【インタビュー】kobore、4人の感性が結実した新EP『Orange』。「ツアーにどう馴染むか楽しみ」

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koboreがメジャー2作目となるNEW EP『Orange』を6月9日にリリースする。結成以降休むことなくリリースとライブツアーを重ね、急成長を遂げてきた彼らにとって、『Orange』は“(バンドが)ひとつ大人になった”と振り返る実り多きEPだ。本インタビューではその曲作り・プレイ面での挑戦にじっくりと光を当てた。それぞれのスタンスで楽曲に向き合うメンバーたちの姿から、koboreというバンドの魅力的な輪郭が浮かび上がってくる。

   ◆   ◆   ◆

■“エモいって、なんなんだ?”と考える姿勢

──『Orange』を作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?

佐藤 赳(以下、佐藤):俺らは基本的にテーマというのは決めずに作品を作っているんです。テーマを決めると、そういう曲しかできなくなってしまう危険性があるから。その時その時にそれぞれが自然体で作ったものを出し合っていくというスタイルを採っていて、今回もそういう作り方をしました。だから、『Orange』は今の自分達が純粋にいいと思う6曲を集めた作品です。

──爽やかさや温かみがありつつ軟派な雰囲気ではないというkoboreならではのエモさに、さらなる磨きがかかっていますね。

佐藤:エモいですか?

──エモいです。

佐藤:それも狙っていないというか、正直自分達の中で“エモい”という意味を消化しきれていないんですよ。自分的には“エモいって、なんなんだ?”と考える姿勢が一番エモいのかなと思ったりするんですよね。“エモい”というのはひとつではなくて、それぞれが思うエモさがあると思うし。だから、自分達自身がエモい音楽とはどういうものかということがわかっていなくても別にいいんじゃないかという思いがあります。俺自身は誰もが想像できるような世界を描くことがエモいんじゃないかなと思っていて、そこを大事にしているというのはありますけどね。

──形態としての“エモさ”を意識していないのにエモーショナルなことからは、koboreは感受性が豊かな4人が集まっていることがわかります。それに、『Orange』はテイストの異なる6曲が納められていることも注目です。

▲NEW EP『Orange』

佐藤:そうですね。今回は、それぞれの顔を持った曲が6曲できたなという印象ですね。曲を作っているときも核になる曲ができて、それを踏まえて他の曲を作るという流れではなかったです。今回は1曲、1曲、1曲という感じで作っていったんです。

伊藤克起(以下、伊藤):今まで以上に、1曲1曲が立っていることは感じますね。6曲全部いいなと思っているけど、僕の中で特に印象の強い曲をあげるとしたら「SUNDAY」です。この曲は自分が前々からこういうことをやってみたいなと思っていたものを活かせたので。ミドルテンポだけどすごく重たいビートが押し出されていて、特にヒネッたこともしていない……要は、洋楽っぽい曲ですよね。「SUNDAY」はそういう曲がほしいなという気持ちが僕がの中にあって、みんなでスタジオに入ったときにビートを叩いたら、それを活かした曲を作ろうということになったんです。

安藤太一(以下、安藤):(伊藤)克起があのビートを叩いたときは、みんなすぐに反応したよね(笑)。

佐藤:早かった(笑)。「それ、いいね!」といって、克起のビートに合わせて最初にイントロを作って、そこからイメージを膨らませてオケを考えて、メロデイーを乗せて…という感じで作っていきました。

──ビートが核になった楽曲にふさわしく、「SUNDAY」の8ビートとシェイク・ビートを融合させた感じのリズムがすごく気持ちいいです。

伊藤:それは、僕の癖なんですよね。自然と出てしまうんです。一辺倒のビートで押すのもそれはそれでいいけど、自分だったらこうするなというのがあって、「SUNDAY」はそれの塊です。みんなも僕のビートを活かす方向でアレンジを考えてくれたんですよね。Aメロの“ジャージャッ・ジャージャッ”というユニゾンのギターとベースとか。それも、この曲の気持ちよさにつながっていると思います。

田中そら(以下、田中):僕も「SUNDAY」は印象が強いですね。いま話があったように、この曲はスタジオでセッションしてノリ重視な感じでひとまず形になったんですね。それを聴いたときの印象が、僕の中では最悪だったんです。洋楽かぶれみたいな感じで、全然よくないんじゃないかなと思った。原形がスタジオで簡単にできたからこそ、細かいところの詰めにめちゃくちゃ時間をかけました。それに、この曲はベースで色をつけたいというのがあったんです。楽しい感じの曲だけど、“SUNDAY=日曜日”は僕にとって、あまりいい日ではないんですよね。

一同:えっ、そうなの? なんで?

田中:月曜日が待っているなと思ってしまうから。僕個人の感覚だけど、それをベースで表現したくて、ラスサビでせつなさを感じさせるようなフレーズを弾かせてもらったし、最後だけコード進行も変えることを提案したりしました。

──翳りが加わることで、より魅力的な曲になったことを感じます。「SUNDAY」の歌詞についても話していただけますか。

佐藤:日曜日とか休日というのは、もう一瞬で終わってしまうじゃないですか。自分と向き合える時間というのは本当に少ないから、それを楽しんでいこうよ…ということを歌いたいなと思ったんです。人生はめんどくさいこととか、しんどいこととかいろいろあるけど、日曜日みたいな日があるからがんばれるよねと。それを、日常のありきたりな風景を使って表現しました。「SUNDAY」は干渉するんじゃなくて溶け込んでいくというスタンスの歌詞が、すごくうまく書けたんじゃないかなと思います。リアルな日常の風景と内面の心情を照らし合わせて描いて、なおかつ“日曜日って、アッという間だよね”ということを上手く伝えられていると思います。

安藤:『Orange』の曲で僕が特に気に入っているのは、1曲目の「HIGHWAY」です。わりと理想どおりにできたというか、今までのkoboreらしさを押し出しつつさらにいいものにできたことを感じているんですよね。ギターをかき鳴らしながら歌う形から始まって、イントロがきて、Aメロがきて…という感じで全く奇をてらったりしていないけど、今まで以上のよさだったり、新鮮さを感じてもらえるものにはなったかなと思う。だから、「HIGHWAY」はぜひ聴いてほしいです。

佐藤:「HIGHWAY」は“旅感”みたいなものがあるんですよね。青空とか眩しい情景とかを思わせるような曲調だし、転調していることが転んだり、そこから立ち直ったりすることを表している感じがあって、それも旅っぽさにつながっていると思います。それに、出だしの自分の歌い出しからできた曲だから明るい雰囲気の歌詞が合うなと思って、ドライブしている様子をイメージして書きました。

──バンドのツアー・ソングかなとも思いましたが?

佐藤:いえ、違うんです。ツアーの曲は作り過ぎたことを感じているんですよ。もう常日頃まわっているから、歌詞のテーマになりやすいんですよね。「HIGHWAY」はツアー・ソングではなくて、聴いてくれる人の日常に寄り添うスタンスで書いた歌詞です。

田中:今回の曲で、僕の中で一番印象が強いのは「夜空になりたくて」です。この曲は応援歌だと捉えていて、koboreには応援歌が何曲かあるけど、今までの応援歌とは違っているなと思って。ネガティブに捉えられるような言葉が多い歌詞で、最後にちょっと光が射すようになっているんですよね。曲自体もギャップがあるというか、メロディーとか歌詞はせつない感じだけど、かわいいノリじゃないですか、特にドラムとベースは。そういうところが気に入っているし、新しいkoboreといえるんじゃないかなと思います。


佐藤:koboreは“夜のバンド”みたいに思われていることが多いんですよ。そういう中で今回また“夜”というワードを入れたのは、メロディーや歌詞も込みで“俺達は前向きな感じの夜も歌えるよ”ということを証明したかったんです。だから、「夜空になりたくて」の歌詞はポジティブな方向で書きました。だけど、景色で、せつなさを表すというか。乗っている電車が各駅停車で後から来た快速が抜き去っていくシーンとか、なにもない真っ暗な夜空を見上げているシーンとか。そんなふうに、情景はせつないけど内面の心情は前向きというアンバランスさがマッチしていく感覚が俺は好きで、そういう状態を描きました。

──佐藤さんが書かれる歌詞はリアルな情景や心情が伝わることが大きな魅力になっています。佐藤さんの中で特に印象の強い曲も教えていただけますか。

佐藤:作詞した人間としてはどれも納得できるものが書けたなと思っているけど、楽曲的に一番好きなのは「海まで」です。自分が子供だった頃に父親とかに車の中で聴かせてもらった曲というのは今でも耳に残っていて、そういう曲を作りたいなと思ったんです。もしも将来自分が父親になったら、この曲を聴かせて育てたいと思うような曲がほしいなと。そういう思いのもとに作りました。「海まで」はサビが特に山になることもなく平坦なまま続いていく感じになっていて、それは今までのkoboreにはなかったものなんですよね。しかも、いいメロディーで平坦さをカバーしていて、すごくいい形に纏まったなと思います。この曲はアコギを入れるか、入れないかで最後まで悩んだりもしたんですよ。最終的に入れることにして、それで楽曲の世界観がより深まったというのがあって。そういうところも含めて、すごく思い入れが深い1曲です。

──「海まで」は浮遊感や、どこかノスタルジックな雰囲気があって、また新しいkoboreの魅力を味わえますね。

佐藤:音質とかも淡い感じにしたくて、リバービィーにしました。聴いてくれた人がそれぞれの思い出をフワッとしたままの景色で思い浮かべてほしいというのがあったから。それが、すごくよく表現できたことを感じて満足しています。この曲は、それこそ自分が80歳とかになっても歌っていたいと思う。年齢を重ねたときに歌っても恥ずかしさはないだろうから、ずっと大事にしていきたいですね。

──『Orange』にはバラードが入っていませんが、「海まで」があることで物足りなさを感じさせない作品になっています。新しいということでは超高速2ビートやハードなラップなどを活かした「OITEIKU」も新機軸ですね。

佐藤:「OITEIKU」は、これをライブでやれば間違いない、もう絶対みんなが盛り上がるという曲がほしいなと思って作りました。ライブが盛り上がると同時に、俺もそういう曲を演奏することでテンションが上がってきた人間なので。それで、ちょっと頭が悪い感じの曲が作りたくて、リズムをハネさせてみたり、ラップ調の歌を入れてみたりしました。歌詞を見て、こういうことを歌っているんだと気づくのも楽しいと思うし。そんなふうにいろんなものを散りばめた“おもちゃ感”みたいなものをイメージして作った曲です。あとは、俺的には今回のEPの1曲目は「OITEIKU」がいいなと思っていて、みんながそれに反対なら逆に曲順は完全に任せると言ったんですよ。そうしたら“3:1”で1曲目は「HIGHWAY」がいいということになって、「OITEIKU」はEPの締めくくりになった。ただ、これも後づけになるけど、koboreはいつもこういう曲が1曲目になっているから、それもぶっ壊せたかなというのはありますね。

◆インタビュー(2)へ
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