【対談】MORRIE×清春、“スタイリング=清春”の理由と映し出された“ロックのリアル”「人生が見える感じ」

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■百万人に一回ずつ聴かれる音楽と
■ひとりに百万回聴いてもらえる音楽

──ロックとは本来、“これしかない”という人達のものだったはずで。

MORRIE:そう、そこで世間の風など物ともせずに髪を伸ばしてバンドをやるわけです。みんな、普通にいう人生設計みたいなものなんてないんだよ。その都度その都度、本能的な直感で生きてる人間ばかりだったから。直感に従い後悔などしない。

──なるほど。

MORRIE:DEAD ENDのメンバーもそうだったと思うしね。だから、解散という決断もすごくあっさりしてたんだと思いますね。深く意味を考えて議論を重ねた末の決断ではなく、直感だったんだと思う。ともあれ、今の時代はちょっとそこが違うんでしょうね。いろいろある選択肢のひとつとして、そこに音楽がある感じだと思うから。必然性がそこにないんだよ。

清春:それすごく分かります。だから音楽がカッコよくないんですよ。背負ってないから。

──人生をですね?

清春:“それしかない人”が音楽をやるからカッコいいんですよ。僕らの時代って、捕まったミュージシャンも多かったですからね。でも今の時代、そういうのは絶対アウト。これだけ時代が新しくなってしまうと、もちろんいいこともたくさんあるんだけど、失ってしまったことも多い。良い部分も悪い部分もなくなっちゃったのかなって思うよね。昔、僕がMORRIEさんに憧れたように、“この人、カッコいいな”と思って、“その人に自分を近づかせたい!”っていう夢とか輝きがミュージシャンにはあった。そして、それがお金儲けに繋がっていなかった。“こっちのほうがお金稼げるよな”っていう感覚でやるもんじゃなかったんですよ、音楽って。

──すごく分かります。

清春:僕世代よりも下の世代のミュージシャンに、“音楽でお金儲け出来る”っていう発想が生まれ、それが余計な混合物を入れてしまったんじゃないかな?って思うんです。いわゆるヴィジュアル系が市民権を得てしまった時代だよね。僕らの時代は、音楽にお金の匂いなんて全くしなかったですからね。

MORRIE:売れてなかったからね、一般的には(笑)。

清春:いやいや。全ての人が知ってるわけじゃない、“知る人ぞ知る”っていう感覚がよかったんですよ。そういう音楽を知ってて、それを聴いてる自分への喜びもあったので。

──めちゃくちゃ分かります。

清春:そういうのありますよね。“これ、知ってる?”ってクラスメイトに教える感覚ね。僕ら世代以降から、そういうのがちょっとずつ変わっちゃったんだよね。社会的にビジネスになってしまったり、ビジネスとしてのミュージシャンを選ぶようになってしまった。今でいえば、“1千万回再生される音楽を作ろう”と思って音楽を作る人多いと思うんだけど、そんなもの絶対に作りたくない発想だったからね。そもそもその1千万という数字って、全員が好きで聴いているわけじゃないと思うし。

MORRIE:百万人の人に一回ずつ聴かれる音楽がいいか? それとも、ひとりに百万回聴いてもらえる音楽がいいか? という質問があって。それは売れるためには前者なんだけど、ミュージシャンとしては後者のような音楽を作ることができたら、ミュージシャン冥利に尽きますね。

▲清春

清春:時代ですね、 僕らの時代って先輩ミュージシャンがすごく怖い存在だったんですよ。それってすごくいいことだったと思っているし、そういうのって上の人たちが意識しないといけない。ダメなところを伝えるのではなく、残すべきところだけを厳しく伝えてあげなくちゃいけない。“若者に煩いことを言うと嫌われちゃうんじゃないか?”と思って、優しいことしか言わないとか何も言わないとか、いいことしか言わないで甘やかしちゃうとダメ。それが日本の音楽をダメにしてる。縦社会は嫌だけど、必要な部分もあると思う。

MORRIE:良くも悪くも僕らの時代はそれがすごくあったけど、清春の時代もそういうことを言われてた?

清春:ガンガン言われてました。「お前ら、こんなのがロックなの?」とか先輩からメチャクチャに。だけど、厳しく言ってくれる人こそ、親身になってくれる人でもあるんですよね。言われなくなったら相手にされなくなったってことですから。

MORRIE:そこで自分が試されているっていうこともあるよね。その言葉を突っぱねるのか、受け入れるのか、距離をとるのか。

清春:厳しく言われることなんて誰だってイヤだし、逃げたいですけど、それにどう立ち向かっていくかだとは思うんです。見返してやる!っていう気持ちが大事というか。その気持ちを乗り越えてこそ、よいものが出来る。

MORRIE:いや、ほんと、けちょんけちょんに言われたからね、昔は(笑)。

──先輩のみならず、ライヴハウスの人たちも厳しかったって言いますからね。

清春:そう。ライヴハウスの人にめちゃくちゃ叱られたし、オーディションとか普通に落ちてましたからね。そういうのって今はないんだろうけど、日本には逆にそういう文化って必要だと思う。

──コンプライアンス問題が悪いほうに向かっている部分があるというか。

MORRIE:分かるよ。だけども、ルサンチマンをバネにしてる人間が驚くほど多い。まあ、僕はそこをバネにするのはあまり好きではないけどね。音楽ってはまり込んでいけばいくほど奥が深く底知れない。人生なんて本当に短くてね。だからこそ、その短い人生をかけるに値するというか。音楽そのもの──自分はどんなものをそこで実現したいのか追求し始めたら、ルサンチマンは関係なくなってくるから。けちょんけちょんに言われたことが原動力となってよいものを作り出すっていうのも、それはそれでいいと思うんだけど、そうじゃないところで音楽を作りたいと思ってる。

清春:分かります。その時期に経験すべきことって、その時期でなくちゃ経験できないことでもありますからね。

──もっと言えば、それを経験出来ずに終わる人のほうが多いわけで。経験出来て、苦しむことが出来ている環境があることを幸せに思えたらいいんですよね。そこをバネにできたら最高で。苦しみにしか思えないのは本当に残念だし、可哀想だなっていうか。

清春:さっきも言ったけど、“若者に煩わしいことを言うと嫌われちゃうんじゃないか?”って思っちゃうような大人が増えてるから、優しいことしか言われない環境を不幸に思うべき。でも、言われてもそのときは分らないものなんだよね。

MORRIE:もうそこは人それぞれの受け取り方でもあるから仕方ないよね。分らないなら、それまでだから。実際、自分が経験したからこそ解かることばかりで、人生は。リアルに感じないと解らない。それって環境もすごく大事なこと。自分が二十歳くらいの頃を思い返してみると、わざわざ60歳の人の音楽を積極的に聴こうなんて思わなかったからね。

清春:たしかにそうですね。

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