【特集 インタビュー vol.2】植田真梨恵、音楽制作の源を語る「ひたすらたくさん曲が書きたい」

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2019年にメジャーデビュー5周年を迎える植田真梨恵が、『祝5周年!5作連続リリース!』と題して濃度の高いアニバーサリーを展開中だ。わずか4ヵ月間の間にリリースされる作品群は、2つの配信シングル、ライブ映像作品、2つのコンセプトミニアルバムという全5作。集大成というにはあまりにも現在進行形を駆け抜ける植田真梨恵自身が反映されたリリース攻勢となる。

◆植田真梨恵 photo-gallery

BARKSでは、“5周年”“5作連続”に重ね合わせて、“5本のインタビュー”から植田真梨恵のパーソナルに深く迫る。その第二弾は“音楽家:植田真梨恵”。2月20日にリリースされるコンセプト・ミニ・アルバム『F.A.R.』を基に、音楽制作の原動力や、自己表現の根幹について、じっくりと話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。なお、BARKS『祝5周年!5作連続リリース!』特集ページでは第二弾の未公開カット33点の写真を掲載中だ。こちらも併せてお楽しみいただきたい。

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■ここまで語りに近い歌って今までない
■本当の意味で“弾き語り”になる

──今回は、コンセプト・ミニ・アルバム『F.A.R.』をもとに、植田さんの音楽観や音楽制作の原動力、自己表現についてうかがいたいと思います。まず、『F.A.R.』は“大人の成長”がテーマだそうですが、どのように芽生えたものですか?

植田:もともと1曲目に収録されている「FAR」という曲は、ずっと持っていたんですね。私は、この曲は人に聴かせるつもりがなかったんですけど、マネージャーさんが気に入ってくれてて(笑)。

▲植田真梨恵 画像ページ【1】へ (※画像6点)

──「人に聴かせるつもりはなかった」というお話には合点がいきました。というのは、“「FAR」という曲は初めて植田さん個人のことを語っている歌だな”と思ったからなんですね。これまでは物語を通しての想いや話だったのが、急に“私”の話になったぞっていう。最初に聴いたときに驚きがありました。

植田:“ところで私のことやねんけど”みたいな感じですよね(笑)。本当にそうで、誰かに聴かせたくて作ったというより、心の整理というか。“とにかくこの揺れている感情を曲にしよう”という感じで書いて、こっそりと持っていた曲だったんです。あるときマネージャーさんに、「植田さん、最近、曲を書いてないじゃないですか」って突っ込まれたんです。それに対して、「書いてないことはないんですけど、リリースするような曲でもないんです」って。そうしたら、「それでも出来ているなら聴かせてください」となり。この曲も含めた何曲かを聴いてもらったら、「「FAR」がすごくいい曲ですね」と言ってくれたんですね。「夢のパレード」のBARKSインタビューのときに、「自分の思うキャッチーさと世間に本当に届くキャッチーさが、自分では全然コントロールができないとわかった」っていう話をしたと思うんですけど。

──そうでしたね。

植田:そう気づかされた曲が「FAR」だったんです。自分としてはこの曲が誰かの心に響くとは思っていなくて、だからこそ好き勝手に書いたんですけど。その大切に持っていた曲を、今回『F.A.R.』というミニ・アルバム収録曲としてリリースするにあたって、“大人の成長”をテーマに、ひとつの世界観でアルバムを聴いてもらいたいなと思ったのが、最初でした。

──「FAR」という曲自体は、いつ頃に書いていたものですか?

植田:時期はメジャー・デビューの少し後ですね。

マネージャー:私のところに届いたのは2015年11月ですね。

植田:デビュー1年後ってことなのか。メジャー用にいっぱい曲を書いているとき、この曲はそこに肩を並べられないけれど、“書きたい”と思って書いた曲、書かずにはいられなかった曲だったんです。

──そのくらい、当時のいろんな渦巻いていた思いが形になっていると。

植田:そうですね。時期が時期だったんですよ。家族みんなが、それぞれ自分の道に行くというタイミングで、(福岡県)久留米の実家を引き払うことになったんです。ある意味、実家がなくなっちゃったんですよね。これはみんなが持っている引越しのときの風景だと思うんですけど、「これは捨てるの? 持って行くの?」っていう選択をしながら、家中のものを運び出して、最後にいらないものがトラックに積まれていく。4歳くらいの頃から一度も見てなかったようなでっかいウサギのぬいぐるみとかがトラックの荷台に積まれて、ガタンガタンガタンガタンって行くところを、空っぽになった団地の部屋から眺めていて、“はあ……”って思ったりとか。

▲植田真梨恵 画像ページ【1】へ (※画像6点)

──なんとも言えない気持ちですね。

植田:子どもの頃から住んでいた家だったので、そういうものがより印象強くあるんですよね。実家に限らず、たくさん過ごした場所がなくなってしまった経験って誰しもあると思うんです。その街には行くけど、そのものがその場所はもうないというか。家がないから、その街に行く意味もないというか。“思い出の街”になっていくみたいな体験が心を揺らしたんですよね。「FAR」はそのときに書いた1曲だったんです。

──リアルな風景や感情が響く歌詞となっていて、植田さんにとってとても大事な1曲なんですね。サウンド的にはどういうイメージを持っていましたか?

植田:遠くに投げようと思って作っていない曲だということが大きすぎて、あまり客観的に聴けなかったんです。例えば、5分半ある曲なんですけど、自分では5分半という長い時間が何の問題にも思えないし、リフレインが多いんですけど、どこも削りようがない。なので、“この5分半は曲として長すぎるのだろうか?”というふうには考えていなくて。曲として引き出せる限りのドラマチックな展開と、それでいて、もともと持っている淡々とした、なんともないような雰囲気を壊さずに、とは思っていましたね。それで、バンド・アレンジを徳永暁人さんに、ドラマチックなストリングス・アレンジを池田大介さんにお願いして。それが並行して、5分半進んでいく感じというか。

──ドラマチックという言葉通り、ストリングスが加わって曲がうねりを帯びて変わっていくのがいいですね。でも、歌はとても淡々とした日常感があって。日常の中で、背景となるサウンドだけが変わっていくような感覚です。

植田:そんなイメージだったかもしれません。

──アレンジが加わったことで、「FAR」の捉え方に変化はありましたか?

植田:ここまで語りに近い歌って今までなくて。Aメロの語り部分とかは、本当の意味で“弾き語り”になると思うんです。そういう意味では、この曲が持っているエネルギーというのは、アレンジをいっぱい施しても、弾き語りでも、そんなに大きく差はないかなと思います。すごく素敵なアレンジを一緒に作っていただいたし、これからキャンペーンとかで弾き語りでも歌っていくし、ツアーもあるし、ステージが楽しみでもあります。

──なるほど。

植田:あと、“窓際 歌っていたムーンライト”っていう歌詞は、住んでいた団地のベランダでよく『美少女戦士セーラームーン』の主題歌「ムーンライト伝説」をホントに窓際で歌っていたんですね。そこからきている歌詞で。その「ムーンライト伝説」を編曲している池田大介さんに今回のストリングスのアレンジをしていただいたという。

──そんな由縁も! 子どもの頃の思い出とちゃんとつながっているんですね。

植田:間違いなく「ムーンライト伝説」は、『美少女戦士セーラームーン』の中でもすごいパワーを持っていて。そんな池田さんに素敵な編曲をしていただけたわけで。もともとある語り部分の力も含めて、どちらもいいなと思える1曲です。

◆インタビュー(2)へ
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