【インタビュー】泉 沙世子、映画『二流小説家ーシリアリストー』の主題歌「手紙」で純粋な剥き出しの愛を描く

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2012年、Dream Vocal Auditionで一万人の中からグランプリを獲得し、メジャーデビューを果たした泉 沙世子。デビュー曲「スクランブル」が『カラスの親指』、2作目「境界線」が『さよならドビュッシー』と、映画のテーマソングや主題歌に大抜擢されてきた彼女の楽曲だが、新曲「手紙」も、6月15日公開の映画『二流小説家ーシリアリストー』の主題歌に決定した。今までになく、情念にあふれた艶っぽい世界観を歌い上げている彼女に、作詞にまつわる秘話を聞いた。

■この曲は“剥き出しの愛”がテーマ
■この愛の形っていうのはすごく純粋で一途

――早くも三枚目のシングルが完成しましたね。タイトル曲の「手紙」は、ものすごい情念たっぷりの歌詞が印象的で。“引き裂くなら殺してしまおう”っていう1行目から“おぉっ!?”となりますが、主題歌になっている映画『二流小説家ーシリアリストー』からのインスピレーション?

泉 沙世子(以下、泉):今回は、原作の小説はあえて読まず、映画を見てから書きました。ただ、映画にガチガチにとらわれてしまうのは違うかなぁと思ったんです。楽曲自体は、今までのものとは違うので、映画に振り切ったと思う人もいると思うんですが、私自身、人には見せない自分の中で抱えている部分に興味があるので、明るい部分を唄うよりも自然かもしれないですね。実は、前作の「境界線」はメッセージソングのように聞こえますが、あの曲を作ろうと思ったきっかけも、心の中にドロッとしたものがあって、それがしんどいから、それを救うための歌だったんで。今作とは出来上がった形は違うけど、根本的には同じなんです。

――闇を見つめているからこそ生み出せるんですね。今作は、闇の中から唄っているイメージです。

泉:そうですね。これは“剥き出しの愛”がテーマなんです。一見“怖い”って印象を持つ人もいるかもしれないですが、この愛の形っていうのはすごく純粋で、一途だからこそ狂気的になっていくんです。もちろん、この歌の主人公は歌詞にもあるように“あなたを守りたい”って言葉の通りに思っているんです。でも外から見ると、“あなたと私のこの世界を守りたい”って、どんどん閉鎖的になって内に内にこもってしまうような危うさがある。そこから出る色っぽさみたいなものがあったりするんじゃないでしょうか。端から見たら怖かったり、狂っているように見えても、本人たちにとっては何らかの筋が通ってたり、人の目を気にするよりも重要なことがあったり。それは真っすぐさだと思うんですが、そういう本当に純粋な剥き出しの愛を描きたかったんです。

――なるほど。情景的というより叙情的だから、シチュエーションはいろいろ想像できますよね。

泉:相手、状況、いろんな風にとれると思うので、聴いた人によって、どういう場面を想像するか違うと思うんです。だから、自分を観察するような感じで聴いてみても面白いと思うんです。

――どうして“剥き出しの愛”を描きたいと思ったんですか?

泉:私自身が映画を見て引っかかる部分がきっかけになってるし、映画から大きく外れていないというのは大前提にあるんですが、私自身、普段から、誰かから本心を素直に語られても、その内容に対して、“そんなこと考えてるの?”って、ドン引いてしまうようなことはないんですね。その人の考えと自分の考えとの差が興味深かったり、“そういう考えがあるんだ”って驚いたあとに、“じゃあ、なぜ?”っていうところを考えるのが楽しかったり。どういう状況、環境になったらそういう考えに行き着くのかって思うんです。他にも、世の中的には少数派の人や、一般的に言えば“暗い”って思われてしまうようなものにも興味があって。自分の中にも暗い部分があるし、普通に生活をしていても、それぞれ人に言えない部分もあると思うんです。私が興味を示すのは、そういう隠れている部分なんですよ。特に恋愛の場合、一対一だから、すごく閉鎖的な空間になりがちですよね。その中は自分の深い部分っていうのが出やすい空間だと思うんです。

――どうしても、二人だけの世界になっちゃいますからね。友人の恋愛話を聞いていて、それはやり過ぎじゃない? って思うことなんかもありますよね。

泉:ですよね。想像するときっと、本人はすごくしんどかったり、気が狂いそうなほど、息が詰まるような思いをしているんだろうけど、周りには理解できない。でも、私は、そこに興味がわく。今までの楽曲の印象としては、明るいというか前向きなものが多かったけど、本を読むにしろ映画を見るにしろ人と話すにしろ、私の中で引っかかるものって、ちょっと人間的な狂気、危うさ、色っぽさっていうものが引っかかるので、そこを描きたかったんです。

――実はそういうものって、日常的なものとは紙一重なのかもしれないですよね。自分は普通だと思っていても、そうじゃなかったってこともありますし、知らないうちに狂気の中に足を踏み入れていたり。だからこそ興味が湧くのかも。

泉:そう思います。どれだけ“えぇっ!”て思っても、突き詰めて行くと自分もそうだったっていうこともあるじゃないですか。何か衝撃を受けたときに、ドン引いて、自分とは切り離してしまうのはすごくもったいないと思うんですよ。どんなに状況が違っていても、置き換えることによって、その世界と繋がったりするし。そういう作業は私にとって重要というか。だから、常にそういう世界にアンテナがピッと立ってるかもしれない。

――なるほど。例えば人生を振り返ってみると、あの時の自分、ちょっと変だったなっていうことって、きっとどんな人にもありますよね。きっと、この曲って、そういう瞬間なのかもしれない。

泉:うんうん。この曲も、最初聴いたときは「わからない」って思っても、恋愛じゃない場面でも、数週間後とかに“この感情ってあれか?”って、いきなりわかったりすることもあると思うんです。だから、本当に案外身近でリアルな部分だと思うんですよね。

――泉さん自身は、こういう狂気体験はありますか?

泉:精神的な浮き沈みはありますけどね。“引き裂くなら殺してしまおう”なんて、はっきり確信したことはないですが、瞬間瞬間ではあるかもしれない。「手紙」っていうのも、モヤッとした夜中の感情のイメージなんです。そのモヤッとしたものを出そうと思って書いたけど、書くことでスッキリしたっていう感じなんですよ。

――前作からしたら、思い切っていろんなものを吐き出したなぁというドロドロ感ですよね。

泉:映画の主題歌っていうのが後押ししてくれたんです。でも、きっと、たぶん確かに、誰にでもこういう部分はあるなと。

◆インタビュー続きへ
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