【インタビュー】陰陽座、新曲2曲を含む燦然と輝く龍と鳳凰を冠した7年ぶり2枚目のベストアルバム『龍凰珠玉』

ポスト

■「吹けよ風、轟けよ雷」は陰陽座の自己紹介というか所信表明
■この後に控えている新作を照らすものであり新作に繋がっている

――各アルバムから選んだ曲を並び替え、心のツボを突く新たな流れを作るのが、本当に瞬火さんは上手い。私も何度も胸揺さぶられる箇所があって、聴き手の要望/ニーズの先まで応えてくれるバンドだなぁと感心しました。

瞬火:たぶん、その理由は僕が作り手であると同時に、世界で一番口うるさい陰陽座のファンだからですね。作り手として納得できるかどうかは言うに及ばずですが、そこにファンへの気遣いを過剰に反映させると“迎合している”ということになってしまいますが、“自分自身がファン”なのですから、どんなにファンのことを考えても、それは他人の声に左右されているのではなく、自分の気持ちに従っているに過ぎないわけです。だから、僕のやり方を肯定していただける方と僕とは“気の合うファン同士”ということですね。そのように、“ファンである自分自身”を納得させられるようなものを謹製するのが作り手である僕、ということです。作り手としての立場でさらに野球に例えるなら、1番バッターを作ろうと思って作り、4番を作ろうと4番バッターを作っているわけですから、楽曲の魅力や立ち位置を熟知しているのは当然ですし、発表後はライブで演奏を重ねることで、お客さんと共にそれを再確認したり、逆にその選手(楽曲)の意外な一面を一緒に発見したりと、そういうことを積み重ねてきているつもりですからね。

――では、伺います。『龍凰珠玉』に収録されている2つの新曲は、何番バッターにするつもりで作ったんでしょうか?

瞬火:音楽の場合は4曲目が4番というわけではないことは念のため言っておきますが、バッターではなくピッチャーで例えてもいいですか(笑)?「吹けよ風、轟けよ雷」は完全にエースで4番ですね。大谷くんはいち野球ファンとしてどっちかに絞ったほうがいいと思いますが、楽曲というものは生身の人間と違って試合に臨むために鍛錬したり体調管理したりということがないので、エースで4番が可能だと思います。

――……あの、大谷くんって?

瞬火:北海道日本ハムファイターズの投手にして強打者、大谷翔平選手です。来季はどっちかに絞ってあげないと、彼の野球人生に大きな影を残しそうで心配です……と、本物の野球の話はそれくらいでいいとして、そもそもチームの全員がエースで4番だったら、野球が成立しないですよね。ピッチャーのことだけで考えても、登録投手が全員先発しかやらない、ということになったら、完投できない日はどうしたらいいのかということになります。そういう意味で「生きもの狂い」は例えるなら名リリーフじゃないかと。

――わかりやすい例えです(笑)。確かに「吹けよ風、轟けよ雷」はキャッチーに突き抜けた旋律といい、陰陽座ド直球のメタルサウンドといい、大リーグ級のインパクトで、聴いているだけでアドレナリン大放出でしたよ。

黒猫:いや、本当にカッコよくて! ベストアルバムに入る以上、ベストな曲でなければいけないわけですから、聴いた瞬間に“この曲しかない!”って思いました。もう、ホントに文句ナシで痺れましたね。

招鬼:この新曲がベストの1曲目に入るって聞いた瞬間は、頭の中で“うわ、もったいな……”と思いかけて、“だからこそ最高だな”って思い直したんです。“もったいない!”って悶えるくらいの曲じゃないと、やっぱりベストアルバムの1曲目は担えない。むしろ、コレで行くべきだなって。

瞬火:要するにソコですよね。全作品を持っていればベストを買う必要は無いのに、無条件で買ってくださる有難いファンの方々も大勢いらっしゃいます。僕自身、ユーザーとしてはそのタイプなので、そういう方々に何かしら新しいものをお届けしたいと新曲を入れることにしたんですが、よくあるアウトテイクのようなオマケ的なものにはしたくなかったんです。そんなメジャーリーガーの中にリトルリーグの選手を放り込むようなヒドい真似はできるわけがないし、生まれたときからオマケ=補欠と決まっている選手を作ること自体が無理な話です。むしろ、もし過去に何らかの形でリリースされていたとしたら、この『龍凰珠玉』に順当に収録されたであろう曲……言ってしまえばリリースの手間を省いていきなりベストに選ばれるような曲を入れたいという強い信念があったんです。

狩姦:実際、最初に「吹けよ風、轟けよ雷」を聴いたときは、頭から終わりまでずっと鳥肌が立って! もう、僕にとっては鳥肌ソングなので、そのカッコいい曲に負けない、曲に合ったプレイができるように頑張りました。ギターソロもタイトルの“風”と“雷”感が出るように心がけ、そう出来たと思います。

――どんな困難にも立ち向かわんと歌う歌詞からも、陰陽座というバンドの決意表明がヒシヒシと伝わって、メッセージ面でもド直球ですよね。

瞬火:楽曲の内容的には、完全に陰陽座の自己紹介というか、所信表明ですね。サビに“人造の磐座”という言葉が出てきますが、これは神の御座所であり本来自然に存在するはずの磐座に“人造”と付けることで、陰陽座の音楽は誰かにお膳立てされたものではなく、自らの手で磐座を作っているのだという自負を籠めているんです。もちろん陰陽座の音楽=神などという意味ではなく、森羅万象を八百万の神になぞらえる日本古来の考え方に則ってのイメージです。ベストアルバムを放ち、既に視線は次の新作に向かっている──そんな現時点でのバンドの状態をダイレクトに詰め込んだ曲なので、曲タイトル及び楽曲としての姿自体がこの後に控えている新作を照らすものであり、いろんな意味で新作に繋がっているんですよ。

◆インタビュー(3)へ
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報