【濃密インタビュー】オカモトコウキ「『サージェント・ペパーズ』は今もなお新しくてエッジー」

ツイート

ザ・ビートルズのディスコグラフィーにおいても重要な一作であると同時に、ポップ・ミュージックの革命性を世界中に高らかに示した稀代のアルバムとしてその名を残す『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』。その50周年記念として作られたデラックス・エディションのリリースに際して、ここではOKAMOTO'Sのギタリストであり、ザ・ビートルズの熱烈なファンであるオカモトコウキに同作の魅力と聴きどころについて語ってもらった。

『サージェント・ペパーズ』のUKオリジナル盤を所有し、この21世紀においてもなおザ・ビートルズの音楽はトガっていると主張する彼のトークはじつに的確であり、また終始、音楽への敬意と愛情を感じさせてくれる、熱を帯びたものだった。

――まず始めに、コウキさんにとっての『サージェント・ペパーズ』観から聞かせてください。


コウキ:はい。僕は、ザ・ビートルズは中学の時から聴きはじめて、音楽活動をする上でも様々な影響を受けてきました。だからずっと好きなんですけど、『サージェント・ペパーズ』に関して言うと、最初に聴いた時は、わかりやすく「いいな」と思うところがなかったというか…「難しいな」という感じがしました。入り組んでいますし、時代性もあってサイケなところや実験的なところも一番出ている作品じゃないですか。だから軽く聴いただけでは足を踏み入れられない不気味な感じがして、少し入りづらかったなという印象です。そこからもっと後になって、何周かしてから「あ、こういう凄さがあるんだ」「こういうふうに先を行ってたんだな」ということにだんだん気付いていった感じです。

――わかります。それまでのザ・ビートルズも徐々に変化してきていたけど、決定的なものがこのアルバムで訪れた感じですもんね。多分当時みんな「これはいったい何なんだ?」と思ったはずですよ。

コウキ:そう、このタイミングで来ましたもんね。だからこそ当時の人たちには「何じゃこれ!?」という衝撃が走ったと思うし。もちろん、ザ・ビートルズの場合は毎回毎回、衝撃はあったと思いますが…たとえば『ラバー・ソウル』(1965年)がリリースされた時は、それまでのラブソングを唄っているアイドルチックなイメージから脱却してアーティスティックな方向に行ったり。ただ、ここまでの1枚1枚の飛躍度で言うと、『リボルバー』(1966年)からここが一番凄かったんじゃないかという感じがします。

――ザ・ビートルズはこれが出る前年の1966年まででライヴ活動をやめてるんですよね。去年(2016年)は来日公演から50周年記念で盛り上がりましたけど、その日本武道館のあとぐらいまででツアー生活には終止符を打っている。つまり生演奏で再現できる音楽に区切りをつけて、スタジオ・ワークに重きを置きはじめたわけです。


コウキ:それをやるようになって最初のアルバムなんですよね。『リボルバー』の時も(ライヴを)止めかけていましたけど、あれを録ったあとにも来日していますし。それが『サージェント・ペパーズ』では完全にそこから離れて、もうスタジオ・レコーディングだけで音を作っていくという意味において、かなり飛躍をしたと思います。楽器の制約もなくなったし、8トラックにあとから色々なものを足していくということでも相当な変化があったんだろうなという印象を受けます。

――コウキさんがこのアルバムを何度か聴いてすごさを実感したのは、どんなポイントからでした?

コウキ:まずは、アルバム全体を最初から最後までひとつのコンセプトで作っていることですね。その、側押しで勝ってるところがすごいなと思って(笑)。ただ…これはザ・ビートルズを好きなみなさんがさんざん話していることだと思いますが、実は曲のクオリティとしてはぶっちぎりで全曲が粒揃いというわけじゃないですよね。ジョン・レノンはスランプだったりして、どちらかというとポール(・マッカートニー)が引っ張っていったアルバムだと思うんです。それをコンセプトだけでうまくまとめ上げたのは、今でこそやっている人がたくさんいますが、当時は相当な衝撃だっただろうなと思います。今聴いても、完成度の高い、元祖コンセプト・アルバムとしてのすごさがあるというか。それで自分も「アルバムごとにコンセプトを立てたら面白いんじゃないか」と思って、僕らの前のアルバム(『OPERA』/2015年)ではアルバム1枚通してロック・オペラに挑戦しました。そこには、このアルバムはもちろん、ザ・フーの『トミー』(1969年)や、プリティ・シングスの『S.F.ソロウ』(1968年)だったり、そういう古い作品の影響がかなりあって。

――そうですね。このアルバム以降、ロック・オペラをはじめ、コンセプトを下敷きにしたアルバム作りが一般化していったんです。その意味でも先駆的な作品なんですよね。

コウキ:そのエッジーなところは今聴いてもすごいなと思います。あとは、この全体的に流れているサイケデリックな世界観。どう考えても「いろいろやってましたね?」という感じを受けてしまいます(笑)、現実的ではないものを音楽で表現することのブッ飛び具合には相当衝撃を受けました。

――はい。そこは先ほどの、ステージで再現するのではない音像を求めるところとつながっていますよね。

コウキ:そうですね。薬物だったり、様々な影響もあったと思いますが、現実離れしたものを音楽で表現することを純粋に突き詰めていった結果だろうなという感じがします。たとえばサーカスの音を作りたくて声にエフェクターをいろいろかけたり(「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」)、見える情景というかビジョンがあって、そこに向かって突き進んでいったんだろうなと思います。

――曲のテーマ性からしても、現実離れした表現が多いですよね。今ではそれぞれの着想の元は明らかになっているんですが…。

コウキ:はい、新聞だったりニュースだったり(「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」)。

――そうそう。サイケ・ソングの名曲である「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にしても、ジュリアン(ジョンの息子)が保育園で描いてきた絵が元だったりね。それまでのザ・ビートルズは、彼女とこんなことがあったというラブソングがたくさんあったり、こんな日々から助けてくれという気持ちだったり(「ヘルプ!」)、税金をいっぱい取られたことだったり(「タックスマン」)、現実をわかりやすく曲に還元してたわけですけど。このアルバムの頃には、そこからひねって、もっとファンタジックな発想が追求されてるんですよね。

コウキ:ここからは、明らかに着想元が変わってしまっていますよね。バンドの中でもいろいろあったんでしょうね。何かビッグバンがあって、それで一気に進んでいったというか。

――メンバーもこの頃からは全員がヒゲを生やすようになりましたしね(笑)。で、ポールが主導してるという事実が表してますけれど、それだけバンドの求心力に翳りが出てきてる時期でもあるんですね。


コウキ:そうですね、だんだんメンバーの調子に差が出てきたり。ジョンはこの頃から若干落ち気味になっていて…それでも「ストロベリー・フィールズ」をはじめとする名曲は引き続きたくさん書いていますし、一概に落ちているとは言えないですが、それでも内面的になっていくというか、自分を少し見つめ直している印象を受けます。アッパーな感じというよりは、もう少しアーティスティックにいろいろと考えているんだろうなと。

――このアルバムの前の「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」「ペニー・レイン」も含め、1967年にリリースされた作品はそれぞれが少年時代を振り返ってる感が強いんです。だからどこか内省的でもあって、「自分ってどんな人間だったっけ?」「どんな人生を生きてきたのかな?」という。そこもツアー生活をやめたことが大きいと思います。

コウキ:そういう時期だったのかもしれないですね。全世界的にワーッと盛り上がって、忙殺されて振り返る時間もなかったところから、そういうことをやめて1回落ち着いて。そこで「自分はどんな人間だったっけ?」という様なところから、昔のリバプールの思い出から、様々なことを思い出して。それと同時に時代もだんだんサイケデリックに入ってきたのと合致したアルバムなのかな。

――あと感じるのは、やはりビーチ・ボーイズの傑作…当時は問題作だったでしょうけど、アルバム『ペット・サウンズ』(1966年)の存在がデカかったということです。ザ・ビートルズの4人が『ペット・サウンズ』を聴いたのは、先ほどの『リボルバー』を作ってる最中らしいんですね。だから大きな影響が現れたのはその次のこの『サージェント・ペパーズ』だったと言われています。

コウキ:確かに。『ペット・サウンズ』も…本当に頭のおかしい人の音楽じゃないですか(笑)。ロックの枠組みから完全に逸脱してるというか、もっと超えてすごいところまで到達している感じがします。あれはブライアン・ウィルソンの内面が出てああいうふうになっているわけで。『ペット・サウンズ』がそうなったのも、実はビーチ・ボーイズが『ラバー・ソウル』のアメリカ盤を聴いたから、という話があるんですよね。『ラバー・ソウル』のUK盤は1曲目が「ドライブ・マイ・カー」ではなくて違う曲(「夢の人」/UKオリジナル盤では「ヘルプ!」に収録)なんです。おかげでブライアン・ウィルソンは全体的にフォーキーなイメージを持ち、「今ザ・ビートルズはこういう内面的な音楽を作るんだ」と感じて、それで『ペット・サウンズ』の方向に行ったという話があります。その当時のリアルな影響の与え合いがすごく面白い。

――それぞれイギリスとアメリカを代表するポップ・アイドル・バンドではあったわけですが、音楽的にもいい影響を与え合っていたということですね。

コウキ:その2組ともがポップという枠からだんだん離れていって、よりアーティスティックなところを表現しにいっている動きが、この1966~1967年で一気に来るので面白い。

――それが音楽界、ひいてはポップ・カルチャー全体に多大な影響を与える音楽をクリエイトしていった。そして『サージェント・ペパーズ』はそのピークのひとつだと思います。

コウキ:若いミュージシャンのひとりとして、僕はザ・ビートルズは今でも音楽をやる上で有効というか、まだ新しいものだと思っています。すごくエッジ立ったところやポップな楽曲の素晴らしさは、いま参照してもまったく古びてない。今のサイケ…たとえばテーム・インパラだったり、UKのテンプルズだったり、そういう新しいサイケ・バンドたちが参照しているのは『サージェント・ペパーズ』だなと思うんです。いわゆるUKインディーズ、USインディーズの新しいトレンドは、ザ・ビートルズで言えば、今は『サージェント・ペパーズ』からアップデートしているものが多い時期じゃないかと。だから若い人でもそういう音楽が好きなら、このアルバムをカッコいいと思うはずです。

――サイケデリック・ロックのひとつの形であり、そして「ザ・ビートルズはこんなにすさまじいことをやってたんだ」という証ですよね。

コウキ:決して、おじさんが聴くロックではなくて、ザ・ビートルズがこんなにトガっていたということを理解するには一番いいアルバムだと思います。僕、テーム・インパラのライヴを観に行ったときに、「『サージェント・ペパーズ』じゃん」と思ったんです(笑)。あとフランク・オーシャンやケンドリック・ラマーだったり、いま盛り上がっている黒人のヒップホップやソウルの人も、唐突にどこかザ・ビートルズを感じるサイケな音像が来たりする。

――そう考えると、ディアンジェロやミゲルなんかもその流れの一端にあって、そこからさらにプリンスやスライ&ザ・ファミリー・ストーン、Pファンクといったファンクやソウルにもひるがえれそうです。で、もちろんロックも含め、『サージェント・ペパーズ』は常に振り返られるアルバムなんですよね。プログレッシヴ・ロックもそうだろうし、トッド・ラングレン、XTC、ジェリーフィッシュ…今だとまさにテンプルズとか、時代ごとに「ああ、このアーティストは『サージェント・ペパーズ』を通ってるな」という人がいますから。

コウキ:それこそオアシスもずっとこういうものをやりたいと言っていて、最後のアルバムになった『ディグ・アウト・ユア・ソウル』なんかは「もろにザ・ビートルズじゃないか」と思いました。つねに時代時代で見直されて、でもこの元祖は超えられてない。だからこそ、今も聴くべきアルバムだと思います。

――今回の50周年記念エディションの『2017ステレオ・リミックス』と『セッション・トラックス』を聴いて、いかがでした?


コウキ:まだきちんと聴きこめていないのですが、オリジナルのリミックスについては、ものすごく音がクリアになって、とくにドラムがパワフルになりましたね。アナログ特有のコンプ感というよりも、少しデジタルっぽいのですが、叩いている感じがクリアに伝わってくる音像になったなという印象です。細かい話になりますが(笑)、リンゴ(・スター)が叩いているラディックのセットって、すごくチープな昔のやつなんです。スタンドが細くてタムがあまり固定されてなくて、ドンって叩くと揺れてしまう、という感じがあって。そのライヴ感が伝わってくるぐらいドラムのサウンドがクリアになっています。まるですぐそこで叩いているようで、だからロック・ドラマーとしてのすごさが伝わってきますし、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のドラムをはじめ「うわっ、こんなすごいプレイをしてたのか!」ということが改めてわかるんじゃないかと思います。

――ザ・ビートルズは2009年にモノラル録音の作品をはじめ新たにリマスタリングされてきてるんですが、あのあたりから全体に低音をタイトに、ソリッドにして強調してる感じがありますよね。それはこのリミックスにも感じました。

コウキ:そうですね。あの2009年の時は中低音を暴れすぎずに、昔のモノのアナログ感にある、全体がバッと来る感じを再現しようとしていたと思います。この最新ステレオ・リミックスはそこをもっとブラッシュアップしてパワフルにした感じを受けますね。

――「ルーシー~」なんて、こんなにリズムを強調したミキシングにしてるんだな、と思いました。

コウキ:ドラムが立ってますよね。初期の音源はトラック数が少なかったこともあると思いますが、この時期は楽器的にも色々な編成でやってるじゃないですか。なので、年代的にドラムが一番引っ込んでいると思いますが、そこらへんをうまいこと改善しているというか。全部の楽器が聴こえるけど、ロック・バンドとしてのパワフルさもうまく表現しているリミックスだと思います。

――そして18テイクあるセッション集はいかがでした?

コウキ:やっぱり原型ですよね。ここからレコーディングで長い時間かけて、曲をだんだん詰めていったり、曲のアレンジメントを何パターンか試していった時期だったので…『アンソロジー』シリーズ(1995年~)もそうでしたけど、「元はこうだったのに、こんなに変わるんだ?」「こういうふうに仕上がっていくんだな」という驚きがあります。あとはそういうシンプルな骨組みのものを聴いても、「やっぱり曲がいいな」という感じもして(笑)。本当にスタジオにいる様な、そこでセッションをしていて曲が煮詰められていく様子を垣間見れるという意味では、すごく貴重だし面白いと思います。


――これ以前では、その原型からバンドのアレンジを練っていく作り方だったのが、『サージェント・ペパーズ』の制作時…1966年の後半からは、オーバーダブで何をどう重ねていくか、どんなふうにエディットするかが焦点になっていったんでしょうね。

コウキ:確かに!そこも手探り感があっていいですよね。楽器の編成も決まっていなくて、(完成形とは)まったく別の楽器を試してるものもありますし、プレイもまだ定まってなくて、でも主要なところで入っているフックは既にあったりして、「ここはやっぱり大事だったんだな」と思ったり。それはすごく刺激的な体験だと思います。あとは「ストロベリー・フィールズ~」の前半部分と後半部分であるテイク7と26を聴けるのはすごく面白いと思う。どちらもすごくいいけど、やっぱり両方組み合わせたほうがいいよな、という感じがします(笑)。それはもう突飛なアイディアだったと思いますが、ある意味、必然的だったというか。いくつもの偶然が組み合わさって最終的にあの形になったんだなというのが手に取るようにわかります。これを作っている時の彼らって、僕の年下か同い年ぐらいですよね? ジョージ(・ハリスン)はさらに年下で…やっぱり良い意味で本当にイカれてるという感じです。

――制作当時はジョンが26歳、ポールは24歳ぐらいか…恐ろしいですね。で、このセッションを聴くと、先ほどの『ペット・サウンズ』への意識がもっとはっきりわかります。何しろアレンジ的に鍵盤の比重が高い曲が多いんです。

コウキ:そうですね、まず鍵盤から始めてますよね。最初に鍵盤とドラムとベースがあって。そこは大きいですね。

――それだけアルバムにおけるギターの役割は、これ以前からすると低くなっているわけですね。

コウキ:まずトータル・アレンジメントを考えて「最終的にこうしよう」ということが先行しているので、「ライヴでどうやるか」と考えていた頃からすると、根本の発想が一気に転換したんでしょうね。だから曲作りの仕方も、最初のセッションの始め方からして違う。あと、全員が違う楽器ができるのがすごいと改めて思いました。その強みもかなりあるというか…本当のマルチ・プレイヤー集団だな、という。それから、やっぱりポールの色が強いなと思います。最初にやったトラックだけ聴くと♪チャッ、チャッ、チャッ、チャッと4つで打っていくピアノの、ザ・ビートルズでイメージするサウンドから作り始めているんです。つまりサイケな感じは後から足されたんだなと思いますし、サウンド・エフェクト的なものもそうですね。曲の構造で言うと、典型的なポールのザ・ビートルズ曲という感じがします。

――だからこの翌年に出る『ホワイト・アルバム』(=『ザ・ビートルズ』/1968年)だったり、さらにその後のソロにつながっていく道筋がはっきり出はじめている気がします。

コウキ:そうですね。だから面白い。ベーシック・トラックから最終的な完成図までに一番差があるアルバムじゃないかと思います。

――ほかに、セッションによって骨組みが明らかになって感じたのは…例えば「ラヴリー・リタ」のメロディの感覚にはホワイト・ストライプスというかジャック・ホワイトをイメージするところがあったり、デヴィッド・ボウイは「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のような浮遊感を発展させて「スペース・オディティ」を書いたのかな、と思ったりしました。

コウキ:やっぱり、いろいろ影響を与えてますよね。当時のミュージシャンもこれを聴いてブッ飛んだろうなという気がします。

――ポールは今でもこのアルバムの曲をライヴでよくやってますよね。この4月の東京公演でも。

コウキ:やってますよね、「ミスター・カイト」だったり。これはジョンの曲ですけど。

――あとはアルバム・タイトル曲の「リプライズ」版も。

コウキ:やってました!やっぱりこのアルバムに相当思い入れがあるんでしょうね。50周年記念盤もここから出すということも、それだからな気がします。同時にほかのアルバムはどうするんだ?と思いますが(笑)。

――ですよね、キャリアの後期になりつつある『サージェント・ペパーズ』からデラックス版が出るわけですから。今後どうしていくんでしょうね?(編集部註:この取材後、リミックスに携わったジャイルズ・マーティンが『ホワイト・アルバム』のリミックスも行うと語ったという報道あり)

コウキ:それだけポールがこのアルバムを重要視してるということでしょうね。これまでに『アンソロジー』もありましたが、そのアルバムの時期の未発表テイクをまとめて聴けるのは今回が初めてですし。アルバム単位の50周年エディションを出すのにこの『サージェント・ペパーズ』を選んだのは、やっぱりいまだに古びてないですし、ザ・ビートルズにとっても、何かの到達点であることは間違いないと思います。やっぱり今聴くべきです。

――若い音楽ファンにもこのアルバムを聴いてほしいです。もちろん、まずはオリジナルの1枚ものからね。

コウキ:そうですね。ザ・ビートルズをアルバム単位で聴いている若い人って意外といないのかな?と思ったりして。僕は好きすぎて、同世代の人とザ・ビートルズの話で盛り上がれることはほとんどないのですが(笑)、ザ・ビートルズはあまりに存在が大きすぎて「アーティストとしてこんなにトガっていることをやっていた人たち」ということを知らない人も多い気がします。僕が一番聴いて欲しいリスナーは、新しい洋楽が好きな人たちなんです。それこそフジロックやサマーソニックに行くような人たちが聴いたら、すごくいいんじゃないかと思います。古臭いものというイメージがある人には、「いやいや、ブッ飛んでるよ!マジで聴いたほうがいい!」って言いたいです。

――まったくです。邦楽が好きな子たちにも聴いてほしいですね。ザ・ビートルズっていろいろなものを含んでるじゃないですか。学生時代の友人たちで結成して、それがライヴ生活の末にデビューして人気が出て、ロックンロールのカバーからどんどん革新的なオリジナル曲を作るようになっていって。その間にメンバーの関係が微妙になっていったり、間に女性が絡んできたり、お互いが家族を持ったり、会社を作ったり、そしてやがて解散することになる。バンドの成り立ちから終わり、さらにその後まで、すごくいいお手本なんですよ。

コウキ:本当にそう思います。そういう流れもすごく面白いし、色々なことが起きるし、ドラマチックだし。掘っていけばいくほど面白いバンド。

――このアルバムを聴いたら、このバンドのイメージとちょっと違うと思うんです。だってこれは「イエスタデイ」「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」ではないザ・ビートルズなわけで。

コウキ:そう!そこがやっぱり一番面白いところです。少しやりすぎじゃないかと思うくらいエクスペリメンタルな要素が一番含まれているアルバムだと思いますし。いきなりジョージしか参加してない、訳のわからないインドっぽい曲(「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」)もある(笑)。

――音楽の可能性…極端なこと言うと、芸術の可能性がここにあるという作品ですから、こういうアルバムが50年前に世界的に支持されたということを知ると、音楽への視野や捉え方が広がると思うんです。「じゃあ、こんなバンドがいてもいいよな」「そういう音楽もあっていいんじゃないか」みたいな。OKAMOTO'Sがあのアルバムを作った気持ちもわかってもらえるはずです(笑)。

コウキ:(笑)そうですね。こんなふうに過去には一筋縄では理解できないことしてきた人たちがいるということです。わかりやすくブッ飛んでいると思うので…ぜひ、たくさんの人に聴いてほしい作品です。

――そしてこのスーパー・デラックス・ボックス・セットには、CDに加えて豪華な本や貴重な映像集も付属します。早く手にしてみたいですね。

コウキ:ドキュメンタリー映像も早く観たいです。デラックス・エディションには様々なものがありますが、今回の『サージェント・ペパーズ』は作り手の愛が感じられるので、そういう作品はどんどん(再発を)やってほしい。本当にこれは、しばらく楽しめそうです(笑)。

取材・文:青木 優

オカモトコウキ(OKAMOTO'S)
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO'Sのギタリスト。2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを廻ったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。これまでシングル8作品、アルバム6作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。また、同年11月からは自身初となる東阪ZEPPワンマン公演を含む、全国22箇所を回るツアー「OKAMOTO'S TOUR 2015-2016 “LIVE WITH YOU”」を年またぎで敢行し、大盛況のうちに終了した。2016年6月3日からは「OKAMOTO'S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。また、同ツアーからの厳選音源と、ツアー中に書き下ろした新曲「ROCKY」を収録し、ツアーファイナルの映像を全曲収録したBlu-ray付きライヴアルバム「LIVE」を2017年5月31日にリリース予定。

■リリース情報

ザ・ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』─50周年記念エディション─
2017年5月26日(金)発売
(1) 1CD(SHM-CD): UICY-15602 ¥2,600+税
(2) 2CD(SHM-CD): UICY-15600/1 ¥3,600+税
(3) 2LP: UIJY-75068/9 ¥7,800+税
※直輸入盤仕様
(4) 6枚組スーパー・デラックス: UICY-78342 ¥18,000+税
※完全生産限定盤
※日本盤のみスーパー・デラックス特典:『サージェント・ペパーズ』立版古:50周年記念エディション封入(一般販売されているものとはデザインが異なります)

※(1)(2)(4) 日本盤のみSHM-CD仕様
※全タイトル日本盤のみ英文解説の翻訳、歌詞対訳付

【収録内容】
■1CD
『サージェント・ペパーズ』2017 ステレオ・リミックス

■2CD &Digital
[ディスク1]
1CDと同内容:『サージェント・ペパーズ』2017 ステレオ・リミックス

[ディスク2]
オリジナル・アルバムと同じ曲順の、セッションからのコンプリート・アーリー・テイク及び「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と「ペニー・レイン」の様々なヴァージョン

■2LP
[LP1]
1CDと同内容:『サージェント・ペパーズ』2017 ステレオ・リミックス

[LP2]
2CDのディスク2の1曲目から13曲目と同内容

■スーパー・デラックス [4CD/DVD/ブルーレイ] ボックスセット
[ディスク1]
1CDと同内容:『サージェント・ペパーズ』2017 ステレオ・リミックス

[ディスク2]
セッションからのコンプリート・アーリー・テイクをレコーディングの年代順に収録

[ディスク3]
セッションからのコンプリート・アーリー・テイクをレコーディングの年代順に収録

[ディスク4]
『サージェント・ペパーズ』モノ・アルバム&ボーナス・トラック
Tracks 1-13:『サージェント・ペパーズ』オリジナル・モノ・ミックスからの2017ダイレクト・トランスファー

[ディスク5 & 6]ブルーレイ&DVD
・オーディオ:
『サージェント・ペパーズ』アルバム&「ペニー・レイン」最新5.1サラウンド・オーディオ・ミックス
プラス「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」2015年5.1サラウンド・オーディオ・ミックス
【ブルーレイ:DTS HDマスター・オーディオ5.1、ドルビー・トゥルーHD 5.1/DVD:DTS、ドルビー・デジタル5.1】

・ハイレゾ・オーディオ:『サージェント・ペパーズ』アルバム&「ペニー・レイン」2017年ステレオ・ミックス、プラス「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」2015年ステレオ・ミックス
【ブルーレイ:LPCMステレオ 96KHz/24bit/DVD:LPCMステレオ】

・映像:
ザ・メイキング・オブ・サージェント・ペパーズ(リストアされた1992年ドキュメンタリー・フィルム)
~ポール、ジョージ、リング・アンド・ジョージ・マーティンが明かすアルバム制作秘話

プロモーショナル・フィルムズ:4Kリストア
ア・デイ・イン・ザ・ライフ(1967)
ストロベリー・フィールズ・フォーエバー(1967)
ペニー・レイン(1967)

この記事をツイート

この記事の関連情報