【インタビュー】“現在”を表現した、VALSHEからの『PRESENT』

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■ひとりの人間として返せたら

──VALSHEさんが作詞、作曲を手がけた「PRIMARY RULE」はデジタルサウンドでヒップホップテイストのある踊れるナンバーですね。

VALSHE:「K-POPサウンドをVALSHEがやったらこうなります」っていう立ち位置にしたかったんです。ブレイクビーツ的なオケでコーラスはかなり重ねています。こういう曲って5〜6人で歌っているイメージがあるんです。

──わかります。

VALSHE:そのイメージを意識しつつ、一方でソロシンガーならではの迫力、力強さ、一音、一音のコントロールにこだわってレコーディングしましたね。

──歌詞は“24時間のうち1秒 たった1秒でもいいから笑っていれるなら 生きれる 生きれる まあ上等だ”という箇所がとても印象的です。

VALSHE:アルバムの中だといちばんあけすけというか、見方によっては非常に重苦しいテーマではあるんですが。

──言葉遊びも入れつつ、シリアスなメッセージをのせてるなと思ったんですよね。

VALSHE:そうですね。いち個人の感覚なんですが、自分自身が昔から応援歌というか「頑張ろうよ」っていう曲がリスナーとして苦手だったんです。シンガーになったいまはそういう側面も考えられるようになりましたけれど、子供の頃は素直じゃなかったから「なにを根拠にこの歌、“大丈夫”って言ってるの?」って思っていたんですよ(笑)。

──夢は叶うから大丈夫、みたいな歌ですよね。

VALSHE:そう。自分がリスナーとして、はじかれたショックみたいな感覚があって、歌が入っている曲が聴けなくなった時期があったんです。そこからゲームのサウンドトラックやピアノアルバムとかいろんな音楽を聴くようになって、結果的に役立っているんですが、いざ、自分自身が発信する立ち位置になったときに「どういうふうに伝えたら、聴く人たちの気持ちをこぼさずに背中を押せるんだろう?」って自分なりになにが言いたいのか考えたんですよね。ファンの中には「頑張ってないとVALSHEに会いにいけない」「頑張ってないと応援する資格がない」と思っている人たちもいるんですが、「頑張ってるから好きって思っているわけじゃないんだけどな」って。アコースティックツアーではそういうことを言葉にして伝える機会がたくさんあったんですが、せっかくだから自分が作った曲で音楽として伝えようって。重要なメッセージだからこそ、軽快なサウンドのほうがいいなと思ったんです。

──壁を乗り超えていく強さを求めているわけじゃないんだっていう?

VALSHE:生きていたら超えられない壁だって絶対にあるし、さっき話したように自分自身が否定されたって思ったことがある人間だから、「そうじゃないんだよ」って。自分のようにネガティブな思考の持ち主が聴いたときに「ま、いいか」と思ってくれたらいいなぐらいな気持ちですね。

──1秒でも笑っていられたらいいじゃんって言われたら気持ちが楽になります。

VALSHE:自分自身も「最終的に自分が笑ってればいいよ」、「自分が楽しければいいじゃん」っていう教えのもと育っているので(笑)。

──「箱庭シンドローム」は今作の中で最も情緒的なメロディの曲ですね。

VALSHE:古き良き歌謡曲的なdorikoの楽曲が好きなので「久しぶりにそういう曲書いてよ」ってお願いしました。

──“孤高のピアノ奏者”という言葉が出てきますが、ファンタジーとリアルのバランスでいうと?

VALSHE:歌詞に関してはがっつりファンタジックな世界観ですね。真意はノンフィクションなんですが、それをファンタジックなテイストで物語のように展開していく手法をとっています。VALSHEが大事にしている世界観もしっかり入れておきたかったんです。

──攻めのデジタルロックなナンバー「ACE of WING」をリード曲に選んだ理由を教えてください。

VALSHE:「ACE of WING」と「紅蓮」は同時期に存在していた曲なんです。メタルの要素が強いゴリゴリのサウンドで、自分の好みのど真ん中を突いている曲です。

──生のバンドサウンドにしたら、もろにメタルになりますね。

VALSHE:(笑)おっしゃる通りです。なぜ「紅蓮」をシングルにして「ACE of WING」をリード曲にしたかというと自分の中にあったアルバムのヴィジョンを広げてくれる曲だったからなんです。VALSHEらしさをしっかり表現できる立ち位置の曲にしたくて、歌詞もアコースティックツアーを経たからこそ書けた内容になっていると思います。歌詞は“羽”がモチーフなんです。伝えたかったのはひとりひとりが羽を持っていて“あなたに私の熱意が見えているように、どれだけ地べたを這いつくばっていても飛ぼうとしている熱意が自分にはしっかり見えている”ということ。自分の考えというより“自分たちは同じ目線で一緒なんだよ”っていうことが言いたかったんです。

──ファンはVALSHEさんを強い意志を持って突き進んでいくタフな人と思っているんじゃないでしょうか?

VALSHE:身近な友達みたいに感じている人もいるかもしれないし、全然立ち位置の違う人と思っているかもしれないし、それは個々によって違うと思うんですが、VALSHEの一挙手一投足に対してそれをネガティブな感情では見てないと思うんですよ。でも、「自分も一緒なんだけどな」って。自分のことは見えないのはお互い様だよねって。「自分にとってはすごくあなたも強く見えるし、カッコよく見えてるよ」っていう気持ちがあるんですよね。

──ミュージックビデオもこれまでのVALSHEさんなら、ストーリー仕立てで隠しアイテムがあったと思うんですが、今作はストレートですね。

VALSHE:そうですね。自分の中では挑戦だったんですが、「TRIP×TRICK」以来、6年ぶりに篠田監督にお願いして王道かつストレートなミュージックビデオを作らせてもらいました。「紅蓮」はファンタジックな世界観を打ち出して、「「SYM-BOLIC XXX」」はVALSHEの基礎になるような位置づけの映像だったんですが、今作で見せたいのはもっと無骨な感じだったんです。いままでと大きく違うのはVALSHEの顔がそんなにクローズアップされていないと思うんですよ。サビの部分で綺麗に顔が見えていないといけないっていう刷り込みを全部裏切ってみるみたいな(笑)。構成の中での切り替えのカッコよさや疾走感だったり、自分がやってみたかったことや、いま良しとするものを追求しています。



──アルバムの最後を飾る曲「present.」はいちばん有機的なサウンドでみんなでシンガロングできるような曲。この曲にはVALSHEさんからのプレゼント的な要素が感じられます。

VALSHE:先ほど少し話に出たように、アコースティックツアーを廻ったときに箇所、箇所でテーマを設けてアンケートをとらせてもらったんですね。自分自身が旅をする中で感じたことやアンケートを読ませてもらって思ったこと、気づいたことを受けて作ったのがこの曲です。最初はみんなの言葉を組み合わせて1曲作ってみるのも面白いなと思っていたんですけど、自分自身が本音として思ったことを書こうって。読み進めていく内に共通項として自分の中に残った言葉は“強さ”で、すごく美しいなと思ったんですよ。アンサーソングじゃないけど、現在の自分が思っていることをちゃんとひとりの人間として返せたらいいなって思って書いた歌詞です。“僕らのうた”って書かせてもらっているんですが、この曲においてもそうだし、アルバムを作った動機という意味でも鍵になる言葉だから入れたいと思ったんです。

──最後に4月11日から開催される<VALSHE LIVE TOUR 2020「PRESENT」>はどんな内容になりそうですか?

VALSHE:アルバムと同じタイトルをつけるツアーって初めてなんです。“現在”を軸にしたアルバムをもって廻るツアーなので、そこを大事にして廻りたいのがいちばんですね。昨今の情勢でどうなるかわからないですが、アルバムでも書いているように“なるようにしかならない”と思っているし、「ないならないなりになにかやるわ」と思っています。絶望していてもなにも生まれないので。日々、楽しみに生活している人はガッカリするかもしれないけど、VALSHEがなにか代わりに楽しいことを考えます(笑)。

取材・文◎山本弘子

▲『PRESENT』初回限定盤

▲『PRESENT』通常盤

4th ALBUM『PRESENT』

2020年4月1日(水)発売
■初回限定盤(CD+DVD)
JBCZ-9103 ¥3,900+税
■通常盤(CD)
JBCZ-9104 ¥3,000+税
※白皙描き下ろしイラスト

[CD] ※全形態共通
1.You can never cross the sea just by staring at the water surface
music & arrangement by Shun Sato

2.海賊讃歌
lyrics by VALSHE
music & arrangement by Shun Sato

3.「SYM-BOLIC XXX」
lyrics by VALSHE
music & arrangement by Shun Sato

4.アルビレオ
lyrics by doriko
music by Okada Pillow
arrangement by iroha(sasaki)

5.PRIMARY RULE
lyrics by VALSHE
music & arrangement by G’n-

6.箱庭シンドローム
lyrics by VALSHE
music & arrangement by doriko

7.紅蓮
lyrics by VALSHE
music by Kotaro Odaka・UiNA
arrangement by Shinya Saito

8.ACE of WING
lyrics by VALSHE
music & arrangement by Yusuke Yuba

9.present.
lyrics by VALSHE
music & arrangement by Shun Sato

[特典DVD]
「ACE of WING」 Music Video & Making of 「ACE of WING」

<VALSHE LIVE TOUR 2020「PRESENT」>

2020年
4月11日(土)東京・TSUTAYA O-WEST
4月25日(土)大阪・ROCK TOWN
4月26日(日)愛知・アポロベイス
5月5日(火祝)神奈川・新横浜 NEW SIDE BEACH!!

オールスタンディング ¥6,000(税抜)
※ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可

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