【インタビュー 前編】陰陽座、“得も言われぬ絶世の美声で歌う伝説の生き物”をモチーフにした作品『迦陵頻伽』

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陰陽座がオリジナル・アルバム『迦陵頻伽』(かりょうびんが)を11月30日にリリース。2作同時発売の『風神界逅』、『雷神創世』から2年2ヵ月ぶりの新作となる。“絶世の美声で歌う伝説の生き物”をモチーフにした今作について、瞬火、黒猫、招鬼、狩姦の4人が熱く語ってくれるインタビューを前編、後編の2回に渡ってお届けする。

◆陰陽座~画像&映像~

■「これぞ迦陵頻伽たる歌声・音楽」とリスナーに言わせなければ
■「これのどこが迦陵頻伽なんだ?」って言われたんじゃおしまいなんです


――2年2ヵ月ぶりのオリジナル・アルバム『迦陵頻伽』(かりょうびんが)が完成しました。近年はコンセプト・アルバムの『鬼子母神』(きしぼじん/2011年)、2作同時発売の『風神界逅』(ふうじんかいこう)&『雷神創世』(らいじんそうせい/共に2014年)と、ある種ロック・バンドとして究極的な形でアルバムをリリースしてきたわけですが、その次に来るべきものというところで頭を悩ますような瞬間もありました?

瞬火:それがですね、実のところこの13作目が『迦陵頻伽』というタイトルで、こういった内容で、こういう密度のものというのは、10作目の『鬼子母神』を作ってる時にはもう決まっていて。

――やっぱり! 初期の時点で10作目までのアルバム・タイトルが全て決まっていた陰陽座なので、今回もそういう答えをどこかで期待していたんですが(笑)。

瞬火:でしょ?(笑) 僕からすると、今回、至高のモチーフである迦陵頻伽という名を冠したアルバム、つまり“得も言われぬ絶世の美声で歌う伝説の生き物”をモチーフにした作品にするということは、「これぞ迦陵頻伽たる歌声・音楽」と言わせなければ……「これのどこが迦陵頻伽なんだ?」って言われたんじゃ、もうおしまいなわけですよね。なので逆に言うと、『迦陵頻伽』という作品を作る頃には、そういうものが作れる者になっていなければならないということで。おっしゃる通り、ロック・バンドの作品の作り方として、ある意味で極端な2つの手法――ストーリー・アルバムの構築と2作同時リリースを経て、濃厚な物語を描くであるとか、たくさんの楽曲を作るということに疲れきって、全て出し尽くしてしまいモチベーションが下がっていったとしたら、『迦陵頻伽』を作るどころではなくて、もう終わりですよね。ところがそうではなく、あれだけのストーリーを紡ぐことができた、あれだけの内容の独立した2枚のアルバムを一気に発表することができた――じゃあ、僕が思う迦陵頻伽たる作品を作る力が、今この陰陽座というバンドには間違いなくあるという確信があったので、それに向かう創作意欲は当然あふれていました。まあ、多くの人がちょっと危惧したかもしれませんよね。2枚同時なんていうことをして、ネタを使い切ってるんじゃないかと。今ひいひい言ってアイデアを絞り出してるんじゃないかと心配した人もいたかもしれませんけど、逆ですよね。だって、2枚同時に作って、次作るのはたった1枚ですよ。


――いやぁ、相変わらず瞬火さんらしい発想です(笑)。

瞬火:半分ですから(笑)。逆に1枚に収めるのに苦労するほどマテリアルを出していたので。アイデアがある、マテリアルがある、それを演奏して歌う実力も現時点でこれだというところまで磨き上げてこられていると。そういうことが揃っていれば、あとはもう、こういった作品が出来るしかないですよね。

――では、その迦陵頻伽という題材を、このタイミングで持ってきた意図は何なのかというところですよね。表題曲が1曲目に配され、楽曲や歌詞からは、胎動して、ゆっくりと羽ばたき再生していく印象も受けました。

瞬火:実はこれ、陰陽座が13枚のアルバム・160曲以上作ってきたなかで、唯一のアルバム・タイトル・トラックなんですよね。

――そう、完全にタイトルと同一のものは、これまで意外にもなかったんですよね。

瞬火:ええ、初のそういう楽曲で。僕がどれだけ迦陵頻伽という存在を、楽曲やアルバム・タイトルにモチーフとして使いたいと思っていたかがここに表れていて。普通であれば、アルバム・タイトルに付けたら、それとまったく同じ曲名のものは作らないんですけど。

――それには何か理由が?

瞬火:それだと単純に面白くないなと思っていたので。ところが迦陵頻伽に関しては、アルバム・タイトルにもしたいし、その名前を冠した曲も作りたいしという。当然その曲で幕を開けなければ、ということも決めていて。それでまさに、迦陵頻伽というものが卵から孵化して、姿を現して地上に降り立つというところをイメージしているんですが、迦陵頻伽として見ているもの……僕からすると絶対的な歌声を放つ生き物というのは、黒猫という存在以外ありえないんです。黒猫が迦陵頻伽であり、ひいては陰陽座というバンドが迦陵頻伽なのだと。で、12作のアルバムを作ってきた今までの陰陽座、そして黒猫は、まだ卵の中にいたにすぎないのだということです。

――ああっ、それはすごい解釈ですね…。

瞬火:卵の中にいる時から、迦陵頻伽というのは美しい声で鳴くと言われてるんですね。なので、今まで皆さんが聴いていたのは、卵の中にいる迦陵頻伽の声で、今この瞬間に卵から孵ったのだということを宣言する楽曲なんです。


――ははぁ……ちょっと鳥肌が立ちました。のっけから大どんでん返しをくらったような感覚ですよ。

瞬火:ありがとうございます。それで、迦陵頻伽が卵から孵って、じゃあこれから音楽シーンの中で高らかに歌うのか?と。でも僕の実感として、陰陽座というバンドが17年ぐらい活動してますけど、音楽シーンの中……もっと狭く言えばメタル・シーンって言うんですかね、どうも陰陽座は、そこには存在してないことになってるみたいなんですよね。……意味がよく分からないかもしれませんが。

――僕含め、ファンの人たちから見たら堂々と存在してますけど(笑)。でも、これまでのバンドの歩みや孤高のスタンスを知ってるので、瞬火さんが言わんとしてることは分かりますよ。

瞬火:存在してないっぽいんですよね。「陰陽座って何?」っていう空気を、僕はずっと感じていて。で、それにゾクゾクしてるんです(微笑)。だから迦陵頻伽として目覚めても、何もいない場所でひとり目覚めてるイメージなんですね。ひとりなんですけど、迦陵頻伽たる陰陽座に声を掛けてくれる存在は感じると。ただ、それは見えない。でも、見えないからいないのではなくて……つまり、その声は今までずっと支えてくれてきた陰陽座のファンの声なんですが、なぜ見えないのかというと、ファンの方が陰陽座を取り巻いているんじゃなくて、陰陽座とファンというものは一体のものとしてあるんです。で、一緒にずっと卵の中にいて、一緒に一体のものとして今生まれましたと。自分の姿というのは鏡に映さないと見えないですよね。だから、いないように映るのに声がするのは、はなからひとつのものとしているからで。陰陽座とファンは一体だから、目で見える範囲では何もいないけど、この迦陵頻伽という存在の中に陰陽座とファンが一体になっているから“これでよし”という曲です。

――なるほど……とすると、バンドとしての強固な決意表明が、ここにきて改めてなされているということですよね。

瞬火:そうですね。陰陽座のスタンスを示すことでもあり、陰陽座のファンの方に感じている親愛なる気持ち、どれぐらいファンの方を信頼しているか、それを歌っている内容ですね。

――……ここでインタビューが終わってもいいぐらいの。

一同:はははは!

瞬火:満足感があるでしょう?(笑)

――ええ、ものすごい充足感を感じてますが(笑)。まさにアートワークにも迦陵頻伽として登場している黒猫さんは、最初にこのテーマを聞いた時、どういった印象を持ちました?

黒猫:もちろん私の声だけじゃなくて、陰陽座の音楽や存在そのものが迦陵頻伽であるということなんですけど、やっぱり女性ヴォーカルということで、迦陵頻伽の姿からしても象徴的じゃないですか。自分と直結するものがあるので、これは責任重大で背筋が伸びる想いもありつつ、すごくやりがいのあるアルバムになるだろうということで、本当にワクワクしましたね。それで出てきた1曲目がこれだったので、まさにこの幕開けしかないだろうという感じでした。


――招鬼さんは、いかがでしたか?

招鬼:瞬火が話していたように、この迦陵頻伽という題材をいかに大事にしていたのかがすごく伝わってきて。それでデモを聴いた段階で、「なるほど、これは凄いものを作ろうとしてるんだな」と実感しましたね。もう、それに食らいついて、自分にできる最大限の仕事をするということだけなので……「これは大変だぞ」とも思いましたけど(笑)。大変だからこそやりがいがあり、楽しみでもあるので、これまで以上に気合いが入りましたね。

――当然、瞬火さんから提示されたデモというのは、曲順通りに全てが入った状態なんですよね?

瞬火:そうですね。ヴォーカルがガイド・メロディということ以外はフル・アレンジのものですね。

狩姦:僕らはアルバム・タイトルを瞬火から聞いたのが2年前ですけど、それ以前からこういった内容のアルバムを作ることはすでに聞いていたんですね。それで今回デモをみんなで一緒に聴いた時に、今までにない感覚を味わったんですよ。いつも名曲を生み出している瞬火ですけど、これだけたくさんのアルバムを作ってきているので、瞬火がどういう曲を作ってくるか、ある程度は想像できていたはずなんですね。でも、それをはるかに超える楽曲が今回出てきて、聴いていてなぜか緊張したんです。それに応えるプレイをしないとって、招鬼と同じく気合いが入りましたよね。

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