【インタビュー】鈴木瑛美子、最新作『After All』で魅せる成長

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高校時代に“最強ゴスペル女子高生”として注目を集め、様々な主題歌の歌唱を務め、2019年にはメジャーデビューを果たした鈴木瑛美子。2020年に入りミュージカル女優としても活躍中の彼女が、1年2ヶ月振りとなる新作『After All』をデジタルEPとしてリリースする。

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亀田誠治と再タッグを組んだワールドクラスのバラードである表題曲を筆頭に、トオミヨウが編曲を担当したジャジーでソウルフルな楽曲、力強さと切なさが融合したロックバラード、ゴスペルとロックを掛け合わせたポジティブな楽曲など、多彩な楽曲で彩られた作品だ。11月から行われるミュージカル『RENT』の稽古が佳境な彼女をキャッチし、最新作を通して現在の彼女のモードを探っていった。

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■精神的にも大人になった気がする

──メジャーアーティストとして活動し始めてからの期間は、新しい経験が目白押しだったのではないでしょうか。

鈴木瑛美子:初体験尽くしで、一つひとつが自分の糧や知識になっています。すごく勉強になった1年でした。今年は初めてミュージカルの舞台に立たせていただいて(『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』)、大きな気付きがあったんです。

──と言いますと?

鈴木瑛美子:ソロアーティストはステージにひとりで立って観てくださっている方々に伝えることが大事だけど、舞台はストーリーがあるので共演者に向けて歌うけど声は客席へ放つ。だから全然別物なんです。アーティストぐせなのか、どうしても身体が自然と前に向いちゃって大変でした(笑)。途中で声を枯らしてしまったりもしたので、台詞と歌では声の出し方も全然違うんだなと身をもって知りましたね。

──YouTubeにはカバー動画もたくさんアップなさっていますよね。おひとりで全パート歌唱したFun.「Some Nights」、アカペラのOfficial髭男dism「115万キロのフィルム」、キーを上げたLiSA「紅蓮華」など、ただのカバーではなくどれもひと工夫されている。

鈴木瑛美子:流行りの曲や、自分が歌ったらどうなるんだろう?と思う曲を選んで、どれも“鈴木瑛美子のカバー”を意識してますね。第1弾カバーとしてアップした「Some Nights」のひとり全パート歌唱は、ずっとやりたかったことなんです。8通りのルックスも“ポニーテールならこの服にしたい!”ってスタッフと一緒に服を選びに行きました。「紅蓮華」も原曲キーより高いほうが地声が張りやすくて、“そこ抜く?”というところを裏声にして、“そこ張る?”と思うようなところを地声で歌ってみたりして。これまでSNSに歌をアップして、これぐらい反響をもらった経験がなかったんですけど、今回のカバーシリーズはたくさん反応をいただけてますね。



──そのように幅広い活動や音楽性へのチャレンジをしている鈴木さんですが、1年2ヶ月ぶりの新作EP『After All』もまさにそれが反映された内容になっています。表題曲はセリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストンなどを彷彿とさせる、映画主題歌のような壮大な楽曲で。こちらは亀田誠治さんがサウンドプロデュースをなさっているんですよね。

鈴木瑛美子:そうなんです。サウンドプロデュースをどなたにお願いするか決めるミーティングで、亀田さんのお名前が真っ先にあがって、わたしとしては“えっ、亀田さん!? やってくださるんでしょうか!?”という感じで(笑)。オファーをさせていただいたら快くOKしてくださって、とんとん拍子で進んでいきました。もともとわたしのルーツが洋楽なので、その要素を楽曲に取り入れてほしいと思ってくださっていたファンの方々も多くて。その想いにお応えできているかと思います。……ほんと、めっちゃアレンジ良くないですか!?

──素敵なアレンジだと思います。制作開始が緊急事態宣言中だったこともあり、リモートでコミュニケーションを取りながらの制作だったそうですね。

鈴木瑛美子:最初にアレンジのデモ音源を送っていただいて。その時点で亀田さんの世界観もあって、わたしの声の力を引き出せるアレンジになっていたので、素晴らしくてなにも言うことがなかったです。久し振りの対面がリモートだったんですけど、画面越しでも亀田さんのやわらかい、優しい雰囲気が感じられて。「久しぶりだね~」と手を振っていただいて、「わあ~亀田さん!」って気持ちでした。トラックダウンのタイミングでお会いすることができて、「やっと会えましたね!」と喜びを噛みしめました。

──高校時代にお仕事をした方と、メジャーデビューしてからご一緒できるのも感慨深いですよね(※鈴木瑛美子が歌唱担当した映画『恋は雨上がりのように』の主題歌「フロントメモリー」のサウンドプロデュースを亀田誠治氏が務めた)。

鈴木瑛美子:エモい! 亀田さんも「成長が感じられる」とおっしゃってくださって。あのときから自分なりに歌い方を研究してきて、成長も感じていたので、亀田さんにその成長を見ていただけたこともうれしかったです。精神的にも大人になった気がする──大人になるってまだちょっとわからないんですけど、やっぱりお仕事をしていると“嫌だからやらない、関わらない”って出来ないじゃないですか。でもいろんな向き合い方や接し方がわかってきて。だからやったことがないことに挑戦するとき、壁にぶち当たったときに、“どうやって付き合おう?”と考えるようになりました。人との関わりでも、音楽的なことも、演技も、自分の糧になるようつねに考えてますね。

──それはかなり成長ですね。

鈴木瑛美子:やった(笑)! 忙しいほうが楽しいので、そうやっていろいろアンテナを張ったり、考えることを楽しめているんです。1日に予定が5件くらい詰まってると充実感もあって、楽しい、楽しい、うれしい~!ってなります(笑)。

──「After All」は主要コーラスを鈴木さんがなさっていたり、ミュージックビデオも鈴木さんが劇場でおひとりで歌うというシチュエーションでもあるので、シンガーとしての鈴木さんをじっくりフィーチャーした楽曲だと感じました。

鈴木瑛美子:今回は提供していただいた曲を最大限に表現することに集中したので、成長を感じていただける作品にしたくて。やっぱりメジャー1stシングル「FLY MY WAY / Soul Full of Music」の歌は“こんにちは! わたしが! 鈴木瑛美子ですよ~!”みたいな感じだったと思う(笑)。自分が持っている技術を最大限に生かしたい気持ちが強かったし、自己紹介を詰め込んだ自作曲だったので、今回は自分を出しつつも、表現に特化した制作をして、みなさんに成長を見ていただこうと思ったんです。

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──まっすぐに愛を歌ったラブソングですが、鈴木さんもこのように熱い愛情を向けたことがおありでしょうか?

鈴木瑛美子:ありますね。子どもの頃から愛に溢れていて、小さい頃から「家族が大好き、家族がいちばん大切」と言ってましたし、恋愛もひとりの人を真剣に大好きになるタイプで。……人間も付き合いが長くなるほど知らない面を見つけたり、深く愛すると思うんですけど、わたしにとっては音楽こそそういう存在なんですよね。歴史も深いからそれを掘っていくといろんな発見があるし、この先にも新しい可能性を持っている──アートというものは尽きないですよね。一生飽きないで付き合っていられるものだと思います。

──なかなか掴めないものでもありそうです。

鈴木瑛美子:たしかに。自分に相応しい音楽を見つけたいけれど、最終的に「これが自分だ!」と掴めないことが正解なのかもしれないなあ、とも思うし……。答えがないですよね。だからこそ音楽は楽しく付き合えるし、いいなあって思いますよね。


──「After All」と「You gotta be」は、9月27日の生配信ライブで披露なさっていましたね。楽しそうに歌ってらっしゃるのが印象的でした。

鈴木瑛美子:歌うのは楽しいけど、どうやってお客さんと一緒にライブを作っていけるかを大事にしてきたので、やっぱり配信ライブはお客さんの声がないのが寂しいです! あとカメラに向かってひとりでMCするのは間合いが難しい(笑)。でも生配信だとコメントをいただけるので、お客さんそれぞれの想いを具体的に知れるのがいいですよね。「You gotta be」もすごく反応が良くて、「鈴木瑛美子っぽい!」と言っていただきましたし、自分自身も最初聴いた瞬間に“これは絶対歌いたい!”と思った曲でした。

──「You gotta be」はソウルフルで、鈴木さんの低音が生きた楽曲です。

鈴木瑛美子:ソウルな中にジャズっぽい感じもありつつ、グルーヴが気持ちいい曲になりました。歌詞も自分や前に進めない人を鼓舞した内容なので、情熱は抑え気味に、クールな歌を心がけましたね。学生時代、自分のなかにはどっちにしようか選びたい自分もいたし、なにをしたらいいのか悩んでいる自分もいて。その時代の自分に“大丈夫、大丈夫!”って歌ってあげたい。そういう状況の人への手助けになる曲だとも思うんです。

──「You gotta be」の主人公は未来に向かって突き進もうとする逞しさがあるので、歌っていると強さを身に付けられそう。

鈴木瑛美子:うんうん。歌っているときも、アウトプットしながらインプットしてる感覚があります。歌詞の通り“なりたい自分になれる今チャンス掴め”って感じ。

──いま思う鈴木さんの“なりたい自分”とは?

鈴木瑛美子:そうだなあ……。いまは『RENT』のお稽古に入っていて、自分と自分が演じるモーリーンをコネクトしてるところで。モーリーンは自分の言いたいことを素直に伝えられる人で、本来の自分はモーリーンに似てるなと思うんです。成長したってことは、適応できるようになってきたという面もあって、それは自分を殺したり、言いたくても言わないことがあるということだとも思うんです。だから昔の自分に戻りたい部分もあって。素直になりたいなと思っているところですね。

──言いたいことを我慢するのではなく、素直に自分の想いを伝えられる人間になりたいということですね。モーリーンから教わることがたくさんあると。

鈴木瑛美子:はい。たくさんあります。モーリーンを自分にするために、私服も濃い色や派手めなものを買って、稽古着もモーリーンに寄せたタイトなものにしてみたりして。彼女、派手なんですよねえ……って“彼女”と言ってる時点でまだだめなんだなあ(笑)。あと、“歌わない歌”を歌わないといけないなって。しゃべるように、語り掛けるように歌わないと──そこがとても難しいところですね。ミュージカルの歌は、自分の心の奥から湧き出たものとして発さないと、どうしても言葉ではなく歌っちゃうんです。だから一旦モーリーンをすべて入れないと、ちゃんと自分の言葉にできないなと思っているところですね。難しい!(笑)

──(笑)そういう経験を『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』でもなさっているから、「You gotta be」をクールに歌えるのかもしれないですね。

鈴木瑛美子:そうですね。『After All』の制作期間と『RENT』のお稽古が始まるタイミングがとても近かったので、次の鈴木瑛美子の作品では『RENT』の経験がより濃く生きてくる気がします。この先さらにレベルアップした表現をお見せできると思うので、まずは変化の片鱗が見える『After All』というEPを楽しんでほしいですね。


──細やかな表現が光る『After All』のなかでも、ゴスペルを基盤にした「Hail! Mr. Happy Days」はライブ感があって、解き放たれていくような歌唱が爽快でした。

鈴木瑛美子:「You gotta be」のレコーディング直後にこのオケをすぐ聴く機会があって。「You gotta be」はすごくかっこいい楽曲で“歌いたい!”と強く思ったからこそ、“どう表現するのがいいんだろう?”とけっこう根を詰めて考えたんですよね。だからレコーディング直後はものすごく体力を消耗したんです。そのなかで「Hail! Mr. Happy Days」を聴いたら、イントロの“ラララ”で、めっちゃ元気になって(笑)。聴き終えた頃にはクイーンっぽさやゴスペルっぽさがヤバい!ってブチ上がりすぎて変なテンションになってました(笑)。

──だいぶ発展した、久し振りの地元に帰ってきたような?

鈴木瑛美子:ゴスペルとロックの融合が、新しいのにオールドファッションな感じもあって。聴いていてすごく気持ち良くて、早く歌いたくてその瞬間からレコーディングが待ち遠しかったです。タイトルにある“Mr. Happy Days”のとおり楽しい日々を感じられる楽曲なので、自分も歌うことを心底楽しんで歌いたいなと思ったんですよね。とは言いつつ、表現にはこだわりましたね。

──そのこだわりとは、たとえばどういうところでしょう?

鈴木瑛美子:“Ooh cheer up!”という歌詞のメロディは本当は下がるんですけど、“cheer up!”と言っているからには上げたいけど、上げすぎも違うなと思って、しゃべるような言い方にしてみました。本当に応援してる感じにしたかったんですよね。この曲のサウンドプロデューサー・多保孝一さんからは歌の弾むようなリズムを大事にしようとアドバイスをいただいたので、そこも反映されています。でもこだわりすぎると勢いが失われちゃうので、そんなときは多保さんが“いまの歌い方プラス元気で!”と言ってくれて、そのおかげで表現を加えた力強い歌が録れましたね。

──はじけるような音や歌に加えて、ポジティブな言葉が並んでいるので、聴いているほうとしても自然と力が湧いてきました。

鈴木瑛美子:わたし自身は「You gotta be」や「Back Home」みたいなグルーヴ感があったり、しっとりしていたりマイナー調の曲が好きなので、明るいとは言い難い歌になってしまうことが多いんですよね。でも「Hail! Mr. Happy Days」を歌うことで、自分自身もアップテンポで明るくて楽しいモードになれるというか。自分のルーツでありながら、自分にとって新しい要素がある曲でもあるんですよね。

──なるほど。「Back Home」は『After All』のなかでは最も陰を感じさせる楽曲です。

鈴木瑛美子:失恋の曲のなかでも“一概に嫌いになったわけでもなくて、あなたが戻ってこないことはとても切ないし、切り替えていくからもう戻ってこないでね”という曲ですね。力強さのなかに寂しさを入れて、切なさのなかに力強さを込めて歌いました。特に聴いてほしいのは落ちサビで、わたしも歌いながら感極まるぐらい表現に力を入れたので、一緒に泣いてほしいです。

──あの落ちサビ、『After All』のなかでいちばん鈴木さんの歌が変わったなと思う箇所でした。

鈴木瑛美子:うれしい~! 失恋を引きずっているけれど乗り越えた、という人たちの気持ちを代弁したかったんですよね。張り裂けそうな気持ちをみなさんの代わりに歌うというか。

──この曲で歌われていることは、失恋以外の別れにも言えることでもありますよね。志半ばで夢を諦めた人にも響くと思います。

鈴木瑛美子:ああ、そうですね。この曲と一緒にさらに乗り越えてほしいです。


──海外のニュアンスが多分に含まれた楽曲尽くしですし、鈴木さんの音楽がJ-POPのニュースタンダードになっていくと面白そうですね。

鈴木瑛美子:うん、なってほしいな。「After All」とか、ジェシー・Jのバラードに近い香りもすると思うんです。「Hail! Mr. Happy Days」みたいなゴスペル×ロックな曲の素晴らしさも感じてもらいたいですし。海外の方々にも聴いていただきたいし……あと、実際にミュージカルの舞台をやってみると、音楽や舞台以外の世界に出ていっても面白いのかなと思ったりもするんですよね。

──鈴木さんは歌で注目を集めた人ではありますが、前々から表現というもの全般に興味がおありですものね。

鈴木瑛美子:最初は“ミュージカルに出ているシンガー(アーティスト)”や“シンガー(アーティスト)であり舞台女優”と思ってもらえる存在になりたいという気持ちが強かったんですけど、舞台に立つことで舞台の世界も大好きになったし、海外作品の日本版に出させていただいているので、海外も身近になってきて。アーティストとしてもいろんな音楽性にトライさせていただけているので、そういう影響もありますね。

──たぶん鈴木さんのなかで音楽、舞台、日本、海外、みたいな境目がさらになくなってきていますよね。どれも地続きでつながっているというか。

鈴木瑛美子:ああ、そうなのかな。特にここ1年くらい、ひとりの時間をすごく楽しんでいるんです。カメラを持ってひとりで歩き回ったり、犬を飼ったり、ずっとゲームをしていたり、ひとりでレストランに入ったり、ひとりでラーメンを食べたり。いままでは誰かと一緒にしていたことを、ひとりでしているんですけど、それがすごく楽しくて。お仕事や自分に没頭できる完璧な状況なんですよね(笑)。

──ははは。今後鈴木さんがどんな曲でどんな歌を歌っていくのか、楽しみになるお話とEPでした。

鈴木瑛美子:それは歌手としてすごくうれしいですね。“曲だけがいい”とか“歌がうまい”だけではなく、“鈴木瑛美子の声でこんな曲を聴いてみたい”や“鈴木瑛美子がこれを歌ったらどうなるんだろう?”と思っていただけると、わたしも可能性が広がるし、みなさんもいろんなジャンルの音楽を聴く機会になると思いますし、すごくいい循環が生まれるなと思うんです。相変わらずいろんなことがしたいですし、今後も“どんな作品を出すんだろう?”や“次はどんなことをするんだろう?”と思っていただけるような人間でありたいですね。歳をとるまで見守ってください!(笑)
取材・文◎沖さやこ
撮影◎大橋祐希

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リード曲「After All」は10月26日からのbayfmのパワープレイにも選出。さらに10月27日(火)には3回目となるYouTube生配信ミニライブを開催予定となっている。



配信EP「After All」

配信日:2020年10月28日(水)
iTunes Storeプレオーダー期間:2020年9月23日(水)0:00〜10月27日(火)23:59

プレオーダー特典
(1)上記期間中にプレオーダーすると、ここでしか聴けない限定音源「フロントメモリー( EP Limited track)」をプレゼント
(2)上記期間中にiTunes Storeにてプレオーダー、さらにご応募頂いた方には、もれなくサイン&お名前入りデジタルコンテンツをプレゼント

[応募期間] 2020年9月23日(水)0:00〜10月27日(火)23:59
[対象配信サイト] iTunes Store
※配信EP「After All」プレオーダー頂いた方のみ対象となります。

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