■昔バンドをやっていた人が音が好きでファンになったという言い訳ができる
■アイドルだと気づかずに聴いていたんだよね…みたいな(笑)


――では、そういったことを踏まえつつ『楽曲派!』について話しましょう。『楽曲派!』にはいろいろなタイプのアイドルが顔を揃えていますが、さくら学院やアフィリア・サーガ、つりビット、愛乙女☆DOLL、アイドルネッサンスといった、いわゆる王道系のアイドルが核になっています。

マーティ:この辺りの楽曲は、“歌謡曲の従妹ちゃん”という感じですね。メロディーが受け入れられやすい、馴染みやすい旋律で、すごく聴きやすい。さっきも言ったように、最近は新しいスタイルのアイドルが沢山出てきているし、メタルとアイドルの融合が流行っていたりするけど、こういった人達はオーソドックスなポップス・アプローチの楽曲ですよね。だから、解釈よりも、楽曲自体に集中して聴いて欲しいです。説明しづらいですけど、日本の歌謡曲は洋楽からは遥かに遠いんですよ。洋楽を聴いたことがない人達が作っているような世界で、その純粋な部分が好きな人にはたまらないと思う。そういう純粋なものがJ-POPシーンでは今も続いているということに、僕の中では心が温まるところがあって。そういう意味でも、この辺りの曲はすごく好きです。

クロちゃん:この辺りのアイドルは、分かりやすいですよね。アイドルに興味があるけど、どこから入ったら良いのか分からないという人にオススメです。変化球も楽しいけど、王道を見てもらわないと基準点が出来ないから。それに、こういう系統のアイドルは、やっぱり良いですよね。ワクワク・ドキドキ感があって、甘酸っぱい恋愛を歌っていて。若い世代の人に限らず、30代、40代の人はこういうアイドルを応援することで、自分の青春時代を取り戻せるというのもあるし。なので、まずはこういう王道の人達を聴いて欲しいです。それこそ歌謡曲が好きだった人達は、入りやすいと思います。服装もアイドルネッサンスさんとかは白を基調にしていたりとか、つりビットさんはちょっと前は黄色とか、かわいい色を使っていて。自分達をアイドルとして見せるのがすごく上手くて、それにプラス・アルファで曲も良いと惹きつけられる人が多いんですよね。ただ、アフィリア・サーガとかは王道ではあるけど、ちょっとアニメ寄りのところがあって、少し変わっている部類なんですよ。ちょっとエッジの効いたキャラクターものになっている。そういうところも頭に入れて聴くと、より楽しめるんじゃないかなと思います。


マーティ:それに、僕が今回選んだアイドルネッサンスの「君の知らない物語」という曲は、ちょっとヴィジュアル系の匂いがある気がするんですよ。ヴィジュアル系のメロディー・センスというか。それに、曲のサイズが長いし、いろんな展開があって、豪華な作りになっている。シンプルなポップソングではなくて、ちょっとGACKTさんが作りそうな曲だなと思います(笑)。

――王道系の中でも、それぞれが個性を発揮していることが分かります。『楽曲派!』には王道系ではないアイドルの曲も収録されていて、たとえばひめキュンフルーツ缶の「パラダイム」やベイビーレイズ JAPANの「走れ、走れ」などは、バンド感のあるサウンドが印象的です。

マーティ:それは、ありますね。彼女達みたいに、まだあまり注目されていない新しいアイドルは、バンド・サウンドを目指していることが結構多いんですよ。ただ、リアルなバンド感を活かしているわけではなくて、結構パソコンの中で作られている音楽ですね。生ドラムや生ベース、生ギターを使うというのは贅沢な状況ですから、予算的にちょっと厳しいんですよ。でも、打ち込みのドラムやベースを使うと、それはそれで独自の味が出るから僕は良いんじゃないかなと思います。


――打ち込み特有の軽やかさを、上手く活かしていますよね。それに、ガールズバンドが好きなリスナーには、入りやすいというメリットもあると思います。

マーティ:そう、入りやすいですね。

クロちゃん:それは、あると思います。昔ちょっとバンドをやっていたような人が、音が好きでファンになったという言い訳ができるじゃないですか。アイドルだと気づかずに聴いていたんだよね…みたいな(笑)。そういう逃げ道があるのが、この辺りのアイドルです(笑)。見え見えでも言い訳をさせてあげるというのは、優しさだから。

マーティ:ハハハ!! アイドルファンになるには、言い訳が必要なんですね(笑)。

クロちゃん:そういう人もいるんです。でも、いろいろ言い訳をしたとしても、それでアイドルファンになってくれれば同じ仲間ですから。アイドルファンの先輩方は、温かい目で見てあげて欲しいです(笑)。それに、ひめきゅんフルーツ缶さんとかは、ライブも良いですよ。僕は、アイドルのライブを年間100本くらい観るんですけど……。

マーティ:えっ、100本!? 本当に?

クロちゃん:観ます。仕事の合間を縫って行っていて、1日に2~3ハシゴしたりするし。

マーティ:凄いな……。

クロちゃん:そうしないと、アイドルのことを喋っちゃいけないなと思うんですよ。見ていないのに偉そうに言うのは、絶対にダメだと僕は思うから。とりあえず見て、自分の感性に、どう響くかを知りたいんです。そのうえで自分が良いなと思ったものは、他人がどう評価しているかに関係なく好きだと言う。自分が好きなものに対しては嘘をつきたくないですし、せっかく好きになったなら、それこそ責任を持って好きだと言わないといけないと思うから。僕は、常にそういう気持ちでいます。

マーティ:それは、アイドルの子達は、すごく嬉しいでしょうね。

クロちゃん:いや、僕が勝手にやっていることですから。話が飛びましたけど、ひめきゅんフルーツ缶さんとかは愛媛のグループで、nanoCUNEさんという妹分とかもいて、その中で一番お姉さんだったりするんですよね。で、運営の人が元々音楽をやっていた人で、自分で音楽を作れるんですよ。プロデューサーが音楽を分かっている人だから、ライブでは曲と曲の間をつなげて、ノンストップで10分とか15分やるんです。そうすると、すごく盛り上がる。そういう意味で、ひめきゅんフルーツ缶さんは、運営が音楽に詳しいというところを上手く活かしているといえますね。

マーティ:凄い! アイドル評論家の話を聞いているみたいです。

クロちゃん:いやいやいやっ!(照笑) あと、ベイビーレイズ JAPANさんは、センターの(林)愛夏ちゃんという子が元々はアナウンサー志望だったんですけど、その子の声がすごく良いし、歌詞も聴き取りやすいんですよ。ベイビーレイズ JAPANさんの曲は最近のガールズロックの傾向を反映していてテンポが速かったりするけど、歌がキチンと聴こえるんです。そこに関しては、本当にナンバーワンといえるくらい上手いですよ。だから、ベイビーレイズ JAPANさんは評価されているし、これからも伸びていくだろうなと思います。


――アイドル初心者の方は、このインタビューと併せて『楽曲派!』を聴くと一層楽しめることは間違いないです。続いて、“異色系”にいきましょう。まず、ななのんの「キス ミー ダーリン♡ feat.ザ50回転ズ」は、タイトルから分かるように、ザ50回転ズとコラボレートした曲です。

マーティ:ななのんの曲を入れたのは、僕の希望が強くて。今回のコンピレーションでは、ルール違反なんですよ。ななのんは、もう活動していないよね?

クロちゃん:そう、もう解散しています。

マーティ:僕はそれを知らなくて、この曲を入れたいと言ったんです。そうしたら、もう活動していないからダメだと言われて。他にもこの曲が大好きだから入れたいと言ったのに、歌っている人が今はそのグループにいないという理由でNGになった曲とかがあったんですよ。「そんなの関係ないじゃん!」と言ったら、「関係あるんだよ!」と言われて。それで、5曲くらいNGになってしまったけど、「キス ミー ダーリン♡ feat.ザ50回転ズ」はどうしても入れたくて。粘り強く交渉を重ねた結果、収録できました。それくらい、この曲は大好きです。

――その気持ちは、よく分かります。すごく良い曲ですし、この曲があるか、ないかでアルバムの印象が大きく変わったと思いますので。

マーティ:そう言ってもらえると、すごく嬉しい。この曲は、ちょっと雰囲気が違うでしょう? 外国人の耳で聴くと、すごく面白いんですよ。もし僕が日本に住んでいなかったら、この曲を聴いてすごくビックリしたと思う。それに、日本語を知らなくても“キス ミー ダーリン お願い”という歌詞の“お願い”くらいは分かるじゃん(笑)。だから、これはワールドワイドにアピールする力を持った、すごく良い曲だなと思って。この曲を入れられて、本当に良かったです。

――ななのんが、もう活動していないというのは残念ですね。

クロちゃん:そうなんですよ。二人とも美人だし、個性もあったから。そういえば、ななのんさんの最後のライブは、ファンの間では語り草になっていて。普通、最後のライブというと本人達がガァーッと泣くじゃないですか。ななのんは二人とも泣かなかったから、ファンの人達が「頼むから泣いてくれぇー!」といって泣いたという(笑)。

マーティ:ハハハ!! それは、すごい世界ですね(笑)。

クロちゃん:二人は姉妹みたいだと自分達で言って、服装のコーデもちょっと色違いにして合わせたりして、すごく仲が良かったのに、最後に泣かなかった(笑)。でも、僕はそういうところも良いなと思うんですよ。この話を知ってから「キス ミー ダーリン♡ feat.ザ50回転ズ」を聴くと、また違った気持ちになると思います(笑)。

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