【コラム】AI、新曲「Not So Different」に表現された最も大切なメッセージ「違いを乗り越えて」

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“We're not so different (私たちはそんなに違わない)”。経済格差が広がり続け、人種差別が激しく顕在化するなど、世界中で分断が広がる現状においてこの言葉──AIの新曲「Not So Different」のサビの一節──は、我々が共有すべき、最も大切なメッセージだ。

◆AI 動画 / 画像

2000年のデビュー以来、R&B、ヒップホップ、ソウル、ゴスペル、J-POPなどを自由に採り入れ、国内外のアーティストと共演を重ねながら、“私たちは一人じゃない” “すべての人にかけがえのない価値がある”といった普遍的なテーマを発信し続けてきたAI。コロナ禍において「ハピネス」が大きな注目を集めたことも記憶に新しいが、それは言うまでもなく、この楽曲から放たれるポジティヴな思いと幸せなバイブレーションが、先が見せない状況のなかで多くの人の心に力を与えたからに他ならない。


新曲「Not So Different」にも、彼女自身の中から生まれた強いメッセージが込められている。本作のテーマについてAIは「世界中が仲良くなってほしいという想いで書きました」とコメントしている。驚くほど率直な物言いだが、いまの世界の実情を考えれば、この言葉の背景には極めてシリアスな状況があることがわかるはず。人種、ジェンダー、国籍、言語、宗教、政治的信条などによって分断さら続けている現代社会。そこまで大きな話でなくても、職場や学校などで、生活習慣や考え方、見た目のちょっとした違いによって、仲間外れやイジメが起きるということは、誰もが実感しているはずだ。

そんな世界に対してAIは、英語と日本語を交えながら、“We're all human We're not so different” “花束を銃の代わりに 音楽を 憎しむより 一緒に歌を”というラインを響かせる。リスナーがどんな境遇にあり、どんな価値観や考え方を持っていたとしても、このフレーズから無縁でいられる人はいないだろう。ブラック・ライヴス・マター (Black Lives Matter)を受けてドロップされたDa Babyの「Rockstar (BLM REMIX)」、ビヨンセの「BLACK PARADE」などと同じく、「Not So Different」には現実にコミットし、リスナーの意識や考え方に直接影響を与えるパワーが宿っている。


オーセンティックなヒップホップのスタイルと、トラップ以降のビートの潮流を共存させたサウンドメイクを手がけたのは、スコット・ストーチ。Dr.Dreの名盤『2001』をはじめ、クリスティーナ・アギレラ、ビヨンセ、50セント、B・リアル(サイプレス・ヒル)、最近ではアリアナ・グランデのアルバム『Positions』収録「my hair」などの楽曲に関わってきたプロデューサーだ。制作は米国LAにあるスコットのスタジオで行われ、直接やりとりしながら、アレンジやサウンドメイクを作り上げたという。これまでにもSnoop Dogg、Jeremih、The Rascals、ロジェイ・チャハイド&テイラー・デクスターといった世界的アーティストやプロデューサーとのコラボレーションを繰り広げてきたAI。USヒップホップ史に名を刻まれるスコットとの共作は、“人種や国籍を超えてつながる”という「Not So Different」のテーマともダイレクトにつながっている。その中心にあるのはもちろん、AI自身のボーカルとラップ。シックなピアノの音色を活かしたアレンジ、抑制の効いたビートを軸にしたトラックを自然に乗りこなしながら、すべてのフレーズを真っ直ぐに放つボーカリゼーションはまさに絶品だ。

「Not So Different」が、次世代リーダーのためのグローバル・フォーラム『One Young World Japan』のテーマソングに起用されたことも話題を集めている。世界各国から、様々な分野で活躍する次世代リーダーが一堂に会し、より効果的で、より革新的で、より責任あるリーダーシップを図り合いながら、世界の多くの課題解決に挑むことを目的にした『One Young World』の理念と「Not So Different」のメッセージ性が合致した、というわけだ。AIは、このフォーラムのオフィシャルアーティストに就任。今年10月23日に東京で行われた<One Young World Tokyo Caucus 2020> (2022年に東京で開催される国際会議<One Young World Summit>のキックオフイベント)に登壇したAIは、「私がこの曲を通して伝えたいこと。それは、私たちはみんな人間だということです。誰一人、悲しむべきではないですし、誰一人、怒る必要もありません。私たちは間違いなく怒ったり、悲しむために生まれてきた訳ではありません」と「Not So Different」に込めた思いを語った。


デビュー以来、一貫して「音楽でより良い世界に導きたい」という思いを抱えながら活動を継続してきたAI。その原点にあるのはおそらく、10代の頃のロサンゼルスでの生活、そして、様々な人種の子供たちとともに参加したゴスペル・クワイアでの体験だろう。黒人、白人、アジア系の壁を超え、お互いに理解を深めながら、一緒に歌うことを通して感情を解放し、ひとつになる。そのリアルな経験は、「Story」「Believe」「ハピネス」「みんながみんな英雄」などの代表曲、さらに「Not So Different」にも反映されている。

“違いを乗り越えて、自由で寛容な世界になってほしい”。「Not So Different」に込められたメッセージを多くの人が共有し、少しでも世界が良い方向に向かうことを心から願う。

文◎森 朋之




「Not So Different」デジタル配信

2020年11月25日(水)21:00配信開始
https://lnk.to/AINSD
https://lnk.to/AI_Link


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