いい音爆音アワー vol.113 ｢アリフ・マーディン♪特集」

2020.7.17 17:59

いい音爆音アワー vol.113　アリフ・マーディン♪特集

2020年 7月15日（水）＠ニュー風知空知

「すごい音楽人」シリーズ、その五です。
これまで、大瀧詠一（vol.57）、ブライアン・イーノ（vol.63）、細野晴臣（vol.66）、坂本龍一（vol.99、 101）と、偉大な音楽家たちの足跡を辿ってきました。今回のアリフ・マーディンは、その活動が「プロデュース」という“裏方”仕事にほぼ限られるため、この中ではいちばん地味な存在かもしれません。
プロデューサーには主に3つのタイプがあります。

①ビジネスマン型：売れる企画を考えたり、売るための戦略を立てることに長けている
②エンジニア型：レコーディング・エンジニア出身。売れる音を作ることに長けている
③アレンジャー型：アレンジャー、あるいは作曲家出身。売れる曲・サウンドを作ることに長けている

マーディンは③タイプ。弦や管などのオーケストラ・アレンジという基本はしっかり押さえつつ、シンセサイザーやコンピュータ・プログラミングなど、新しい手法にも積極的に取り組み、常に半歩先のサウンドを創り出していました。ちなみに、彼が長年所属したアトランティック(Atlantic)・レコードには、ビジネスマン型のジェリー・ウェクスラー、エンジニア型のトム・ダウドもいました。この3人が揃えばもう無敵ってことで、3人でプロデュースした作品も、アレサ・フランクリンやダスティ・スプリングフィールドなど、多数あります。
何より興味深い点は、彼がトルコ人だということです。そしてアトランティックは、同じトルコ人のアーメット・アーティガンが立ち上げたレコード会社でした。アトランティックと言えば、ソウル、R&B分野で最も成功したレーベル。アフリカ系アメリカ人が生み出し、白人が広めたとされる音楽の陰に、トルコ人の力が大きく関わっていたという事実が、とても面白いと思っています。

福岡智彦（いい音研究所）

セットリスト

▶アリフ・マーディン (Arif Mardin)：
1932年3月15日 - 2006年6月25日　トルコ、イスタンブール生まれ
裕福な家庭に生まれ育つ。父親はガソリン・スタンド・チェーン会社の共同オーナーだった。
インタンブール大学経済学部卒業後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学ぶ。
姉の影響などで、編曲ができるほど音楽の素養もあったが、音楽関係の仕事に就くことはまったく考えていなかった。
しかし、1956年（24歳）、アンカラでディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)とクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)のコンサートを観たことが彼の人生を変えた。彼は、米国のラジオ局で働く友人に自作曲のデモを送り、友人はそれをクインシー・ジョーンズに届けた。やがて彼は、クインシーが創設したボストンのバークリー音楽院への奨学金の最初の受領者となった。
1958年、ボストンに移住。バークリー音楽院入学。61年卒業。
1963年、「Atlantic Records」創設者のアーメット・アーティガン(Ahmet Ertegün)の兄ネスヒ(Nesuhi)が、スタジオの研修生としてスカウトする。
スタジオ・マネージャーを経て、ハウス・プロデューサー＆アレンジャーに。

The Rascals「Please Love Me」
本作まではThe Young Rascalsと名乗る。マーディン初のプロデューサー・クレジット。
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  4th アルバム『Once Upon a Dream』（1968年2月19日発売）収録
  作詞・作曲：Felix Cavaliere, Eddie Brigati／プロデュース：The Rascals, Arif Mardin
  レーベル：Atlantic
  アルバムは全米9位、R&B8位
  
  ・engineered by Tom Dowd
  ・ビートルズの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』(1967)あるいはビーチボーイズの『Pet Sounds』(1966)に並ぶサイケデリック・ロックの傑作とされるコンセプト・アルバム。
  ・本アルバムより、"The Young Rascals"から"The Rascals"へと変更する。
  ・マーディンは1stからオーケストラ・アレンジなどで関わっていたが、本アルバムから共同プロデュースとクレジットされている。
  ザ・ラスカルズ：
  フェリックス・キャヴァリエ(Felix Cavariere): vocal, organ, piano　1944年11月29日、ニューヨーク州フェルハム生まれのイタリア系アメリカ人
  エディ・ブリガッティ(Eddie Brigati): vocal, percussion　1946年10月22日、ニュージャージー州ガーフィールド生まれのイタリア系アメリカ人
  ディノ・ダネリ(Dino Danelli): drums, percussion　1945年7月23日生まれ、ニュージャージー州ジャージー・シティ生まれのイタリア系アメリカ人
  ジーン・コーニッシュ(Gene Cornish): guitar, vocal　1945年5月14日、オンタリオ州オタワ生まれのフランス系カナダ人
  
  1965年、米国ニュージャージー州ガーフィールドで結成。
  Atlanticと契約。すると既に"Harmonica Rascals"というバンドがあり、彼らは"The Rascals"の名でレコードリリースすることに異を唱えたので、"The Young Rascals"と名乗ることにした。
  1965年11月22日、シングル「I Ain't Gonna Eat Out My Heart Anymore」でデビュー。
  1966年2月、2nd シングル「Good Lovin’」リリース。全米1位！カナダ1位。
  1967年4月、6th シングル「Groovin’」リリース。全米1位、カナダ1位。
  　同年7月、3rd アルバム『Groovin’』リリース。全米5位。
  1968年2月、4th アルバム『Once Upon A Dream』リリース。全米9位。ここから"The Rascals"と名乗る。
  　同年6月、コンピレーション・アルバム『Time Peace: The Rascals' Greatest Hits』リリース。全米1位、彼らのベストセラー・アルバム。
  　同年7月、シングル「People Got To Be Free」リリース。全米1位、カナダ1位。
  1970年、ブリガッティ脱退。
  1971年、コーニッシュ脱退。
  　同年3月、オリジナルメンバーによる最後のアルバム『Search and Nearness』リリース。全米198位。
  　同年、Columbiaに移籍。
  　Robert Popwell (b)とBuzzy Feiten (g)が加入。
  1972年、9th アルバム『The Island of Real』リリースの後、解散。

▶1968年、ダスティ・スプリングフィールドのアルバム『Dusty in Memphis』をトム・ダウドとジェリー・ウェクスラーとともに手がけた。

Dusty Springfield「Just One Smile」
ビジネスマン型、エンジニア型、アレンジャー型、3人寄れば無敵のプロデュース・チーム♪
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  5th アルバム『Dusty in Memphis』（1969年1月18日発売）収録
  作詞・作曲：Randy Newman／プロデュース：Jerry Wexler, Tom Dowd, Arif Mardin
  レーベル：Atlantic
  アルバムは全米99位
  
  ・歌手人生のステップアップのため、ソウルミュージックをきちんとやってみようと考え、尊敬するアレサ・フランクリンのレーベルであるAtlanticと契約した。
  ・リリース当時はあまり売れなかったが、ダスティの最高傑作とされ、ポップス史上の重要作ともされる。「ローリングストーン誌」の「the 500 greatest albums of all time」では89位。2020年にはアメリカ議会図書館から「文化的、歴史的、芸術的に傑出している」とされ、「National Recording Registry」への登録が決定された。
  ・Memphisの「American Sound Studios」でレコーディング。
  ・彼女にとって、外部のプロデューサーで制作するのは初、リズム隊だけで歌うのも初めてだった。
  ・b-v: Sweet Inspirations / house band: the Memphis Cats = Reggie Young (g), Tommy Cogbill (b)
  ダスティ・スプリングフィールド（本名：Mary Isabel Catherine Bernadette O'Brien）：
  1939年4月16日 - 1999年3月2日　英国ロンドン生まれ。
  1963年11月8日、Philipsより、シングル「I Only Want to Be with You（二人だけのデート）」でソロデビュー。全英4位、全米12位、ミリオンセラーとなる。
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▶1969年、Atlantic副社長となり、やがて上級副社長となる。
同年、ソロ・アルバム『Glass Onion』をリリース

Laura Nyro「Beads of Sweat（汗のしずく）」
鬼才SSWをマーディンとラスカルズのキャバリエが共同プロデュース。
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  4th アルバム『Christmas and the Beads of Sweat（魂の叫び）』（1970年11月25日発売）収録(B-3)
  作詞・作曲：Laura Nyro／プロデュース：Arif Mardin, Felix Cavaliere
  レーベル：Columbia
  アルバムは全米51位
  
  ・デュエイン・オールマン(Duane Allman)(g)が参加している。
  ・アルバムA面の演奏は"The Muscle Shoals Rhythm Section"＝Barry Beckett (key)、Roger Hawkins (dr)、David Hood (b)、Eddie Hinton (e-g)と、フェリックス・キャバリエもオルガンで参加。
  ・B面は、Cornell Dupree (g)、Chuck Rainey (b)、Ralph MacDonald (perc)、Alice Coltrane（ジョンの妻）(harp)、そしてラスカルズのドラムDino Danelliも参加。
  ローラ・ニーロ：
  1947年10月18日、ニューヨーク市ブロンクス生まれ。ロシア系ユダヤ、ポーランド系ユダヤ、イタリア系の家系。
  1966年、「And When I Die」をピーター・ポール&マリーが採用、これが最初の仕事となる。
  　同年9月17日（18歳）、シングル「Wedding Bell Blues / Stoney End」でデビュー。
  　デイヴィッド・ゲフィン(David Geffen)がマネージメントを務める。ゲフィンはColumbiaとの契約を決めた。
  1968年3月、2nd アルバム『Eli and the Thirteenth Confession（イーライと13番目の懺悔）』リリース。全米181位だったが高い評価を受ける。
  1971年、ゲフィンはエリオット・ロバーツElliot Robertsとともに、Asylum Recordsを立ち上げる。当然第1号アーティストはニーロと考えていたが、ニーロは断りもなくColumbiaと契約更改してしまう。
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  1997年4月8日、卵巣癌により死去。

Aretha Franklin「Oh Me Oh My (I'm a Fool for You Baby)（お馬鹿さん）」
ソウルの女王を最強プロデューサー・トリオが支える。この形で何枚も名盤を生み出しました。
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  先行シングル「Rock Steady」のB面（1971年8月1日発売）
  18th アルバム『Young, Gifted and Black（黒人讃歌）』（1972年1月24日発売）収録
  作詞・作曲：Jim Doris／プロデュース：Jerry Wexler, Tom Dowd, Arif Mardin
  カヴァー：オリジナルはLulu（1969年9月発売）
  レーベル：Atlantic
  R&B 9位　アルバムは全米11位、R&B 2位
  
  ・Jim Dorisは"The Stoics"という1960年代末にグラスゴーで結成されたバンドのヴォーカル兼ギタリスト。バンドにはFrankie Millerもいた。またLuluもグラスゴー出身だった。
  アレサ・フランクリン：
  1942年3月25日、米国テネシー州メンフィス生まれ。
  1961年2月、Columbiaよりデビュー。
  1966年11月、Atlanticへ移籍。

Roberta Flack & Donny Hathaway「Where Is the Love（恋は何処に）」
ふたりのアーティストの運命を変えたヒットアルバムより。
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  第3弾シングル（1972年4月17日発売）
  5th アルバム『Roberta Flack & Donny Hathaway』（1972年5月6日発売）収録
  作詞・作曲：Ralph MacDonald, William Salter／プロデュース：Joel Dorn, Arif Mardin
  レーベル：Atlantic
  全米5位、R&B1位、全英29位　アルバムは全米3位、R&B2位
  
  ・フラックとハサウェイはともにAtlanticに所属し、ワシントンのハワード大学の、すれ違い（フラックが8歳上）だが同窓生。それぞれ1969年、70年にデビューし、評価は高かったが、フラックは今ひとつ売上が伸び悩んでいた。ジェリー・ウェクスラーは2人がデュエットアルバムを出せばお互いの知名度にプラスになると考えた。
  ・このアルバムはヒットし、以後フラックはヒットを連発するようになったが、逆にハサウェイは不調に転じ、再びフラックと組んだ「The Closer I Get to You」(1978)までヒットから見放された。やがて2人は2作目のデュエットアルバム『Roberta Flack Featuring Donny Hathaway』(1980)を作るが、制作途中にハサウェイはホテルの部屋のバルコニーから飛び降り自殺をしてしまった。
  ・ラルフ・マクドナルドは当初この曲を、"The 5th Dimension"に提供する予定で書いていたが、パーカッショニストとしてこのアルバムのレコーディングに参加した時、曲を依頼され、これを提示した。
  ロバータ・フラック：1937年2月10日、米国ノースカロライナ州ブラックマウンテン生まれ
  ダニー・ハサウェイ：
  1945年10月1日、米国イリノイ州シカゴ生まれ、ミズーリ州セントルイス出身　1979年1月13日、ニューヨークで死去。満33歳没。

Hall & Oates「Had I Known You Better Then」
なぜか売れなかった名作アルバムより。
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  2nd アルバム『Abandoned Luncheonette』（1973年11月3日発売）収録
  作詞・作曲：John Oates／プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：Atlantic
  アルバムは全米33位
  
  ・lead vocal：John Oates
  ・彼らの1st & 2nd アルバムをマーディンがプロデュース。
  ・アルバムは当初全然売れず、シングルカットした「She’s Gone」も60位止まりだったが、Lou Rawlsおよび"Tavares"にカヴァーされ、後者は74年にR&Bチャートの1位を獲得。改めて彼らもシングルを再リリースすると、76年に全米7位まで達した。それに引っ張られアルバムも33位まで上昇したが、その時、既に彼らはAtlanticからRCAに移籍していた。
  ・後に彼らは自らプロデュースするようになって（80年の『Voices』から）大きく売れることになるが、そのプロデュース手法の多くはマーディンのやり方から学んだという。
  ホール＆オーツ：
  Daryl Hall（本名：Daryl Franklin Hohl）：1946年10月11日、米国ペンシルベニア州チェスター郡ノース・コベントリー生まれ、モンゴメリー郡ポッツタウン（フィラデルフィア近郊）出身、ドイツ系アメリカ人
  John Oates（本名：John William Oates）：1948年4月7日、ニューヨーク市生まれ　父アル・オーツはスペイン系、母アンはイタリア系
  
  1967年、フィラデルフィア州立テンプル大学の学生同士として知り合う。
  1972年11月12日、Atlanticより、Arif Mardinのプロデュースによるアルバム『Whole Oats』でデビュー。
  1980年7月29日、9th アルバム『Voices』リリース。セルフプロデュースに切り替えた結果ヒット。続けて10th『Private Eyes』(1981)、11th『H2O』(1982)も大ヒットで最盛期を迎える。
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Arif Mardin「Steet Scene: d Parade」
この時期に誕生した“クロスオーヴァー”をマーディン流に展開したアルバムより。
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  2nd ソロ・アルバム『Journey』（1974年春先発売）収録
  作曲・編曲・プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：Atlantic
  
  ・Street Scene: a→dとある組曲風の中のd曲。
  ・drums: Grady Tate / bass: Ron Carter / e-p & clavinet: Pat Revillot / guitar: Cornell Dupree / perc.: Ralph MacDonald & Arif Mardin / tenor sax: Joe Farrell & Seldon Powell / trumpet: Mel Davis & Marvin Stamm / French horn: James Buffington / trombone: Garnet Brown & Tony Studd / tuba: Don Butterfield

Average White Band「Pick Up the Pieces」
スコットランドの白人が黒人顔負けのファンク・チューンで全米1位。
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  シングル（1974年7月発売）
  2nd アルバム『AWB』（1974年8月発売）収録
  作詞・作曲：Roger Ball, Hamish Stuart, Average White Band／プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：Atlantic
  全米1位、R&B5位、全英6位　アルバムは全米1位、全英6位
  
  ・リンダ・ロンシュタットの「You're No Good」を1位の座から引きずり落とした。
  アヴェレージ・ホワイト・バンド：
  1972年、ロンドンで結成された。
  Alan Gorrie (vo,b)：1946年7月19日、英国スコットランド・Perth生まれ
  Malcolm "Molly" Duncan (tenor sax)：1945年8月24日、英国スコットランド・Montrose生まれ
  Roger Ball (key,alto sax)：1944年6月4日、英国スコットランド・Broughty Ferry生まれ
  Owen "Onnie" McIntyre (g,vo)：1945年9月25日、英国スコットランド・Lennoxtown生まれ
  Robbie McIntosh (dr)：1950年5月6日→1974年9月23日　英国スコットランド・Dundee生まれ
  Hamish Stuart (vo,g,b)：1949年10月8日、英国スコットランド・Glasgow生まれ
  
  1973年、エリック・クラプトンのカムバックツアーの前座を務め、注目される。
  　同年9月、MCA Recordsより、アルバム『Show Your Hand』でデビュー。
  　クラプトンのツアーマネージャーだったBruce McCaskillがマネージメントを買って出る。彼は借金をして彼らを米国に連れていき、クラプトンを通しての人脈を駆使してプロモーション、Atlanticとの契約も成立させる。バンドはLAへ移住し、Arif Mardinの元で2nd アルバムを制作する。
  1974年8月、2nd アルバム『AWB』リリース。全米1位の大ヒット。
  　同年9月23日、マッキントッシュがヘロインの過剰摂取で死去。後任にはSteve Ferrone（英国ブライトン生まれ）が加入。
  1975年6月、3rd アルバム『Cut the Cake』リリース。全米4位。
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Bee Gees「Jive Talkin'」
「Saturday Night Fever」につながるダンス・バンドへの変身を演出したのがマーディン。
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  シングル（1975年5月発売）
  13th アルバム『Main Course』（1975年6月発売）収録
  作詞・作曲：Barry Gibb, Robin Gibb, Maurice Gibb／プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：RSO
  全米1位、全英5位、豪14位　アルバムは全米14位
  
  ・「How Can You Mend a Broken Heart（傷心の日々）」(1971)以来、2作目の全米1位シングル。
  ・バリー・ギブのファルセットを初めてフィーチャーし、ダンスミュージック路線に舵を切った曲。
  ・"synth bass"はまだ珍しかった。マーディンが当時最新鋭の「ARP 2600」をスタジオに持ち込み、バックバンドのキーボード奏者、Blue Weaverが弾いた。それはたまたまモーリスがいなかったから仮のつもりで、後でモーリスがベースギターで弾き直すことを想定していたが、聴いたモーリスは「これがいい」と言い、使われることになった。
  ・「Jive Talkin'」という言葉の意味「バカ話」は黒人のスラング。曲作りの段階では「Drive Talking」だった。レコーディング時に「Jive Talkin’」と聞こえて、マーディンがその意味を知っているのかと訊いたら3人は知らなかった…。
  ビー・ジーズ：
  英国王室属領マン島にて、1946年9月1日にバリーBarry Gibb、1949年12月22日にロビンRobinとモーリスMauriceが二卵性双生児として誕生。（ロビンは2012年、モーリスは2003年に死去）
  1950年、父親Hughの故郷、マンチェスターに移る。
  1958年、父の仕事の都合によりオーストラリアに移住。
  1966年9月、シングル「Spicks and Specks」リリース。オーストラリア5位、ニュージーランド1位と初ヒット。
  　父がThe Beatlesのマネージャー、ブライアン・エプスタインに彼らのデモを送り、
  1967年1月、3人は英国へ旅立つ。
  　エプスタインの会社NEMSに入ったばかりのロバート・スティグウッド(Robert Stigwood)が担当となる。
  　スティグウッドは英国にはPolydorが、米国にはAtcoが販売するというレコード契約をまとめた。またコリン・ピーターソン(Colin Petersen: dr)とヴィンス・メローニィ(Vince Melouney: g)を加え、Bee Geesを5人組とした。
  　同年4月14日、シングル「New York Mining Disaster 1941」リリース。全英12位、全米14位、とまずまずの成績。レーベルに曲名しか書いてない見本盤をラジオオンエア用に配り、何人かのDJたちがThe Beatlesの新譜と早とちりしてかけまくったおかげらしい。
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▶1976年、第18回グラミー賞で、最優秀プロデューサー賞を獲得。1975年から始まった賞（75年はThom Bell）で、どの作品ということではなく、プロデューサーとしてコンスタントに優れたクリエイティヴィティを発揮していると認められた人に贈られる。マーディンは2003年にも同賞を受賞している。

Carly Simon「You Belong to Me」
マイケル・マクドナルドとの共作、スタッフの演奏、いろいろ楽しめます♪
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  第1弾シングル（1978年4月発売）
  7th アルバム『Boys in the Trees（男の子のように）』（1978年4月発売）収録
  作詞・作曲：Carly Simon, Michael McDonald／プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：Elektra
  全米6位　アルバムは全米10位
  
  ・ep: Richard Tee / eg: Cornell Dupree / eg: Eric Gale / b: Gordon Edwards / dr: Steve Gadd / sax: David Sanborn / bv: James Taylor
  ・初出はThe Doobie Brothers『Livin' on the Fault Line（運命の掟）』(1977)
  ・Chaka Khanがアルバム『Funk This』(2007)の中でこの曲をカヴァーし、Michael McDonaldとデュエットした。
  ・アルバムはグラミー賞の「Best Album Package」を受賞

Chaka Khan「And the Melody Still Lingers On (A Night in Tunisia)」
個人的にはこれがマーディンの最高傑作じゃないかと思っています。
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  3rd アルバム『What Cha' Gonna Do for Me（恋のハプニング）』（1981年8月15日発売）収録
  作詞・作曲：Dizzy Gillespie, Frank Paparelli, Chaka Khan, Arif Mardin／プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：Warner Bros.
  アルバムは全米17位、R&B3位
  
  ・ディジー・ガレスピーが1942年、作曲した「A Night in Tunisia（チュニジアの夜）」のリメイク。
  ・ディジー・ガレスピー本人がトランペットで参加している（エンディング）。
  ・1946年のチャーリー・パーカーCharlie Parkerの4小節のアルトサックス・ソロがサンプリングされて挿入されている。サンプリングすることを決めたのはマーディンが編曲を終えた後だったが、このためにキー変更をし、すべて書き直した。
  ・drums: Casey Scheuerell / bass: Abraham Laboriel / electric piano: Ronnie Foster / keyboards [clavitar solo], synthesizer [oberheim bells]: Herbie Hancock / percussion: Paulinho da Costa / synthesizer [mini moog bass, Prophet 5]: David Foster / trumpet: Dizzy Gillespie
  チャカ・カーン（本来はシャカ　本名：Yvette Marie Stevens）：
  1953年3月23日、米国イリノイ州シカゴ生まれ。
  芸名のChakaはナイジェリアやベニン、トーゴで使われるヨルバ語で「炎／赤い」という意味。Khanは最初の夫の姓。
  1967年、継母の影響でブラック・パンサー党に入党する。
  1972年、ファンク・バンド”Rufus”から誘われ、参加。
  1973年7月、”Rufus”、デビューアルバム『Rufus』をリリース。
  1978年10月、Arif Mardinプロデュースによる1st ソロ・アルバム『Chaka』リリース。デビュー曲「I'm Every Woman」がR&B1位のヒット。
  1982年、”Rufus”解散、ソロに専念する。
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Chaka Khan「I Feel for You（フィール・フォー・ユー）」
チャカだけもう1曲。どうしてもはずしたくなかった。
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  先行シングル（1984年8月発売）
  5th アルバム『I Feel for You』（1984年10月1日発売）収録
  作詞・作曲：Prince／プロデュース：Arif Mardin
  カヴァー：オリジナルはPrince『Prince』(2nd / 1979)収録
  レーベル：Warner Bros.
  全米3位、R&B1位、全英1位　アルバムは全米16位、R&B4位、全英15位
  
  ・名前のラップ：Grandmaster Melle Mel
  ・ハーモニカ：Stevie Wonder
  ・"The Pointer Sisters"がアルバム『So Excited!』(1982)の中でカヴァー、リビー・ジャクソンRebbie Jackson（Jackson兄弟の最年長・長女）がデビューアルバム『Centipede』(1984)内でカヴァーしているが、どちらもPrinceのバージョンにほぼ忠実。チャカ版がもっとも派手でキャッチー。

Queen「Staying Power」
Queenで唯一、ホーンセクションが入った曲。そのアレンジをマーディンに依頼。
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  第5弾シングル（1982年7月31日発売）米・日・ポーランドのみ
  10th アルバム『Hot Space』（1982年5月21日発売）収録
  作詞・作曲：Freddie Mercury／プロデュース：Queen and Reinhold Mack
  ホーン・アレンジ：Arif Mardin
  レーベル：EMI (UK) / Elektra (US)
  アルバムは全米22位、全英4位、オリコン6位
  
  ・クイーンは前々作『The Game』からシンセサイザーを使い始めたが、本作ではさらにドラムマシンを導入した。
  ・クイーンの曲の中で唯一、ホーンセクションが入っている。
  ・シンセベースはフレディが弾いている。ジョン・ディーコンはテレキャスターでリズムギターを弾いている。ドラムは「Linn LM-1」で、テイラーがプログラミングした。
  ・ラインハルト・マック：単に"Mack"とも。ドイツ人のエンジニア＆プロデューサー。ジョルジオ・モロダーのミュージックランド・スタジオを本拠地に、Queen、ELOの作品を多く手掛ける。

Scritti Politti「Wood Beez (Pray Like Aretha Franklin)」
当時、時代の最先端だった彼らのサウンドにもマーディンが関わっていた。
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  7th シングル（1984年2月24日発売）
  2nd アルバム『Cupid and Psyche 85』（1985年6月10日発売）収録
  作詞・作曲：Green Gartside／編曲：Green Gartside & David Gamson／プロデュース：Arif Mardin
  レーベル：Virgin (UK) / Warner Bros. (US)
  全英10位　アルバムは全英5位、全米50位
  
  ・グリーン・ガートサイドはチャカ・カーンを聴いてアリフ・マーディンを知り、ぜひ仕事したいと思っていた。
  ・アルバムのうち、5曲がマーディンのプロデュース。８曲はScritti Politti。
  ・drums: Steve Ferrone / guitar: Paul Jackson Jr.
  スクリッティ・ポリッティ：
  1977年、ウェールズ出身のグリーン・ガートサイドが中心になり結成。
  1979年、Rough Tradeレーベルからデビュー。マルクス哲学とパンク精神を信奉するバンドだったが、やがてガートサイドがポップミュージック志向へと転換、さらにヒップホップに大きな影響を受け、バンドを一旦ばらし、ニューヨーカーのDavid Gamson (key)とFred Maher (dr)とのトリオとなる。ニューヨークに本拠を移し、Virginに移籍する。
  1985年6月10日、Arif Mardinのプロデュースになる5曲を含む2nd アルバム『Cupid and Psyche 85』をリリース。ファンク・ミュージックをシンセとシーケンサーを中心に表現したそのサウンドは当時としては画期的で、高い評価を受け、音楽シーンに大きな影響を与えた。

Bette Middler「Wind Beneath My Wings（愛は翼に乗って）」
グラミー賞で「最優秀レコード賞」と「最優秀楽曲賞」の2冠をゲット♪
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  シングル（1989年6月10日発売）
  OST アルバム『Beaches（フォーエバー・フレンズ）』（1988年11月22日発売）収録
  作詞・作曲：Jeff Silbar, Larry Henley／プロデュース：Arif Mardin
  カヴァー：オリジナルはRoger Whittaker（1982年）。Sheena Eastonや"Gladys Knight & the Pips"もカヴァーした。
  レーベル：Atlantic
  全米1位、全英5位　アルバムは全米2位、全英21位、オーストラリア1位
  
  ・映画「Beaches（フォーエバー・フレンズ）」（1988年12月21日公開）の主題歌。監督：Garry Marshall／出演：Bette Midler, Barbara Hershey　
  ・マーディンは、2nd アルバム『Bette Midler』以来、ミドラーの多くのアルバムに関わっている。
  ベット・ミドラー：
  1945年12月1日、米国ハワイ州ホノルル生まれ　ユダヤ系
  女優として、3度のエミー賞、4度のゴールデングローブ賞、2度のトニー賞、歌手としても3度のグラミー賞を受賞。

▶2001年5月、Atlanticを退社、EMI Classics傘下で「Manhattan Records」を再編スタートさせる。
2003年、第45回グラミー賞にて最優秀プロデューサー賞を獲得（2回目）

Norah Jones「Don't Know Why」
これも、グラミー「最優秀レコード賞」と「最優秀楽曲賞」の2冠♪マーディン最後の大輪の花。
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  1st シングル（2002年7月発売）
  1st アルバム『Come Away with Me（ノラ・ジョーンズ）』（2002年2月26日発売）収録
  作詞・作曲：Jesse Harris／プロデュース：Arif Mardin, Jay Newland, Norah Jones
  カヴァー：オリジナルはJesse Harris自身（1999年）
  レーベル：Blue Note
  全米30位　アルバムは全米・全英1位、オリコン10位
  
  ・作者のジェス・ハリスはギター（生＆エレキ）も弾いている。
  ・2003年の第45回グラミー賞において、8部門で受賞。
  アルバム『Come Away with Me』に対し、
  　最優秀アルバム賞（Album of the Year）
  　最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞（Best Pop Vocal Album）
  　最優秀録音賞、ノン・クラシカル（Best Engineered Recording, Non-Classical）
  ノラ・ジョーンズ本人に対し、
  　最優秀新人賞（Best New Artist）
  曲目「Don't Know Why」に対し、
  　最優秀レコード賞（Record of the Year）
  　最優秀楽曲賞（Song of the Year (songwriter)、作者：ジェシー・ハリス）
  　最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞（Best Female Pop Vocal Performance）
  プロデューサーのアリフ・マーディンに対し、
  　最優秀プロデューサー賞（Producer of the Year）
  ・アルバムはビルボード200に164週間チャートインを続け、2016年10月の段階で、世界で2700万枚売り上げている。
  ノラ・ジョーンズ：
  1979年3月30日、ニューヨーク・マンハッタン生まれ
  父はインドで最も有名な音楽家、シタール奏者のラヴィ・シャンカール
  2000年、ノラはVictoria Williamsというシンガーの音源に参加していたが、そのプロデューサーがJ.C. Hopkins、彼の奥さんShell WhiteがBlue Noteレコードの印税部門に働いていた。彼女がノラのデモテープをBlue Noteの社長、Bruce LundvallとA&R、Brian Bacchusに渡すと彼らはすぐに可能性を感じ、ノラと契約を交わした。
  　エンジニアのJay Newlandとデモ録音。いくつかはサンプラー『First Sessions』として、2001年に発表される。
  　アルバム制作のためのプロデューサー探しで、何人も検討した結果、ノラはCraig Streetを希望し、レコーディングに入るが、うまくいかなかった。ブルースとバッカスはArif Mardinがいいと考えた。ノラは当初、あまりに高名すぎて、自分が自由にできないのではないかと心配したが、実際レコーディングに入るとなんの問題もなかった。
  2002年2月26日、1st アルバム『Come Away with Me（ノラ・ジョーンズ）』リリース。
  ・・・

▶2005年6月7日、Manhattan Recordsより、息子のJoeとともにプロデュースしたRaul Midon『State of Mind』リリース。
2006年6月25日、約1年間にわたる膵癌との闘病の末、ニューヨークで死去。74歳没。

Arif Mardin「Goodbye to Rio (feat. Raul Midon)」
死後、未発表音源を息子のジョー・マーディンがまとめて発表。
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  3rd アルバム『All My Friends Are Here』（2010年6月15日発売）収録
  作詞・作曲・編曲：Arif Mardin／プロデュース：Arif Mardin, Joe Mardin
  エンジニアリング＆コプロデュース：Michael O’Reilly
  レーベル：NuNoise
  
  ・生前から録りためたものの未完成だった音源を、息子のジョーがまとめたアルバム。縁が深かったミュージシャンが多数参加。Bette Midler, Chaka Khan, David Sanborn, Norah Jones, Carly Simon, Average White Band, Bee Gees, the Rascals, Phil Collins, Hall & Oates
  ・元々は敬愛するディジー・ガレスピーに提供した「This Lovely Feeling」という曲（1963年発売『Something Old, Something New』収録）。1998年、それにブリッジと歌詞を加えた。
  ・ラウル・ミドンは、マーディンがその長いキャリアで初めて、自ら契約を交わしたアーティスト。アルゼンチン（父）とアフリカン・アメリカン（母）の血を引き、誕生時の不手際で視力を失った。
  ・生ギターとマウス・トランペットもミドン。