【インタビュー】代官山UNITがスタートする二本のプロジェクト第一弾「独自のライブ配信システム<MUSIC NON STOP !>」

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新型コロナウィルスの影響は音楽・イベント業界を揺るがせていることはご存知の通り。こと、ライブハウスに至っては大きな社会問題にまでなっている。イベントや公演がキャンセル/延期になってもしかし、ライブハウス側も手をこまねいているわけにはいかない。そんな状況の中、代官山UNITが新たな一手を打つ。独自のシステムを構築した生ライブ配信と、中止になった公演の主催者やアーティストのためにキャンセル料を募るクラウドファンディング、そのふたつのプロジェクトだ。今回、代官山UNITのディレクター鈴木俊介氏にそのふたつのプロジェクトがどんな意味合いを持つのか聞いてみた。

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──新型コロナウィルスによる代官山UNITの現状はどうですか?

鈴木俊介氏(以下、鈴木) 2月末に政府発表がありました(2020年2月26日の新型コロナウイルス感染症対策の基本方針)。自粛協力要請っていうかな、あれが発表された途端に敏感な大手の事務所所属のアーティストさんはじめ、ほとんど皆がいち早く延期/キャンセルという判断。そこから始まり、大手のイベンターさん、大手の事務所さんは3月中はほぼほぼキャンセルという状況です。さらに先日、自粛延長の発表もありましたよね。それからも追い打ちをかけるように中止や延期をしたいという公演があって、すでに4月にも影響が出始めました。海外アーティストは、5月のものまで来日しないという連絡もすでにもらっていて……。

──3月の公演に関しては、アーティストはやりたいけど事務所がNGというパターンでしょうか?

鈴木 それもケースバイケースで。例えば大手のレコード会社さん所属のアーティストだと、会社としてNGなので動きたくても動けないということもあるようですね。原則禁止。

──少し話がズレますが、2001年3月の東日本大震災の後にあった、いわゆる“自粛ムード”とは違いますか?

鈴木 震災のときはまだここ(代官山UNIT)にいなかったんです。ただ当時のデータを洗ったのですが、震災があった3月中の公演はほぼキャンセル。でもデータを見ると4月1日からは通常運転でした。皆で盛り上げて頑張っていこうぜ、みたいな雰囲気ですよね。諸先輩方に当時の話を聞いて今回のことと比べてみると、事の内容が違うから、今回に関しては全く読めないと……。逆に震災のときは場所さえ整えばチャリティイベントができた。今回は先の見通しも立たず、事実上人が集まれないわけですからそういうことをやりたくてもできない状況です。やはり音楽、イベント業界は震災のときとは大きく雰囲気が違う気がします。


──そういう流れがあって、今回UNIT主催のLIVE配信イベント<MUSIC NON STOP !>の立ちあげに至るわけですね?

鈴木 そうですね。今回ふたつのプロジェクトを立ち上げました。ひとつは<MUSIC NON STOP !>という生ライブの映像配信に関するプロジェクト。もうひとつ<HELP ME!! HELP YOU !!!>は、キャンセルになってしまった公演に対して、通常の規約通りだと31日を切ると100%のキャンセル料を請求していたわけですが、ほかのライブハウスさんと同様にそのあたりの条件を積極的に下げて主催者やアーティストの負担を軽減しようというプロジェクトです。最低限の費用や人件費などもありますので、キャンセル料をゼロにはできません。主催者やアーティストに請求しなくてはいけないキャンセル料をクラウドファンディングで集めるという趣旨。この二本柱になります。

──<MUSIC NON STOP !>は第一弾が決まっているそうですね?

鈴木 第一弾としてパソコン音楽クラブが22日に決定してます。

──<MUSIC NON STOP !>は今後はどんなふうに進めていくのですか?

鈴木 この状況がいつまで続くか分からない中で、お客さんに来ていただいてライブをするということではなくて、UNIT独自の生ライブ配信の手段や方法論を整えて、配信を行っていきます。今までもライブで映像配信することはありましたが、基本的にカメラクルーは乗り込みでした。それをこちらですべて準備して、人も準備して、アーティストだけ来ていただければ即配信できるような環境を整えます。

──アーティストさんは「配信代」をお支払いする形ですか?

鈴木 方法論はまだまだ試験段階ですが、通常のライブをおこなうコストに配信のためのコストがかかるイメージです。ライブの配信自体は難しくないのですが、コストと配信クオリティのバランスが最も大切なファクターです。パソコン音楽クラブに関してはUNIT発信のイベントのため、こちらのパッケージで配信する形です。YouTubeの“投げ銭”や、先日ceroさんの生ライブ配信で話題になりましたが、ライブ配信専用チケットの販売も導入します。新しい形の興行収益がでるようなフォーマットを作っていければ。まだ未知な部分は多いですが、ceroさんの事例を見ていると大変な可能性を感じます。<MUSIC NON STOP !>の方法論が評価されれば、いまの閉塞状況を打破でき、いずれコロナショックも収まりお客さんに来場いただけるときでも、会場にいらしていただけない方々の選択肢のひとつとして同時にライブ配信もできるということになるとアーティストもキャパシティが無限になる。それはそれでとても新しいライブの在り方としての胎動を感じます。

──配信インフラの整備は急遽?

鈴木 そうです。いろんな方にご紹介していただいたり、コネクションを利用して……経験上かなりの高額になるかと思いましたが、こちらの趣旨をご理解いただき協力体制を得ることができました(笑)。ただいろんなライブハウスがライブ配信を始めようか、というなかで、うちは天井高もあり配信に適したステージが自慢です。機材クオリティも高く皆さんの期待に沿える映像を配信できると思います。配信をおこなう会場としてキャパ的、コスト的にもちょうどいい会場のサイズ感でライブ配信ができます。


──いろんなハコ、メーカーなど、これから配信に向かうと思います。そんな中UNIT独自の強みはどういうところですか?

鈴木 打ち出し方に関してはいろいろと考えています。まずUNITでの映像配信や収益システムをスタンダードなものにできれば。今まではライブをおこなう際、音響/照明がセットでした。それに映像が入って3つ肩を並べる形にします。映像配信のクルーが乗り込むことって数的には少ない方でした。その都度対応する形だった。その映像を音響照明と同じくらい稼動させていくイメージです。もちろんクオリティもいままでと同じレベルで担保しなくてはいけない。そこがある意味、境界線になるのかなと……現状AtoZでの生ライブ配信をキチンと整えてやろうとしてるケースは今のところないと思うんです。そのクオリティが“代官山UNITの強み”の指標になればな、と思ってます。

──インフラに関してはどういう設備になっていますか?

鈴木 分かりやすいところでいうと5つのカメラで撮影を考えているのですが、まだまだ模索中でもあります。テスト配信、22日の本番、それに今月中にはバンドものの配信を予定しているので、そういう現場を重ねていく中でUNITの基本フォーマットを作っていけたらいいなと思ってます。実際のインフラも主催者やアーティストの考え方に寄り添う選択肢を提案しています。


<LIVE STUDIO DAIKANYAMA UNIT PRESENTS MUSIC NON STOP ! #01>

2020年3月22日(日)
代官山UNIT
開演:18:00
LIVE:パソコン音楽クラブ

◆代官山UNIT YouTubeオフィシャルチャンネル
◆代官山UNIT オフィシャルサイト
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