【インタビュー】木村カエラ「“PUNKY”って誰でも持っていて熱く絶対に変わらない自分だけの思い」

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■「今を生きる」っていう言葉をいっぱい入れたいと思った
■バンとくる衝撃的なものだったり熱い思いってすごく重要だから


――「恋煩いの豚」は「クラシエ ナイーブ」のCMソングですけど、この前までやっていたイタリアを舞台にしたアニメ「ルパン三世」の新シリーズで同じタイトルの作品があって。何か関係があるの?

木村:それが、偶然なんですよ。この曲では豚の話を書きたかったんです。この豚自体、ナイーブちゃんっていう名前だから、性格もナイーブで。あと、お風呂に入っている時って、女性はだいたい綺麗になりたいとか思いながら、化粧を落としてツルツルにする、と考えた時に、恋をして、綺麗になりたいナイーブな豚というのが思い浮かびました。恋をしていて、振り回されて、空中ブランコにも乗っちゃうし、豚は泥も好きだから、いろんなところに飛び込んでも行けちゃう。これは、恋煩いしている豚なんだなと。それで、その後、タイトルが何かとかぶっていないかネットで調べたんですよ。そうしたら、ルパンで。逆にテンションが上がって、その物語を全部見て、内容もすごく良かったから、もうこのタイトルにしようと、そのままGOしました。

――偶然なんだ。曲調もミュージカルっぽくてすごく似合ってるよね。

木村:サーカスっぽい曲がいいなと思って。

――この曲は小松清人さんの作曲ですよね。その他、作曲家陣が変わったことで、かなり楽曲もバリエーションが広がったよね。「好き」のシャムキャッツとか、「PUNKY」「BOX」のH ZETT Mさんとか。編曲もやってるね。H ZETT Mさんの演奏には狂気のようなものを感じて、そこがまたパンキーというテーマに合っている。

木村:ピアノを叩いているような、聴いたことのないピアノの音を奏でていて。それがたまらなく好きで。ピアノをそんな感じで弾くんだ!?って。でも感動的なものは感動的に弾ける人なんですよ。才能というか。

――それこそ「PUNKY」の意味の一つでもある「火口」って感じ。

木村:はい。爆発的な、ふつふつとした感じがあります。彼しか弾けないピアノになるから今回のアルバムにはぴったりだったなと思っていて。私自身、ピアノの音とドラムの音がすごく好きなんですよ。だからすごく心地いい。


――シャムキャッツとの制作はどうでした?

木村:“いっせーのドン”でやろうってことで。最後のほうで、いっせーのドンでやれるパンクが欲しいってなり、シャムキャッツの夏目(知幸)くんが曲を提供してくれて。そこから「もっとパンクっぽくアレンジをして!」って上がってきたのがこの曲で。勢いで演奏した方が魂とか勢いがこもるから、何回もやらないで一発録りで。

――こういうフレッシュなのとアイゴンさんの成熟したギターが聴ける曲とバランス良く収録されているのがいいですね。

木村:インタビュー中に思ったけど、こういうフレッシュ感みたいなのって大事なんですね。ドシッとしすぎるとちょっとつまんないっていうか。

――それも曲によってさじ加減が必要ですよね。「向日葵」のような曲はまたちょっと話が違ってくるでしょ? この曲はすごくストリングスの印象が強くて、まさかくるりの岸田繁さんの曲だとは思わなかったけど。どうしてもバンドのイメージがあるから。でも、実はくるりってメロディがすごく綺麗だもんなと思ったら納得。

木村:そうなんです。これが映画『バースデーカード』の主題歌のお話をいただいて、台本を読んで監督とお話して、その時に軽く映像も見せてもらって。打ち合わせが終わった時に「これは岸田さんに書いてもらわないと成功しない」って直感で思ってお願いしたら、「アレンジまでは無理だけど、曲だけだったら作れるかも」って急いで作っていただいたのを「できた!」って携帯のメールに送ってくれて(笑)。ピアノとアコギだけで作って、それをビデオで撮ってあったんですよ。そこからこの曲が生まれたんです。

――壮大なイメージですよね。

木村:監督と話した時に「優しい感じがいい」って言っていたので、アコギとかでアコースティックな感じだろうなと思っていたんですけど、でもこの曲ならピアノの音とか弦の音がいいのかなって。アレンジは徳澤青弦さんにお願いしたいっていうのはなんとなく決まってたんです。彼の作る音がすごく好きで。「Sun shower」の時も一緒にやっているんだけど、あの曲のもっと優しい感じを作りたいというイメージがあったし、以前、青弦さんが作った弦の音を聴いた時に泣きそうになったんです。だから絶対に青弦さんがいいって。打ち合わせをした時に、「ピアノとちょっとだけドラムが入っているくらいでいいんじゃないですか?」っていう感じになって、そこからこのアレンジになりました。

――カエラの楽曲には「マーガレット」が出てくる「リルラリルハ」もあるけど、今度は「向日葵」なんですね。

木村:映画を見たら、「向日葵」しか浮かばないような内容だったんですよ。親にとって子供って太陽なんですよね。子供を太陽だとしたら、いつも太陽の方向を向いて咲いている向日葵は子供を見つめ続ける親の立場と一緒じゃないかなって。花言葉は「あなただけを見つめてる」だし、優しくて大きくて、でも強い思い。「もう向日葵しかないでしょ」って。きっと映画を見てくれればすごくわかると思います。

――歌詞に関してはどれも平易な言葉で書いてあってすごくシンプル。

木村:いろんなことをハッキリ言おうという思いがすごく強かった。吐き出せ!みたいな。『PUNKY』という言葉自体に「熱を持っている」とか「火口」っていう意味があって、誰でも持っている、表には出さないけど熱い思いがある。絶対に変わらない、自分だけの想いというか。そういうことを歌ったり、私が座右の銘にしている「今を生きる」っていう言葉をいっぱい入れたいと思ったんです。バンとくる衝撃的なものだったり、熱い思いって、すごく重要だから、全体的にそれを散りばめたりしています。

――メッセージもそうなんですが、音と言葉の一体感を意識しているような印象も強いですよね。

木村:デモの時に聞こえてくる言葉を意味を気にせずに入れちゃう。自然に出てくる言葉って絶対的な感じがしていて。それを変えるとだいたい後悔するんですよね。「PUNKY」の中にも「ヤッホー」って入っているんだけど、デモでも「ヤッホー」って歌っていたから、そのままにしているんです。そこはもうヤッホーしかないんですよ(笑)。

――それでしか聞こえないんですよね。

木村:それが一番気持ちいいから最初から出てくるんです。無意味でもいい。それよりも気持ちいい言葉、出てきちゃったものはもう入れようと。

――「Happyな半被」なんてまさにそういうところだらけでしょ? 言葉とメロディがリンクしているからこそ、意図してメッセージしたわけじゃないのに、メッセージ性を感じてしまうという。

木村:音と言葉のマジックがすごい(笑)。

――「恋煩いの豚」もそういう手法。「僕たちのうた」は物語になっていたりするけど。

木村:はい。「僕たちのうた」は王道に作りました。小中高の気持ちに戻って。Aメロは幼稚園。そこからだんだん成長しています。自分の年代を追いながら卒業ソングを書いていくというか。このデモを聴いた時に「卒業」とか「春のサヨナラ」感があって。「10代の青春だな」と。じゃあ、卒業式の曲を描こうと思って。初めて卒業ソングを書いたから、逆に照れ臭くて、「こんなまっすぐな感じで大丈夫?」っていうのはあったけど、「いいじゃん」って。

――前作『MIETA』にはPOP ETCとか外国の作家さんが参加していたり、シノッピが英語詞を書きたいモードだったから、英語詞も多かったりしたから私の中では洋楽アルバムのような印象があったんです。でも今作は日本に戻ってきた感じがすごくします。でもサウンドはUKが入ってる……でも日本っていう作品ですよね。

木村:わかります(笑)。THE BLUE HEARTS的なパンクさとかもありますよね。

――「SHOW TIME」もクラップが入ったりしているし、今作はライヴをするのも楽しそうな曲が増えましたね。

木村:ライブでやったら楽しいと思います。今回はライブハウスツアーから始まり、その後のホールツアーのタイトルが、両方とも光っているものがタイトルになっていて、ライブハウスツアーが「STUDS TOUR」で、ホールツアーは会場も大きくなるから、ギラギラギラって感じで「DIAMOND TOUR」なんです。今回作ったアルバムの曲がどんな曲かっていうのもライヴをすることで確かめられるんですよね。自分はもっと盛り上がると思っていたけど、お客さんにとってはこういう曲なのかとか。その曲の個性がライヴをしないと生まれて来ないから。それがすごい楽しみです。

取材・文●大橋美貴子


『PUNKY』

10月19日(水)発売
[初回限定盤] CD+DVD
豪華スペシャルパッケージ仕様
<DVD>
「EGG」(music video)
「BOX」(music video)
「BOX」(making movie)
LIVE『GO!SHOW TIME』 at渋谷公会堂 (2015.9.9)
¥3,700+税 VIZL-955

[通常盤] CD ONLY
¥3,000+税 VICL-64563

<収録曲>
01.There is love
02.僕たちのうた
03.EGG(TBS系木曜ドラマ劇場『37.5℃の涙』挿入歌)
04.THE SIXTH SENSE
05.オバケなんてないさ
06.SHOW TIME
07.好き
08.恋煩いの豚(クラシエ「ナイーブ」CMソング)
09.PUNKY
10.BOX(Microsoft「Surface Book」タイアップソング)
11.向日葵(映画『バースデーカード』主題歌 【2016年10月22日公開】)
12.Happyな半被(日テレ「世界の果てまでイッテQ!」で歌った話題の歌)

ライブ・イベント情報

<STUDS TOUR supported by クラシエ naive>
10月18日(火)東京・赤坂BLITZ
10月19日(水)東京・赤坂BLITZ
10月24日(月)広島・CLUB QUATTRO
10月26日(水)新潟・NIIGATA LOTS
11月11日(金)北海道・札幌PENNYLANE 24
11月14日(月)愛知・名古屋DIAMONDHALL
11月16日(水)兵庫・神戸CHICKEN GEORGE
11月17日(木)大阪・なんばHatch

<DIAMOND TOUR>
1月28日(土)埼玉・戸田市文化会館
1月29日(日)宮城・仙台電力ホール
2月5日(日)石川・金沢市文化ホール
2月11日(土)神奈川・神奈川県民ホール
2月25日(土)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
3月1日(水)福岡・福岡国際会議場メインホール
3月3日(金)東京・東京国際フォーラム ホールA
3月5日(日)愛媛・西予市宇和文化会館
3月6日(月)大阪・フェスティバルホール


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