【インタビュー】chay、3rdアルバム『Lavender』に同世代が抱える悩み「20代で作ってきたアルバムの集大成」

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chayは2019年、音楽に軸足を置きながら、モデル業のほか、映画『ダンスウィズミー』出演や、初の単行本『chay’s BEAUTY BOOK』を発売するなど、新しい試みに挑んできた。さまざまな刺激を貪欲に吸収した彼女が、2年5ヵ月ぶりとなる3rdアルバム『Lavender』をリリースする。

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タイトルどおり紫をイメージカラーにしたスタイリングも大人っぽく、収録された楽曲も、先行配信された「砂漠の花」を筆頭に今までにない多様な楽曲が揃った。そこには、同世代なら絶対に共感できる、20代後半という時期に感じる迷いや葛藤、期待などの感情がリアルに刻まれている。これまで歌ってきた“恋”から“愛”へ、女性らしい変化をまっすぐ受け止めながら、常にリアルタイムの自分の想いを作品にしてきたChayだからこその1枚だ。

『Lavender』で開いた新しい扉、そしてその先に続く未来まで、今作に込めたすべてをじっくり語ってもらった。

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■最初のライブで歌った時よりも
■自分の声で、心で歌えている

──モデル業もありつつ、映画への出演や単行本発売など、活動の幅が広がるなかでの2年5ヵ月ぶりのアルバムということで、前作『chayTEA』からはかなり変化を感じる作品になりましたね。ご自身で振り返ってみていかがですか?

chay:制作にはじっくり時間をかけながら出来上がったアルバムですね。今月29歳になったんですけど、この2年5ヵ月の間に、27歳、28歳、29歳になるまでの時間を経ていて。最終的にアルバム収録曲を並べてみた時に、27〜29歳ならではの漠然とした焦りとか、迷いとか、不安というのが、一貫してテーマになっているなと、あとから気がつきました。コンセプチュアルなアルバムを作ろうという意思はなかったんですが、自分はこういう気持ちを書きたかったんだということを知りました。

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──なるほど。

chay:こんなにバラエティに富んだサウンドのアルバムなのに、ひとつ共通点がある。それなら、それがわかるようなタイトルにしたいと思ったんです。たとえば『アイデンティティクライシス』とか──でも、ネガティヴでシリアスなタイトルにはしたくなかったので、chayらしい言葉で表現できないかなと思い、『Lavender』にしました。作詞しているなかで、ラベンダーの花言葉に“期待”とか“疑い”とか“繊細”とか“許し合う愛”などがあると知りまして。すごく幅広いんですけど、まさに自分の今の気持ちとリンクしたんです。

──今まではやっぱりピンクとか、パステルカラーなイメージがあった分、紫の大人っぽい色がテーマなのも新しいですよね。これまでよりラブソングも減ってますが、あえてラブソングはやめとこうとか思ったわけではなく、これも自然に?

chay:そうですね。なので、自分としても年齢を重ねて大人になったなと感じました。まさに前作まではピンクのイメージだったし、とにかく“恋”というワードが多かったんですけど、今回は“恋”というワードがほとんどありません。これまではときめきとか運命とか、そういったガーリーな乙女心にピントを合わせて、実体験に基づいて書いた曲が多かったんですけど、今回は“恋”から“愛”に変わったなと、完成してから思いましたね。

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──1曲目に「伝えたいこと」というタイトルの曲がある時点で、いきなりアルバムのモードの違いが出てますよね。アルバム全体で“誰かに伝えたいんだ”ということが、ひとつ大きなテーマだったんじゃないか?と。個人的にも30歳前の迷いとか思い出して、すごく共感できました。

chay:まさにそうなんですよ! そう言っていただけると嬉しいです。最近、同級生のお友達と久しぶりに会ってお話したんです。すると、お仕事のこととか、結婚や出産のこととか、本当に色々なことに悩んでるという印象を受けて。たぶん女性だけじゃないと思いますけど、20代後半って、1回立ち止まって考える時期なのかなと思うんです。私は職業柄、同級生に比べたらそういった気持ちは少ないのかなって思っていたんですけど、歌詞を書いてみたら、実際に自分もそういう気持ちがあったことに気がづきました。その気持ちを言葉にできたという実感があるんです。抱えていた、漠然とした焦りや不安、迷いを、このアルバムに全部落とし込めたというか。言葉にできたことによって、完成した時に肩の力が抜けて、自分自身、浄化できたような気がしました。

──特に「ブーケの行方」とか「Girl Friends」はかなりリアルな目線で書き切ってますよね。“すごくわかる!”と思って。

chay:本当ですか? 良かったです! 「ブーケの行方」は、実際に友達の結婚式のあとに、みんなが集まって話していた内容がとてもリアルで面白いテーマだなと思ったんです。いわゆるウェディングソングで、こういった視点で書いてる曲ってないじゃないですか。ちょっと女性の本音の部分というか、ブラックな部分に踏み込んで書いたので、正直リリースするべきか考えたんですけど、“武部聡志さんのこのメロディだったら書けるな”と思って書いたんです。なので、共感していただけたら嬉しいですし、男性の方も“こんなふうに思っているんだ、面白い”と思って聴いていただけたら嬉しいです。「Girl Friends」も実体験の話ですね。友達が失恋してしまって……やっぱりこの年齢で失恋すると、10代の頃の失恋とはまたちょっと違った意味で現実的に悲しいじゃないですか(笑)。

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──わかります(笑)。

chay:これも歌詞を書いたあとから気がついたんですけど、“自由も悪くないのよ”と書いていて。自由ってそもそもいいものなのに、“自由はいいでしょ”と書かなかったのはなんでだろう?って考えたんです。たとえば彼氏がいないことを“フリー”と言いますけど、この年齢って、フリーであることは自由であるはずなのに、すごく焦ったり、不安になったりするじゃないですか。だから“自由も悪くない”という言い方になったのかなって思いました。今の年齢だからこその視点ですよね。

──今、そこまで素直に、自分の年齢感を出してもいいって思えているんでしょうか。

chay:数字的に年齢を気にして書いたわけではなくて。おそらく本当に、今の気持ちがそうだったというだけなんです。いつも曲を書く時に、今しか書けない言葉、今しか感じられない気持ちを大事にしています。なので昔の作品を聴くと、“こんなこと思ってたんだなあ、若いなあ”とかも思いますし(笑)。結果的に、今回はかなり等身大な1枚になったと思います。

◆インタビュー【2】へ
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