【インタビュー】Anly、20年ぶんの歩みが詰まった1stアルバム『anly one』完成

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デビューから1年半の時を重ね、Anlyのファースト・アルバム『anly one』がついに世に出る時が来た。デビュー・ヒット「太陽に笑え」から、スキマスイッチとのコラボレーションが大きな話題を呼んだ最新シングル「この闇を照らす光のむこうに」までのシングルに加え、高校時代に作った初々しい楽曲もたっぷり収録。オールド・ロックやブルース、フォークやカントリーなど年齢に似合わぬ骨太なルーツを持ちつつ、若い冒険心を武器に新しい音にも果敢にチャレンジする、まぶしさいっぱいの全14曲。沖縄・伊江島で育った音楽好きの可憐な少女は、いかにして次世代のブレイクを最も期待されるアーティストへと成長していったのか? その答えがここにある。

◆Anly 画像

■私の原点のようなアルバムかなと思います。


▲『anly one』初回限定盤

──さあ、一生一度のファースト・アルバムですよ。できましたね。

Anly:できました。よかったです。

──デビューから1年半というか、もっと言えば20年ぶんの想いが詰まっているような。

Anly:Anlyという一人の人が生きてきた歩みみたいなものが、いっぱい詰まったアルバムになっていると思います。「Anlyという人がここにいます」はじめましてという気持ちがあるので、『anly one』というシンプルなタイトルにしました。ちょっと“only one”にも見えるようにしようと思って。

──あ、そうですね。確かに。

Anly:自分らしさが出るようなアルバムにしたいと思ったので、ロックのテイストもあったり、伊江島の雰囲気が味わえるような、フォーキーな曲やカントリーな曲も入れたりしたので私の原点のようなアルバムかなと思います。

──曲は、古いものから新しいものまで?

Anly:はい。最新が「この闇を照らす光のむこうに」で、それ以外は今まで作ってきた中から選んだ曲で、語りだしたら止まらないんですけど。2曲目の「FIRE」とか、初めて本を読んでから書いた曲で、すごく面白い本を読んだ時に思いついた曲です。「太陽に笑え」と同じ時期に作っていたので、ロック色が強いんですけど。

──ちなみに何の本ですか。

Anly:『ほんとうの花を見せにきた』(著:桜庭一樹)というすごく不思議なお話で本屋に入ってパッと目についたのでジャケ買いみたいな感じで買いました。バンブーっていう竹のおばけと、人間の子供が出会う話ですが、その話からこんなロックな曲ができるんだ?っていう感じです。意外と重たい話ですが、それでパッと思いついたのがこの「FIRE」という曲です。そんなふうに曲を書くことはないだろうと思っていたんですけど、影響を受けると曲ってできるんだなと思いました。

──さらに時間をさかのぼって、古い曲というとどのあたりになりますか。

Anly:「太陽に笑え」「サナギ」「傘」「Enjoy」「だから」「レモンティー」「いいの」「Come back」とか、そのへんが高校時代に書いた曲ですね。半分以上がそうです。

──その頃に書いた歌詞を読むと、幼い感じがしてしまったりとか、そういうことはあります?

Anly:いえ、幼くはなくて、むしろうらやましい。

──おや。それはなぜ?

Anly:バッと書いた言葉って、緻密さはないんですけど、見えない力が働いているなと思っています。一生懸命考えた曲って、一瞬聴いただけで伝わるように書こうと思って、デビューしてからはそういう書き方もしてみたんですけど、そういうことも何も考えずに書いていた高校生の頃は、自分自身何を言ってるのかよくわからないけど、それを聴いた時にどんなふうに受け取るかは任せますと言っているような感じが、私自身好きだなと思いました。ちょっと考えてみたら確かにそうだね、というような言葉が並んでいたりするので、そういう意味では、昔の私のほうが年上っぽいなあと思っています。

──具体的に聞いていいですか。たとえば?

Anly:「いいの」とかも、“つらい恋というならば、心に愛を添えて”とか、今では絶対言えないことで、心に添えるっていう表現の仕方も、パッと思いついて書いて、これでOKって言えてるのがすごいなって。今の私だったら、“心に添える”で伝わるの?って考えちゃったりとかするかなと思うんですよ。「レモンティー」は特に空気感を大事にしていて、聴くと淡いレモン色の世界が見えてくるような、そういう雰囲気が無意識に出せてるのはある意味羨ましいな、と昔の自分に思うことはあるかもしれないです。

──ああー。

Anly:曲ができてしまうと、自立してどこかに行くような気がしていて、自分自身のものじゃないみたいな感じに思えるので、こういうふうに並んでいると、久しぶりに会えた友達みたいな気がします。

──それいい。元気してた?みたいな。

Anly:どこ行ってたの? 久しぶりだね、みたいな(笑)。レコーディングの時も、あー懐かしいって言いながら録っていました。何十年も生きている大人の人たちからしたら、そんなこと言う年じゃないでしょって思うかもしれないけど、人には一人一人の時間の感覚があって、離れていた時間が長く感じる時もあれば短く感じる時もあると思っています。私にとってはこの久しぶりに会えた曲たちが、本当に懐かしい友人のような気がして、愛おしいです。


▲『anly one』通常盤

──逆に、一番新しい「この闇を照らす光のむこうに」になると、意識が変わってきたところはあります?

Anly:その前の「カラノココロ」を作った時の制作期間が、今までで一番長く難航したので、私自身の中で何かが変わったという気がします。今までで一番一番細部に渡ってこだわって作った曲で、今まで聴いてきた音楽が全部混ざり合ったような曲になったと思います。1オクターブ以上飛んじゃうメロディはオペラとかを歌っていたからかな?とか、エド・シーランを聴いてたからラップっぽいところが出てきたのかな?とか。そういう今までの経験がミックスされた集大成みたいな曲が出来上がったことが、私の中では大きくて、「カラノココロ」はAnlyとしてのターニング・ポイントになる曲だなと思っています。その次の「この闇を照らす光のむこうに」を作った時には、一人じゃなくて3人で曲を作るという新しい体制で、アーティストとしてのターニング・ポイントになったなと思っていて、スキマスイッチさんのお二人がものの見方とか、音楽に対する姿勢、声の出し方とか、全部わかりやすく教えてくださり、私のコンプレックスを取り除いてくれたような経験だったので、そういう意味ではこの2曲は似ていて、ターニング・ポイントになったと思います。

──はい。なるほど。

Anly:あと、「この闇を照らす光のむこうに」のほうは黒で、「カラノココロ」は白というか。「カラノココロ」は助ける側で、「この闇を照らす光のむこうに」は闇の中にいる人みたいなイメージがあるので、対照的だけど、同じ世界にいるような雰囲気があると思います。

──「この闇を照らす光のむこうに」の、スキマスイッチとの出会いは、やはり大きかった?

Anly:すごく大きかったです。その前の「カラノココロ」を作っていた時に、スキマスイッチさんの「ボクノート」ばかり聴いていたんです。歌詞自体が、クリエイティブな作業をする人には刺さる曲だと思います。私が歌詞作業が捗らずすごく落ち込んでいた時に、ちょうど雨が降っていたり、部屋に1週間書き続けた歌詞を書いた紙クズが散らばっていたりしていて、その時に「ボクノート」を聴いたらまったく似たようなシチュエーションで泣けてきちゃいました。

──うーん。そんなことが。

Anly:ある意味私を救ってくれた『ボクノート』を作り、歌っているスキマスイッチさんと一緒に、曲を作れたというのはすごく光栄です。

──デビューから1年半の間にも、いくつかのターニング・ポイントがあった。

Anly:はい。本当に、リリースごとにいろんなことを学ばせていただきました。ひとことひとこと、一音一音に一番こだわって作ったのは「カラノココロ」と「この闇を照らす光のむこうに」で、それ以外の曲は感情に乗せて書いた曲が多く、自然体というか、伊江島で走り回っているような自由さがあるというか、曲ごとに、その時期その時期の成長過程が見えてくるので、自分で聴きながら本当にアルバムだなと思いました。

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