【インタビュー】植田真梨恵、新曲ダブル配信が物語る充実のアルバム制作「全てのひらめきとわくわくを一枚に」

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■“植田真梨恵としてはできない”
■そう思っていたところへ踏み込んだ

──「WHAT's」を制作されたのはいつ頃ですか?

植田:映画タイアップの話をいただいて、台本が到着したのが2018年秋の終わり頃だったと思います。

──1年以上前に制作されたということは、昨年10月に配信リリースされた前曲「Stranger」よりも前ということになります?

植田:そうです。「Stranger」は2019年の7月終わりに書いたものなので、「WHAT's」のほうが先にできていました。だからたぶん「WHAT's」の編曲にとりかかった頃から、“1990年代っぽさ”とか“懐かしい打ち込み”みたいな感じと、“アコースティックギターがずっと生で鳴ってる”という、2つの関係性をもっと突き詰めたくなっていたんですね。

──そういうことだったんですね、この2曲は。

植田:昨年末の<PALPABLE! MARBLE! LIVE! -ANNIVERSARY 2019->(11月1日@Zepp DiverCity TOKYO)では、「Stranger」と「WHAT's」といった新曲2曲を続けて演奏したんですけど。それは今、BARKSさんがおっしゃろうとしているように(笑)、兄弟みたいなところが、この2曲にはあるからで。



──そうなんです。先ほど植田さんが挙げてくれた“打ち込み”とか“昔風のシンセ”とか“ずっと鳴っているアコギ”というサウンド表現の手法という意味で、「WHAT's」と「Stranger」は近い。そこに植田さんの現在が表れていますか?

植田:「WHAT's」を制作した頃は、曲として華やかなものも書きたいと思い始めていた時期で。1曲1曲が持っている“華”みたいなものを見つめたときに、もちろんリアルさも大事なんですけど、ただ生音でドーンと録音することにこだわるのではなくて、時には装飾を取り払って、生音であるとか打ち込みの音であるとか関係なく、“歌ものです”って言える楽曲にしたいという気持ちが強かったんです。

──「Stranger」インタビューのときに植田さんは、「新しいもの、今までなかったものをつくりたい」という話をしてくれまして。それは「WHAT's」制作時から考えていたことでもあります?

植田:はい。“植田真梨恵としてはできない”って思っていたところへ踏み込んでいるというか、“こうじゃなきゃいけない”という自分像から離れ始めた1曲目なので。サウンド的には打ち込みであったり、少しダサいシンセであったりとか、今まであえて選ばなかったようなものを踏んでいったところが、この「WHAT's」という曲で私が気に入っている部分なんです。

──「WHAT's」や「Stranger」はサウンドレンジが幅広いですよね、ハイハットによるカリカリの高音域からシンベやキックのドーンという重低音まで。ある意味ドンシャリだからこそ、その間を縦横無尽に駆け巡る植田さんのボーカルが際立っているという印象を受けました。

植田:あぁ嬉しいです。「WHAT's」のアレンジャーの徳永(暁人 / doa)さんは、「夢のパレード」や「FAR」とか、他にもたくさん編曲をしてくださっているんですけど、現在の音楽事情に対しても勉強熱心ですし、アートとして音楽をつくっていくという姿勢がある方で。「WHAT's」は遊び心も込めて編曲していただいたので、それがいい形で作用しているんだと思います。


──具体的な音づくりの話ですが、「Stranger」は生活音や人の声などのサンプリングを含めて「ワクワクするものだけで構成した」と語ってくれましたけど、「WHAT's」のアレンジに関して徳永さんに伝えたイメージは?

植田:“アコースティックギターが真ん中で鳴っている上での打ち込みのサウンド”っていうところと、サビの前に入ってくる“タラララララララ”っていう展開を含めたシンセの音色、それだけなんです。だから「Stranger」と比較すると、「WHAT's」は徳永さんにお任せした部分が多いんですね。アコースティックギター1本で弾き語りしたシンプルなデモ音源を徳永さんにお渡しして、細かい部分は「ここに“ドゥッドゥッ”っていう打ち込みのキック音を足してください」とお伝えしたくらいで。かなりイメージに近いものが、徳永さんのアレンジの第一稿からありました。

──「WHAT's」でつくった新しいサウンドを踏襲した作品が「Stranger」だとすると、その源流となる「WHAT's」での変化ってけっこう大きなものだと思うんです。たとえば、逆回転的なアプローチでリズムが構築される場面もあったりして、細部までこだわる植田さんならではだなと感じたんですが…それってもしや?

植田:徳永さんです(笑)。それこそ「Stranger」の編曲を進めながら、“「WHAT's」ってすごいなー”って思ったんです、私(笑)。華やかでダイナミックで、しかもほのぼのとした遊び心がおもしろい。そういうものを目指した部分が「Stranger」にあるから、鉄琴の音とか回転数を変えた音を入れたりとか、よりユーモアを頑張ったところもあるんですよ。

──パワフルさと儚さ、シリアスさと遊び心、直感と構築美、そういう両極が巧みに調和された「WHAT's」のアレンジに「Stranger」が引っぱられた部分もあって、兄弟みたいな2曲なんでしょうか?

植田:そうですね。“アレンジって本当に大切だな”と思ったんです。一方で、「I JUST WANNA BE A STAR」みたいな生一発のレコーディングが楽しいっていうのもあるんです。そういう全部のひらめきとかワクワクを1枚にしたいから、今つくっているアルバムは、生音ドーンっていう「I JUST WANNA BE A STAR」路線の楽曲もあるし、「WHAT's」「Stranger」みたいな質感の曲もある。他の作家さんやミュージシャンに作曲をお願いした曲もありますし、アルバム一枚をいろんな人とコラボレーションみたいにつくっていくイメージなんです。その着想は「WHAT's」ができてなかったら生まれなかっただろうなと思います。

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