【インタビュー】Yogee New Waves「一本の木があって、そこにいろんな枝葉がついているような印象のアルバムになったと思っています」

ツイート

“シティ・ポップ・サウンドの再来”と評されるスタイリッシュ&ウォームな音楽性を携えて、2014年のデビュー以降、着実なスケールアップを果たして来ているYogee New Waves。今年1月のメンバー・チェンジを経て、新たなスタートを切った彼らの最新アルバム『WAVES』が届けられた。より幅を広げ、より深度や輝きを増した同作は非常に密度の濃い一作で、このアルバムを期に、彼らがさらに多くのリスナーからの支持を得ることを予感させる。幾多の危機を乗り越えてバンドの屋台骨を支えている角舘健吾(vo&g)と粕谷哲司(dr)に、現在のYogee New Wavesについて語ってもらった。

◆Yogee New Waves~画像~

■どの曲にも自分達のルーツ音楽のエッセンスが入っていて
■それを形にしてくれたメンバーにすごく感謝しています


――Yogee New Wavesは、今年1月にメンバー・チェンジがありました。新しいメンバーの上野恒星(b)さん、武村郁也(g)さんとは、どんな風に知り合ったのでしょう?

粕谷哲司(以下、粕谷):一人ずつ勧誘しました(笑)。元々二人とも面識はなくて、まず上野君を誘うところから始まったんですけど、誰か良いベーシストいないかなという話を周りの友達にしたところ、二~三人から彼の名前があがったんです。上野君はジョッパーズというバンドをやっていて、そのバンドが群馬のフェスに出るという話を聞いて。それが、自分達の主催ライブの翌日だったんですよ。なので、ライブが終わって、朝まで飲んで、そのまま昼過ぎにレンタカーを借りて、群馬までライブを観に行きました(笑)。

角舘健吾(以下、角舘):でも、その時は、声は掛けなかったんだよね?

粕谷:そう。後日SNSで連絡して、「一回お茶でもしましょう」ということになって。会ってみたら、彼はマジメな話をずっとするんです。どういう音楽が好きなのかとか、どういうスタンスで音楽をやっているのか…みたいな感じで。それで、すごく気が合ったので機材とかは一切持っていなかったけど、そのままスタジオに行って、音を合わせて、良いなと思ったんです。

角舘:ジョッパーズのライブを観て、すごく良いベーシストだなと思ったし、一緒にスタジオに入って彼が一発“ボンッ!”と音を鳴らした瞬間に“おおっ!”と思いました。顔つきとかもすごく良くて、もうこの人しかないだろうという感じでしたね。ギターの武村君は、昔うちのバンドが下北沢GARAGEでライブをした時に、それを観てくれたらしくて。Twitterに、フィッシュマンズに大瀧詠一が入って歌ってるみたいなバンドが出てきたとツィートしていたんですよ。それで、Twiiter上で友達になったけど、ずっと会ったことはなくて。今回ギターを探し始めたら、Yogee New Wavesの初代ギタリストに、武村君が良いんじゃないかと言われたんです。やめたヤツが薦める…みたいな(笑)。それで、俺らの常套手段……じゃないけど(笑)、武村君をコーヒーショップに誘って、いろいろ話し合って、スタジオ入って…ということを経て、正式に加入してもらうことにしました。

粕谷:僕らみたいなバンドはギターが難しいというか、なかなか合う人がいないんですよね。そういう中で、武村君は最高です。

角舘:最高だね。すごくカラフルなプレイをするし、喜怒哀楽をギターで表現できるし。彼みたいなギタリストと出会えて、本当に良かったです。

粕谷:僕らより2つ年上ですけど、子供というよりは、もう赤ちゃんみたいな人なんですよ(笑)。

角舘:いや、幼稚園児じゃない?(笑) 怒られると、しっかりヘコむし。自我はあるんだよ(笑)。

粕谷:そう言われるとそうだね(笑)。小学生までは行ってないくらいかな(笑)。会った時からそういう印象で、それが今でも変わらない。楽しいことが好きだし、バンドを盛り上げようとしているのか、楽しもうとしているのか分からないけど、いつも明るい雰囲気にしてくれるんですよ。そういうところも、すごく良いなと思っています。


▲2nd album『WAVES』

――人柄的にも、プレイヤーとしても理想的なメンバーと出会えたのは、お二人がYogee New Wavesに深い情熱を注いでいるからこそだと思います。新体制の第一弾音源となるアルバム『WAVES』が5月17日にリリースされましたが、本作を作るにあたってテーマなどはありましたか?

角舘:こういう作品にしよう…みたいなことは、考えていなかったです。曲は俺が作っているんですけど、Yogee New Wavesの楽曲は言葉だったり、その言葉に合うメロディーというものがあって、それを押し上げるバック・サウンドという成り立ちになっていて。ベースになっているのは、俺が普段から思っていることとかなんです。だから、新しいアルバムも今の自分だったり、今のYogee New Wavesがそのままパッケージされたものになれば良いなと思っていました。人間というのは移り気だから、それぞれの季節によって感情も変わるし、好きなものも変わったりしますよね。俺は、それは人間らしいことだと思っていて。コンセプトを決めて、たとえば“怒り”を表現したアルバムを作ろうみたいなことになると、その時に自分が幸せだったら嘘をつくことになりますよね。そういうことはしたくなくて、常に自分に正直でありたいと思っているんです。

――テーマなどは決めなかったようですが、一本筋が通ったうえで様々なYogee New Wavesを味わえるという、理想的なアルバムに仕上げっています。

角舘:俺ら自身も一本の木があって、そこにいろんな枝葉がついているような印象のアルバムになったなと思っています。いろんな曲があるけど、どの曲にも自分達のルーツになっている大好きな音楽のエッセンスが入っていて、嫌いな曲とかは1曲もない。それに、ここまでの幅広さを出せたことに関しては、それを形にしてくれたメンバーにすごく感謝しています。

粕谷:うちはメンバーみんなそうですけど、それは分からないとか、それは出来ないみたいなことは言わないんですよ。僕も絶対に言わないようにしています。


▲角舘健吾

――ということは、“ムムッ?”と思う時もあるのでしょうか?

粕谷:“いやぁ、すごいところに来たなぁ…”と思うことはあります(笑)。全く自分の中にはないものが出てきたりするから。そういう時は、これはどこから来たものなのかを汲み取るところから入っていきます。音楽的なルーツもそうだし、(角舘)健吾の心情的な部分も歌詞から読み取って。それで、たとえばサンバ調の曲だったら、こういう想いのもとにサンバなんだな、ということはこれくらいのサンバ感だな…というようなことを考えて、落としどころを探っていく。それは、上野君も武村君も同じようにしていると思います。それはある意味大変な作業でもあるけど、それが楽しいんですよ。だから、“振り回されてナンボ”だと思っています(笑)。

――ただ単に、“サンバか。じゃあ、こういう感じでしょう”ではないというのは良いですね。それに、最初から歌詞があることは強みといえます。

角舘:そうですね。ただ、俺が作る曲は、いろんなものを汲み取ってもらいやすいと思う。俺は、たまに言葉もメロもない演奏だけのデモとかも作るんですけど、そのデモは俺の中にある言葉だったり、季節だったり、温度だったりを孕んでいて。だけど、言葉が出て来ないことがあって、そういう時はそのデモを繰り返し聴くんです。そうすると、歌詞が勝手にやって来てくれるんですよ。「これを歌って」と言われて、導かれるように歌詞が書ける。楽曲と歌詞が分離していないから、見えやすいと思うんですよね。実際、「この曲はこういう想いで書いて、ここに行きたいんだよ」みたいな説明はしたことがないよね?

粕谷:ない。

角舘:それでも、ちゃんと僕がイメージしたところに着地するんです。


▲粕谷哲司

――たしかに、アルバムを聴いて楽曲と歌詞が混然一体になっていることは感じましたし、歌詞を見なくても言葉が入ってきました。では、『WAVES』に収録されている中で特に印象の強い曲などを、それぞれあげていただけますか。

粕谷:僕は、10曲目に入っている「SAYONARAMATA」です。今回のアルバムが出来て改めて聴いた時に、楽曲的にも、歌詞的にも、これが一番良い曲かもしれないなと思ったんです。というのも、僕らは今まで何度かメンバーとの出会いと別れを経験してきていて、この曲の歌詞は、その“別れ”の部分が全面に出ているんです。「SAYONARAMATA」は前のベースが抜けた時に出来た曲で。この曲が健吾の中から出てきて形になっていく過程を全部見ているし、もちろん自分も一緒に作ったから、楽曲としてパッケージングされた時に、すごく感慨深いものがあった。そういうところで、「SAYONARAMATA」は思い入れが強いです。あとは、「HOW DO YOU FEEL?」かな。この曲もすごく思い入れがありますね。

――「HOW DO YOU FEEL?」は、ちょっと'70年代の洋楽の歌物っぽいテイストを感じました。

粕谷:'70年代ですか?

角舘:それは、意識しなかったな。でも、そういう風に感じてもらえたなら嬉しいです。この曲も前のメンバーがいる頃から原形みたいなものはあったんですけど、なかなか納得のいくものにならなかったというか。言いたいこと、やりたいことを音にしていて、そこに後ろめたさがない状態まで持っていかないと、曲が出来たという気持ちになれないんです。新メンバーじゃないと、この曲は仕上げられなかったと思う。れが、今の四人で形に出来た。この曲を完成させて、四人で泣いたんだよなぁ……。

粕谷:そう。ラフミックスをして、それぞれヘッドフォンをして聴いたんですよ。この曲は7分くらいあるんですけど、曲が終わっても、みんな動けなくて。10秒くらい経ってからヘッドフォンを取って、メンバー同士で抱き合う…みたいな。言葉は出なかったけど、みんなが良い曲が出来たと感じていることが分かりました。

角舘:あの瞬間は、ずっと忘れないと思う。俺は「Like Sixteen Candles」と「Understand」が特に気に入っています。「Like Sixteen Candles」は自分の子供的な部分と、自分の未来に対して歌っているような気がしていて。言葉とかがすごく赤裸々で、いわばオープンマインドしているというか。オープンマインドしている時というのは、敵が来たら傷だらけになりますよね。それが分かっている状態で、オープンマインドしてみせた曲なんですよね。で、オープンマインドしたまま書いた曲が「Understand」です。きっと俺はずっとクローズしているからこそ、いつかオープンマインドしたいという気持ちがあって、「Understand」で描いたのは、なりたい自分なのかなと思います。

――2曲ともにエモーショナル&ウォームな仕上がりが心地好いです。それに、「Like Sixteen Candles」のAメロは、少しレゲェっぽくないですか?

角舘:俺ら的には、ダブだよね?

粕谷:うん。ギターの裏打ちがそういう要素になっていて、ドラムも16分で裏を感じながら叩いていて。でも、もろにレゲェかというと、そうでもないという。

角舘:俺らはレゲェも大好きで、前の作品とかはレゲェ色が強かったりするんです。ただ、“超ハッピー!”みたいなレゲェは、あまり好きじゃないんですよ。この曲はレゲェが持っている陰の部分を、上手く活かせたんじゃないかなと思います。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報