【インタビュー】sukekiyo「“このバンド、何するかわかんないな”っていうのがsukekiyoなんです」

■あんまりバンドを会社みたいにしたくないんですよ
■自由に自分のペースで個々が作れる環境を作りたくて

▲『VITIUM』数量限定豪華盤

▲『VITIUM』初回生産限定盤

▲『VITIUM』通常盤

――話を脱線させてしてしまって申し訳ありません。作品のタイトルにちなんだ質問のつもりだったんですけど、話のベクトルが妙な方向に向かってしまって。

京：ふふっ。いや、でも実際、みんな各々にそういう部分というのはあると思うんです。ただ、匠の場合はあまりにもそれが極端というか。だからどうしてもこういう話になると、話がここ（←匠のほうを向く）に集中することになってしまうんですよね（笑）。

匠：いやー、でも、こうしてみんなに言われて初めて気付かされることというのもたくさんあって。

YUCHI：わざと、じゃないんだよね？（笑）ちゃんと常に自分のペースでやってるだけで。

匠：うん。わりと予定とかをきっちり組まないと気が済まないほうで。

――バンドに1人いてくれると、非常にありがたい存在。

UTA：そうなんですよ！

YUCHI：非常に助かりますね。

UTA：でも、同じような人が2人いたら、そこでぶつかるんでしょうね（笑）。

――で、こうして匠さんの件に話が集中したおかげで、皆さんは自分の変態性について語らずに済んだわけです。

UTA：ええ。ホッとしてます（笑）。

京：喋ったところでね、匠と比べれば全然もう可愛いもんですから（笑）。

――逆に、京さんの知られざる側面ってないんですか？

匠：いや、京さんに関しては、もうとにかくアーティストとしてどんどん湧き出てくる感じがすごいな、と。正直、羨ましいなと思いますね。常に出てくるわけですよ、溢れんばかりに。もう24時間湧いてくるんだろうなって。自分の場合、モノを作って落ち込んだりすることもあるわけですけど……。今回も、『VITIUM』の制作段階で前半ちょっと悩んでたんですよね。どういう方向にするのかなっていうのもあったし、もちろんそれを変に決めたくなかったというのもあったわけですが、とにかく『IMMORTALS』の延長上じゃないもの、というのがあって。それが見えるまではちょっと苦戦したというか、ある意味悩んだりしたんです。でも、京さんからは常に目茶苦茶アイデアが溢れ出てくる。ホント、それはすごいです。

▲京

▲未架

▲匠

▲UTA

▲YUCHI

――そうして湧き出てきたものを具現化するスキルと発想があることにも、同じくらい価値があると思うんです。そうやってこのバンドは成立しているんだろうし。お互いが補い合っている、というのとはまた少し違うのかもしれませんが。

YUCHI：そうですね。長所がそれぞれに違う、というか。ビックリするぐらいかぶってない気がするんで。それぞれの得意な部分とか役割が、ホントに違うんです。

――そういう部分でのお互いの理解度がこの時間経過のなかで深まってきて、委ねるべきことは委ねるようになり……。その結果として生まれたのが『VITIUM』ということになるわけですね。なんか、すごく納得できます。ただ、単純に受け手の側からすると「いったい、いつのまに作ってたんだ？」という疑問もあるわけですよ。なにしろDIR EN GREYもフル稼働していたわけだし。もちろん、今の世の中、アルバム制作といってもスタジオに全員が缶詰めになるような状況になるわけじゃないのはわかるんですけど。

京：結構前の話ですからねえ、手を付け始めたのは。

匠：曲出しとかそういうのは、期限とか関係なく常にやってるんで。

京：なんか普通、リリースの月から逆算して、いつから曲作りを始めて、というやり方になりがちじゃないですか。そのサイクルは嫌だな、とずっと思っていて。なるべく期間は長くとれたほうがいいものが出来るはずだし、ゆっくり作れるじゃないですか。だから『IMMORTALIS』が出て、ツアーして……ちょっと経ったぐらいだったかな、“何月ぐらいには次のを出したいから”みたいな話が出てきたときに、もう各自、自由に作っていこうか、と。そうやって作ってきたんです。だから、いつ始まったかわかんないところがあって（笑）。なんかね、あんまりバンドを会社みたいにしたくないんですよ。なるべく自由に、自分のペースで個々が作れる環境を作りたくて。で、まあ、『IMMORTALIS』に入りきらなかった曲から触り始めて、みんなから新たに曲が出来てきたらそれをやってみて……そうやってバランスを見ながら作ってきた感じでしたね。でも結局、入ったのは全部新曲なんです。『IMMORTALIS』から漏れた曲というのは、ひとつもここには入ってなくて。

――ある意味、前作が終わった翌日から始まっていたともいえる。特定の作曲期間を設けず常に曲を作っているとか聞いてしまうと、ものすごく勤勉で几帳面なバンドのようにも思えるんですけど、その理由はあくまで“ゆっくりやりたい”からなんですね。

京：ゆっくりやりたいし、ゆっくりやらせてあげたいというか。

UTA：有難いですよね。締め切りがあったほうがケツに火がついていいものが出来る場合というのもあると思うし、どっちもあるとは思うんです。出てくるものが違うというだけで。切羽詰まってるからこそ出てくるものというのもあれば、ゆっくりやったからこそ出来るものというのもあるから。

京：そこはまあ、バランス見つつ。あとこれぐらいしか時間がないけど何曲ぐらい欲しいから、ちょっとスピード上げてみようか、という場合もあるし。そのへんは調節しますけど、基本的には自分のペースで、好きなときに会社に来て作ってください、という感じでありたいんで。

――確かにバンドが続いていくなかで規則が増えていきがちな傾向というのはあるはず。でも、京さんが重んじるそういった自由意思を尊重するなかに、匠さんのようなタイプのメンバーがいるということもすごく重要なのかもしれません。

京：そうですね。

匠：自分ではよくわかんないんですけどね。

京：大雑把な予定は立てるし、最終的な締め切りも僕が決めるけど、その間のちょっと細かいことはよろしく、みたいな（笑）。

匠：しかもそれは、京さんからいろんなものがどんどん溢れ出てくるからこそ成り立つことでもあって。だからこそ、整理する側にもまわれるというか。

――確かに。誰からも何も出てこないような状況にあったなら、なかなか「まわりは気にせずマイペースでいこう」というわけにはいかないですもんね。で、こんな話を聞いていると、実はもうすでに次の作品に向けての時間が流れ始めているということになるのかな、という気がしてくるんですが。

京：この『VITIUM』が完成したことで、もう個人的にはもうだいぶ次の作品のイメージが出てきてるんですよ。だからまあ、こないだメンバーにも軽く言ったんですけど、そろそろ次のを作ってもいいかな、みたいな気持ちはあるんです。いつぐらいに作り始めたら、これくらいの時期には出せるんじゃないかっていう大まかな話は実際してるし。もちろんそこは、ちゃんとゆっくりやれることを前提にしながら逆算して……。過去、さんざん締め切りに悩まされてきたんで、なるべくそれをなくしたいんです。作品が出来たあとに「ああ、やっぱりこういう曲がもうちょっと欲しかったな」とか、そういうふうにはなりたくないんで、ゆっくりと進めつつ、常にバランスを見ながら……。

――そういった動き方だからこそ僕らには、sukekiyoがいつ頃何をしそうか、という動きが読みにくい。この時期だったらDIR EN GREYは動いてなさそうだから、みたいな考え方をしたところで見えてこないわけですよ。思いがけないタイミングで音源が出たり、ツアーが決まったり。

京：外側から見たらそうでしょうね。まあでも、今後もいろいろやっていきますんで（笑）。

匠：当然、バンドとしてライヴは多くやっていきたいというのがありますね。本数もそうですけど、いろんなやり方をしてみたいというか、いろんなライヴのあり方を試してみたい。アコースティック・セットだけ、というのもアリかもしれないし、たとえばちょっと編成を変えてみるとか。

京：今回の対バン・ツアーでも、メンバーの立ち位置、変わってるし。（注：このツアーではギターとピアノを兼ねる匠が、ドラムと並ぶ形で上手後方に立ち、YUCHIが上手前方に移動している）

未架：あれは面白いですね。演奏や、演出上のいろんな兼ね合いで、ちょっと試してみよう、ということで。

匠：いろんなことを実験しつつ、どんなことにも対応出来る形にしていきたいんで。

YUCHI：うん。とにかく面白いことがどんどん出来ればいいな、と。

――そのツアーでの対バン相手の顔ぶれについてもそうでしたけど、『VITIUM』のDISC 2（初回生産限定盤および京公式通販限定盤のみ）でコラボレートしている人たちのラインナップにも驚かされました。たとえばToshIさんと何か一緒にやることというのは、前々から頭のなかにあったことなんですか？

京：なくはなかったですね。やっぱり昔から聴いてきて、声の質的にもあんまり他に似てる人がいないなあとずっと思っていて。何か一緒に出来たらなあ、というのはあったんです。ただ、どういう形でやれるのが一番いいのかというのが、わかんなくて。ただ、たまたまTVを見てたときにToshIさんが出てらして、生歌を披露していて。「ああ、やっぱりこの人の歌って響くなあ」と思ったんですね。それで、なんとか歌で一緒に出来ないかなと思ってお願いしたんです。

――『IMMORTALIS』のときもキリトさんの参加がありましたけど、いわゆるリミックスとかではないヴォーカル・コラボレーションという発想が面白いし、しかも“まさかこの人が！”という相手との共演が実現しているのがすごいな、と素直に思うんです。いかにも共演しそうな相手ではなく。

京：うん。さっきのイベントや対バンとかについての話にも繋がってくるんですけど、客観的に見たときに“このバンド、何するかわかんないな”っていうようなバンドじゃないと、sukekiyoじゃなくてもいいのかな、というところがあるんで。コラボしてくれた人たちもみんな、そこをわかったうえで楽しんでくれてるのかなと思うんです。

――だから次にこのバンドが何をするのか、やっぱり相変わらず読めない。

京：うん。それでいいんです（笑）。

取材・文●増田勇一





初回盤特典ディスク・Toshl試聴　https://soundcloud.com/sukekiyo_band/collaboration-with-toshl-preview
初回盤特典ディスク・三上博史試聴　https://soundcloud.com/sukekiyo_band/focus-collaboration-with-preview



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