【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vol.129「オンライン・フェスの良さと、ライブの尊さと~<SUPER SONIC>開催への支援~」

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ライブ、イベント、音楽フェスなどが開催できなくなり、アーティストの動向を追うためのツールとしてインターネットは欠かせないものとなった。特に外出できなかった2月から6月のつい先日までは日本の「おうち時間」と世界的な「Stay Home」が重なったため、日本のみならず世界中のアーティストたちがそれぞれの自宅から配信するライブを自宅にいながらリアルタイムで、しかもその多くが無料で視聴できたのは誠に異常な事態だったと思う。

リモートの妙とでも言えばいいのだろうか、それまでは手の届かない別次元の創り上げられたステージにいたアーティストがスッと降りてきて、素に近い姿でネット配信の場に姿を現し、その才能を惜しみなく披露していた。中でもInstagramでのライブ配信やIGTVではColdplayのクリス、MIYAVIのファミリーライブはあの特殊な状況下でしか味わえない距離感でアーティストの優しさを感じ取ることができる心温まる時間だったし、PULPのジャービスが配信していたベッドタイム・ストーリーズやDomestic Discoなどは彼の世界観がしっかりと伝わるクオリティで届けられていて見応え聴き応え共にたっぷりだった。この約4ヶ月の間では、時差があろうが、どこにいようが、自分がチャンネルを合わせさえすれば様々なアーティストに繋がることができるというインターネットの恩恵を再認識させられるのと同時に、発信する・しないも含めて個々のアーティストの姿勢や個性が浮き彫りになったと思う。



自粛要請期間があけて、遠出が許された初めての週末となった6月20日と21日もまたオンラインでの音楽活動が活発だった。政治的方針での緊急事態宣言解除とは言えコロナが消滅したわけではないため、外出を躊躇した人も多かったようだが、筆者も多分に漏れず遠出をしようとは思えなかったので<SUMMER SONIC 2020 ARCHIVE FESTIVAL>と<オンラインやついフェス>に自宅から参加することに決めた。


<SUMMER SONIC 2020 ARCHIVE FESTIVAL>はタイトル通り過去のヘッドライナー級アーティスト8組のアーカイブ映像で構成され、YouTubeで配信された。一方の<オンラインやついフェス>はYouTube、LINE LIVE、ニコニコ生放送などどのプラットフォームを使って同時多発的にアーティストの自宅や全国のライブハウス、飲食店などを結ぶ生配信という画期的で斬新なスタイルのフェス。どちらも充実の内容で、時に爆笑し、時に涙したりとパソコンの前に居ながらいろんな場所へ行ったり来たりと忙しい2日間を過ごさせてもらった。主催されたやついいちろうさん、クリエイティブマンの皆さん、出演者や裏方の皆さんに感謝している。

これほど大きな魅力があり、無限の可能性を持つオンラインでのライブ配信だが、ただひとつ、オンラインでは感じられないものがある。それは温度だ。画面越しではその場の熱気と温度が入り交じった臨場感を感じることができない。それゆえアーティストのパフォーマンス・エネルギーの放出量は同じでも配信視聴ではライブ会場で受け取るそれの半分にも満たない。半分にも満たないながらも見る者、聴く者の心をばっちり震わせるモンスター級のパワーを持つアーティストもいるが一握りだ。それを見事にラインナップしたのが<SUMMER SONIC 2020 ARCHIVE FESTIVAL>だった。


6月19日(金)~28日(日)の2週末にわたる5日間では日本の音楽シーンを代表するMr.Childrenを皮切りに、BTS、LINKIN PARK、Metallica、Arctic Monkeys、The 1975らのダイジェスト映像、そして、Underworld、Radioheadに至ってはフルセット映像で構成され、他のオンライン・フェスとは一線を画す充実の内容でどれも素晴らしいライブ映像だった。とりわけ3年前にこの世から去ったチェスターがステージ上で歌う姿には心が震え、涙も流した。見ていてあれほど心臓がゾワゾワしたのは、もう2度と見られないステージだからなのか、それともライブという場への回帰を求める自分の心情からなのか。いずれにせよ、20数分という短時間でもLINKIN PARKの偉大さと失ったものの大きさを再認識するには充分だった。だが、それをライブで体感していたらどうなっていただろうか。余程の鈍感な人でない限り、一生忘れられないものになったはずだ。


無論LINKINのそれに限らず、ライブとは一期一会のものであり、二つと同じものはない。不特定多数の人たちと同時に同じ音を浴び、同じ光景を見るという非日常的な空間だからこそ、刹那的な奇跡や他では得がたい凄絶な一体感が生まれるのだ。それがライブとオンラインで音楽などの芸術を楽しむこととの決定的な違いである。思い返せば、サマソニ伝説の中でも名高い2003年のレディオヘッドのステージは17年経った今でもその光景を容易に思い出せるし、受けた衝撃は体と心が覚えている。あの日は海風が心地よく吹いていた気持ちのいい夜で、数万人が詰めかけたステージ上空をまるでスタジアムに沿うかのように弧を描きながら輝く月が異常に綺麗だった。そうした奇跡的な自然現象まで味方に付けた彼らのライブは最強であったし、駄目押しするかのように奏でられた予期せぬ「Creep」での歓喜に満ちたオーディエンスの大合唱では完全にひとつになった。当時、場内で観ていた時点で「これは伝説になる」と感じたほど、アーティストもオーディエンスもこの上ないほどエネルギッシュで幻想的で、すべてが完璧なまでに美しかった。

オンライン・フェスもオンライン・ライブも今に始まったことではないけれど、コロナ禍を経た今ではその存在意義は大きく異なるし、注目度合いも比較にならないほど高く押し上げられた。過去にもYouTubeなどで無料配信される音楽フェスはあったけれど、今後はオンラインでのライブ配信が収益のツールとして欠かせないものになるだろうし、その仕組みが今以上に整えば世界中のフェスやライブにオンライン上で参加することが当たり前になるだろう。本当に夢のようだけれど、それはきっと遠くない未来に起きるはずだ。先日のサザンオールスターズが行った無観客ライブ配信はそれを先駆けて証明した国内初のケースとなった。


発信する側と受信する側の双方が気軽で手軽に楽しめるのがオンラインの良い点であることは明快であるし、音楽だけではなくエンターテインメント全体の新たな楽しみ方になっていくのも間違いない。それを上手にビジネスに変えていくことが危機を乗り切るための鍵になるのだろうとも思う。現に<SUMMER SONIC 2020 ARCHIVE FESTIVAL>もクラウドファンディングでの資金集めに成功している。もちろんそれは売り上げ向上のためではなく赤字の補填や9月に開催予定の<SUPERSONIC 2020>や今後の公演を再開していくためのものだ。

■「みんなの安全を考えて進めていく」

今回の<SUMMER SONIC 2020 ARCHIVE FESTIVAL>のイントロダクションにおいて<SUMMER SONIC>創設者であるクリエイティブマンの清水直樹社長は国内の夏フェスを含め、世界中の大型フェスが軒並み中止や延期を強いられる中で偶然にもオリンピックとの関係で<SUMMER SONIC>の開催をしない代わりに9月に開催することになった<SUPERSONIC 2020>を“選ばれたフェス”と表現し、「僕らから始めなければいけないんじゃないかという信念を含めて「やる」という方向で進んでいます」と語っている。また、現時点では観客数を東京では予定の5万人から3万人以下に、大阪では2万人以下にし、マスク着用、消毒などで感染防止対策を万全にして客の安全をはかる他、開催と同時に世界配信する展望を明かすなど、今後の音楽シーンを存続していくための新たな要素が集約する音楽フェスの創成を追求する構えだ。


現在、クリエイティブマンは、9月の<SUPERSONIC 2020>と今後の公演再開に向けて「SUPERSONIC / 来日公演 開催支援プロジェクト “Don’t Stop The Music” ~みんなのLIVEのために~」を実施中で、主に客の安全面にかかるコストへの支援を広く求めている。このクラウドファンディングでは2000円からサポートが可能となっており、リターンには幻の<SUMMER SONIC 2020>Tシャツやクリエイティブマン主催公演で使えるチケット・クーポンなどが用意されている。サポートしたい人がダイレクトにサポートできるこうした仕組みを利用して、一人でも多くの人がこの夏に幻のサマソニTシャツを着れば、秋には我らの音楽空間が再び舞い戻ってくるかもしれない。



<SUPERSONIC 2020>開催が実現すれば、コロナ禍後の大規模な音楽フェス開催の世界初のモデルケースになる。これまで数え切れない音楽との出会いの場を創り、提供し続けてきてくれたことへの感謝を支援に変えて伝え、且つ、フェスやライブの再開実現のためにサポートができるのは素晴らしいことだ。皆が前向きになれる支援の輪を今こそ広げていこう。Don't stop music!

文◎早乙女‘dorami’ゆうこ
写真提供◎CREATIVEMAN PRODUCTIONS CO.,LTD.


<SUPERSONIC 2020>
9月19日(土)、20日(日)、21日(月・祝)千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張海浜公園
9月19日(土)、20日(日)大阪・舞洲SONIC PARK

◆<SUPERSONIC 2020>オフィシャルサイト
◆「SUPERSONIC / 来日公演 開催支援プロジェクト “Don’t Stop The Music” ~みんなのLIVEのために~」
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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