【インタビュー】MUCC、シングル「World’s End」リリース「MUCCが鳴らす音楽には陰が欲しい。陰がないと光の部分は誰にも見えない」

ツイート

■ロックって個人的な歌が共有されたりする素晴らしい音楽──ミヤ
■今までなら普通のベースで弾いてる曲調をアップライトで──YUKKE

──あと「World’s End」って途中でレゲエのリズムになったり、音数が減ったり、構成が凝っているのに、ストレートで疾走感のある曲に聴こえるのがスゴイなって。演奏もイントロのドラムから爽快感があって、ビートがとても重要な曲なんじゃないかと思ったんですよね。

ミヤ:ビートはゆったりしてるようで、前のめりなんですよ。達瑯が言ったように原型は暗い曲なんですけど、明るく感じさせたかったというか。前回のシングル「HALO」にしてもそうなんですけど、パッと聴きは明るい曲に思えても、その奥に入りこんでいくと裏側にはいろんなものが隠れているっていうのが最近、MUCCが表現したいと思っていること。それって=ロックだと思うんですよ。ロックって自問自答がエンターティンメントになるじゃないですか? 個人的な歌がすごく共有されたりする素晴らしい音楽だと思っているし、MUCCが鳴らす音楽には陰が欲しいんですよね。陰がないと光の部分は誰にも見えないと思うんですよ。

──そういう想いが反映されているのが最近のシングル?

ミヤ:ここ最近の流れですね。15年もやっているバンドで、今までいろんなことをやってきたんだけど、結局、MUCCって何だろう?って考えたときに、やっぱりフォークソングだし、ひっかかる言葉だし、日本人的なメロディで、そういう要素がロックにのっかってるってことなんだなって。

──もともとMUCCは陰のあるバンドだとは思いますけど、より意識的になってきたということですか?

ミヤ:そうそう。陰の表現の仕方が変わってきたのかもしれないですね。昔は「陰ですよ」ってわかりやすく出していたのが、今はそうじゃないところを出した上で、奥にある陰を感じさせるような作り方になってきているというか。それって絵にも通じるし、芸術のいいところだなって。

──黒をより黒くみせるためには黒を重ねるのではなく、あえて白を見せるような?

ミヤ:俺は絵を描くのが……立体的なものを描くのが苦手でね、絵画教室に行ったんですよ、ファンクラブの企画で。そこで「立体を表現するには暗いところを描けばいい」って言われて。自分が見えている範囲で“ここ陰だな”なんて考えたこと、それまで一度もなかったから、それを言われて凄くつながったところもあるんですよね。それに音楽って見えないじゃないですか、カタチにならないからこそ、より無限だなっていうふうに感じてますね。

──初回盤のカップリングナンバー「自演奴」はロカビリーやパンク、ヘヴィロックの要素が盛りこまれていて、スピードと痛快さがあるし、メロディと言葉のハマりにスカッとする。

達瑯:これはアルバム用の選曲会に持っていった曲ですね。最近、ライヴでぐっちゃぐちゃになって盛り上がれるビートの速い曲がなかったので、やりたいなと思って。バーッと駆け抜けるような曲。最初はもっとメタルっぽかったんですけど、ミヤが今みたいなハードコアっぽいアレンジに変えてくれて。

──タイトルが「自演奴」で、ジ・エンド的なクレージーな世界を歌っているけど、それはタイトル曲との兼ね合いを考えて?

達瑯:いや、偶然、そうなったんですね。もともと“Welcome to the END.”っていう歌詞を書いてたから、ダジャレでこのタイトルを付けたんです。

──怒りも悲しさも感じられるけど、シャウトもふくめ、ここまでテンション高く歌われるとカタルシスさえ感じられる。

達瑯:今の世の中ってどこまでは本当でどこまでが嘘かわからないし、情報がありすぎて迷うし、噂を全部かき集めたら、めっちゃ怖いなって思ったところから書きましたね。“ひょっとしたら、もうとっくに世の中、終わってんじゃねーか”みたいなことを思いながら。

──考えるほどに怖いですよね。あと、キレのいいリズムもこの曲のポイントですが、ウッドベースを弾いてますよね。

YUKKE:最近、アップライトベースでスラップする曲がなかったので。自分のプレイ的にも新しいアプローチですね。今までなら普通のベースで弾いてる曲調をアップライトで弾いていて。ライヴで絶対、盛り上がると思う。

──ドラムもテンポが速いですね。

SATOち:速いです。これは歌も速いし、すごく攻撃的だなと。ライヴ感のある曲なので、アレンジを詰めながら、すぐにドラムのレコーディングをしましたね。

ミヤ:自分の好きなハードコアバンドへのリスペクトも入ってるアレンジですね。そのバンドもアップライトベースなんですよ。最近、‘90年代のパンク、メタルバンドをよく聴いてるんですけど、自分がガキの頃に聴いていた音楽ってやっぱり、いいなって。今のバンドって、みんな上手いし、カッコいいんですけど、あの頃の音楽って生々しいし、不穏な空気があって、それがお客さんが暴れるムードに繋がっていたような気がするんですよね。俺はそういう時代を知ってるから、あの生々しさをもっと表現したい、残したいと思って……さっきの陰の話じゃないけど、キレイすぎるものには魅力を感じないので、もっと汚れてる部分も露骨に表現していいのかなっていうことに、今さら気付いたんですよね。

達瑯:さっきの情報の話じゃないけど、今ってみんな頭が良くなってる気がするんですよね。

ミヤ:もっとテキトーだったもんね。

達瑯:情報を集める術もなかったから、その場に行って空気を感じたり、自分たちがやりたいことをやって、そこに賛同してくれる人が集まってる感じだったからね。

◆インタビュー(3)へ
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス