【レポート】MORRIE、ライヴ<SOLITUDE>で示し続ける真理の探究「楽しみにしといてください」

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2015年からMORRIEが開催してきた<SOLITUDE>とは、いかなるライヴなのか。去る11月28日に東京キネマ倶楽部で行われた<Solo 30th Anniversary MORRIE the UNIVERSE “GRAND SOLITUDE”>を観覧した後、改めてそんな思いが頭の中を交錯した。

◆MORRIE 画像

昼と夜の2回に亘ったこの日は、それぞれ<Episode 76:我は我ならざる我となり>、<Episode 77:虚無が夢となるまで、夢が歌となるまで>なるタイトルが冠されていた。もちろん、ステージにはMORRIEのみ。自身が発表してきた楽曲などを、エレキ/アコースティックギターで弾き語るという趣向に変わりはない。DEAD ENDの次の活動として、1990年11月21日にソロデビューアルバム『ignorance』がリリースされてから30年となったタイミングでもあり、アニバーサリーイヤーの幕開けとなる1日でもあった。



しかし、同作に収録されていたマテリアルは1曲もセットリストには並んでいない。もともといわゆる周年イベントのようなものに執着のない人物ゆえだろう。さらに言うなら、『ロマンティックな、余りにロマンティックな』(1992年)と『影の饗宴』(1995年)の楽曲にしても、昼も夜も1〜2曲である。必然的に比重が大きくなる最新作『光る曠野』(2019年)と前作『HARD CORE REVERIE』(2014年)を軸としながら、全体の流れを意識して初期曲を配置する構成。そこにMORRIEの今を読み取りたくもなるが、そう簡単には正解に辿り着けそうもない。

音源でバンド、もしくはそれに準じたサウンドをまとっていた楽曲の場合、弾き語りのスタイルで披露すれば、音数が削ぎ落とされることで、歌詞に綴られていた言葉もより前面に出てくる。『SOLITUDE』ではギターもMORRIE自身がプレイするため、その瞬間瞬間の感情は音そのものを通しても直接的に表出してくることになる。ただ、そこに漂うのは、よくあるアンプラグドライヴのようなリラックスした心地よさや枯れた深みとは性格の異なる空気なのだ。たとえば、真理を探究せんとする内面から導かれる昨今の歌詞の世界も無関係ではないものの、個々に描かれる光景の意味を突きつけられつつ、一方で多彩な音色を伴って生み出されるグルーヴに身体は揺らされる。緊張と弛緩が同時にもたらされるような感覚と言えるかもしれない。受け止め方は聴き手の人生経験や現在の境遇などによっても変わってくるだろうが、そこに宿る求心力こそが、彼の唯一無二のパーソナリティであることを再認識させられる。



いまだ作品化されていない楽曲群にも惹きつけられる。2019年からレパートリーとなっている「Martyr」と「木霊」はステージを重ねるたびにメロディとアレンジが変わってきているという。今秋から演奏され始めた「Nostalgia」と「邪神恋」も同じようなプロセスへと進む可能性があるが、MCによれば、2021年にはアルバムを発表したい意向とのことで、いずれも完成形が楽しみになる。とはいえ、これらにしてもあえて観客に近づこうとすることもなく、それでいて突き放すこともない。目の前に非日常的空間(MORRIEにとっては日常的空間だろう)を穏やかに創出し、気づけばその中に置かれている。

カバー曲のセレクトも興味深い。ジェフ・バックリーのバージョンを下地にした「Lilac Wine」、ジョニ・ミッチェルの「Woodstock」はお馴染みになっているが、最近ではJAPANの代表曲の一つである「Ghosts」も加わっている。主に1970年代に活躍した佐井好子の「春」と「青いガラス玉」を採り上げているのもMORRIEならではのセンスだ。このバリエーションが自然なものとして受け入れられるのも、彼の歌があるからこそでもある。また、本人は明言していないものの、DEAD ENDの「Sleep In The Sky」と「Heaven」は、2020年6月に急逝したYOUこと足立祐二に捧げた演目と解釈しても決して間違いではないだろう。



“Solitude”とは孤独を意味する言葉である。もっと踏み込めば、世間と隔絶したところで存在する孤高性であり、それは恐らくソロアーティストとしてのMORRIEの立ち位置を言い表すものでもある。コロナ禍の終息は見えてこない現況ながら、オーディエンスを前に、これまで以上の精力的な活動を計画していることも口にしたMORRIE。先述したアルバム制作の他、2021年は毎月ライヴを行う考えだという。「次、ちょっと楽しみにしといてください」。終盤でMORRIEはそうも言った。その思いの背景に何があるのかは推測の域を出ないが、少なくとも、具現化すべき自己表現の確たるヴィジョンを有しているのは明らかだ。この時代性も封じ込めた一つの結実が、そこには現れるのかもしれない。

取材・文◎土屋京輔
撮影◎森 好弘

■<Solo 30th Anniversary MORRIE the UNIVERSE “GRAND SOLITUDE”>2020年11月28日@東京キネマ倶楽部 SETLIST

【第1部】Episode 76:我は我ならざる我となり
open13:45 / start14:30
01. Melancholia III/『光る曠野』
02. Sign/『HARD CORE REVERIE』
03. Lilac Wine(ジェフ・バックリー)
04. Unchained/『HARD CORE REVERIE』
05. Martyr
06. あの人にあう/『影の饗宴』
07. 沈黙の秘密/『影の饗宴』
08. 春(佐井好子)
09. Riding The Night/『HARD CORE REVERIE』
10. 木霊
11. Nostalgia
12. Sleep In The Sky(DEAD END)
13. Vanishing(CREATURE CREATURE)
14. あとは野となれ山となれ/『ロマンティックな、余りにロマンティック

【第2部】Episode 77:虚無が夢となるまで、夢が歌となるまで
open17:45 / start18:30
01. 春狂え/『HARD CORE REVERIE』
02. Go Under/『HARD CORE REVERIE』
03. 完璧な空/『ロマンティックな、余りにロマンティックな』
04. パニックの芽/『ECTOPLASM』
05. 影/『影の饗宴』
06. Disquieting Muse/『HARD CORE REVERIE』
07. 青いガラス玉(佐井好子)
08. Ghosts(JAPAN)
09. 邪神恋
10. Woodstock(ジョニ・ミッチェル)
11. Killing Me Beautiful/『HARD CORE REVERIE』
12. Phantom Lake/『光る曠野』
13. Heaven(DEAD END)
14.ムーンライト・ベイビー/『光る曠野』
15.光る曠野/『光る曠野』



■MORRIEライヴ日程

2021年1月23日 愛知・名古屋JAMMIN’
2021年2月06日 神奈川・横浜mint hall
2021年2月13日 大阪・阿倍野ROCKTOWN
2021年3月04日 東京・東京キネマ倶楽部

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