【インタビュー】上野優華、切ない“恋愛あるある”が心に迫る『ヒロインにはなれなくて』

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自身で作詞作曲を手掛けた「好きでごめん」、川崎鷹也提供曲「愛しい人、赤い糸」とデジタルシングルを精力的にリリースしてきた上野優華が、その2曲に新曲5曲を加えたミニアルバム『ヒロインにはなれなくて』を完成させた。叶わなかった恋のなかに生まれる切なさ、恋が実るか否かの瀬戸際のきらめき、相手の出方を伺いながらのアプローチ、近くにいるのに遠くに感じてしまう悲しみ──様々な恋のシーンを切り取った楽曲たちは、聴き手の心の傷に寄り添いながら、新たな世界へと導いてくれる。

“わたしが歌詞を書くと、幸せな要素が出てこない”と語る彼女は、どんな気持ちで今回の制作と向き合ったのだろうか。それを紐解いていくと、表現者としての彼女の姿と、ひとりの人間としての姿が浮かび上がってきた。

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■いろんな恋愛と女の子を描きたかった

──『ヒロインにはなれなくて』、言葉を選ばずに言いますと、最後まで聴き終えたあとにどっぷり情緒不安定になりまして(笑)。

上野優華:あははは! 素晴らしい~!(笑)。

──この7曲で、10年分くらいの恋愛を一気に体感したような感覚があったんですよね。上野さんが恋する人の気持ちに寄り添った結果なのではないかと思います。

上野:ありがとうございます。今回4曲作詞、2曲作曲をしているんですけど、ラブソングという大きなテーマのなかで、いろんな恋愛を描きたかったんです。差別化するためにもほかの曲と同じ言葉や言い回しを使わないようにして、自分からナチュラルに生まれてくる言葉をどうやって選択して、どう振り分けていったらいいのか……というのは今までにない悩みでした。

──様々な恋愛を、様々な主人公で描きたかった、ということでしょうか。

上野:聴いてくれた人が1曲でも“これは自分の曲だ!”と思ってもらえるように、レパートリーを増やしたかったんです。わたしの楽曲は切ないものが多いけれど、そのなかでも状況に変化をつけたり、ちょっと気の強い女の子を主人公にしたり、感情の言語化が苦手な女の子を主人公にしたり……いろんな女の子を描きたかったんです。


──「好きが残った」は、鶴﨑輝一さんのメロディから受けたインスピレーションで歌詞を書き上げたそうですが。

上野:サビの終わりのメロディを聴いて、何かから取り残されたような、自分のなかにぽつんと残ってしまった気持ちになって。そこから“好きが残った”という言葉が浮かんできて。それをきっかけに歌詞を書いていったので、鶴﨑さんのメロディのおかげで書けた曲です。歌い出しに《ただの友達でもそれでいいんだって》と書いたんですけど、“ただの友達”は恋愛においてかなりキーワードだと思うんですよ。想いを寄せている相手から、“ただの友達”なんて言われたら、めちゃくちゃ嫌じゃないですか。

──そうですね。“友達”と言われたらそこまで深く考えないけど、“ただの”がつくだけで恋愛対象外であることを突き付けられるというか。

上野:友達という関係のなかで恋愛感情を持ってしまうのはとてもつらいことだな……と書きながらすごく感じていました。好き同士のふたりの失恋だと、過去の幸せにすがりつきたくて未練が生まれるんだと思うんですけど、友達に片想いをしたまま失恋してしまった場合は、未練にすら達せないような気がして。すがりつく幸せが何もないから“好き”という気持ちだけが心のなかに残って、どこにも行けなくなってしまうんだと思うんです。

──縋る思い出すらない。だから“好き”だけが残った……。その事実は痛烈なほど切ないですが、その失恋の悲しみを“好きが残った”と表現されることで、救われる人は多いと思うんですよね。実らない恋心を肯定するマインドは、川崎鷹也さんの提供曲「愛しい人、赤い糸」にも通ずる気がします。



上野:ああ、そうですね。「愛しい人、赤い糸」も「好きが残った」も片想いの恋心の尊さを感じてもらえる曲だと思うけど……川崎さんが書いた「愛しい人、赤い糸」は断然幸せな曲ですよね(笑)。わたしが歌詞を書くと、幸せな要素が出てこないんですよ。

──(笑)。幸せな要素が出てこないのは、上野さんの人間性が影響していると。

上野:同世代の方々に共感してもらっているからこそ、あんまり作り物の言葉たちで歌詞を書きたくないというか。今のところは自分から溢れてこない言葉をわざわざ歌詞にする必要はないと思っているし、上野優華の言葉として受け取ってもらうものには、嘘はひとつも入れたくなくて。だからつらい曲ばっかり出てくるんだと思います(笑)。提供していただいた曲では、歌手としてしっかりその主人公や楽曲の物語を表現したいなと思ってますね。

──今作はそれがわかりやすいですよね。様々な作家さんが参加している「今日も君でした」や、ex. Shiggy Jr.の原田茂幸さんが提供した「君の街まで」は、歌の色味がまったく違いますし。

上野:あはは! 「君の街まで」は可愛らしさや恋愛に発展する前のわくわくを歌にしたいなと思ったので、声色もテンション感もほかの曲とはだいぶ変えていて。面白い1曲になりました。きらきら感が溢れ出てる!(笑)。こういう状況になったことがないので、わたしの“こういう女の子が自分のなかにいたらいいな!”という憧れを存分に出しましたね。

──そのコントラストがなおさら、上野さん作詞曲だと言葉も歌も上野さんの等身大を強く印象づけるんですよね。

上野:ふだん発する言葉はプラスでいようと思っているんですけど、その根っこにはどんなこともマイナスで考えて、最悪の事態を想定するクセがあって。恋愛について歌詞を書くと、その根っこの部分が出てくるし、それがナチュラルなんです。わたしと同世代の二十歳前後の女の子って、好きな人に振り向いてもらうための努力をしていることが多いと思っていて。「好きでごめん」のように、自分の大切な何かを捨ててでも好きになってほしい──それは今この年齢だからこそだとも思うんです。


──なるほど。自分というものが確立しきっていない、自分に自信を持つまでに至っていない時期だからこその恋愛、ということですね。

上野:もっと大人になって経験を重ねていくことで、今気付かないことに気付いていくんだろうけど、若い子たちには偽りの自分でもいいから好きになってもらいたくて、自分のことを卑下してしまったり、悲観的になってしまう子は多いと思うんです。だからわたしのマイナスの要素が強い曲も受け入れてもらえるんじゃないかなと思っているんですよね。

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