【インタビュー】kobore、“不変”の美学「自分たちのやりたいことを」

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■バランスの取れたアルバムを作れたら

──アルバムの曲は、「当たり前の日々に」以外は新曲ということですが、制作はいつ頃から始まっていたんですか。

佐藤:ライブ本数的には常にツアーを回っているようなものなんですけど、その行く先々で曲作りはしていました。フルアルバムを出すと決まってからはかなり時間はあって、去年の秋から1〜2月ぐらいまで作っていた感じですね。

──前作の『音楽の行方』は5曲入りEPでしたが、今回はフルアルバムとしてどのようなことを考えて1枚の作品を目指したのでしょうか。

佐藤:“V字”じゃないですけど、上がるところがあって、しっかり聴かせるところがあってというバランスの取れたアルバムを作れたらいいなと思ってました。5曲入りだったら3曲目、6曲入りだったら4曲目みたいに収録曲数によって変わってはくるんですが、フルアルバムは、聴かせるポジションが一番大事になってくると思うんです。最初の曲、真ん中の切り返し地点、最後の曲って、大事なポイントがめちゃくちゃあるんですよ。最初にいつものkoboreらしい曲がバーンと入ってきて、そこから徐々に聴かせるポジションに入ってきて、最後にもう1回背中を押せるような曲があるっていう、1枚を通して何を伝えたかったのかをはっきりできるようなアルバムにしたかったです。フルアルバムではそういう考え方ができるので、楽しかったですね。曲の並べ方とか、EPやミニアルバムに比べたら結構自由なので。

──それは、ライブのセットリストの考え方とはまた違うものなんですか。

佐藤:いや、やっぱり僕らはライブバンドと呼ばれているバンドなので、ライブを主軸に置いて曲を作ったり曲順の構成もしています。

──聴かせどころというのは、それこそ7、8、9曲目あたりだと思うんですけど、フルアルバムって、7曲目が一番気になるというか。

田中:ああ〜、わかります。

佐藤:そうなんですよね。僕からすると、言い方は悪いですけど、(フルアルバムは)ちょっと飽きてくるというか。サブスクで聴けちゃう時代なので、曲順を飛ばしちゃうかもなって。たぶんみんな星マーク(人気曲を示すマーク)がついてる曲は聴くんですよ。僕らはサブスクでフルアルバムを出すのは初めての試みなんですけど、「kobore」ってサブスクで調べたらトップソングが出てくるから、まずそれを聴くと思う。でも、そういうのもすべて飛び越えて、シングル曲でも「全然カップリングの曲の方が良い」とかいうのが僕は好きなので。そういう衝撃とかワクワク感というのも、今回のアルバムの7、8、9曲目とかに詰まっていると思います。

田中:僕の好きなバンドのアルバムも7曲目に注目しがちでした。東京事変とか。

佐藤:そうそう。かっこいいバンドってだいたい7曲目が良い。

田中:7曲目にすごく力が入っているというか。

──でも、7曲目って1〜2回アルバムを通して聴いたときは1回スルーしませんか?

佐藤:あ、わかります。後々聴いたら良かったみたいな。

田中:そうなんですよね。後半から急に好きになる。

佐藤:最初に良いと思った曲が飽きてきた頃に聴くと、「7曲目めっちゃいいじゃん」ってなるんですよね。

──そういう意味で言うと、7曲目「なんにもないの」はすごく好きですよ。何か他の曲と違った雰囲気があって。

佐藤:完全に折り返しポジションの曲ですね。

田中:完全に新しい試みです。koboreを知ってくれている人ほど、「こんな曲をやるんだ!?」っていう風になってくれてると思います。

──この曲はベースラインがめちゃくちゃ歌ってますよね。

田中:これは、赳が基本のフレーズを考えたんです。

佐藤:僕は高校生の頃、もともとベースを弾いていたんですよ。

田中:ちなみに僕も、「なんにもないの」が一番好きなんです。アルバムを出すなら、今までのkoboreにない曲が欲しいなと思っていて。スタジオで漠然と「こういう曲をやりたいんだけど」って僕が言ったら、みんながそれに合わせて考えてくれました。

佐藤:でっかい大サビが最後に入るんですけど、そのサビ前に入るフレーズのちょっと盛り上がる部分を、ちょっとだけ盛り上げてくれるフレーズをそらが弾いていたんです。誰も気にしてないんだけど、誰かがふと聴いたら「これ、よく聴いたら良くね?」ってなるような感じが僕は欲しくて。そこにちょうどポンってハマったフレーズをそらが持ってきたときは、「おっいいじゃん」って、口に出して言ったかもしれない(笑)。僕が考えた基本のフレーズに則ってるのかなと思ったら、“自分を出してきたな”っていう感じ。

田中:ありがとうございます(笑)。さっき赳が話したように、koboreってだいたいライブを考えて曲を配置するんですけど、この曲だけはスタジオで合わせているときに、ライブでやっている自分たちを想像できなかったです。

佐藤:うん、ちょっとわからなかった。何曲目に入れたらいいんだろうって。

田中:順番は赳が決めたんですけど、結果的に良い位置に入れたよね。本当に、僕の好みから言えばこのアルバムは7曲目からという感じですね。もちろん1曲目から全部良いし、「FULLTEN」「HAPPY SONG」のようにMVになっていて、いわゆるサブスクの星マークがつく曲はそれで良いんです。でも、さっき赳が言った「カップリングの方が良い曲」じゃないですけど、星マークがつく曲たちは後半の曲たちの引き立て役的な位置づけなんじゃないかって、僕は勝手に思ってるんです。僕的には7曲目、もっと言えば6曲目かな?ここから第2部のスタートというか、すごく聴き応えがあるんじゃないでしょうか。

──このあたりの曲は、音が詰め込まれた感じの「FULLTEN」「HAPPY SONG」と対照的に音の隙間、空気感がありますよね。両方あるのがkoboreの魅力になっているんだろうなって今回聴いて思いました。



田中:ああ〜、なるほど。音の話で言うと、koboreって基本的に音が詰まっていて、みんなの楽器の音がズドーンと胸の真ん中に来るようなイメージなんですけど、確かに7、8、9曲目は隙間があるというか、今までのkoboreにはない音になっているし、空気感もちょっと今までとは違う感じがしますね。

──歌詞の面でも、どんどん内に籠って行くような印象です。

佐藤:自分的には、退屈しないバラードを作れたかなと思ってます。バラードって4〜5分ぐらいある曲が多いので、長ったらしく歌うと、僕がリスナー側になったら「これ何回歌うんだろう?」って思っちゃうんですよね。「君とじゃなくちゃ」は、かなりコンパクトに言いたいことをまとめていて、3分ちょっとで終わって、余計なことを一切しないというスタンスで作りました。「二人だけの世界」もkoboreの中ではそんなにない展開で。サビも落としたり、転調があったりとか、長さじゃなくて展開で飽きさせない、退屈しないバラードが作れたんじゃないかなって思ってます。

──2曲目の「るるりらり」は、タイトルも相まって最初に聴いたときに一番耳に残りました。この曲はどうやってできたんですか。

田中:僕も最初に聴いたとき、「るるりらり」ってなんだ?って思いました(笑)。

佐藤:みんなでバーッと合わせて、「これいいじゃん」って思うことが多いんですよ。そのときは歌詞も作ってないので、「ラララ〜」とか歌うことが多くて、イントロを付けて行ったときに、なんかすごく「るるりらり」って歌いたくなって。「ああ、これでいいじゃん」って、「るるりらり」になったんです(笑)。たまたまできたというか。

──ドレミファソ〜みたいに上がっていくメロディも印象的です。

田中:リードギターも弾いてますけど、そこがこの曲のミソですね。あそこに中毒性を感じてしまったら、しばらく抜け出せないというか。僕はデモの段階でもしばらくお気に入りで、歌が入ってない状態でも聴いてました。これは絶対良い曲になるんだろうなって思いながら。

佐藤:自分の中で、歌詞じゃないものを付けたいという願望があったんです。僕はBUMP OF CHICKENが大好きなんですけど、サビで“WOWWOW”を持ってくるパターンがあるんですよ。「サビで!?歌わないの?」みたいな。これはすごいなって“WOWWOW系”に憧れがあって、それとはちょっと違いますけど「ラララ〜」みたいな感じで、「るるりらり」ってめっちゃいいなと思ってます。この噛みそうで噛まない感じが誰もやってなさそうで(笑)。僕たちとしても新しいことができたと思いますし、このアルバムの中では一番好きなメロディラインです。あと、「るるりらり」が何なのかをちゃんと歌詞で説明しようと思って。みんなそれぞれの中に好きな曲があるはずだから、具体的なメロディではなくあえて抽象的な表現にしました。

──その前の「FULLTEN」が短くてパッと終わる分、「るるりらり」がより際立って聴こえる気がします。

田中:そうですね。曲調に結構差がありますし。

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