【インタビュー】Jが語るライヴの本質「変わってしまうものが多い世の中にいて、唯一変わらないものでありたい」

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■自分の活動ってものを止めることが
■できないたちの生きものなので(笑)

──年齢的、キャリア的に節目となるライヴだからこそ総括的、集大成的な鉄板メニューになるというのはよくあることだと思うんですけど、同時に、“年間を通じてまともにフルでやれるライヴはこれ1本になってしまうのかもしれない”みたいな状況でもあったわけですよね。そんな局面でのライヴで何をやるべきかと考えると、やはり変化球は不要になってくるというか。

J:まさにそういうことだと思います。自分自身にとってのスタイル、自分自身にとっての言葉、自分自身にとっての音……もっと言ったら魂の部分ですよね。“自分はコレなんだ!”というものを徹底的に打ち出したかった、というのは当然のようにありました。そして結果、嫌になるくらい自分ってものを再確認させられることになった(笑)。なんかね、音楽をやる人間って、そういうところで二手に分かれるところが結構あると思うんです。いろんなものを売ってるデパートになろうとするか、専門店であり続けようとするか。そこで自分の場合は……当然、専門店のほうなのかな? いや、誰の目にもそう見えるだろうし(笑)、むしろそこは頑なでありたいというタイプなので。そうじゃなかったら今、多分ここにこうして居られなかっただろうし。ベーシストとしてもね。

▲<J AKASAKA BLITZ 5DAYS - THANK YOU TO ALL MOTHER FUCKERS->2020年8月12日@マイナビ赤坂BLITZ

──そうかもしれません。ただ、暖簾を守り続ける専門店というのは、実は地道に人知れず改良を重ねていたり、自慢の味を維持していくために新しい手法も取り入れていたりするものだと思うんです。秘伝の何かを放置しておくだけでは腐ってしまうわけで。

J:そう、そこなんですよ。素材って変わっていきますからね。しかもその時代なりに、いろいろな改良を重ねられたベストだといわれる素材が世の中にはあるわけで。それをどういうふうに自分の味に落とし込んでいくかっていうのは、やっぱり料理人として……何の話してるんでしたっけ(笑)?

──ははは!

J:でもホント、それと同じことだと思うんですよ。まったく同じ味のものって存在しないらしいじゃないですか、昔から。

──ええ、完全に同じにはなり得ない。

J:もっと良くなっちゃってるわけですよね、実際には。そこで良くなってることがいいのか悪いのかはまた別の話になってくるというか。

──おそらく前回食べた時よりちょっと美味しくなっていないと、“あれ、味落ちたかな?”ってことになるんじゃないかと思うんですよ。

J:うん。そこで自分としては、貫くべきものを貫きながら、凛としていたいというか。そういう想いが、いちミュージシャンとしてあるので。だからこそ、その塊のようなメニューのライヴであるべきだ、と思ったんですよね。

▲<J AKASAKA BLITZ 5DAYS - THANK YOU TO ALL MOTHER FUCKERS->2020年8月12日@マイナビ赤坂BLITZ

──今回の映像に限らず、一連の無観客ライヴに触れてきて改めて感じたことのひとつに、速くない曲のディープさ、というのがあるんです。それをより深く味わうことができたというか。通常の有観客ライヴの場合、やはり疾走感のある曲、激しい曲のエキサイトメントがより際立つことになる。当然、そこでもミッドテンポ以下の曲ならではの効力というのも働いているはずですけど、それをいっそうじっくりと堪能できたところがあって。

J:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。実際、僕自身もやっていてその部分はすごく感じてます。やっぱりそういう曲ほど表現力が求められることになってくるし、バンドとしての深さ、プレイヤーとしての個性みたいなものが如実に出てくるものだと思うので。そういう意味では、いちばん気を遣いながら注意深くやってるのが、そういう曲たちということになるかもしれない。

──そうした味わい深さについては、9月に有観客で行なわれたD.F.F. (DESSERT FLAME FREQUENCY)のアコースティックライヴでも感じました。そこが重なっていたというか。

J:そうですね。D.F.F.についても……まさかそれがこういう形でマッチするような時代や状況が訪れることになるとは、想像もしてませんでしたけど。有観客ライヴをやるとなるとお客さんに不自由を強いる部分がどうしても多くなる中で、ああいう形でみんなに楽しんでもらえるようなレパートリーと場があるというのは、偶然ではあるけども良かったな、と思えたし。この状況下だからこその楽しみ方というのを、D.F.F.のライヴを通じて示せたんじゃないかとも思えるしね。

──着席形式で大声もあげられない環境でのライヴというのは、ある意味、Jさんらしくなくもあるわけですけど、それでもリアルなライヴであることに意義があったというか。実際、僕も会場で観させてもらいましたが、お客さんたちの嬉しそうな様子が印象的でした。着席したままヘッドバンギングしていたりする姿もあって。ホントにみんなライヴを楽しみたくてうずうずしてたんだろうな、というのが手に取るように伝わってきましたよ。

J:そうでしたね。なんか、今まで普通にそこに存在してたものがなくなってしまったというか、それをやることがこんなにも難しくなってしまうなんて、思ってもみなかったですしね。そういった意味でも、あれはいろんなことが重なって見えたライヴだったんじゃないかと思う。

▲<J AKASAKA BLITZ 5DAYS - THANK YOU TO ALL MOTHER FUCKERS->2020年8月12日@マイナビ赤坂BLITZ

──Jさんの場合、節目となるライヴというのが映像化されているケースが多くて、しかも常にその場の空気をリアルに伝えることを重んじながら作られてきただけに、オーディエンスが映っている割合も高いですよね。ステージを綺麗に撮る、というのではなく。でも今回の映像作品には一切その要素がないわけで、そういう意味では異色作でもある。

J:確かに。でも実際、そういうライヴにしかなり得ない状況というのが2020年にはあったわけで、それを記憶しておくためにも記録しておくべきかな、という想いもありましたね。だから……ホントにやって良かったな、と思ってます。それは赤坂BLITZに限らず、どのライヴについてもそうだし、年末の2本の配信ライヴについても同じことで。今現在、2021年になっていて、こうして振り返りながら“ああだったね、こうだったね”みたいなことが言えますけど、これから先どうなっていくかというのは誰にもわからないわけですからね。そういう意味でも、この映像を残しておくべき価値があったんじゃないかな、と思う。

──実際、この先どうなるかは依然としてわからないわけですけど、状況が収束に向かうことを願いながら計画を立てていかないとライヴ活動ができない、ということになってしまいますよね。現時点ですでにこの4月と8月のライヴ日程が発表されていますが、今現在の展望として、今年はどんな活動展開を目論んでいるんですか?

J:今、ふと思い出したんですけど、ちょうど1年になるんですよね。LUNA SEAの『CROSS』ツアー(<LUNA SEA 30th Anniversary Tour 2020 - CROSS THE UNIVERSE->)がスタートした直後にこの事態が始まって、ライヴを延期せざるを得なくなって。あの時点ではみんな、半年ぐらい待てば元通りの状況が戻ってるだろうと考えてたと思うんですよ。ただ、実際には時が経つにつれて、世界的に大変なことになってきて……。そうやって始まった途端に止まったLUNA SEAのツアーというのも、まだ再開できていない状況が続いてるし、当然ながら自分自身の音楽活動というのもある。

──はい。

J:そこで僕が思っているのは……これは自分だけに限ったことじゃないはずだけども、“常に、いつでも走り出せる状態でありたいよね”ということで。メンバーとの話し合いの中でも当然そういう共通認識はあるんです。だから、こういった制限がなくなった時点で、すぐさまドンと走り出せるような状態でありたいし、実際そうあれているのも確かで。みんなもそうだと思うけど、僕自身も、自分の活動ってものを止めることができないたちの生きものなので(笑)。もちろん楽観的に考えてるわけじゃないんです。ただ、自分自身の中でしっかりと活動プランを立てて、それを意識しながら整えていくってことを怠ってはいけないんだろうなと思ってるんです。

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