティビティを発揮することはできるから、あれこれ工夫してましたね。その経験も生かしたかったので、ホーンをうまく入れられたらいいなと。

──それでジャズテイストのホーンが入っていたりするわけですね?

K:軍楽隊にはアカデミーで専門的に音楽を学んできた人も多くて。彼らにとってはジャズは基礎中の基礎だから、ジャズの音や本を見聞きする機会も多かったですね。彼らとセッションするとき、自分もうまく入りたかったので一生懸命にジャズのフレーズを練習したり、耳コピしたりしてましたよ。ただ……今はこうやって話せるけど、-17度の屋外で演奏するのは本当につらかった! 管楽器って息を吹き込んで音を鳴らすじゃないですか、外気の冷たさで、呼気が楽器の中で凍っちゃうんです。そうなると音がちゃんと出なくなるから、演奏の合間もずっと息を吹きかけ続けるんですね。だから酸欠で目まいを起こすヤツもいたし、演奏が終わると、辛すぎてみんなで男泣きしましたね。

──やっぱり壮絶な体験があったわけですね。ミニアルバムには兵役直前に作った曲も収録したとか?

K:「My Piano」と「スニーカー」は、2年前、日本を離れる前に作った曲で。これから未知の世界に飛び込むから、その前に感じたことを曲に残したいと思って、出発前にレコーディングまで済ませました。当時は、実際にどんなことが起きるかまったく想像できなかったから、せっかくやるなら楽しみたいって気持ちだったんですね。だから歌詞も前向きだし、いろんなことを自分の力にしたいって気持ちで書きました。だけど、実際はそんな甘いところじゃないって改めて感じたし、もし今、入隊前の気持ちを曲にしてみてと言われたら、違ったものになったでしょうね。それにあの頃は、引っ越しやなんかでバタバタしていたから、改めて聴き返してみると歌声がどこか余裕がない。だからレコーディングし直したいなとも思ったけど、スタッフから「当時の感情や状況が感じられるからもったいない」と言われて、たしかにそうだなと納得しました。

──ミニアルバム『641』は音楽家としても、ひとりの人間としても、大きな転機となったようですが、創り上げた今の心境は?

K:2年前まで、僕はアーティスト活動を“仕事”と捉えることに抵抗があったんです。“仕事=冷静に考えなきゃいけない”、熱い部分を抑えなきゃいけないのかなって思っていたから。だけど、軍隊で“僕は本当に幸せな仕事をしていたんだな”ということを痛感しました。だって、隊の中にはプロを目指してるけどアマチュアで音楽をやり続けてるという人も多かったから。それに比べて僕は、好きなことを仕事にできていて、今感じていることを音や言葉にして発信することもできる。そんな素晴らしい仕事なら、自信を持って人に誇るべきだなと思ったし、楽曲に対してもより責任感が芽生えたと感じますね。

──なるほど。

K:とはいえ、急になにか目に見えるような変化があるというわけじゃない。ただ言えるのは、僕が目にして心を動かされたものを形にしていきたいということで。アーティストKである以前に、軍隊でカン・ユンソンというひとりの人間がいろいろな経験をしたことで成長したように、人として得たもの、感じたことが音楽に直接的に繋がるっていう。『641』は、そのなによりの証ですから。

取材・文◎橘川有子


ミニアルバム『641』
5月29日(水)発売
【初回生産限定盤(CD+DVD)】SRCL-8272~8273 ¥2,800(税込)
※ジャケットブックレット20ページ
1.641
2.ハラボジの手紙
3.My Piano
4.スニーカー
5.幸せを数える。
6.Director’s Cut(※初回生産限定盤のみ収録)
<DVD>
ハラボジの手紙 ミュージックビデオ(9分3秒収録)
ハラボジの手紙 メイキング(10分10秒収録)

【通常盤(CDのみ)】SRCL-8274 ¥2,000(税込)
※ジャケットブックレット12ページ
1.641
2.ハラボジの手紙
3.My Piano
4.スニーカー
5.幸せを数える。
6.What’s your problem?(※通常盤のみ収録)

<live K 2013 ~641~>
■6月1日(土) 東京・中野サンプラザホール
開場17:30 開演 18:00
■6月6日(木) 大阪・フェスティバルホール
開場 18:00 開演 19:00

◆チケット詳細&購入ページ
◆K オフィシャルサイト

◆インタビュー(2)へ戻る
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報