【インタビュー】FAKE TYPE.「休止したから今がある」

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ラッパーのトップハムハット狂と、トラックメイカーのDYES IWASAKIによる音楽ユニット・FAKE TYPE.。2013年の始動以降、高揚感のあるエレクトロ・スウィングを中心にしたトラックと、ときにフリーキーに、ときにメロディアスに畳み掛けるラップを武器に、ハイペースで楽曲を発表し続け、国内外から注目を集めるも、2017年、その活動を休止した。

しかし、ソロ活動を始めたトップハムハット狂が発表し、圧倒的な再生回数を叩き出した「Princess♂」や「Mister Jewel Box」のトラックは、DYES IWASAKIが手掛けていたこともあり、実質、FAKE TYPE.として制作されたもの。つまり、2人は来たるべき日に向けて動き続けていたのだ。そして、2020年9月に活動再開を発表。復帰作となる4thアルバム『FAKE LAND』をいよいよリリースすることとなった。水面下での活動、声高にカムバックを叫んだ新作、そして、これからのFAKE TYPE.について、2人に訊く。

  ◆  ◆  ◆

■求められているなって

──2020年9月に活動再開を発表されましたが、ここに辿り着くまでいろいろと大変だったと思います。ブログに書かれていましたが、活動再開に関しては2019年の初頭から話をされていたそうですね。

トップハムハット狂:気持ち的にはそうでしたね。ダイゴ(DYES IWASAKI)とご飯に行く機会があったんですけど、そのときに話してくれたんですよ。俺もちょっとやりたい気持ちになってはいたんだけど、今すぐ急にやるのは難しいから、水面下で徐々に動いて、どこかで発表したいねっていう話をした気がします。

──DYESさんが話を切り出したんですね。

DYES IWASAKI:活動を休止してから、自分のやりたいことに対して自問自答を続けた結果、やっぱりFAKE TYPE.が自分のやりたいことなんだなというのを再認識したんです。そこから気持ちが僕の中でどんどん高まってきたので、これはいつかAO(トップハムハット狂)に話しを出さないといけないと思って、そのタイミングで話をしました。

──世の中的には活動休止中ではあったけど、トップハムハット狂さんがソロで発表した「Princess♂」や「Mister Jewel Box」は、実質的にFAKE TYPE.として制作されていましたよね。それは活動再開へ向けてのものでもあったと。





DYES IWASAKI:そうですね。「Princess♂」を出すときには活動再開が決まっていたので、段階を踏んでいこうという感じでした。

トップハムハット狂:「あ、やっぱり!」っていうほうがいいんじゃないかなと思ったんですよ。ちょっとずつ意識してもらっていく中で発表を聞いたほうが、安心とか嬉しさを感じられるんじゃないかなって。あと、単純にダイゴのオケで曲を作りたかったし、そこがうまく噛み合った感じはしますね。で、本来であれば2020年の3月に復活したかったんですけど、どうにもならない状況になってしまったので。

──ライブ(<TOPHAMHAT-KYO Release Live & FAKE TYPE. Rebirth Live>)をすることを発表されていましたからね。ここまでひとつずつ積み重ねてきただけあって、「なんだよ、コロナ!」っていう。

2人:そうですね(苦笑)。

トップハムハット狂:もう本当にその一言に尽きちゃうんですよ。

──あと、YouTubeのチャンネル登録者数が、休止直前は2万5000人だったのが、休止中に10万人を突破していたとDYESさんがツイートされていましたよね。止まっているのに数字が増えていくという状況って、かなりすごいことだと思うんですけど。

DYES IWASAKI:なんか、ひとり歩きしてるなぁとは思ってましたね(笑)。でも、それぐらい求められているなっていうのは感じました。

トップハムハット狂:俺、登録者数は全然チェックしてなかったんですよ。久し振りにダイゴと会って話をしていたときに、なんか休止中にめっちゃ増えてるんだよって言われて。そうなの?って。曲単位で、こんなに再生されてるんだ?って驚いたところはあったんですけど、ちゃんと追ってくれているし、出会ってくれているしで、自分たちがやってきたことは誰かしらに刺さるものだったんだなっていうのを、改めて実感できたところもありましたね。

DYES IWASAKI:やっぱりFAKE TYPE.がやってきたことって、世界的に見てもやっている人が少なくて、代わりになるようなアーティストが出なかったのが大きかったと思うんですよ。だから、刺さるところには刺さっていたんだなって。

──YouTubeのコメントは、海外の方からの書き込みも多いですよね。日本語でラップしている楽曲に対して、海の向こうからの反応が多いことに対してはどう思われますか?

トップハムハット狂:そもそも、海外の人ってエレクトロ・スウィングを好きな方が多いみたいです。そこで受け入れてもらいやすい部分があるじゃないかなって。あと、ミュージックビデオをアニメーションにしていることとか、俺のやっているラップもあんまり日本語日本語していないから、その3つの要素がうまいこと混ざって受け入れてもらえているのかな……とは、自分は思ってますね。

DYES IWASAKI:うん、僕もそう思います。

──エレクトロ・スウィングという方向性は、もともと押し出していこうと思っていたものだったんですか?

DYES IWASAKI:いや、そうでもないです(苦笑)。

トップハムハット狂:はははははは!(笑)

DYES IWASAKI:最初に作った「FAKE STYLE」(2013年発表)が、たまたま伸びちゃったんですよ。

トップハムハット狂:そうだね(笑)。



DYES IWASAKI:でも、やっていくうちに、求められているのはエレクトロ・スウィングなんだなっていうのをすごく感じるようになったし、これはFAKE TYPE.のカラーになるんじゃないかなって。でも、『FAKE BOX』(2014年発売)を出した頃は、エレクトロ・スウィングのイメージをつけすぎないようにしようとは思ってましたね。もし、エレクトロ・スウィングが飽きられてしまったとしても、方向転換できるようにしておくというか。伏線みたいな感じでいろんなジャンルの曲を入れておこうって。

──求められすぎると疲れてしまうこともあるじゃないですか。そういう気持ちも過去にはありました?

DYES IWASAKI:めちゃくちゃありました(笑)。そもそも、エレクトロ・スウィングをそこまで作れないところからスタートしたんですよ。模索しながらの始まりだったし、当時は楽器ができなくてサンプリングメインで作ることがほとんどだったから、ネタ探しに完全に行き詰まってました。で、『FAKE WORLD』(2016年発売)を作っているぐらいの頃に、僕がサックスを買いに行って、練習し始めたんですよ。今もまだ人前で演奏できるところまでは行ってないけど、録音して使えるぐらいの音は出せるようになってきたので、復帰してからはだいぶ作りやすくなったなと思います。

──復帰作の『FAKE LAND』に入っているサックスは、基本的にはDYESさんが吹いてる?

DYES IWASAKI:だいたいそうじゃないですかね。サンプリングもしているので、ごちゃ混ぜになっているところもありますけど、だいたい僕が吹いてる気がします。

──トップハムハット狂さんの場合は、エレクトロ・スウィングが代名詞になることをポジティブに感じていたのか、それとも縛りが生まれてしまうと感じていたのか。

トップハムハット狂:どうだろう……エレクトロ・スウィングを教えてくれたのはダイゴだったし、元々そういう曲調が好きだったんだけど、その名称が分からずっていう感じだったんですよ。自分の声とか、やりたいラップのスピード感にマッチすると思ってはいたんですけど。ただ、僕はトラックを作る側ではなくて、そこにいかに言葉を乗せるか、どんなおもしろいテーマを考えるかっていう頭になっていたから、その辺はダイゴが言ってくれないとわからなかった部分なんですよね。だから、楽器を習ってくれてよかった(笑)。心底安心してますね、今は。

──いつ頃から復帰を目指して曲を作り出したんですか?

DYES IWASAKI:僕が最初にトラックを作り始めたのは、一昨年(2019年)の9月ぐらいですね。最初に「BEELZEBUZ」のトラックを作って、ちょっと時間が空いて、11月とか12月ぐらいに「FAKE HEARTS」とか「HOPTRONIC」のトラックをAOに渡したのが最初だったかなと思います。で、その辺りのプリプロは2019年の年末には終わってましたね。ただ、作業にそこまで時間を費やしたかというと、お互いそうでもない気がする(笑)。

トップハムハット狂:そうだね(笑)。

DYES IWASAKI:お互い作りだしたら早いんで、着手するのがゆっくりだったっていう感じでしたね。

──最初から復帰作はこういうものにしようという話は、特にしていなかったと。

トップハムハット狂:そうですね。ただ、ダイゴがいつ言ったのか忘れちゃったんですけど、遊園地っぽい曲を作りたいっていう話をしてたんですよ。愉快で不気味で爽快な感じ、みたいなものを。それを覚えていたから、「FAKE LAND」の元になるトラックがきたときに、ああ、これもう絶対に遊園地っぽい曲にしなきゃいけないなって(笑)。

DYES IWASAKI:アルバムのタイトルは『FAKE LAND』でどうかなっていう話をしてたんですよ。この語感いいんじゃない?っていう。で、「FAKE LAND」のトラックができたときに、これはアルバムの推し曲にしたいなって。それが去年の6月ぐらいで、「FAKE LAND」を引き立たせるようなものがほしいと思って作ったのが、「Yummy Yummy Yummy」ですね。この2曲はほぼ同時にできてました。





トップハムハット狂:「FAKE LAND」のトラックを挙げてきたときは結構衝撃だったんですよ。この曲のBPMが146なんですけど、あのBPMでラップってあんまりしてこなかったから、僕としてはすごく新鮮に感じて。曲調も愉快痛快な感じで、今まで自分がやってこなかったラップがやれそうだし、イコール、モチベーションをあげてくれたトラックでもあったんで、すごく印象に残ってますね。

──BPMを146にしたのは意図的に?

DYES IWASAKI:そうです。4つ打ちのエレクトロ・スウィングをちょっと早回しした感じというか。ハイスピード・エレクトロ・スウィングみたいなものを作りたいなっていうのと、FAKEでやっていなかったBPM帯ではあるけど、AOのラップが絶対に映えるだろうなと思って。

──プロデューサー的な視点を踏まえて作られたんですね。最初に作ったという「BEELZEBUZ」は、復活一発目に発表した曲でもありましたよね。ゴリゴリに社会風刺をしている曲を復帰作に持ってきたのもおもしろいなと思いました。

DYES IWASAKI:トラックを作り始めたときは、ハロウィンっぽいのが作りたいなと思ったんで、仮タイトルを「FAKE Halloween」にしてたんですよ(笑)。で、今までやってきたことをごちゃ混ぜにしたいなと思って。ドラムはヒップホップで、ベースはトラップとかで使われているようなものにして。でも、バッキングはエレクトロ・スウィングで、ゴリゴリのシンセもいる……みたいな感じで、実験的に作ってみました。



──ラップはすぐに浮かびました?

トップハムハット狂:「BEELZEBUZ」は、ベルゼバブっていう蝿の悪魔が元ネタになっているんですけど、それを題材にした曲をずっと作ってみたかったんですよ。それでこのトラックが送られてきたときに、合いそうだなと思って。ただ、蝿の悪魔についてラップするだけじゃおもしろくないから、何かないかなと思ったときに、“バズる”と文字ろうと思って。よく“蝿がたかる”っていうけど、バズったものに人ってたかるなと思って、そこから書き始めていった感じでしたね。これを書き始めたのが、ちょうど「Princess♂」がバズっていた時期だったので。

──なんだか人がたかってるなぁ……みたいな?

トップハムハット狂:いや、そういう感じじゃないですけどね(笑)。でもどうだろう……無意識的にそう感じていたのかな。

──身近な題材ではあったんですね。

トップハムハット狂:やっぱり経験していることのほうが書きやすいですからね。速攻書けたんですよ。

DYES IWASAKI:僕としては、AOって今までこういうことを書いてこなかったから、新鮮だなとは思いましたけどね。

トップハムハット狂:なんか、社会風刺ばかりしているのって、説教くさいおじさんみたいで嫌だなって、なんとなく思っていて。でも、本当に自分が感じているものであれば、そういう印象も受けないかなと思って書いたんですけど。でも、あんまりやらないようにはしたいです。要素としてちょっと入れるのはいいと思うんですけど、なんかそういうのって結局嫌われる気がするし(笑)、これはあくまでも自分が感じている視点なだけであって、他の視点もあるんで。

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