【コラム】BARKS 烏丸の「音楽のチカラ忘るべからず。どうかしてるぜ着信メロディ」

ポスト

音楽が雰囲気や環境を彩り、その場を大きく左右するのは皆さんご存知の通り。歯医者で流れるクラシック音楽も、スーパーの野菜売り場で聞こえてくるBGMもあれがいいわけで、そこで極悪メタルを聞かされてもきっと違和感が先に立つ。日常の中でも「音楽」に着目してみると、映画やドラマ、CMやちょっとした動画でもメロディ/サウンド/ジングル(サウンド・ロゴ)が効果的に使用され、そのストーリーをぐっと引き立て訴求力の向上に寄与していることがよくわかる。

「ある音楽を聞けばそのシーンを思い出す」という誰もが持っている経験は、人生を彩るストーリーに音楽が強く結びついている証でもあるし、「音楽から知人を思い起こす」のも、人と音楽が結びついていることを表している。

むしろ曲自体が強烈な存在感を放つことすらある。「#1090 ~Thousand Dreams~」などは、松本孝弘のシングル曲というよりもすっかり『ミュージックステーション』のテーマだし、小林克也『ベストヒットUSA』を熱心に観ていた貴兄貴女であれば、ヴェイパー・トレイルズを知らずともあのテーマ曲に触れるだけで、パブロフの犬のように番組オープニングが脳内リフレインすることだろう。マクドナルドで「ポテトが揚がりましたよ」と分かるのも、「ソファソ ソファソ」というあのメロディが耳に染み付いているおかげだ。

そんな絶大な音楽/メロディの力を鑑みれば、我々ひとりひとりにお気に入りの音楽が紐付き、そしてそれが生活に馴染んでいたらどれだけ素敵なのだろうとも思う。いわば自身のサウンド・ロゴは、強烈なアイデンティティそのものだし、自らのBGMが設定できれば、それは音楽好きの血が大いに騒ぐところでもあるだろう。そう、ちょうどLINEのMy BGMのように。

そんな中で、昨今の「スマホの着信音」事情である。

生活様式の変化によりマナーモード(無音/バイブON)がデフォなのはいい。問題は音を出している場合である。今や誰もが同じテーマ音だ。電車で呼び出し音が鳴れば「俺?」「私?」と一斉にみんながスマホをまさぐる状況になる。これ、笑えるけど、全然面白くない。シリアスなドラマやサスペンス劇場では、切迫したシーンが一本の電話によって急展開を見せることがよくあるけれど、その時の電話のベルが「デフォルトのあの音」ではあまりに緊迫感がない。適材適所というか適音適所じゃなければ、ワビサビも奥ゆかしさもありゃしないというわけだ。

着信音へのこだわりをすっかり失ってしまった2021年現在。常時マナーモードゆえ、設定自体一度も触ったことがない人がほとんどの中で、せっかくの着信音…これを楽しまない手はないのではないか。普段は音は出さずとも「出すのであれば、私はこれ」というこだわりは、いわば勝負パンツを選ぶようなもの。音は出さなくとも設定はする。おしゃれは下着から、というわけだ。

さて、どんな着信音があったら楽しいだろうか。カッコいい音、笑える音、パロディセンスが映えるもの、最先端の流行り物…楽しければルールはいらない。趣味嗜好は十人十色なので全員に支持されるものはないけれど、だからこそ各個性が際立ち、自己表現が成り立つことになる。ジョン・ケージ「4分33秒」よろしく無音の着信音も存在するし、音痴な着メロ、リズムが不安定な着メロもある。誰もが知っている有名な曲を極端にゴージャスにしてみたり、「コンビニの入店メロディ」や「お風呂が湧いたときのメロディ」をアレンジしてみたり…と、生活音の中にもアイディアはいくらでも転がっている。

BARKSのスタッフのひとりは、あの着信音(iPhone設定>サウンドと触覚>着信音>「オープニング」)を、あえてチープなチップチューン・サウンドに差し替えて使っている。最尖端のiPhoneをイメージするメロディが「1980年代の内臓音源チップで作られた8bitサウンド」で鳴る違和感と新鮮さは、一周回ってむしろ新しく響く。

そんな中で、「【今こそ奏でる! 昭和歌謡 着メロ名曲サロン】着メロでこそ聴きたい!テクノ歌謡」という記事が、全日本歌謡情報センターで公開された。ここでは8ビット風3和音 着メロ音源10曲が紹介されている。すべてiPhoneの着信メロディに設定できる販売音源で、第一弾として10曲が紹介されているが、公開可能な24,000本の着メロ音源を順次公開、iTunesにて販売を進めていくという。こんな着信音があった楽しい/欲しいという皆のリクエストにも応えていきたいとのことで、自分のサウンドロゴ:着信音で、音楽ライフを楽しむことができそうだ。

人と人をつなぐ着メロは、人肌の暖かさを感じられる日本が生んだ独自文化だ。もしアーティストが着信音を作ったら、楽しみ方は格段に加速するだろう。ギタリストがあのリフを弾いてくれたら…あのドラマーが2バスを超高速で踏んでくれたら…あのベーシストが激烈スラップを弾いてくれたら…そんなキラキラと煌くような着信音があれば、電話の受信はもっと楽しくなる。

文◎BARKS 烏丸(JMN統括編集長)


◆【今こそ奏でる! 昭和歌謡 着メロ名曲サロン】着メロでこそ聴きたい!テクノ歌謡
この記事をポスト

この記事の関連情報