【インタビュー】ALICE IN MENSWEAR、1stアルバムリリース決定「頭を振るより、踊れる曲を」

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ALICE IN MENSWEARが5月15日、1stアルバム『Wonderland For The Lost Children』をリリースすることが発表となった。michi.(Vo / S.Q.F, MASCHERA)とKOJI (G / ALvino, La'cryma Christi)による新ユニット始動発表は、2018年12月のこと。それからわずか5ヵ月後にフルアルバムがリリースされるという展開の迅速さに、ほとばしる創作意欲と快い状態がうかがい知れるというもの。

◆1stアルバム全曲トレーラー 動画

アルバムのリリース情報と同時に公開となったのが、アルバム『Wonderland For The Lost Children』のトレーラーだ。収録全10曲のハイライトを凝縮した動画が映し出したのは、2人の異才が未知を求めた先鋭的なサウンドだった。先ごろ公開した始動インタビューで語られた通り、そのコンセプトは“スチームパンク”と“不思議の国のアリス”。難解でノイジーでなく、キャッチーでダンサブルなサウンドながら、2人がそこに詰め込んだセンスは時代を超越したものである。

BARKSはレコーディングを終えたばかりのmichi.とKOJIの取り計らいで、いち早くアルバム全曲を試聴できる機会を得た。経験と実績を有する両者が生み出した楽曲は、ライブで生まれ鍛え抜かれたものではないが、それゆえ型破りで明快な人格をすでに持っているようにも感じられた。アルバム『Wonderland For The Lost Children』をもとに、まだ、謎多きユニットALICE IN MENSWEARのサウンドのコアを紐解くロングインタビューをお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

■曲によっていろいろ表情があるから
■多重人格者みたいで狂気を感じる

──『Wonderland For The Lost Children』は、どんな構想のもとに作られたアルバムですか?

michi.:音楽もヴィジュアルも然りですけど、触れた人にザクッと入っていける瞬発力がまず大事で。ただ、それだけではダメで、聴いてくれた人が反芻したくなるようなアルバムにしたいと思ってました。そのためには世界観や奥行きをできるだけ削らないで活かす必要がある。瞬発力を重視すると、そこが疎かになりがちなので。

──まさに、そういう作品になっています。それにコンセプトに掲げている“スチームパンク”の世界観を音楽にするのは難しい気がしますが、見事に表現されていることも注目です。

KOJI:スチームパンクを楽曲で表現するために、まず“不安定な雰囲気”を意識しました。コードに半音階をぶつけると荒廃した雰囲気や緊張感みたいなものが生まれるので、ストレートなコードだけではなくて、半音階のような要素をどの曲にも入れたいなと。ただ、それだけだとスチームパンクのファンタジックな感じは出せないんです。世界観のイメージを具現化するために、アレンジャーさんのアイディアを活かしたり、楽曲構築面でもサウンド面でも挑戦しましたね。

▲1stアルバム『Wonderland For The Lost Children』

michi.:前回のBARKSインタビューで、“ALICE”と“スチームパンク”というテーマをどう表現するか?という話になった時に、「ヴィジュアル面でスチームパンクを表現して、サウンド面でALICEのテイストをふんだんに入れる」という話をしたと思うんです。でも、インタビューの後に、「スチームパンクの世界観も音に落とし込みたい」と2人で話して。それを実現している人を僕は知らないから、ALICE IN MENSWEARがパイオニアになれるんじゃないかなと。

──EDMやテクノ、ニューウェイブに通じるテイストを活かした曲が多いですよね。それらが生み出すメカニカルな質感とロマンチックな要素を融合させることで、スチームパンク感を醸し出している印象を受けました。

KOJI:それは意識しました。michi.はテクノとかに詳しいので、「これってジャンルでいうと何?」とか「これがテクノなんだ。じゃあ、テクノとハウスの違いは何?」って聞いたり、作業終わりで勉強会を開いてもらって(笑)。僕自身、そういう音楽も聴いてはいたけど、新しいものばかりで。魅力を感じた音楽は自分のフィルターを通して発信したくなるから、いい形で楽曲に反映できたかなと思います。

michi.:僕からしたら勉強会でもなんでもなくて。たとえばジャケ買いしたCDが当たりだと、友達に聴かせたくなったりする感覚でKOJIに聴かせただけで。ビックリしたのは、KOJIが曲に反映してくるスピードの速さ。しかも、自分の中で噛み砕いて、昇華した形で楽曲に活かすスキルの高さは、本当にすごい。

──KOJIさんがテクノ要素を活かしたサウンドを作り上げたことが衝撃的だったのですが、michi.さんの嗜好だったんですね。

KOJI:そう。michi.は音楽家としてテクノやダンスミュージックを表現していて、知識も豊富。雑然と俺の中にあったそういう音楽をmichi.が整理してくれて、“あっ、俺が好きなのはテクノだったんだ”みたいに引き出しやすくしてくれた。自分の中に全くなかったものではないから、それを活かすのに時間はかからなかったです。

▲michi.(Vo / S.Q.F, MASCHERA)

▲KOJI (G / ALvino, La'cryma Christi)

──michi.さんは、どの辺りのテクノやダンスなどを聴かれていたのでしょう?

michi.:クラフトワークとかアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンとか、1970年代や1980年代のものを聴いてましたね。テクノのメカニカルなテイストはスチームパンクを表現する要素になるし、デカダンスな雰囲気があるダンスミュージックもALICE IN MENSWEARに合う。テクノやダンスならではのグリッドに沿ったビートが土台にあることで、その上で僕とKOJIが遊んだり暴れたりできるということもあって、多用しています。

──独自の音楽性に加えて、現実とファンタジーの狭間を彷徨っているような歌詞も見逃せません。

michi.:手法としてファンタジーやSFを採り入れているけど、根底にあるメッセージは今の自分が背負っているものだったり、過去に背負っていたものなんです。だから、ノンフィクションを軸にフィクションで装飾していく表現ですね。

──その結果、相当アブナい人物像になっていますね。

michi.:マジですか(笑)?

──はい。ファンタジーならば物語として受け止めますが、リアルが根底にあることで狂気を感じるんですよ。それが素晴らしい。

KOJI:狂気というのはすごくわかる。曲によっていろいろ表情があるから多重人格者みたい。

──それは、曲調が幅広いことも理由になっているかとは思いますが。

KOJI:曲調の広さは、自然とそうなったのが7割くらいかな。制作途中にmichi.から提案があって、「オートマタ -鋼鉄少女A-」という曲が生まれたんですけど。「インストっぽい曲を作ろう」という話をしたのが夜で、その翌日午後にデモを送ったから、結構早く出来たよね?

michi.:ビックリした(笑)。5~6時間で、すでに作品になってデモが到着したから。もう魔法使いかと思いました(笑)。

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