【インタビュー】kobore、“不変”の美学「自分たちのやりたいことを」

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koboreが8月5日(水)に日本コロムビアからメジャーデビューアルバム『風景になって』をリリースした。彼らの音楽を聴き続けていたファンには、これ以上嬉しいニュースはないだろう。年間150本以上のライブを行い、自他ともに認める“ライブバンド”であるkoboreにとって、思うようにライブができない状況には歯がゆい思いがあるに違いない。それはライブを待ち望んでいるファンも同じはず。そんな人たちに向けて彼らは、表情豊かで躍動感があり、尚且つドラマティックな11曲の物語で綴られた最高のフルアルバムで応えてみせた。「FULLTEN」が『ダウンタウンDX』7-8月エンディングテーマに起用されるなど、これまで以上に注目を集めている中、佐藤赳(G&Vo)と田中そら(B)に話を訊いた。

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■今の状況も乗り越えて行ける

──まず、それぞれ外出自粛期間をどう思い、どう過ごしてきたのか聞かせてもらえますか。

佐藤:丁度コロナ禍になる前ぐらいから一人暮らしを始めまして。IHコンロの使い方がいまいちわからなくて。あれってIH専用のフライパンとかじゃないと料理できないじゃないですか?だから卵焼き作るときに火加減がわからなかったりとか……

田中:なんの話?(笑)。

佐藤:(笑)。あとは、趣味のお笑い鑑賞をしたりとか、D.I.Yで壁に木を立てたりとか。基本的にはそういう家のことをずっとやってました。その合間合間でリモートでみんなで曲を作ったりしてたので、ライブはなくなっちゃったんですけど、暇だな〜っていう感じはなかったですね。

田中:僕は自粛期間の間、色んな予定がなくなって急に暇になってしまって、喪失感で最初はうなだれてましたね。でもこのアルバム『風景になって』のレコーディングスケジュールはあらかじめ押さえられていたので、それに向けて練習する時間が増えたと思うようにして、楽器の練習に熱を入れまくってました。

──メンバーそれぞれの性格によって、自粛期間の捉え方も違った感じですか?

佐藤:まあ、メンバーはそんなに気にしている様子はなかったですけどね。もともと曲作りの期間を決めていて、その間ライブ本数も年間150本ライブをやってるバンドとしては多くはなかったので、そんなに深刻なダメージは受けてなかったです。

──その作曲期間が、リモートでの制作というやり方に変わったということ?

佐藤:そうですね。基本的にはスタジオに集まって楽器ありきで展開や肉付けを決めていたものを、リモートでやりました。

──リモートで曲作りと聞いても、リスナー側にはちょっとよくわからないですけど、どういうやり方だったんですか?

田中:僕らも、どちらかというとそっち側で、よくわからないっていう立場だったんですよ。koboreは今の時代の若いバンドとしてはやり方が古いというか、スタジオで直接顔を合わせて、それぞれが楽器を持って演奏したり意見したりすることで曲が出来て行くんですけど、今回は初めてPCやスマホでDTMを使ったりして、それにベースの音を録ったりギターは自分でギターを打ち込んでみたりしました。初めての試みは結構あったので、この期間がきっかけになって新しい知識が増えました。

──それぞれのパートが録音したものをオンラインでみんなで聴いてその場で話したり?

佐藤:そうです。めちゃめちゃ面倒臭かったですけど(笑)。

田中:ははははは(笑)。

佐藤:スタジオだったら、「こんな感じでどう?」って音を鳴らして聴かせたりするので。アナログっちゃあ、アナログですけど、最速なんですよ。なので、最短距離で曲が作れないというのはしんどかったかなって。でも、みんなが対応している分、僕らも対応できるようになったという、良い風に捉えています。

──バンド仲間にどうやってるか聞いたりもしましたか?

佐藤:いや、それはなかったです。どっちかというと、コロナの影響はどう?とかっていう連絡は取り合ってましたけど、あんまり音楽的な話はしなくて、どちらかというとメンタル的な話をバンド仲間としてました。

▲左から佐藤赳(G&Vo)、田中そら(B)

──そんな渦中でのメジャーデビューとなるわけですが、暗い話題が多い中で、ファンにとってはものすごく嬉しいニュースですよね。

佐藤:本当そうですね。

──メジャーデビューということ自体、メンバーのみなさんはどう感じていますか。

佐藤:う〜ん……はい、っていう感じですね(笑)。

田中:なにそれ(笑)。

──照れてるんですか(笑)。

佐藤:なんていうか、自分たちを見てくれる人が増えることに関しては、実感はすごく湧いてきましたし、色んな人に出会うんだろうなと思ってます。ただ、バンド自体に、「俺たちメジャーバンドだぜ!」とかいう感じは一切ないので、実感があるといえばあるし、ないといえばないというか。

──でも、ご家族とか、周りの人はすごく喜んでるんじゃないですか。

田中:そうですね。周りの人も喜んでくれますし、僕たちも根底にはすごく感謝があります。ただ、4年前に赳からバンドに誘われてデモ音源を聴かせてもらったときに、おこがましいかもしれないですけど、「メジャーまでは行くだろうな」と思っていたんです。僕の中で学校の先輩としても、ミュージシャンとしてもすごいイメージだったので。

──それぐらい、魅力ある音楽だと思ったから一緒にやっているということなんですね。

田中:そうですね。歌も上手いし、ここまでこれるというのは予想がついてました。そうじゃなきゃ入ってないですし。……初めて言ったかもしれない(笑)。

佐藤:初めて聞いた(笑)。

──1曲目の「FULLTEN」で機先を制するように“メジャー インディー 売れる 売れない 左右されるつもりもない”と歌っていますよね。これは流されたくないという気持ちから出てきた歌詞ですか。

佐藤:自分たちに言い聞かせようと思ったんです。メジャーデビューしたから、メジャー落ちしないように音楽を作るとかバンドをやるっていうのはなしだなと思って。とにかく自分たちのやりたいことをメジャーでやれるのが一番カッコイイと思うので、そこは変わっちゃいけないんじゃないの?という思いで、歌詞も含めて自分たちでこういう曲を作りました。



──逆に言うと、「どうして音楽をやっているのか?」ということも考えた期間だったのでは?

佐藤:もう、生活の一部だったので、何かがなくなってしまった喪失感がすごかったですね。でもその理由は明確だし、誰のせいでもないわけだし、ぽっかり空いた穴をじっと見ているような感覚でした。

──音楽で生きて行こうというのは、始めたときからずっと思っていることなわけですよね。

田中:koboreの5年間は内容が濃すぎるので、その渦中で迷ったことはもちろんありました。ライブの本数然り、メンバー関係然り。色々あったので、「もうヤバいかも」みたいなときがあったんですけど、ただそれを乗り越えられての現在があるので、今のところ僕たち4人はメンタル的には無敵だと思います。だから、今の状況も乗り越えて行けると思います。

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