【インタビュー】ジョルジオ・モロダー75歳、まだまだ踊ります

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ジョルジオ・モロダー:いや、実は自分ではそれは分からなかった。でも最近になって、まずDJをやって欲しいというオファーが次々に舞い込んだんだ。最初はルイ・ヴィトンからファッション・ショウでのDJを依頼されて、次にエルトン・ジョンに頼まれて、カンヌ映画祭の会期中に彼が主催するパーティーでDJをして……。そしてご存知のようにダフト・パンクとのコラボがあって、あれがきっかけで動きが本格化して、ゆっくりと自然な感じでカムバックした感じだね

――あなたのようなキャリアの持ち主が30年ぶりにアルバムを作るとなると、周囲の期待は本当に大きいですし、プレッシャーは感じました?

ジョルジオ・モロダー:いいや、そうでもないね。人々がどう受け止めるのか、僕にはどうにもできないから。僕はベストを尽くすしかない。その結果、みんなに気に入ってもらえたらそれは素晴らしい。今のところレビューはどれも好意的だから、本当にハッピーだよ。中にはそうじゃないレビューもいくつかあったけど、総じてポジティヴなんだ。だからナーヴァスにはなっていない。今の僕は非常に穏やかな気分だよ。

――『Déjà Vu』は間違いなくフロアと相性が良さそうですが、ここ数年のDJ体験も反映されたのでしょうか。

ジョルジオ・モロダー:いいや、それはなかったよ。確かにこれはダンス・アルバムではある。でもここにはあの、長い流れで見せる、クラブならではの特徴性はない。アルバムを構成する曲は耳触りが良くて、聴き易い曲でなければならない。ラジオでちゃんとかかるようにね。それにクラブ用としては、ほかのアーティストたちがやっているように、別途新しいリミックスを用意するつもりなんだ。だからふたつは切り離している。リミックスではもっともっとドラムやリズムを強調できるからね。その点、アルバムに収めた曲はあくまでポップ・ミュージックなんだよ。


――レコーディングはどんな風に行なったんですか?スタジオで一緒に作業できたんでしょうか。それとも今時のファイルのやりとりで?

ジョルジオ・モロダー:そうだね。例えばブリトニーは「今ならスタジオに行ける」と連絡をくれたんだが、ちょうど僕はヨーロッパかどこかにいて都合がつかなくて、見送るしかなかった。実際に会うことができなかったんだ。多くの場合、音源のやりとりで進めたよ。シーアの時は、簡単なメロディを乗せたトラックを彼女に送った。そうしたら、歌詞を綴ってメイン・メロディを歌って、ハーモニーも歌って送り返してくれたから、その時点で完璧に出来上がっていて、僕はミックスして微調整するだけでよかった。だからどの曲も完成までのプロセスは異なる。中には、まずシンガーからヴォーカル音源だけが送られてきて、そこからコードを解明して、アレンジを考えて……という形で作った曲もある。それもひとつの方法ではあるし、実は非常に興味深い作業なんだよ。

――歌い手はどの程度曲を左右するんでしょう?

ジョルジオ・モロダー:ケース・バイ・ケースだね。ブリトニーの場合は最初からかなり正確なデモがあった。僕はすでにトラックを作ってアレンジをして、仮ヴォーカルも入れてあった。で、そのヴォーカルを抜いた状態で彼女に送ったんだ。だから最初からほぼ完成していて、ブリトニーのヴォーカルを加えたあとは、少し手直しをした程度だったかな。

――あなたは70~80年代のアイコンと呼べる偉大な女性スターたちと続々コラボしてきたわけですが、今回コラボした現代の女性スターたちと比較して、どう思われますか?

ジョルジオ・モロダー:僕は本当にラッキーだったと思うんだ。いつも本当に偉大なシンガーたちとコラボし、プロデュースしてきたからね。ドナ・サマーに始まり、バーブラ・ストライサンド、ブロンディのデビー・ハリーからデヴィッド……えっと、なんて名前だったかな?

――ボウイですね。

ジョルジオ・モロダー:そう、デヴィッド・ボウイまで。だから30年前の僕は本当にラッキーだったし、今も相変わらず僕はラッキーなんだよ!(笑)何しろ、シーアみたいな人は現在の音楽界において間違いなくトップ・アーティストのひとりであり……いや、正確には、参加してくれた人たちみんなひとり残らず、素晴らしいアーティストだ。ブリトニーも驚くべきヴォーカル・パフォーマンスを提供してくれたし、全員が今のシーンにおいて、歌い手として最上級だと言えるね。

――現時点であなたに音楽を作らせるインスピレーションはどこから得ているんでしょう?

ジョルジオ・モロダー:というか、音楽作りはインスピレーションよりもハードワークに支えられるものだと僕は思う。スタジオに籠もって機材をいじりながら、本当に長い時間を費やして……インスピレーションよりもワーク、だね。もちろん、例えばレストランで食事をしていて、ふとメロディを思い付くこともあるが、そういうことは非常に稀だよ。とにかくスタジオで長い時間作業を続けることで音楽は生まれるんだ。恐らくベートーベンは歴史上最も偉大な作曲家なんだろうが、彼は本当に途方もなく長い時間をかけて、何度も何度もやり直して、たくさんのアイデアを試して、作品を作り上げていたよね。そんなわけで、ヒット・ソングを生むのはインスピレーションじゃない。ハードワークなんだと僕は思うよ。

――今のあなたは『74 Is the New 24』の字義通りに感じていますか?年齢はミュージシャンには関係ない、と。

ジョルジオ・モロダー:そうだね。少なくとも僕自身に関しては! 僕は昔からずっと音楽が大好きで、特にダンス・ミュージックが大好きだった。というか、あらゆるジャンルの音楽を山のように聴いてきた。カントリー&ウェスタンだけは苦手なんだが、ロックもヒップホップもヘヴィメタルも聴いたよ。でも中でもダンス・ミュージックが好きでたまらなかったから、常に最新のヒット曲をチェックしていたし、音楽活動を休んでいた時期も常にダンス・ミュージックは聴いていたんだ。ほかの音楽も聴いていたけどね。とにかくダンス・ミュージックを愛している。だからこれは仕事じゃないんだ。

――そしてこうしてカムバックした今、DJがロックスターにとって代わり、EDMがチャートを席巻していますが、そういう状況をどう受け止めていますか?

ジョルジオ・モロダー:興味深いね。実際に今のDJたちのプレイも見たし、テレビやインターネットなど映像でも見ているけど、まず良質のEDMの曲を作るには、とにかくサウンドを常に最新のものにアップデートする必要がある。その点、ダフト・パンクのようにディスコを復活させてくれたアーティストたちとは性質が違う。クラブも然りで、ディスコばかりをかけるクラブならやっぱり馴染みやすくて、DJをやる時は、例えばブロンディの『Call Me』とか昔のヒット曲をかける。70%は昔の僕自身のディスコ・ソングが占めていて、残りは最近の曲やリミックスで構成しているんだ。これから『Déjà vu』の収録曲を全てリミックスするつもりだよ。クラブ用にね。
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