【インタビュー】BACK-ON「ルーツを混ぜた新しいミクスチャーサウンド」

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2人体制となり、より活発に新たな道を切り開いてきたBACK-ONが、2018年2月に発表したEP『NEW ERA』以来のオリジナル作品となるデジタルEP『rebirth』の配信を1月22日よりスタートさせた。2019年7月より新曲のティザーMVが連続公開されていたこともあり、その全貌を早く知りたかった人も多かっただろうが、その期待に違わない内容だ。

自らのルーツであるミクスチャーサウンドを掘り下げながら、型にハマることない意欲作となった『rebirth』は、より広がりを持つメロディーに切れ味鋭いラップが抜群の存在感を放っており、アップデートを繰り返しバンドとして生まれ変わったことを強く主張するものだ。

ここではKENJI03(Vo、G)とTEEDA(MC)の2人に、新曲や今のスタンスについてじっくりと語ってもらった。


──ついに新作『rebirth』が発表されましたが、2019年7月から連続で新曲のティザーMVを公開していったというのは面白い試みでしたね。

KENJI03:2人体制なこともあり、活動感がそこまで見えないんじゃないかと感じていて、新曲もSNSやYouTubeを通して伝えていこうというアイデアから始まったんですよ。

TEEDA:ただ作品を発表するよりも、1曲1曲フルじゃなくてもいいからティザーMVがあれば、と。そんな中で「逆再生の映像って面白いよね」という話になって、逆再生は"reverse"だから、生まれ変わるという意味の"rebirth"を作品タイトルにして、新曲を公開しつつ、楽曲制作も同時進行でやっていった感じなんです。

──新曲の欠片が1曲ずつ公開されていくのはファンとして嬉しいかったんですけど、バンド側としては怖さみたいなところもあったのかなと。

KENJI03:めちゃくちゃありました(笑)。そもそもティザーMVでの新曲はデモの状態なんですよ。「three two one」とか、サビだと想定してティザーMVに使った部分が作品ではBメロになってますからね(笑)。

──ただ、新作の発表前からリアクションを受け取れるのもいいところですよね。

TEEDA:バンド仲間や先輩から「物凄い熱くなるよね。絶対にいいよ!」と言ってもらったりもしましたし。あと、ティザーMVは8mmビデオの質感で撮ったりもしたんですけど、それを「えっ!?予算…ないの?」みたく受け取られたりもしたり(笑)。

KENJI03:でも、そう言われることもフックになるかなと(笑)。まあ、(制作の)過程を見せる人ってなかなかいないから、そういったことも含めて、面白かったと思ってますね。

──しかしながら、現在の2人体制になって約2年半も経ちますし、ここにきて『rebirth』というタイトルをつけたことにも驚きました。


TEEDA:2人になって最初の作品である『NEW ERA』は僕らの決意、次のカバーEP『CHOP KICK TURN』は僕らのルーツ、それらを踏まえて「過去に感謝しながら生まれ変わろうよ」というところにたどり着いたんです。

KENJI03:振り返ると、『NEW ERA』はメンバーが脱退してすぐに取り掛かった作品でもあったし、「とにかく走り出さなきゃ、何か新しいレールを引かなきゃ」という思いが強かったんです。そこからツアーを廻ったり、海外にもちょこちょこ行かせてもらって、少しずつ吸収したモノの集大成、名刺代わりの作品になったのかなと感じてますね。

──感触として変わってきた部分は何かありますか?

TEEDA:自分たちのルーツを全面的に出せたかなと感じています。時代性を意識したりもするんですけど「やっぱり、このリフはアガるよね」みたいなところを詰め込めた。そこに現在のアプローチを加え、ルーツを混ぜた新しいミクスチャーサウンドになったんじゃないかと。

KENJI03:いろんな試行錯誤をして大変ではありましたけど、新しい音になったなという手応えはありますね。

──今回、バラエティ豊かな曲が顔を揃えましたが、制作に関して何かテーマは設けましたか?

KENJI03:大前提としてあったのは、今の活動とこれまでの活動をリンクさせたいということでしたね。これまでを否定しながら活動していきたくないし、過去の曲もずっとやっていきたいんです。あとは、落とし所としてはポップスにしたかった。あくまでど真ん中にいるバンドでありたいから。

──そういった意味合いもあるのか、タイトル曲「rebirth」は適度な強度もあってノリも良く、キャッチーなメロディーとラップのコントラストが際立っていて、BACK-ONの王道的なアプローチだなと感じました。

TEEDA:この曲はKEJI03も今と過去のBACK-ONのハブになる曲として作っていたので、メッセージ的な部分も「今と過去の感覚を混ぜ合わせて生まれ変わるよ」というところを表に出したんです。

──仕上がりも良さもそうなんですけど、ずっと応援してきたファンが安心する曲でもあるなと思いました。

KENJI03:今のBACK-ONに不安を感じていた人もいたかもしれないけど、配信されたときに「安心した」とか「今まででいちばんいい」という声も聞けたし、作ってよかったなと思いましたね。

──他の収録曲についても伺っていきますが、冒頭を飾る「Good morning」はわかりやすい激しさはないのにラウド感があって、凄く煽られる曲ですね。

TEEDA:これはライヴの1曲目、フロアを点火させられる曲がほしいなと思って作ったんです。だから、歌い上げるというよりかはサウンド感でガッツリと押してるという。で、途中から今っぽいラップが入ってきて、初めて観た人にも「何だ、コイツら!?」と感じてもらえたら、と。

KENJI03:過去のBACK-ONって、どちらかといったら歌のイメージが強いと思うんです。でも、今の僕は曲のパワーをもっと出したいなと考えてるし、だからこそメロディーも歌詞も尖りながらより良いモノを作りたい。ただ、そう考えた中でも「Good morning」は挑戦的な曲でしたね。

──サウンドとしてはどんなイメージを描きましたか?


KENJI03:自分が凄く影響を受けたNine Inch Nailsやzilchとか、ああいった人たちの1曲目って、初期衝動が詰め込まれていたから、まずそういう曲を作りたいと考えたんです。2019年9月からライヴでもやりだしてるんですけど、かなりいい感じですよ。

TEEDA:最初は怖かったですけどね。サウンドだけで引っ張っていけるのかなって。でも、実際にやってみたらどんどん(お客さんが)点火するようになってきました。

KENJI03:僕もそうなんですけど、バンドを好きな人ってギターがないと不安になっちゃうじゃないですか(笑)。それに普通の曲展開って、Aメロ・Bメロ・サビからまたAメロとかに戻るけど、「Good morning」に関しては戻ってこないんですよ。そういうのを完全に度外視してるから(笑)。

──ハハハハ(笑)。また、ラップにリリックもかなり鋭いですよね。

TEEDA:今までのリリックって、詩的だったり比喩表現が多かったんです。あとは聴いた人がいろんな形で受け止められるように、と考慮もしてて。だから、意外と「これはこれ」とは書いたことがなかった。で、自分がソロでヒップホップをするならこう歌うだろうなと考えて(歌詞を)書いてみたんです。完成してみて「凄く尖ってしまったな」とも感じたんですけど、KENJI03も「それでいっちゃいなよ」と言ってて(笑)。

KENJI03:今までにないTEEDAのラップが凄く出てると思ったんです。今回はラップをもっとクローズアップしたいなと考えてた中で、この「Good morning」はいちばんそれが色濃く出てるし、新しいサウンドとしてもいいと感じてますね。

──そして、ライヴでもずっと披露していた「Switch」は待望の音源化です。

TEEDA:ライヴを初めて観る人でも乗れる曲であり、演っているこっちも楽しい曲。言ったらQueenの「We Will Rock You」の出だしみたいな、どんな人でも乗りやすいビート感だし、Rage Against the Machineみたいなフレーズがあったり、BACK-ONにピッタリの曲だなと。ラップに関しても、ちょっとフリースタイルみたいなフロウで歌ってみて。

──このラップのリリックはかなり赤裸々ですよね。

TEEDA:「Good morning」の流れからきてると思うんですけど、自分の解放というか。

──前半もそうなんですけど、特に後半では誰もが隠したいような部分までさらけ出すじゃないですか。

TEEDA:完全に僕個人のコンプレックスですからね(笑)。でも、みんなどこかしらにはコンプレックスがあるだろうし、聴いてもらったら「わかる、わかる」となるかなって。そういうキッカケ、スイッチになって欲しいですね。


──「three two one」は試行錯誤して完成したということでしたね。

KENJI03:この曲に関しては、大改造というか、最初にまとめた形から残ってるのはイントロのリフぐらいじゃないですかね(笑)。それこそ、ボツにしようとしてたぐらいなんですよ。でも、しっかりやりきろうということになったとき、自分の原点に立ち返って作っているのに、ずっと聴いてるLinkin ParkとかLimp Bizkitみたいなヘヴィなリフが(BACK-ONには)ないなと気づいたんです。そこで、そういったモノをイントロに入れてみたら見事にハマって、曲を構築していったら大成功という。結果、個人的にいちばんお気に入りな曲になりましたね。

──ラップに関してはいかがでした?

TEEDA:ティザーMVに入れた段階だとラップがちょっと薄いなと。そこからいろんなハモりを重ねまくったらボトムもしっかり出たし、どっしりとしたダブっぽいラップができたなと感じてます。あと、サビになったらBACK-ONは歌ってきたんですけど、この曲はリフがサビだと思ってて。

──リフというと?

TEEDA:"Blaze me up"と繰り返して歌ったあとのリフですね。EDMのロックバージョンみたいで凄くいいなと感じたんですよ。

──あの部分がサビなんですね。

TEEDA:実際は違うみたいなんですけど(笑)。

──とはいえ、印象的なリフですよね。

KENJI03:Limp Bizkitの「Break Stuff」とか、フレッドのラップよりあのギターリフがみんな聴きたかったりするじゃないですか。そういう曲にしたいなと思ったんですよね。

──「TOKYO BE-BOP」はフロアをグッと盛り上げそうなチューンですけど、東京オリンピックが行われる年にTOKYOと前に打ち出されるとドキッとしますよね(笑)。


KENJI03:そこは悩んだんですよ(笑)。曲自体は2年半前からあったんですけど、このタイミングで収録するとなったとき、やっぱりそういう議論にはなって。TOKYOに代わる言葉をいろいろ探したりもして。ただ、何回やってもTOKYOの強さには勝てない(笑)。まあ、何かそういったモノがいただけたら万々歳ですけど(笑)、そこを目指して作ったわけでもないし、胸を張っていこう、と。

──この言葉はどういったところから生まれたんですか?

TEEDA:まずTOKYOに関しては、パンチがある言葉として、僕らは海外でも活動が多いし、仮歌の段階から凄くハマるなと思ってて。BE-BOPは、たまたまネットでBE-BOP-HIGHSCHOOLを観てたところからなんですけど(笑)。

──BE-BOPは、ジャズ用語ではなくBE-BOP-HIGHSCHOOLから(笑)。

TEEDA:そうなんです(笑)。音の響きの面白さから「TOKYO BE-BOP」にして「粋な日本人でいようぜ」という歌詞を書いたんですけど、改めてBE-BOPの意味を調べてみたら「モダンジャズで活きに自由な生き様を表現した」と知って。これはドンピシャだから、もう最初から知ってたかのようにいこうと決めました(笑)。

──実際、サウンドも歌詞も粋な曲として仕上がりましたね。

TEEDA:あと、いつもだったら"TOKYO TOKYO BE-BOP!"の部分がサビで終わってたと思うんです。でも、もうひとつ先の部分を作ったのも新しくて。

KENJI03:最初、サビとしては"TOKYO TOKYO BE-BOP!"のところしかなかったけど、もうひとクセ足したいと。ここで活きたのはいろんなアーティストに楽曲提供をしてきたことだったりもして。そういったときの作り方、コード感、メロディー、いろいろと思い出して、それを詰め込んでみたらサウンドとしても凄くハマりました。

──この曲はMVになったら見栄えも良さそうですよね。

TEEDA:もし、TOKYOの何かが決まったら派手にできるかなと(笑)。


──また、じっくりと聴かせる「Shall we dance」のようなバラードが収録されたのは意外でしたよ。

TEEDA:最初、僕も戸惑いはしたんです。ただ、KENJI03からHoobastank「Reason」みたいなポジション、ロックバラードなんだという聴いたら凄くしっくりきましたね。

KENJI03:この曲は僕の友人が結婚したタイミングで作った曲なんです。サウンドのアプローチとしてはズレる感じがあるかもしれないけど、BACK-ONは一貫して同じサウンドでやってきたわけじゃないし、こういう振り幅が自分たちというか。Linkin Parkの『Hybrid Theory』にOasisの「Don't Look Back In Anger」が入ってるみたいなことをできるのがBACK-ONなんじゃないかなって。

──この曲の歌詞はKENJI03さんが書いているんですね。

KENJI03:久しぶりに書きました。自分はトラックとメロディーに比重を置いてるから、歌詞はTEEDAに任せようという気持ちが強かったんですけど、これから書けるときは書いてみようかなと思ったりもしてます。

TEEDA:僕の印象だと、KENJI03は思い入れの強い出来事があると歌詞を書き出すんです。これも友人が結婚することに心が動いたから、その気持ちが歌詞になったのかなって。

──澄んだラブソングですけど、TEEDAさんから見てKENJI03さんはこういうことを思うタイプですか?

TEEDA:こういう…僕からすると、結構恥ずかしいことを書いたなと(笑)。

KENJI03:ハハハハ(笑)。

TEEDA:意外とラップ目線だと「love you」とかもサラッと言えちゃうんですけど、メロディーの中で「僕からのI love youだから」とか、よう言えるわって(笑)。

KENJI03:でも、あんまり考えて書いてないですよ(笑)。ホントにマイクの前に立って、自然と出てきた言葉をまとめたのが歌詞になっているから。


──「Chain 2020」は2006年6月にリリースしたメジャー1stシングル『Chain』のタイトル曲ですね。

TEEDA:この曲を新録したのは理由があって。海外だと、(サウンドはオケとして流す)2MCスタイルでライヴをすることがたまにあるんです。そんなとき、会場によってはアンコールが終わっても「Chain」をやってくれという声が多くて。ただ、14年も前の曲だから、データに不備があるというか、ドラムのデータが破損してたりもして物理的にできないという。

──代表曲のひとつですし、聴きたいファンも多いでしょうしね。

TEEDA:だから、それをクリアするには新たに打ち込むか、ドラムを録り直すかのどちらかじゃないですか。「Chain」は海外でライヴをするキッカケにもなった曲だし、このタイミングで生まれ変わらせて新録したかったんですよね。

──新録するにあたって以前のバージョンを聴き直したと思うんですが、成長は感じましたか?

KENJI03:特に僕の歌は成長してますね。リリースした当初はBメロのラインが全然歌えなかったし(笑)。

──とはいえ、ブラッシュアップはされてますけど、大きなリアレンジはないですよね。

KENJI03:そうなんですよ。当たり前にスキルが上がってるわけだから、新録自体、あんまり好きなことではないし。初期衝動感や荒さが良かったりもするじゃないですか。だから、へんな味付けはしないで、むしろ音を引いたぐらいですね。

TEEDA:面白かったのが、1本1本の音を確認していったとき、KENJI03が「すげえ当たってる不協和音なギターが入ってる」と気づいて、当然それを外してみたんですけど、仕上がりが綺麗すぎてあんまり良くない(笑)。

──不思議なもんですよね、そういうの。

TEEDA:結果、不協和音は不協和音としてちゃんと新しくして入れました(笑)。

KENJI03:そこが音楽だなと思いましたね(笑)。

──2月11日の大阪VARONを皮切りに、2月16日には名古屋ハートランド、2月22日には渋谷O-WESTというツアーが開催されます。

TEEDA:この2人体制になってライヴのやり方は結構変わってるんです。僕ら2人にドラムとマニピュレーターと加えてやってるんですけど、ライヴ中に曲やビートをとめないというスタイルが確立できてきて。流れの中で強弱をどう出すか、『rebirth』の曲と既存曲をどう配置するか。いろいろと考え、セットリストもまとまったので楽しみですね。

──まだライヴで披露してない曲というと?

KENJI03:「Shall we dance」「TOKYO BE-BOP」「rebirth」「three two one」はまだですね。セットリストのいいところに置いてるので、かなり盛り上がるツアーになるかなと思ってます。

──ちなみに、2020年はメジャーデビュー15周年になるんですよね。

KENJI03:特に変わらずやってるんですけど、応援してくれる人たちやスタッフとかに感謝できる感じになればいいなと思ってますね。

──アニバーサリーイヤーですと、特別なイベントを企画したりすることも多いですけど、そのあたりは?

TEEDA:KENJI03も言った通り、今まで支えてくれた人、ファンのみんなに感謝の気持ちを伝えられるような場は設けたいなという話はしてます。

──今回の『rebirth』は2年半前にはデモがあったという曲も多いということですし、さらなる新作も期待できるぐらいストックもあるのかなと想像しますけど。

KENJI03:曲は常に作り続けてるので、そこをさらに詰めて、発表するタイミングを考えつつ、また面白いことをできるようにしたいと考えてますよ。

──まずはこの東名阪のツアーを成功させてから、ということでしょうね。

KENJI03:そうですね。今回のツアーでライヴの世界観もかなり変わると思うんです。そこをどうみんなに感じ取ってもらえるのか。凄く楽しみにしてます。

TEEDA:ちょっと個人的なことになるんですけど、ツアーではテーマをいつも設けてるんです。今回は結成当時のようというか、たがを外してみようかなと。長くやってくると、ライヴ中に空気を読みすぎてしまうというか、予測できちゃう部分も多くて。だから、このツアーではそこを考えず、とにかくフルで突っ込んでみようと思ってます。

interview by ヤコウリュウジ
編集:BARKS編集部

<rebirthツアー>
2020.02.11 (火)大阪FANJ twice17:3018:00
4,000円(+1ドリンク)
YUMEBANCHI 06-6341-3525(平日11:00~19:00) / www.yumebanchi.jp

2020.02.16 (日)名古屋ハートランド16:3017:00
4,000円(+1ドリンク)
サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

2020.02.22 (土)渋谷O-WEST17:3018:00
4,000円(+1ドリンク)
H.I.P. 03-3475-9999 / www.hipjpn.co.jp
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