【インタビュー】フルカワユタカ、3rdアルバム完成「“わかられてたまるか”と思ってましたから、その真逆です」

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フルカワユタカが2018年1月10日、3rdフルアルバム『Yesterday Today Tomorrow』をリリースした。先ごろ公開したフルカワ×TGMX対談でも語られたとおり、同アルバムはプロデューサーにTGMX(FRONTIER BACKYARD)を迎えて制作が行われたもの。卓越した旋律とボイシングセンスはそのままに、よりポップで彩り鮮やかなアレンジは、TGMXプロデュースによるDOPING PANDA初期の作品を彷彿とさせる部分も少なくない。

◆「僕はこう語った」ミュージックビデオ

また、収録全10曲のうち4曲に豪華ゲストボーカルがコーラス参加。荒井岳史(the band apart)、米田貴紀(夜の本気ダンス)、LOW IQ 01、UCARY & THE VALENTINEといった面々が楽曲に深みをもたらし、「DAMN DAMN」では髭の須藤寿が作詞を担当して、これまでにない一面をのぞかせるなどコラボも充実。シングル「days goes by」インタビューで「誰かとものを作るっていう、でっかいテーマがあります」と自身が明かしたとおりの、新たな可能性や音楽的成長が詰まりまくったアルバムの完成だ。『Yesterday Today Tomorrow』についてじっくり語ってもらった1万字越えのロングインタビューをお届けしたい。

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■自分が作りたいものと
■世の中に一番近いもの

──TGMXさんがプロデュースという形で関わるのはDOPING PANDAのインディーズ作品以来ですが、ソロ3作目のプロデュースをお願いしたのは何が大きかったんですか。

フルカワ:BARKSさんにはこれまでも経緯を話しているので、今回はさらに深く話しますね(笑)。まずプロデュースをお願いして、一緒に曲を作ることになったのは13年ぶりです。遡ると、ドーパン初期の『PINK PaNK』(2002年発表)、『WE IN MUSIC』(2004年発表)、あとは『DIVE INTO DISNEY』(2002年発表)というディスニーのコンピレーション。このコンピには人気アーティストに混ざって、無名の僕らとthe band apartが入ったんですけど、「俺たちのためだったね、あのコンピ企画は」っていうくらい、一番得した感があったんですよ(笑)。実際、認知度がぐんと上がりましたから。というのがTGMXさんとやっていた流れです。

──当時のTGMXさんとはどのような関係性が?

フルカワ:そもそもは遊び仲間だったSCAFULL KINGのTGMXさんと飲みながら音楽の話をしている延長で。「パンクじゃないことやりたいよね」「人がやっていないことをやりたいね」っていうなかで、TGMXさんもスキャフルではできないことを、僕らを使って試したかった時期だったと思うんです。だから、「DOPING PANDAのプロデュースをやってみたいんだよね」っていう話に、「ぜひ僕らもやってほしいです」みたいな始まり。そういうなかでインディーズなりに、順風満帆に集客を増やして、ドーパンの3人とTGMXさんを含めてメンバー4人みたいな感じでやっていたんですね。ところが、クアトロが即完したり大型フェスにも呼ばれたりするなかで、自我が芽生えてくるというか……プレッシャーというか軽い恐怖心というか。そういう最後でしたね。

──恐怖心?

フルカワ:TGMXさんは「もっと一緒にやりたい」と言ってくれていたし、僕らとTGMXさんならもっと違うものも作れたと思うんです。でも、4人の関係性で音楽をずっとやっていくのかな?っていう。作るもの以上に自分の人生のなかで、妙な行き詰まり感があったんですね。そういうモチベーションになっていたとき、ドーパンにSONYのディレクターから声がかかるんです。そこに運命的なものを感じたというか。実は『PINK PaNK』を聴いて声をかけてくれていたので、『WE IN MUSIC』リリース前に一度話があったんですよ。でも、その誘いは一度断っているんです。

──ところが、ですよね。

フルカワ:その後のクアトロワンマンくらいには、完全に“ここを出よう”っていう気持ちになって。そこでまた同じSONYの人に誘われるんです。その際、当然TGMXさんに「メジャーでチャレンジしたい」「TGMXさんも一緒に行きましょう」っていう話もしたんですね。でも「行くのは今じゃない」「俺は一緒にはいけない」という話になって。振り返って、今、自分がいけなかったなと思うのは、「何かわからないけど、ここは自分には窮屈なんです」っていうことを逃げずにちゃんと伝えて話し合うべきだったなと。そこを隠してしまったので、TGMXさんに大きな誤解と混乱を与えたし、そこを解決しないままインディーズを飛び出したので、やっぱりそれは不義理でした。でもそれでも飛び出さなきゃいけなかったんです、きっと。そういう、一言二言では表せないようなことがあって、飛び出した後は結局、TGMXさんと疎遠になったんですよね。

──そしてDOPING PANDAがメジャーへと進出していくわけですね。

フルカワ:そのときに僕のなかで決めていたのは、“プロデューサーは立てない”ということで。TGMXさんに対する恩もあったし、プロデューサー抜きで売れたいというのもあったんですよ、当時の風潮に反して。本当に戦いでしたね、『PINK PaNK』『WE IN MUSIC』に負けたくないという情念みたいなものがありましたから。結果、メジャー1stミニアルバム『High Fidelity』がインディーズ時代の何倍も売れたり、SHIBUYA AXとか大バコを埋めたりして、成功したんです。でも僕は、『PINK PaNK』に勝ったと思ってはいなかったんです、その後の作品もずっとそう。初期衝動的なものは、どうしても薄れていくので平等なジャッジは絶対に無理なんですけど。やっぱり『PINK PaNK』が完成したときはTGMXさんも俺たちも、「すげえのできた」「何かが変わる」って、本当に楽しみながらぶち破った気がしたので。だから、メジャー後はたしかにステージが大きくなって、認知度も上がったんですけど、勝ててないなっていうのはあったんですよ。後ろめたさではなくてね。

──それくらい大きな作品だったんですね。

フルカワ:以降、『Yesterday Today Tomorrow』まで、とにかく戦っていた12年間でしたね。メジャーに行ってもどん詰まったというか、自分たちだけになっていったというか。最後はエンジニアも外しましたからね。“人とやらない”ということを極めていくというのが、DOPING PANDAというか僕のすべてだったので。とにかくどんどん暗くなっていくんです(笑)。

──最も尖っていた時代ですね。

フルカワ:今振り返ると、人に頼らずやらなきゃっていう気持ちがこじれてしまって。それが純化していくと、最後はスタジオを作って、レコーディングとミックスまで自分でやる……というところがゴール……だったのかな。最近ですけど、それがわかりましたね。それが尖っていた理由なのかな。

──たしかに隙は見せられなかっただろうな、というのはわかります。

フルカワ:ソロになって、すぐに物分かりのいい人間に切り替われるほど、世の中うまくできてないじゃないですか。むしろソロになったほうが完全にひとりになりきれるんですから、その極みですよね。プロデューサーを外して、エンジニアを外して、メンバーもいないほうが俺は上手く転がっていくんじゃないかっていう変なうぬぼれがね。自分の好きなメンバーをサポートに迎えて、アルバムを作って、ツアーを廻るんだから、これはイケるんじゃないかと思っていたんですけど、いかないんですね(苦笑)。これは何回も話してますけど、実際問題、ドーパン解散よりもソロ1stアルバム『emotion』(2013年発表)を出してツアーから帰ってきたときのほうが辛くて。“あれ?俺、辞めるのかな?”っていうところまでいきましたからね。

──最近といえば最近の話ですよね。

フルカワ:まだ3年前ですからね(苦笑)、どん底はそこで。もともとネガティヴ思考だから、“バンド解散して終わったヤツだ”って思われてるんだろうなっていうか。今の事務所(SONY MUSIC ARTIST)に戻ってからもしばらくは、スタジオと家の往復だけという期間が1年も続きましたし。DOPING PANDAの曲を解禁したライブ<無限大ダンスタイム>をやっても、“これからずっとドーパンドーパンって言いながら生きいくのかな”って。その矢先に、ベボベ(Base Ball Bear)のギターサポートの話がくるんです。

──やはり、それが大きな転機ですか。

フルカワ:はじまりでしたね。ベボベのメンバーと一緒にツアーを廻ったことで、初めてバンドを客観的に見られたし、僕自身とてもリフレッシュ出来たんですよ。いろんな街に行って大勢の人前で演奏をするのもドーパン以来だったから、気持ちが前向きになった。それに、すごくタイミングが良かったんです。そのときには今のマネジャーがついていて、BARKSで連載コラムをスタートしたのもその数ヶ月前ですよね。「この流れを止めずにアルバム制作を、それに伴ったツアーを」ってマネージャーと話をしたところから今まで、ずっとポジティブな状態が続いている感じがしますね。

──そこで今回、プロデューサーとして名前が上がったのが、最初に作品づくりを共に行なったTGMXさんだったという。

フルカワ:“きっと音源も人と作ったほうがいいんだ”って思ったんです。ドーパン時代の最後にミックスまで自分でやって、結果、何ができたかというと、自分が作りたいものの一番近いところ。そこまで行ったんですけど、世の中の人に届けるものとしては一番遠かった。今回はその逆のような気がしています。

──世の中の人に一番近い?

フルカワ:TGMXさんのアレンジですから、自分の理解の上をいってるところも多少ならずあるんですよ。でも、その手触りでいいのかなって。全部理解出来てるものは自分にしか向いてないわけで。そういった意味で今回はみんなの耳に一番近いところに置けているんじゃないかなと思うんです。一番最初の質問に戻りますけど、それが今回プロデューサーを立てた理由というか、結論でしたね。

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