祝<サマソニ>ヘッドライナー、カルヴィン・ハリスとは何者なのか?

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今年の<サマーソニック>のヘッドライナーに、単独DJとして初めて抜擢されたカルヴィン・ハリス。<サマソニ>らしいブッキングながらも、ロック信仰の根強いここ日本では反発の声が聞かれているのも事実だ。

◆カルヴィン・ハリス 画像&映像

だが、そんな頭ごなしの否定はもったいない。「テイラー・スウィフトの元カレでしょ?」「ものすごく儲かってるセレブDJでしょ? 」「パリピが聴くEDMでしょ?」たしかにそれは正解だけど、それだけじゃない。「2017年のポップミュージックの中心」に最も近い最重要アーティストこそがカルヴィン・ハリスなのだ。

まずは2017年にリリースされたばかりの新曲を聴いてみてほしい。この1曲でカルヴィン・ハリスを取り巻く風向きが大きく変わったという、正真正銘の重要曲だ。


「ぜんぜんEDMじゃないじゃん!」とビックリするかもしれないけれど、まず注目したいのはフィーチャリングされているアーティスト。そう、2016年最大級の賛辞を持って迎えられた歴史的名作『ブロンド』の作者であるフランク・オーシャンを起用しているのだ。そして今最も旬な客演請負人とも言えるミーゴスをプラス。「まさかEDMのDJがフランク・オーシャンを動かし、新しい要素を加えてくるとは」と多くの音楽ファンが驚いた楽曲となったのだ。

その楽曲自体もEDMブームの本格的終焉に向け先手を打ったとも言える、リラクシンかつアーバン、メロウでファンキーなポップミュージック。しかし慌ててハンドルを切ったわけではない。実はカルヴィン・ハリスはもともとEDMのアーティストではない。むしろそのキャリア的にはブラックミュージック寄りのアーティストだったのだ。

■今はセレブDJ。
■でも昔は宅録オタク青年?


これがMySpace経由でレーベルとサインし、2006年にリリースされたメジャー・デビューシングル「アクセプタブル・イン・ザ・エイティーズ」 だ。

80年代に人気を博したコンピュータ「Amiga」で楽曲制作していた時期のトラックということもあり、プロダクションは荒削りでチープだが、腰に来るファンキーなベースサウンドが響くディスコミュージックであることがよく分かるだろう。そしてこのシングルが収録された1stアルバムのタイトルは『アイ・クリエイテッド・ディスコ』。クラクソンズやジャスティスが一世を風靡した“ニューレイヴ”や“ニュー・エレクトロ”と同時代にデビューしたこともあり、当時を知るロックファンにはその文脈のイメージを持っている人も少なくないだろうが、カルヴィン・ハリスはそもそものところ頑固に80年台の機材を使ってファンキーなディスコミュージックを作るオタク気質のアーティストだったのだ。


そしてイギリスでのブレイク作となったのが、2ndアルバム『レディー・フォー・ザ・ウィークエンド』。このアルバムでカルヴィン・ハリスは外部ソングライターやゲストアーティストを起用し、プロダクション面のみならずソングライティングにおいてもさらなる洗練を見せた。


ディジー・ラスカルなどのアーティストとのコラボを行ったそんな2ndアルバムにおいても、自身でボーカルを務めたのがこの「アイム・ノット・アローン」だ。時代は2009年。その後のEDM路線へと繋がる萌芽がここに見て取れることだろう。

■リアーナとの出会いが
■カルヴィン・ハリスを、そしてシーンを変えた。


カルヴィン・ハリスのキャリアにおいて最大の重要作は、間違いなくこのリアーナとの「ウィー・ファウンド・ラヴ」だ。デヴィッド・ゲッタが手がけたブラック・アイド・ピーズ「アイ・ガッタ・フィーリング」と並び、R&Bアーティストとダンスミュージックのクロスオーバーを加速させた大ヒット曲であり、カルヴィン・ハリスを世界的トッププロデューサーに押し上げた名曲である。

この楽曲は3rdアルバム『エイティーン・マンス』にも収録。18ヶ月を意味するアルバムタイトルは、カルヴィン・ハリスが望んだ通りのコラボレーションを実現するためにかかった時間だという。それほどまでに多岐にわたるコラボレーションが行われたアルバムとなった同作だが、イギリス勢の参加が目立つところも特徴で、どこかしら「レペゼン地元」な気持ちがあったのかもしれない。

「ウィー・ファウンド・ラヴ」はまだバキバキのEDMではないが、そうしたトラックが聴かれるようになってきたのもこの頃から。アルバム全体としてもディスコやファンク、ソウルといった要素は薄れ、現在のカルヴィン・ハリスのEDMというイメージが始まったのはここからである。


そんな「ウィー・ファウンド・ラヴ」をひとつのきっかけとした「EDM化」。それを極めたのが4th『モーション』だ。「EDM化」とは言ったものの、カルヴィン・ハリスこそが歌モノEDMの中心的人物のため「ブームに乗った」という印象は間違いかもしれないが、ともかく世間がイメージする「カルヴィン・ハリス=パリピ/セレブDJ」という図式を象徴するのはこのアルバムだろう。

カルヴィン・ハリス本人が歌う「サマー」はそのタイトルが象徴するようにザ・EDMな人気曲。しかし享楽的ながらどこか切なさや奥底に諦観を感じさせるような、儚いフィーリングも。このどこかパリピになりきれない元オタク青年の眼差しもカルヴィン・ハリスの特徴であり、多くの音楽ファンやアーティストを惹き付ける理由のひとつだろう。

◆テキスト(2)
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