【ライヴレポート】摩天楼オペラ、“愛”に包まれた、見事なグランドフィナーレ

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それは“愛”に包まれた、見事なグランドフィナーレだった。オーディエンスの愛、スタッフの愛、そして何より自らが信じる“音楽”への愛――。日本最大規模のライヴハウス・Zepp Tokyoに鳴り響いた2000人の合唱は、己が定めた道をしかと歩む摩天楼オペラへと贈られた祝福のオラトリオに他ならなかった。

◆摩天楼オペラ~拡大画像~

2012年10月のシングル「GLORIA」を皮切りに、2枚のシングルと1枚のアルバムにより綴られてきた一大コンセプト“喝采と激情のグロリア”。栄光に寄り添う光と影を“合唱”というキーワードを用いて描くことで、その先に摩天楼オペラの音楽が永遠たらんことを印した物語は昨秋、1月、今春と3度の全国ツアーを辿り、この日ついに“GLORIA TOUR-GRAND FINALE-”として堂々たる集大成を見せつけた。男女のクワイアを組み入れた荘厳なオーバーチュアでの登場に続き、物語の核たる「GLORIA」がライヴの幕を切って落とすと、オーディエンスの掲げるネオンライトが光あふれるアッパーチューンの眩さをいっそう引き立ててゆく。上手に目をやると、Anzi(G)の背後には積み上げられたマーシャルの壁が。その後ろには廃墟にも摩天楼にも見えるセットが聳え、上部のモニターも様々なイメージ映像を映し出しながら、スタイリッシュな現代性とクラシックな様式美を併せ持つ彼らの世界を、視覚面でも表現するのがニクい。

「あー、もう感動した! 今回のツアーは全公演最高だったんだけど、この半年間のグランドフィナーレということで、今日は最高を超えていこうじゃないか! 拳あげていこうぜ!」

頭2曲にして早くも万感極まった様子の苑(Vo)に、フロアからは拳の花が咲き乱れ、システム変更によりショルキーの使用率を高めた彩雨(Key)は、3曲目「Plastic Lover」で炸裂した音玉と共に、早くもステージ上を駆け出す。ノーブルな風情からは想像できないほどのテクニカル&エモーショナルなソロを奏でるAnziを筆頭に、雷鳴のように突き刺さる音の矢が次々とオーディエンスに降り注いで、まったく息をもつかせぬ序盤戦。最新シングル「Innovational Symphonia」では大合唱が沸き起こり、“激情と喝采のグロリア”というテーマならではの高揚感で場内を満たす。続くドラムソロでは、悠の逞しい腕から繰り出される音の砲弾が満場の拍手を招き、そこに加わった燿(B)も華麗にタッピングしながら「男! 女!」と拳を誘導。そして沸いた女性からの大歓声に、「女、逞しいな! 逞しい女の子、好きだよ。でも、ツラそうな子がいたら男、助けてあげて」と余裕綽々に紳士な一言を。これぞ真の“漢”である。

アルバム『喝采と激情のグロリア』を軸に、これまでのシングル曲、代表曲を交えた贅沢メニューは、「Merry Drinker」からの中盤ハードロック・ゾーンに到っても、その攻撃力を緩めることなく。序盤の凛とした佇まいとは裏腹に、マイクスタンドを握って体勢低く蓮っ葉に歌い放つ苑は、まさしく往年のロックスターの如しだ。スモーク噴き出す「CAMEL」で振り上がる拳と声は白熱した一体感を生み出し、爽快にビートが疾走する「RUSH!」、ヒロイックに迫る「Adult Children」、アルバム随一のシンフォニックメタル曲「SWORD」、泣き叫ぶ歌と音にフロアが大きくうねる「ANOMIE」と、盛り上がりは完全に頂点に。そして、摩天楼オペラにしか為し得ないクライマックスが終盤、身体にも増して心を熱く濡らすこととなる。

「おかげ様で、こんなに広い会場でびしょ濡れです。今回のツアーは与えるだけじゃなく、共有する感覚が増えたツアーでした。みんな愛情たっぷりに迎えてくれて、合唱も大きくて……今回のテーマでもある“俺たちの音楽を後世に残す”という願いが叶いつつあるのかな。音楽が永遠に続くように、願いを籠めて今日は歌いたいと思います」――苑

モニターの映像も照明も全てがブルーに染められた空間の中、美しいピアノ音で幕開けたバラード「永遠のブルー」では、そんな苑の願いが情感籠った深みある歌声や仕草から濃密に滲み出す。そこから張りつめた緊張感を纏ったまま、彩雨の鍵盤がインストゥルメンタル「Midnight Fanfare」へと導くと、各パートがソロを畳みかけ、目くるめく陶酔を招いて場内を席捲。極まった様式美サウンドを背に、センターに立ったAnziは投げキスを振る舞うのだから、つくづく彼らのヴィジュアル/サウンド両面での盤石ぶりには舌を巻くほかない。しかし、最大のサプライズはこの後のこと。壮大なコンセプトを1曲に結実させた「喝采と激情のグロリア」の雄々しいプレイを受け、「聴かせてください!」という苑の叫びに続き、照らし出された舞台後方に現れたのは、なんと黒のローブを纏ったクワイア隊! オーディエンスと共に繰り出す重厚なコーラスはまさしく鳥肌モノで、苑もマイクレスで絶唱する。

“永遠を生む 私達のグロリア ここで生まれて ここで命を落とすの”

その熱く、しかし慈愛に満ちた響きはソウルフルに聴く者の魂を揺さぶって、“永遠”への願いで全員の心を一つにする。これこそが、彼の語る“共有”なのだろう。

今ツアーでの前例に倣うと、アルバムのラストを飾るこの3曲でライヴは終了――のはずだが、グランドフィナーレと来てはそうは問屋がおろさない。「ラスト行こうか、東京!」と贈られたのは、本日二度目の「GLORIA」。ギターが入った瞬間に銀テープが飛び、一秒ごとに音量と音圧を高めてゆく悠のドラミングも気迫満点で、一時たりともステージから目も耳も離せない。頂点目指して駆け上がるプレイは、オープニングから数段レベルの上がった激情と感動に塗れ、クワイア隊を交えた合唱の声量を押し上げてゆく。その声は間違いなくこの半年間で最も大きく、そして歌い上げる英詞の想いに裏打ちされたものだった。痛みは去り、世界は栄光に包まれる。たとえ我らの日々が汚されようとも――。そんな歌声と共に、フロアでは左右に揺れる無数のネオンライトが!「GLORIA」の歌詞を借りるなら、見事に灯された“生きた証”が飾る劇的なフィナーレに、恐らく誰もが実感しただろう。ここで、この景色に相まみえることができた幸福を。


「俺たちの夢は、まだまだ高いところにあります。それはオペラーのみんながいないと叶わない」――悠
「たくさん支えをもらって活動してきた、この6年間。ありがとうございました」――彩雨
「今まで“売れたい”っていう言葉は好きじゃなかったけど、良い音楽とカッコいいステージをやっていれば、みんな来てくれる。そんなシンプルなことだってわかった。もっと良い景色が見たい」――燿
「どこに出ても勝負できる、この5人。目障りな逆風は、すべて追い風に変えていくんで、ついてこいよ!」――Anzi

久々の披露となったメジャー・デビュー作収録の「もう一人の花嫁」や、ライヴ定番の人気曲を集めたアンコールで、これまでのツアーファイナルに比して約2倍の人数が集まったフロアに向かい、メンバーは意気揚々たる心情を語った。半年をかけて積み重ねられた彼らのロードは最後に大きな華を咲かせ、同時に次なる目的地を指し示す。

「12月7日、新木場STUDIO COAST決まりました。応援よろしく頼むぜ!」

ステージ去り際の、事務連絡でもするかのような苑の軽い口ぶりが、何より明確に物語っていた。これから先、摩天楼オペラにとっては、どんな舞台も通過点なのだと。

取材・文●清水素子
撮影●洲脇理恵 (MAXPHOTO)

<セットリスト>
1.GLORIA
2.Psychic Paradise
3.Plastic Lover
4.落とし穴の底はこんな世界
5.Justice
6.悪魔の翼
7.Innovational Symphonia
8.Dr Solo ~ Dr Ba Solo
9.Merry Drinker
10.CAMEL
11.RUSH!
12.Adult Children
13.SWORD
14.ANOMIE
15.永遠のブルー
16.Midnight Fanfare
17.喝采と激情のグロリア
18.GLORIA
en
1.もう一人の花嫁
2.悲哀とメランコリー(LIVE Ver.)
3.21mg
en2
1.honey drop
2.alkaloid showcase

◆摩天楼オペラ オフィシャルサイト
◆摩天楼オペラ キングレコード レーベルサイト
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