【インタビュー】ランDMC、トラヴィス・スコット……ファッションと音楽を密につなぐロンドン発ワールドワイドな新レーベル“12on12”、日本上陸

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ロンドン発のワールドワイドな新レーベル“12on12”がついに日本上陸を果たす。

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12on12は、クローディア・モラスが代表兼レーベル・プロデューサーを務め、音楽、ヴァイナル、ファッションとアートを交差する事に焦点を当てている音楽ブランド。数十年にわたるプロダクト・アイディエーション(編注:ネーミングやロゴやシンボルマークなどの制作のプロセスにおいて、コンセプトやテーマに沿って発想されたアイディアスケッチのこと)とクリエイティブな実行の経験を活かして、現代のレコード市場で明らかに重要な地位を占めているレーベルといえるだろう。

そんな12on12、まずはクローディア・モラスのインタビューからお届けしよう。

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■あなたの経歴を教えてください。

──UKのロンドンに生まれロンドン育ちの私は、音楽業界に昔から働きたいことに興味を持っていて、若い頃から音楽がビジュアル・メディアを強化するのに支援出来る力を持っていることに魅了されていました。例えば、音楽なしのホラー映画を見るのは完全に間違えてますよね(笑)!? 私が一番好きな映画は『セイブ・ザ・ラストダンス』で、その理由はアイス・キューブ、ビギー、Qティップ他がフィーチャーされている素晴らしいサントラがあるからなんです。

2011年にニューヨーク大学の音楽ビジネスの修士課程を修了するためにその街に移り、その時期にソニー・ミュージック・グループの宣伝広報部とコーナーストーン社というブランディング・エージェンシーでインターンとして働かせてもらいました。修士課程の取得後、音楽とメディアを結びつく事業を特化した有数のインディペンデント会社“カッティング・エッジ・グループ社”に入社。2015年にロサンジェルスに引越し、同社の部門として培養していた、12on12のレーベルを立ち上げる過程を進め始めました。12on12を立ち上げるひらめきは、近年のアナログ盤とコレクター市場の大いなる復活であり、デジタル時代で失った音楽の物性を消費者が渇望し始め、今日まで続いていると思うんです。我々はアナログ盤のストーリーを語りたく、またビジュアル・アーティストと音楽アーティストが表現出来るプラットフォームを提供したく、レーベルを設立しました。私の12on12のビジョンは、Supremeがスケートボードのイメージを上げたように、アナログ盤で同様なことを行いたい。我々は、意図的にクールで、文化的に重要なブランドを構築しようとしていて、希望のスター(例:トラヴィス・スコット。我々が当時仕事をしていたとき、彼はまだ有望なスターでした)やアイコン(例: ランDMC)、ビジュアル・アーティストとブランドとの素晴らしいコラボレーションをまとめることで、信頼に置ける音楽とアートのキュレーション・ブランドとして見なされることを目指しています。

■2024年パリ・オリンピック競技大会の新競技として、ダンススポーツ競技のブレイキン(ブレイクダンス)種目の追加が正式に決定しましたね。あなたがヒップホップの4大要素のMC、グラフィティ、DJ、ブレイクダンスなどの興味を持ち始めたのはいつからでしょうか?

──私は常にヒップホップとアート、特にモダン・アートに興味を持っていました。グラフィティ・アートは、サブ・カルチャー要素(MC、DJとブレイクダンスなど)が包含され、また創造された環境がこのアート自身に多大な影響を及ぼしているので、魅了されました。私はグラフィティ・アートの刹那な要素に興味を持ち続けています。先ほど言ったように、Supremeがスケートボードのイメージを上げたように、我々はアナログ盤と同様なことを行いたい。ランDMCのリリース時にはビーニー帽子を作り、今後他のアパレルとマーチャンダイズに展開しようと考えています。また我々はコンテンツ制作(テレビ番組、ポッドキャスト、ブログなど)、イベント制作とライセンス拡張を拡大しようと考えています。12on12ブランドの完全性を継続させるために、レーベルをゆっくりと構築しており、だから価値のある話題性のあるコラボしか手がけないんです。

■その他にあなたは映画、舞台、芸術、ファッション、クラシック、CG、そしてヴァイナルの文化に精通していると感じました。実際にはいかがでしょうか?

──その通りです。私は特に映画とビデオ・ゲーム分野で、全てのビジュアル・メディアが音楽と携わる仕事を行ってきました。ファッションは“芸術形態”として見なしいて、毎年新しいコレクションを披露するファッション・ショーに足を運び、大きな喜びを感じています。今回のパンデミックでファッション業界の順応に驚きました。例えば、去年の11月に行われたグッチフェスなどのバーチャル・ファッション・ショーを見て感激しましたね。

■あなたにとって12ON12とは? 人生そのものですか? それとも人々を喜ばせるもの? またはレコードによって世界平和や環境問題に取り組む? はたまたヒップホップの考古学的な発見や伝承?

──12on12は間違いなく、人々を喜ばすために出来た媒体です。現在最も成長しているアナログ盤のコレクター市場は、iPodやデジタル配信の世界で生き続けていた18歳から30代の年齢層です。私が最初に購入したCD(当時10歳で、ネリーのアルバム『Country Grammar』でした。当時ヒップホップがアメリカの中部に始まったと思い込んでいました!)のことをよく覚えていて、パッケージを開け音楽を試聴しながらブックレットを最初から最後まで読みました。この世代はこの感覚を切望しており、我々は彼らにその体験を再提供したいと思い、特に大サイズのヴァイナルのスリーヴだったら、美しいアートワークを紹介できる“キャンバス”になりえます。 我々は、次のトラヴィス・スコットから村上隆までのアーティスト、それぞれ音楽とビジュアル・アート界の未来のスターを信頼に置ける発信元になるように目指しているんです。

■ところでレーベルはいつからスタートしたんですか? 

──2016年にレーベルを立ち上げ、トラヴィス・スコットなど未来のスターやランDMCなどの伝説的なアイコンといったように、ブランドのイメージを完全に形作る企画のみを引き受けているんです。我々が信頼し、ともに楽しめるファッション・デザイナーやビジュアル・アーティスト、ミュージシャンとのコラボレーションは“本物”で、かつ確実であることを重要視しています。我々はゆっくりと時間をかけ育てた、ひとつの分野(スケートボード)に焦点を当て、信頼に置けるブランドとなってから多様化したSpuremeなどのブランドを尊敬しており、そこを目指しています。


■ヒップホップが好きな年代を教えてください。

──LLクールJ、ランDMC、ビースティボーイズなどのオールドスクール、デ・ラ・ソウル、ア・トライブ・コールド・クエスト、ジャングル・ブラザーズなどのミドルスクール、モス・デフ、タリーブ・クエリ、KMD、ブランド・ヌビアン、NAS、D.I.T.Cなどの90年代ヒップホップ、ファレル・ウイリアムズ、スウィズ・ビーツ、ティンバーランド、2000年代以降のサンプリングがない音楽、またラッパーではジェイZ、カニエ・ウエストなど……。その場のムードにもよりますが、全ての種類のヒップホップが気に入っています。

ロンドンで育ったので、UKヒップホップの大ファンであり、Dave、AJ Traceyや期待の新人、Infamousizakなどの新しいミュージシャンが好きです。また、アメリカで生まれたヒップホップのルーツもリスペクトしていて、グラフィティ・アート、ブレイクダンス、ビートボックスとサンプリングの源などを含む全体的の文化、それ自体が芸術であると信じてます。しかし、12on12はただヒップホップ文化のみに焦点を当てているのではなく、私は全てのタイプの音楽のファンであり、ヘヴィメタル、レゲトン歌手やエレクトロニック・ミュージックのDJなど、幅広いアーティストに12on12のコンピレーションを手がけてほしい。

■今、世界中で空前のアナログ・ブームです。Apple Music、Spotifyなどあらゆる音楽を聴くツールはありますが、なぜアナログに拘ったのでしょうか?

──私は個人的にSpotifyやApple Musicなどの配信サイトを利用し、気に入ってます。配信とアナログ盤の違いは、レコードはデジタル・ミュージックでは味わえない“経験”を提供してくれること。ワインやウィスキーを飲みながら、キュレートされたヴァイナルをプレイし、比類のない、優れた音質のレコードを貴方に魅了する経験は魔法のようだと思うんです。

■あなたの視野は常にワールドワイドだと思います。あなたの世界規模なビジョンを明確に教えてください。

──音楽とアートは万国共通ですが、その種類は環境に依存する傾向があり、12on12を発見のツールとして利用したい。例えば、最近新興中の日本のファッション・デザイナーとアメリカの次世代のラッパーとコラボレーションを手がけ、世界中に両アーティストを紹介し、どんな感じに受け入れられるのかを見たい。

■あなたは、実際にアナログの音質や針を落とす感動など常に味わっていますか? ご自宅、スタジオ、カフェ、クラブなど環境が変わると音も変わりますが感想を聴かせてください。

──はい、その通りだと思います。経験上、圧縮されているmp3ヴァージョンを聴くよりも音源をアナログ盤で聴く方が音質が良いと思います。もちろん両フォーマットは、それぞれに相応しい時と場所もある。もし私はジムに行っていたら、mp3で音楽を聴くのは問題ないですが、自分が気に入っている音楽を“完全に体験したい”場合はアナログ盤をプレイします。

■日本のクリエイターやDJ、プロデューサー、アート関係者ともコラボレーションしていく予定はありますか?

──もちろん! 有名な日本人のアーティスト“村上隆”にアートワークを依頼し、レコードを出し大成功でした。我々は日本の文化、ファッション、音楽、アートが大好きで、相応しいコラボレーションの機会が来たら、そのチャンスに飛びつきます(笑)。

■よろしければ今後のプランを教えてください。

──残念ながら今話すことができないのですが、幾つかのすごいプロジェクトを制作中です。お伝えたした通り、我々の目標は異なる音楽のジャンルを交差すること……それは私自身すごくワクワクしていますが、とあるエレクトロニック・ミュージックDJとのコラボレーションとだけ言っておきます。

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そんな12on12からリリースされるのが紐なしアディダス・スニーカーの出で立ちでヒップホップの歴史を変えた伝説的グループ、ランDMCがクラシック 『Raising Hell』の35周年とジャム・マスター・ジェイへのトリビュートを兼ねたコンピレーションをプレミアム・ パッケージ・ナンバリング入り仕様500セット限定もの。またRUN DMCロゴがヴィヴィッドなビーニー帽も発売される。

LAの新進気鋭のアーティスト、リーナ・トレンティーノがアートワークを手がける2枚組の豪華仕様で送る本作。シュガーヒル・ギャング「Apache(Jump On It)」、グランドマスター・フラッシュ&ザ・ フューリアス・ファイブ「Superrappin」、アフリカ・バンバータ&ソウル・ソニック・フォース「Planet Rock」といったオールドスクール・クラシックから、クラフトワーク「Trans Europe Express」、 シック「Good Times」、ザ・ホール・ドーン・ファミリー「Seven Minutes Of Funk」、そしてランDMCといえばこの曲、エアロスミスの「Walk This Way」などのサンプリング・ソース、ブランド・ ヌビアン「Brand Nubian」といったニュースクール・チューン、自身の名作「Rock Box」、さらにはケニー・Gによる「The Look Of Love」のカヴァー、アニタ・ベイカー「You Bring Me Joy」のメロー ・チューンに至るまで、歴史を作ってきた彼らが選ぶ12曲を収録している。


さらに同発でトラヴィス・スコットとモード界を代表する老舗メゾン、サン・ローランがタッグを組んだコンピレーションがブラック・レザー仕様のジャケットを施したラグジュアリーLPにてリリースとなる。こちらも合わせてチェックしたい。

12on12ホームページによると今後、村上隆による<ComplexCon>LP、バーレスクの女王“ディタ・フォン・ティース”のピンクヴァイナルなどリリース予定予定となっている。

『12ON12 RUN DMC X REENA TOLENTINO/ TRIBUTE TO JAM MASTER JAY AND THE 35TH ANNIVERSARY OF“RAISING HELL” 』

2021年4月14日(水)
12on12

Side A
1. “Superrappinʼ” by Grandmaster Flash & The Furious Five
2. “Seven Minutes of Funk” by The Whole Darn Family

Side B
1. “Planet Rock” by Afrika Bambaataa & Soul Sonic Force
2. “Trans Europe Express” by Kraftwerk
3. “Walk This Way” by Aerosmith
4. “Rock Box” by RUN DMC

Side C
1. “Apache (Jump On It)” by The Sugarhill Gang
2. “Brand Nubian” by Brand Nubian
3. “Good Times” by Chic

Side D
1. “Love Is the Message” by MFSB
2. “The Look of Love” by Kenny G
3. “You Bring Me Joy” by Anita Baker

『12on12 Travis Scott and Saint Laurent “Cactus Jack x Saint Laurent”』

2021年4月14日(水)
12on12
SIDE A
1.Barre Baby by Big Moe AKA. Kenneth Moore
2.25 Lighters by DJ DMD Feat. Lil’ Keke & Fat Pat
3.Slime Shit by Young Thug Feat. Yak Gotti, Duke & PeeWee Roscoe
4.Bank Account by 21 Savage
5.Bodak Yellow by Cardi B
6.Sweet Sweet by Travis Scott
 
SIDE B
1.Nights by Frank Ocean
2.So Many Details by Toro Y Moi
3.Put That Away And Talk To Me by James Blake
4.Solo Dolo (Nightmare) by Kid Cudi
5.Pinocchio Story (Freestyle Live From Singapore) by Kanye West
6.Fingers Blue by Smokepurpp Feat. Travis Scott

◆12on12 オフィシャルサイト
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