【インタビュー】ゆきみ、初ソロ作品に込めた2つの約束

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2009年に結成され、今年活動休止を発表したロックバンドあいくれのボーカル・ゆきみ。詞曲の制作はもちろん、デザインなど様々な芸術分野でも才能を発揮してきた彼女が、この夏本格的にソロとしての活動をスタートさせた。クラウドファンディングによって制作された「オーバーチュアと約束」の配信が8月からはじまり、その後は自身が手がけるブランドサイト「nana and patty」で同作品のCDネット販売も開始。「できることではなく、やりたいことをやる」という確固たる思いを掲げて新しい一歩を踏み出した彼女に、現在の心境や作品に込めた思いなどをじっくりと語ってもらった。

  ◆  ◆  ◆

■前向きに決断をしました

──本格的にソロとしての活動がスタートしたわけですが、音源を聴きながら、以前よりもさらに自由な感覚で音楽を楽しんでいらっしゃるんだろうなと感じました。

ゆきみ:そうですね。やりたいことだけを、やりたいタイミングでやるみたいな感じというか(笑)。

──以前何かで「できることではなく、やりたいことをやる」というような発言をされていましたが、その心構えは本当に素敵だなと思いました。

ゆきみ:ひとりになるということが、そう思わせたのかなと思うんです。最初は、メンバーと一緒だからできていたことっていっぱいあって、じゃあひとりになったら何ができるかな?っていう思考になっていたんですが、そうじゃないなと。そこからはもう、やりたいこと──ひとりでできるかできないかではなく、まずはやりたいことを全部並べて順番にやっていこう!みたいな思考で今は動いています。

──では改めて、ゆきみさんのこれまでを伺いたいのですが。

ゆきみ:2009年に「あいくれ」というバンドを組みました。高校の同級生で始めたバンドだったので、ここまで続くなんて高校1年生の時は誰も思っていなかったんですが(笑)、本当にやりたいことをやるという精神でずっとやってきました。去年新しいベースが入ったんですが、やっぱり彼にも彼の道があり、ちょっと早かったですが今年に入ってから脱退が決まったんです。そこでもう一度3人になるという時に、私は今の3人でちゃんと新しく、もう1回スタートを切りたいと思ったんです。今まで歩いてきた道があって、ベースが入って新しくなったけど抜けて、また前に戻るみたいな感じになるのが嫌だったから。だけどそのためには、時間だったりいろんなものが必要で。3人で話をして、じゃあ一度それぞれがやりたいことをやる時間を作ろうということになり、活動休止を決めました。

──とても前向きな決断だったんですね。

ゆきみ:はい。今年の2月くらいだったと思いますが、この先のビジョンを考えて前向きに決断をしました。話を切り出したのは私だったんですが、ギターもドラムも「そうだよね」って。「今やってもカッコよくないよね」って、みんな納得でした。

──また最高の状態で集まるという目標や目的があると、すごく励みになりますよね。頑張るぞとか負けられないぞって気持ちも強くなるでしょうし、休んでる暇なんかないくらいやりたいことが溢れてきそうです。ちなみにこれは勝手な想像ですが、ゆきみさんはボーッとすることなんてなさそうですよね?

ゆきみ:(笑)。考えないことができない人間なので、常に何かを考えていますね。周りの人間から「考えすぎだよ」って言われることも多かったんですが、そうなると今度は考えないようにしようということを考えてしまうんです。だったら、もう考えなくて済むくらいまで考え抜こうと。私は、とことん考え抜く!どんなに苦しいことでも考え抜こうという思考に至りました。

──想像以上の答えで驚きました(笑)。でも物作りをする人にとってはプラスですよね。

ゆきみ:そうですね。例えば道を歩いていて、本当に些細なことにでも考えが向けられるようになりました。小さなことにもときめきというか心を動かすことができれば、それだけ自分にインプットする量が増えて、結果アウトプットの量も増えますからね。それがどこまで曲に生きているのかはわからないですけど。

──何かを生み出す時は感情が爆発するような瞬間もあると思いますが、そうやって考え抜かれたゆきみさんの言葉や作品に触れていると、すごく丁寧に人生を歩いている方なんだろうなという印象もありました。

ゆきみ:私の中では丁寧にというより、ある種クセみたいなものかもしれませんが、ちょっとした完璧主義みたいなところがあるんですよね。例えば曲の中でも、自分のSNSでも、日本語として正しくないものは使いたくないなというのがあって。「ら抜き」言葉のように、よく使われてしまっているけど間違っている言葉はなるべく使いたくないなと思うんです。何か自分が発信する時は、絶対にこれでいいのか、本当にこれを公にしていいのかって何度も読み返します。そういうところが丁寧と見えるのかもしれないですが、これはもうクセなんですよね(笑)。

──(笑)。

ゆきみ:服装もそうです。これにはこれを合わせて、今日はこれでいいのかってじっくり考えて家を出たけど、やっぱりこれじゃない!と思って一度帰ったり。世間一般的にはこれを完璧主義というのかもしれませんが、公の場に出る時の自分が何でいたいか、自分が何だったら自分のことを好きでいられるかというのを、言葉にしても音楽にしても服にしても全部、自分の中で完成したものを出したいというのがあるんですよね。


──なるほど。でもバンドという、ある種個性の集合体みたいなところで何かを創作する時は、自分ひとりの意見だけを通すわけにはいかないですよね。そこはどんな風に折り合いをつけてきたんですか?

ゆきみ:かなり揉めるんですよ、やっぱり(笑)。バンドを組んで11年、本当に家族のように何でも言い合える中なので、絶対にここは曲げられないとか、絶対にここはこうしたいというのを私はもちろん主張しますし、向こうは向こうで「考えすぎだ」って言う(笑)。でも私は曲げたくないから、お互いにとってのベストがどこにあるかを探していくんですが、そうなった時に化学反応が起きるんですよ。それがバンドの面白いところなんですけどね。これじゃない、こっちも嫌だとなったら「じゃあ、どっちにするか」じゃなくて新しい選択肢を見つけていく。それだと自分も納得できるし、メンバーも納得できるし…っていうのがあいくれであり、あいくれの音楽になっていたのかなと思いますね。

──そんなあいくれの強みというか、ここだけは絶対他のバンドに負けないっていうのはどういうところですか?

ゆきみ:かなり密度の濃い時間を共にしてきましたからね。メンバー同士の信頼関係に関しては、絶対的なものがあると思います。コロナ渦でしばらく会っていなかったんですが、その間にも再認識したんですよ。こんなに会わないなんて久々なのに、連絡を取り合う中で大事に思い合えているなみたいなのがわかったし、めちゃめちゃ強い関係がここにあるなって感じることができました。

──そんな絆を再確認した上でのソロ活動。ゆきみさんはどんなビジョンを持ってスタートを切ったんでしょうか。

ゆきみ:私の中ではバンドのボーカル──つまり“あいくれのボーカルのゆきみ”というのが本当にやりたかったことだし、今後やっていきたいことでもあるんです。その“あいくれのゆきみ”がカッコよくあるための、今。ひとりのゆきみなんです。私達もいつになるかは全然決めていないんですが、またいつかステージに戻って来られた時の私が一番カッコよくなれるような今の自分でいたいなと思うので、ソロの活動に関しては、実は、ひとりだけどその先にバンドありきのひとりだと思っています。

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