【インタビュー】サイダーガール、“炭酸系”ならではのキャッチーかつ爽やかな最新作『SODA POP FANCLUB 2』

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■僕らのアルバムのテーマ的なものとして
■生活感や人間臭さ泥臭さといったものが根底にある


――新しいことに挑戦されたんですね。「最終電車」はR&Bテイストを活かしつつ、和テイストも香っていますね。

知:“和”というのは、たぶん印象として正しいと思います。僕としては、ジブリっぽい感じにしたかったんです。夏の終わりに畳の上で涼んでいるような風景をパッケージしたかった。だから、和の雰囲気があるというのは近いのかなと思います。それに加えてちょっとハイファイにしたくて、R&B調の上物を足したりしたんです。

――「最終電車」の歌詞は、離れてしまった恋人のことを思う心情を描いていて、ロマンティストな知さんが全開という感じです。

一同:ハハハッ!

知:そう…なのかな(笑)。この曲は妄想ではなくて、半フィクションという感じなんですよ。僕は札幌で浪人していて、札幌の南北線という地下鉄で予備校に通っていて、好きな子がいて…という日々で、その頃のことを思い出して書きました。


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――半フィクションということは、やはりロマンティストだと思います。

Yurin:うん、間違いない(笑)。

フジムラ:夢見がちなんだよな(笑)。

知:うるさいっっ!(笑) 『SODA POP FANCLUB 2』の中で、僕的に印象が強いのは9曲目の「dialogue」ですね。この曲は8分弱くらいあって、レコーディングしているときも長いなと思ったんですけど、ライブでやったり、改めて聴いたりすると全然長いと思わないんですよ。それは、すごいことなんじゃないかなと思って。「dialogue」は『家族のはなし』という映画のタイアップの話をいただいてYurin君が書き下した曲なんです。スッと耳に入ってくるけど、染みるというものになっている。そういうことも含めて、本当にいい曲だなと思います。

Yurin:『家族のはなし』の主題歌という話をいただいた時点で、曲の長さは決められていたんです。鉄拳さんのパラパラ漫画を実写化した映画で、エンディングにパラパラ漫画を使うので、その尺に合わせて曲を作ってくださいということで。それに曲調のオーダーもあって、そういう曲の作り方をするのは初めての経験だったんですよね。「パレット」もタイアップ曲(『兄友』映画&テレビドラマ主題歌)ですけど、曲調や尺の指定はなくて自由に作ってくださいという感じだったので。そういう中で、初めて制約がある曲作りをしたんですが、意外とやりやすいなと思いました。僕はいわゆる“お題”があったほうが作りやすいみたいです。「dialogue」はメロディーや歌詞もサッと書けたし、構成もわりとスンナリ決まって、尺を合わせる作業にちょっと時間がかかっただけという感じだった。だから、また機会があれば「dialogue」みたいな曲の作り方をしてみたいですね。

――「dialogue」は、歌詞についてもオーダーがあったんですか?

Yurin:歌詞は何も言われていなくて。最初にパラパラ漫画や映像を見させていただいて、家族のお話だから、僕の周りで支えてくれている家族だったり、友達だったりに向けた歌詞にしようと思ったんです。『家族のはなし』の主題歌なので、両親や家族に対する感謝の気持ちを綴った歌詞だと思うかもしれないけど、それだけではない。もうちょっと大きくて、自分にとって大切な人達に向けた歌詞になっています。


――その結果、リスナーの方がそれぞれにとって大切な人を思い浮かべながら聴ける曲になっていますね。皆さんがあげてくださった曲以外にも注目曲は多くて、たとえばレゲェが香るAメロとキャッチーなサビを活かした「化物」なども印象的です。

フジムラ:この曲はアルバムの選曲会議をしたときに、リズム歌謡が欲しいという声が出て。“リズム歌謡とはなんぞや?”というのがあったので、マネージャーやディレクターに聞いてみたら、ビリー・ジョエルを教えてくれたんです。それで、“これだ!”と思って、すぐに曲作りに取りかかりました。そうやって原形を作ったんですけど、リズム歌謡ということで“いなたい”感じの曲だったんですよね。その中で何か印象づけないといけないなとなったときに、イントロのリフだなと思って、ギター・リフを考えました。2~3秒聴いたら、この曲だとわかるリフが作れたという自信があって、僕はこの曲のリフはすごく気に入っています。

――ちょっと不思議な感じもあって、かなりインパクトの強いリフになっていますね。

フジムラ:サイダーガールでここまでやって大丈夫なのかというのはあったけど、敢えてこういう曲をやることに意味があるだろうと思って、そのまま活かすことにしました。それに、「化物」は、間奏でジャジーになります。そこはマネージャーと相談しているときにガラッと雰囲気を変えようと言われて、だったらこれしかないというところで、ジャジーな方向にいくことにしたんです。作った自分が最初はうまくスイングできなくて、困りましたけど(笑)。でも、自分が持っている力以上のことをやらないとダメだというのがあったので、がんばりました。

知:この曲の間奏は、ギターもメッチャ悩みました。でも、自分の引き出しが足りないということに改めて気づけたので、良かったと思います。

――ジャジーな演奏は聴き応えがあります。「化物」の歌詞についても話していただけますか。

フジムラ:テーマは“人間は欲に負けてしまう”ということなんですけど、今までの自分は“欲に負けてしまうよね”ということをぼかして言うだけの歌詞がすごく多かったんですよ。でも、今回は自分の中でちゃんとテーマを明確に絞った歌詞を書こうと思って。で、僕はラーメンがすごく好きなんです(笑)。夜中に、もう毎日のように食べに行ってしまって、それで太っていく自分が嫌だという歌詞にしました(笑)。渋いサウンドで、すごく小さいことを言うというのをやってみたかったんです(笑)。

――ラーメンの歌なんですね。個人的には、毎晩のように地下アイドルのライブに行ってしまう人のことかなと思いました。

一同:ハハハッ! それ、いいな(笑)。

フジムラ:そう捉えるなら、それでも構わない。いろんな解釈ができるように書いたので、自由にイメージを膨らませて聴いてほしいです。でも、僕の中ではラーメンで、中間のジャズ・パートもラーメン屋に入る自分の姿を表現しているという(笑)。

――いいですね(笑)。「化物」の他に、シティポップに通じる洗練感を活かした「ぜったいぜつめい」や、アコースティック・ギター1本の弾き語り形態の「スパイス」なども、アルバムの良いフックになっています。

Yurin:「ぜったいぜつめい」はテンション・コードを多用していて、それがシティ感を醸し出しているのかなと思います。普通のコードは使っていないんですよ。あと、リードギターもちょっと変わったフレーズを入れたりしています。この曲はオケができたときに全体を通して斜に構えている雰囲気があったので、歌詞もそれに引っ張られてちょっと皮肉っぽいというか、斜に構えた感じでバァーッと書いて、言葉遊びとかもしました。4つ打ちの曲だから、みんながノレるようなものにできたらいいなというのがあって、サビで韻を踏んだりしたんです。そういうところで、遊べた曲かなという印象がありますね。

――オシャレな曲調と尖った歌詞のマッチングが絶妙です。

Yurin:僕らは結構欲ばりなところがあって、いろんな曲をやって、いろんな人に聴いてもらいたいと思っているし、最初に知君が言ったように、変わらないものも提示していきたいという気持ちもあって。「ぜったいぜつめい」の歌詞は、そういう部分が結構出たのかなと思います。「スパイス」に関しては、僕らのアルバムのテーマ的なものとして、生活感や人間臭さ、泥臭さといったものが根底にあって。そのうえでどういう曲を作ろうかと考えたときに、弾き語りもあるといいんじゃないかなと思ったんです。それに、“ワンルーム感”というか、狭い部屋の中でギターをつま弾きながら歌っている情景が浮かぶような曲を入れたいなと思って「スパイス」を持ってきました。「スパイス」は弾き語りなので、暗い歌詞は嫌だなというのがあって。曲はしっとりしているけど、歌詞は最終的には前向きなものにしたいというのが最初からあって、日々の日常の中にある出来事が、これから生きていくうえでの糧やスパイスになればいいな…ということを歌った歌詞になっています。


――透明感に溢れた世界観に惹き込まれました。続いて、それぞれ今作を録るにあたって、プレイや音作りなどの面で大事にしたことを話していただけますか。

知:僕は、リードギターだけでドラマを創れるようにしようということに、今回すごくこだわりました。「化物」もそうですけど、イントロからアウトロまでリードギターだけを聴いていても楽しめるものにしたいなというのがあって。ただ、テクニカルなことやトリッキーなことでリスナーの耳を惹くということではなくて。楽曲の展開の抑揚づけや場面作りをリードギターでも出すことに挑戦して、それを昇華できた曲が多かったと思います。中でも「化物」と「ぜったいぜつめい」は、ぜひリードギターにも耳を傾けてほしいです。

フジムラ:ベースに関しては、スラップをしたり、ウォーキング・ベースを弾いたりというように、今までとは違ったアプローチを採り入れました。「サテライト」の2番のサビが終わったところや、「約束」2番のアルペジオっぽいフレーズ、「ミスターデイドリーマー」と「パレット」のベース・ソロなど、結構ベースが目立つアルバムになっています。一番聴いてほしいのは「化物」です。この曲は基本的にグルーヴィにいきつつBメロはスラップ、サビはオクターブ・フレーズ、間奏はウォーキングという感じで、本当にいろんなことをしています。この曲のベースは弾いていてすごく楽しいので、ぜひベーシストにコピーしてほしいです。

Yurin:このアルバムは、僕の中では修行という感じでした。たとえば「化物」みたいにカッティングしながら歌ったりすることは今までなかったので、ギター&ボーカルとしての新しいスキルを培っていかないとな…ということをヒシヒシと感じています。歌は全体的にキーが前作よりも半音から1音くらい上がっていて、そうすることでボーカルとしての今までの限界もちょっとだけ超えられたかなというのがありますね。それに、歌の表現という部分で、より幅広さも出せたかなと思う。今回はより良い歌が歌えたんじゃないかなという手応えを感じています。

――それぞれが意欲的に挑戦することで、『SODA POP FANCLUB 2』は演奏面の聴きどころも満載の一作になりましたね。アルバムのリリースはもちろん、2月から3月にかけて行う初のワンマン・ツアーも楽しみです。

フジムラ:『SODA POP FANCLUB 2』の先取りツアーでは、アルバムの全曲を披露したんです。そこで得たものを活かして、今以上に新曲達を成長させて、次のワンマン・ツアーではもっと良い曲に聴こえるようにがんばります。それに、楽曲の幅が広がることで、今まで以上にいろんな楽しみ方をしてもらえると思うんですよ。ぜひ会場に足を運んでほしいです。

取材・文●村上孝之


リリース情報

2nd フルアルバム『SODA POP FANCLUB 2』
2018.11.28 Release
【収録曲】
01.アクセル
02.サテライト
03.パレット(「兄友」映画&テレビドラマ主題歌)
04.化物
05.ぜったいぜつめい
06.最終電車
07.ミスターデイドリーマー
08.スパイス 09.dialogue(映画「家族のはなし」主題歌)
10.スーパーノヴァ
11.約束(MBS/TBSドラマイズム
「覚悟はいいかそこの女子。」挿入歌)
【完全数量限定生産盤】
UPCH-7469 ¥4,500 (税込) / ¥4,167 (税抜き)
★ビッグTシャツ付き
【通常盤】
UPCH-2179 ¥2,700 (税込) / ¥2,500 (税抜き)★CDのみ

ライブ・イベント情報

<サイダーガール TOUR2019 サイダーのゆくえ -SPACESHIP IN MY CIDER->
2019年2月3日(日) 北海道 札幌 cube garden
2019年2月9日(土) 香川 高松 DIME
2019年2月11日(月祝) 広島 SECOND CRUTCH
2019年2月17日(日) 宮城 仙台 MACANA
2019年2月23日(土) 新潟 CLUB RIVERST
2019年2月24日(日) 石川 金沢 vanvan V4
2019年3月2日(土) 岡山 PEPPERLAND
2019年3月3日(日) 福岡 BEAT STATION
2019年3月9日(土) 大阪 BIGCAT
2019年3月10日(日) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2019年3月24日(日) 東京 Zepp DiverCity(Tokyo)

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