【インタビュー】Jが語るライヴの本質「変わってしまうものが多い世の中にいて、唯一変わらないものでありたい」

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2月10日、Jの新しいライヴ映像作品『J LIVE STREAMING AKASAKA BLITZ 5DAYS FINAL -THANK YOU TO ALL MOTHER FUCKERS-』が登場した。これは2020年8月12日、すなわち彼にとって50回目の誕生日に東京・マイナビ赤坂BLITZで行なわれた無観客配信ライヴの模様が収録されたもの。そもそもこのライヴは、同会場で行なわれるはずだった5夜連続公演の最終夜にあたるもので、さまざまなゲスト陣とぶつかり合う4日間を経たうえでのワンマン公演として実施されることになっていた。それが結果的にこの一夜のみの開催、しかもストリーミングライヴという形式になった理由については改めて説明するまでもないだろう。

◆J 動画 / 画像

今回は彼が“新型コロナ禍”という言葉とともに記憶されていくことになるはずの2020年をどんな思いで過ごし、いまだ事態が収束せずにいる現状の中、2021年とどう向き合っていくつもりでいるのかを探っていきたい。取材は1月末、都内某所にて、お互いマスク着用のままで行なわれた。が、途切れない熱意に満ちたその言葉には、遠い隔たりを感じさせられることは一切なかった。

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■どんどん燃え上がっていくものがある
■それがバンドってもののすごさ

──さて、50代最初のお正月はどのようにお過ごしでしたか?

J:ははは! 誰もが大変な1年を過ごしてきたわけですよね。僕自身も2020年は春以降のすべてのライヴが延期になったり中止になったり、年末はLUNA SEAでご心配おかけし、お騒がせもしましたしね (真矢 [Dr]のコロナ感染による、さいたまスーパーアリーナ公演延期)。ある意味、不思議な1年だったという感覚でもあるんですけど、騒動の中以外は、なんか妙に静かな時間でもあったし、いろんなことを整理しつつ、確かめつつ、前に進んでいく準備をする期間でもあったのかな、とも思うんです。そんな年を経て新しい年が始まって……当然ですけど、少しでも良い1年になるようにと願わずにはいられないというか。そんな年明けでしたね。

▲<J AKASAKA BLITZ 5DAYS - THANK YOU TO ALL MOTHER FUCKERS->2020年8月12日@マイナビ赤坂BLITZ

──2020年の幕切れと2021年のスタートは、例年通りステージ上で迎えていましたよね。

J:うん。毎年12月30日、31日とライヴをやってきて、今回は有観客とストリーミングをミックスしたものにするつもりだったんだけども、状況を鑑みて、急遽、ストリーミングのみに変更させてもらって。ただ、オンラインとはいえライヴ自体はやらせてもらえたんで、1年の最後の最後まで、しかも新しい年が始まったその直後まで、メンバーと一緒にロックすることができてたわけです。だから不思議な1年を経てきたのは確かだけど、ちゃんと自分たち自身の音とともに存在できてるのを実感できたというか、そういうありがたさは感じてました。実際、悪いことばかりじゃなかったなとも思うんです。オンラインという手法をとることによって、場所というか地域的な制限みたいなものが取り払われることになったわけですよね。今までの通常のライヴでは、その会場がある地域の人たち、そこに遊びに来られる人たちだけのもの、という縛りが当然あった。だけどこのやり方であれば日本全国の人たちに楽しんでもらえるし、もっと言うと世界各国の人たちがアクセス可能になるわけで。それはそれで意味のあることだし……捨てたもんじゃないな、と思いましたね(笑)。

──ただ、それに慣れてしまう怖さというのもあったのでは?

J:慣れというものへの恐れは、やっぱり常に抱えてますね。そういう意味では前提として、通常の有観客のライヴと、オンラインライヴってものの間のどこかに境界線を引いてるところが自分にも間違いなくあると思う。ただ、お互いの良い部分を活かしながら、双方がプラスに向かうような効果を考えながらプランしていきたいな、という想いはいつもあります。なんか思うのは、オンラインライヴというのは“諦め”ではない、ということで。実際、そうせざるを得ないというか、しょうがなくそういう形でやっている、というのはあるんですよ。ただ、現実にこういうことになってしまった以上、それを最大限に利用した新しい楽しみ方というのを僕らは模索しながら提示していかなきゃいけない。それは、いつも思ってます。

──慣れというのは、観る側にも生じてきていると思うんです。配信でライヴを観ることがめずらしかった当初にはすごく特別感があったけども、いつしか“ああ、夕食と重なっちゃったからアーカイヴで観ればいいや”ということになってしまったり、そのアーカイヴ映像すら見逃してしまうようになったり。

J:そういう部分もあるのかもしれませんね。リアルライヴというのは、その会場に向かうところから始まってるわけじゃないですか。自宅の玄関を出た時点、いや、それ以前に、部屋の中で“何を着て行こうかな?”と考えてる段階でもう始まってるのかもしれないし、チケットを取ろうと思った瞬間から始まっているのかも(笑)。そういった日常的な空間から非日常へと向かっていくわけですよね。ただ、オンラインライヴの場合、どんな環境でも観られるわけで、たいがいは普段生活してるのと同じ場所で観ることになると思うんですけど、そこでもそういった非日常感みたいなものは味わえるはずだと思うんですよ。お客さんがぎゅうぎゅうに詰まった会場で観るライヴも最高だけど、例えば、自宅のバスルームで湯舟に浸かりながらスマホで観るライヴも悪くないぜ、みたいな(笑)。なんか、そういったシチュエーション自体を楽しめる部分というのもあるはずだから。

──配信開始に向けて部屋の中の雰囲気作りをしている人たちもいるでしょうしね。

J:お酒なんか用意したりしてね。実際のライヴだと、途中でドリンクカウンターに行ったりするとなかなか戻ってこられないじゃないですか。だけど自宅なら何の気兼ねもなく何杯でも飲める(笑)。

▲<J AKASAKA BLITZ 5DAYS - THANK YOU TO ALL MOTHER FUCKERS->2020年8月12日@マイナビ赤坂BLITZ

──冷蔵庫の前から戻ってきても最前列が確保されているわけですからね。観る側の気持ちひとつ、向き合い方ひとつで、毎回の配信ライヴが新鮮で特別なものになり得るというか。

J:そうだと思います。最初のうちは僕らの側にも、どこか疑ってた部分、不確かな部分というのがあったはずなんですね。“お客さんが居てこそライヴなんなじゃないの?”というのがあった。無観客ライヴって言葉自体、すごく相反したところがあるじゃないですか。

──刺身の天麩羅、みたいな。

J:そうそう(笑)。だけど実際に始めてみると、何も変わらないものが当然のようにそこにあったというか。その場にオーディエンスが居なくても、リハーサルにはならないんだってことを確かめられたんです。もちろんバンドのメンバーたちとの駆け引きだってあるし、“ライヴを始めるぞ!”という瞬間から最後の一音までのストーリーというのがそこには成立する。バンドのグルーヴ感も当たり前のように生まれてくるし、どんどん燃え上がっていくものがある。それがバンドってもののすごさだと思うんです。当然、そこに向けて手を伸ばさなきゃそうはなっていかないんだけど、自分たちの本能、このバンドの本能としてそうなってなっていくんですよ。しかも観てくれてるみんなからのコメントとかを画面上で観ながらプレイすることもできる。あれが意外なほど自分たちにとってのガソリンに変わっていくこともあるし。あの存在のお陰で、繋がってることを実感できるというかね。

──同じ時間を共有できているんだな、と確信できるわけですよね。

J:うん。そういう意味では、こういう状況だからこそ生まれた新しい楽しみ方と言っていいんじゃないかと思う。リアルライヴに匹敵する部分、それにはない部分もあるというか。そんなことを、年間を通じて感じてましたね。

──僕自身も昨年を通じての経過を見てきただけに納得できます。最初、スタジオからの生配信を行なった際にも、それは公開リハーサルみたいな空気感のものにはならなかったし、やっぱりライヴはライヴだった。そういった機会を重ねていった先にあったからこそ、夏の赤坂BLITZでの無観客配信ライヴもああいう形でできたんだろうな、という気がします。

J:そうですね。公開リハーサルみたいにはならなかったし、ビデオシューティングとも違ってた。そうやって機会を重ねていく中で、当初不確かだったものというのがどんどん解消されていって、これはリアルライヴと何ら変わらないんだ、と思えたし、むしろこういう状況下なりにもっと楽しいことを生み出して行けるはずなんだっていう考え方に変わってきて。赤坂BLITZでのライヴについて言えば、元々は僕が昔から5日間連続のライヴってものを重ねてきたという経緯があって……。まあ、会場は違いましたけどね。

──かつてはSHIBUYA-AXで行なわれてきました。そのAXも、さらにはBLITZもすでになくなってしまったのが残念ですが。

J:そうなんですよね。で、2020年というのは、僕自身の年齢的にも活動の流れ的にも節目にあたるので、またそれを復活させてみよう、ということで始まった企画だったんですよね。当然、その当時の自分とは違う自分もいるし、今の自分が5日間やっていったらどういうものになるんだろう、という興味もあった。しかもこの話を聞きつけてくれたすごいバンドたちがゲストとして参加を表明してくれて、とんでもない真夏の5日間になる……はずだったんですけどね。まあこういう状況ゆえに、今回は中止にするべきだという判断に至って。やっぱり観に来てくれる人たち、ゲスト出演してくれるバンドのみんなを、僕のイベントで危険に晒すわけにはいかなかったし、あの時の判断というのは間違ってなかったと思ってるんです。もちろんとてもショックなことではありましたけど、また次、かならずそういうことができる機会が巡ってくるはずだからと信じてね。で、ゲストがたくさん登場することになっていた4日間は公演中止にして、最初からワンマンでやる予定だった最終日だけは無観客でライヴをやろうか、と。その結論についても、実はいろいろと考えたうえで出したものだったんですけどね。

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