【特集 インタビュー vol.3】植田真梨恵、アートを語る「作品に服を着せる感覚なんです」

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■デザインも大衆的ではなくアートにしたい
■という意識が2枚の作品には強いです

──アートワークについても伺いたいのですが、先ほど写真のトリミングの話が出ましたけど、たとえば写真の質感や画角なども植田さんのイメージの中にあるんですか?

植田:そうですね。最近はフィルムとかポラっぽい写真が多いです。前シングル「勿忘にくちづけ」以降、その傾向が強くなっていて。自分でもフィルムカメラで写真を撮るので、“この質感は他では出ないな”っていうところも分かっているんです。『F.A.R.』はデジタルカメラで撮った写真ですけど、特に狭い世界で表現したかったので、角度ひとつとっても大事で、細かく調整しながら撮影しました。

──カメラマンやデザイナーと一緒に、植田さんの理想に近づけていく作業があるわけですね。

植田:さっきチラッと言いましたけど、『F.A.R.』は最初に書いた絵コンテに近い構図で撮ることができたんですね。河川敷を背景に、同じシチュエーションで『F.A.R.』と『W.A.H.』のアートワークを撮りながら、それぞれ差を出そうというテーマがありました。『F.A.R.』のテーマカラーは真っ黒で、赤とベージュの差し色。このへんの色が撮影している時点でしっかり出ていたので、みんなで「勝ちましたね」と(笑)。一方の『W.A.H.』のアートワークは、ジャポニズムがアルバムのテーマになっているので、色彩が難しいんです。何度も何度もコントラストを変えてもらったり、画角を変えたり、試行錯誤しながら制作しました。

▲植田真梨恵 画像ページ【2】へ (※画像6点)

──そういったアートワークのイメージやアイディアは、アルバムの全体像に付随して思う浮かぶものなんですか?

植田:付随してはいなくて、作品に服を着せる感覚なんです。今回のミニアルバムは、『F.A.R.』は“大人の成長”、『W.A.H.』が“和”っていうコンセプトが先にあって。『F.A.R.』は真っ黒いアルバムにしたいというざっくりとしたイメージがあったので、これまでよりアートに寄ったものにしたかったんです。楽曲的にすごくポップか?と言われると、そうではないし、メジャーデビュー5周年だけど、どちらかと言えばよりインディーズっぽいことをしたかったというか。私的なことをしっかり歌ったものにしたかったから、デザインも大衆的ではなくアートにしたい、という意識が2枚のコンセプトミニアルバムには強いです。

──そのイメージが高い精度で実現でたということですね。

植田:はい。それこそBARKSさんに撮ってもらった『F.A.R.』取材時の写真は、『F.A.R.』のジャケットや中面で出したかったイメージにピッタリ合うもので。インスタントカメラでも撮っていただいたじゃないですか。夜にフラッシュを焚いて撮る感じも、とてもバッチリで嬉しかったです。

▲ミニアルバム『W.A.H.』初回限定盤

▲ミニアルバム『W.A.H.』通常盤

──自分でビジュアルを作り上げることが、植田さん自身の音楽にとって大事だという意識は、もとからあったんですか?

植田:今となっては、ですね。スタートからして“思いがけずにすべてが進んでいく”という状況だったので、たぶんマネージャーさんが違う人だったら、こんなにDIYしていたかわからないなって。もし、私の感覚を面白いと思ってくれるマネージャーさんではなかったら、“プロのスタイリストやデザイナーをつけて制作しましょう”っていろんな方にお願いしていたかもしれない。もちろん、それは全然悪いことじゃないし、もしそうなっていたら、私はアートワークのアイディアを自分で出してないだろうし、私のアイディアがあまり反映されないような環境だったら、こんなふうに細部まで自分で詰めたりしなかったと思うんです。でも、今のやり方で、“植田真梨恵”がインディーズ期に作られていったから、メジャーデビュー後もこの体制でやっていきたくて。もしこの先、関わる人や環境が広がったとしても、これまで作ってきたものから理解していただける部分や、それをもとに新しく広げていただける部分があると思うので、いいことしかないなって。“これが植田真梨恵です”っていうものを、音楽はもちろんアートワークも含めて作れるようになっていますね。

──マネージャーさんは植田さんのそういうクリエイティビティを見抜いていたんでしょうね、本人がやったら面白いものになると。アートワークやミュージックビデオについては、普段どういうところからイメージを沸かせていますか?

植田:たとえば、お店の照明を見ていて“なんでこんなふうに影が出るのかな”とか、“どこから線を持ってきているのかな”とか、“この色合わせ好きだな”とか考えながらデザインを見たりすることは好きですね。ものの仕掛けに興味があるので、自分の制作もそこからつながっているのかなと思います。もともとの気質でもあるんですけど、ミュージックビデオで映像を撮ることに関わってきたからこそ、余計日頃から見るクセがついているのかもしれない。周りにも映像をやっている友だちが多いし、最近は特に友だちとの会話が仕事のことばかりで。同年代の女の子っぽい話題はここ何ヶ月か興味がないというか、ほとんどしてないかもしれないですね(笑)。

──それくらい、ものを作る話が楽しいと(笑)。

植田:面白いし、盛り上がりますね。実現するのかしないのかくらいのことをダラダラと、いっぱいアイディアを出しながら喋っているのが。

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