【インタビュー】HYDE、『ANTI』を語る「まず抗うこと。そこから創造が生まれる」
■心機一転なところは確かにある
■だからまず新しい音楽性を示して
──『ANTI』に向けた制作自体は2017年頃から始まっていたそうですが、アルバムを制作するにあたって、全体像としての青写真があったのか、それとも1曲ずつを積み重ねていった結果の集合体なのか、どちらでしょう?
HYDE:どちらかといえば、青写真はあったと思います。ただライヴで盛り上がる曲を集めるってくらいの感じですけどね。さらにヘヴィで攻撃的にしたいと思ってました。これまでずっとやってきたけど、特に今回またゼロからのスタートの部分もあるので。という意味では、これまでのソロの曲はしたくなかったんですよ。VAMPSの曲を一人でやるのも違うし、以前のソロ名義の音楽性とも違ってきているから、また心機一転なところは確かにあるんですよね。だからまず、新しい音楽性を示して、ライヴで演って盛り上がらなかったら意味がないと思って。目標はそこでしたね。
──以前のBARKSインタビューで「プロデューサーとしてのHYDEが、HYDEをプロデュースするのがソロ」ということをおっしゃってましたが、今回は具体的に、どういうことをHYDEに表現させてみようと思われてたんですか?
HYDE:“アメリカのどのシーンに向けて発信するか?”というところが鍵で。まずはアメリカのフェスに出られるようになること。そこで他のバンドより優れた部分をある程度見せられないといけないと思ってたんで、そういう部分でも、演奏はともかく“楽曲がアメリカで通用するのか?”というところが重要でした。だからなるべく向こうのプロデューサーのフィルターを一回通すというか。アメリカのプロデューサーが、“ここはこうしたほうがいいと思うなら、そのフィルターを一度通してから曲を作る”ということが僕の中でのテーマでしたね。
──とすれば、誰と組むかも大切な要素ですよね。
HYDE:作家陣については、これまでの経歴を見たり楽曲を聴けば、自分に合う曲を作ってくれる人かどうかある程度はわかるし、いい曲を作ってさえくれれば、そこで判断出来る。プロデューサーも経歴をみて、“この人なら僕の作りたい音楽が出来るだろうな”って選択していくことがほとんどでしたね。
──具体的にプロデューサーやクリエイター陣には、HYDEさんからどんなオーダーをされたんですか?
HYDE:「ライヴでモッシュが起きるような曲をお願いします」とか「ライヴで盛り上がる曲やで~」って(笑)。あと、何かあったっけなぁ? まぁ、収録曲の「ANOTHER MOMENT」もずっとジャンプしてるような曲でしょ。これまでの僕の曲とか、制作途中の曲とかを聴いてもらってたので、僕の意向は理解してもらえてたと思います。たとえば「AFTER LIGHT」は最初のほうに作った曲だけど、これはPABLOが作った原曲をプロデューサーと一緒にアレンジしたんです。だから、プロデューサーのDrew Fulkは、“HYDEはこういう音楽がやりたいんだな”ってことをわかった上でアレンジしてるし、Drewの感性で“盛り上がる曲”っていうものを作ってくれたんだと思います。他にもDrewが、「これはどう?」って提案してくれたカッコいい楽曲が幾つかあったんだけど、“たぶんオーディエンスの身体が反応しないだろうな”っていう曲は今回は排除していきました。
──プロデューサー発信の曲もあったんですね。
HYDE:「ANOTHER MOMENT」「OUT」「LION」、「SICK」もある意味そうかな。
──プロデューサーとのやりとりは具体的にどんな感じだったんですか?
HYDE:わりと淡々とした感じでしたよ。たとえばDrewとの作業は、まずは彼の腕前を見てからアレンジをお願いして。なので、自由にやってもらったほうがいいのかなと思って、結構黙っていろんな作業を見てました。で、作業が終わった段階で、「ここはこうしたい」「こう変えたい」っていうやり取りをした感じでしたね。
──もう一人のプロデューサーであるNicholas FurlongはEDM系のアーティストも数多く手がけていますよね。
HYDE:ちょっとポップというか、現代的な感覚の人。
──以前BARKSで、「アメリカのチャートの大半をEDM系が占めている現実を考えると、ダンスミュージック的なアプローチも必要だと思う」というようなことをおっしゃってましたが、Nichの起用は、そういう意味も踏まえてのことでしょうか?
HYDE:いや、そういうわけでもないんだけど、紹介してもらったので、Nickには自分の持ち曲の中でも比較的ポップなものをやってもらおうかなっていう感じでしたね。
──そのNichのプロデュース曲「LION」は、“HYDEさんにこういうガレージロックな一面もあったんだ!?”というところでも非常に新鮮でした。
HYDE:そうですね。ちょっとスペシャルな感じになってますね。僕だけだったら作らない曲ですけど、現地で聴いてたアメリカ人のスタッフの反応が良かったんで、こういうのもありだなって。
──DURAN DURANのカバー「ORDINARY WORLD」は、ここ最近のHYDEさんのライヴのラストソングとして定着していますが、これも海外での活動を意識したものですか?
HYDE:アメリカでもみんな知っている曲ですからね。“アメリカ人の多くが知っているバラードをロックアレンジしたら、いいんじゃない?”っていう戦略のもとにこの曲が選ばれました。実は「MIDNIGHT CELEBRATION II」と「ORDINARY WORLD」は最初、アルバムに収録するつもりはなかったんですよ、シングルのカップリングとしてリリースしていたので。今回ボーナストラック的な意味合いも込めて、あえて最後にこの2曲を持ってきたんですけど、「ORDINARY WORLD」もスタッフから“どうしても入れたほうがいい”という意見が多かったですね。「MIDNIGHT CELEBRATION II」はもう一回出しておきたかったというのはあります。今後もライヴで演っていくであろう曲だし。
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