【インタビュー】WEAVER、「僕らならではのキャッチーなメロディやポップなアプローチを思いっきり落とし込んで作ったんです」

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1年半ぶりのリリースとなるニューシングル「夢じゃないこの世界」。視界が拓けていくような開放感と疾走感に満ちあふれ、めくるめくビートを持ち前の良質なメロディがすべるように流れていく。WEAVERのピアノロックの真髄がここにあると言っても、おそらく過言ではないだろう。聞けばなるほど、今、メンバー3人の胸の中に確かに刻まれた誇りと自信が、音楽的にも精神的にも彼らをよりオープンな方向へと導いている。

この間の『Handmade』ツアーは、本当の意味でWEAVERのものだった。(奥野)

──5月23日にシンガポールで開催された<J-ROCK MATTERS presented by BARKS>のステージはいかがでしたか?

杉本雄治(以下、杉本/Piano & Vocal):向こうは空港着いた瞬間からすごい盛り上がってくれてましたね。シンガポールでのライブは3回目だったんですけど、毎回、来てよかったなと思わせてくれます。反応がね、日本のファンの熱さともまた違うんですよ。なんていうか、“フ~ゥ!!” みたいな(笑)。

奥野翔太(以下、奥野/Bass & Chorus):“ワオ!!” みたいなね(笑)。僕らのライブは、楽器だけで見せるシーンがあるじゃないですか。その演奏が終わったときのオーディエンスの反応が素直というか。日本だと、ちょっと内に秘める感じがあるけど、周りを気にせず思うまま声を発してくれるんです。

──そのノリにやっぱり誘発されちゃいます?

奥野:もちろん。どんどんアガっていきます。

杉本:勘違いしちゃいそうなくらいね(笑)。

──ただ、先日のZepp DiverCityでのツアーファイナルを観ても思ったのだけど、日本のファンもWEAVERの音楽の深いところにしっかり触れてくれていますよね。

杉本 そうなんですよ。自分たちもやっと一体感を作れるライブがやれるようになってきたのかなって、そう感じていますね。どんどん前に進めるような感覚を、ステージで味わえるようになりました。

──ポップなところからマニアックなところまで音楽的な振り幅がとても大きくて、それなのに笑顔も絶えなくて。完成度の高いライブでしたね。

杉本:もともとバンドが好きではじめた3人なので、淡々と音楽を伝えていくっていうライブに憧れもあるんです。だけど、アクションひとつ取っても面白く感じてもらえるパフォーマンスをすることで、僕らの伝えたいものはより伝わるんじゃないか、と。

河邉 徹(以下、河邉/Drum & Chorus):音楽を伝えたいからこそ、みんなが楽しめるエンタテイメントを入り口にしようっていう考え方なんですよね。その先で、バンドの面白い演奏を一歩踏み込んで楽しんでもらいたいから、今回のツアーは、僕のタップダンスも含め(笑)いろんなパフォーマンスに挑戦したんです。

──今のWEAVERがとてもオープンなのは、アルバム『Handmade』の制作を経て、3人でやることの意味やそこに対する自信と誇りをしっかり得られたからだろうし、何よりそれぞれのプレイヤーとしての努力の結果なんでしょうね。

杉本:うん、そうだと思います。努力ってね、あんまりカッコよくないっていうふうに思う人もいるんだろうけど、それすらもさらけ出せるのが今の自分たちだろうなって。やっぱり、その努力の結果を投影したアルバムを作ったことで、バンドとしてどこへ進むべきかも明確になったんですよね。

奥野:セルフプロデュースで『Handmade』を作って、そこで自信を得て、そのあとのツアーでは“自分たちで勝ち得たステージに立っているんだ”っていう自覚を持ちながらライブをやれたんです。それが単純にうれしかった。僕らはデビュー以来いろんな場所でライブをやらせてもらったけど、それはあくまで恵まれた環境に置かれているからっていうのも多分にあったわけです。そうした自分たちだけで勝ち得ていないものに対して、やっぱり罪悪感みたいなものも正直あったんですよね。でもこの間の『Handmade』ツアーは、本当の意味でWEAVERのものだった。だから、そういう精神的なものがオープンだと感じてもらえた要因だったのかもしれません。

◆音楽的にコアな部分がちゃんと伝わるんだってことに、今は確信が持てているので。(杉本)

──もう、今の話が、今作「夢じゃないこの世界」ができた理由のすべてですね。

杉本:まさにそうですね。本当に迷いとか不安がなくなりましたから。これまでは表面的な部分に囚われていたところが多分にあったんです。例えば、ロックだとかポップだとかということに神経質になってたり。今回のカップリングの「サマーチューン」は実は昨年(2012年)には原型ができていた曲なんですけど、その神経質になっていた時期にできた曲で。これだけポップに振り切った曲を書いてみたところで、出す勇気がなかったんですよね(笑)。で、出すべきタイミングが今になってやって来た。「夢じゃないこの世界」は、僕らならではのキャッチーなメロディやポップなアプローチを思いっきり落とし込んで作ったんです。そこにこだわりました。こうやって振り切るからこそ、音楽的にコアな部分がちゃんと伝わるんだってことに、今は確信が持てているので。

奥野:3人それぞれが好きなものを消化して、WEAVERとしてそれを表現するための自信とノウハウが今は自分たちの中にあるなと実感してるんですよね。だからこそ、今回もポップでキャッチーを目指して、実際にそういう曲になったけど、すごく自由に作れたんですよ。

──シンプルなアプローチなのに実は展開が面白かったり、歌詞のストレートな表現が甘酸っぱさを喚起したり、随所に小技が効いています。

河邉:シングルを作るって、今までもそうなんですけど、すごく構えてしまうところがあるんですよね。1曲で自分たちの全部を表現しなきゃって思うと、すごく大変じゃないですか。今回はサウンドプロデューサーの田中隼人さんに協力してもらって、緻密な作業を繰り返して作っていったんです。歌詞にしてもしかりで、甘酸っぱさと憂いを、よりリアルな世界観で表現するためにすごくこだわって書きましたね。

──この曲にあるいつにない疾走感も、ツアーの収穫のひとつでしょうか?

杉本:ピアノバンドのシングルのリード曲で、テンポ感のある曲って出しづらい部分があって。それはやっぱりギターほどに音圧のある感じを出せないからなんです。実際、そういう曲を作ることに抵抗があったんですよ、ピアノの得意な方向じゃないなと思って。でも、きっと切り拓ける可能性があるって田中さんにも言ってもらったので、変な壁を取っ払って踏み出そうとして作ったのが実はこの曲なんです。疾走感があるって言われると、なんだかうれしいです(笑)。

──けど、これこそがピアノバンドにしかできない音づくりでしょう? バンドとしてデメリットとされるギター不在の事実を、WEAVERはメリットに変えられたと思いますよ。

奥野:だったらいいなぁ。でも、何より工夫が生まれたのは確かです(笑)。ギターがいないっていうある種のコンプレックスが、普通のピアノトリオがしないようなアレンジにつながっていったと思うし、僕たちの中ではあがいていたに過ぎないんですけど、ギターバンドみたいにするにはどうしたらいいかってすごく考えましたし。でもその結果が、オリジナリティにつながってきたんだと思うんですよね。まぁ、本当の意味でメリットに変えていけるかどうか、それは僕らの永遠の課題ですけど。

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