【対談】DAISHI [Psycho le Cému] ×綾小路 翔 [氣志團]、地元とファンへの愛を語る「僕ら20年選手がやっと辿り着く場所」

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■恋人のような、ダチのような、不思議な感じ
■地上になかなか存在しない感情だと思う

DAISHI:僕らも無観客配信を経験してからのリアルライブは、けっこう変わりましたよ。演出がより細かくなったし、エンターテイメントな部分がかなり鍛えられたと思います。オンラインでは映像も作品として作り込んだので、通常ライブの映像やお芝居もクオリティが上がったんじゃないかと。それに意外と、普段物を言わないメンバーがアイデアを出してくるっていう変化もあったんですよ。AYAくんのアイデアを採用して、映像に合わせた8ビットのゲーム音楽を作ったり。そうしたらファンの方々から「その音源がすごく欲しい」っていう声がたくさん上がったので、Psycho le Cémuのアルバムをゲーム音楽風にしたものをフル尺で作ってファンの方々へ届けたり。こういうのってコロナがなかったら、まず出なかったであろうアイデアですね。

綾小路:この期間は、良くも悪くも外野の声が入ってこないので、ファンのみなさんのことがより一層愛おしくなったし、より密接な関係になったと思いますね。プラスになっていることがいっぱいある。

DAISHI:22年もバンドを続けていると、リップサービスじゃなくて本当にファンのことがすごく愛おしくなって。バンド始動時とかデビューしたての頃なんて、正直な話、ひとりチケット一枚みたいな目でファンを見てたというか。それに、“どうせ、オマエらは違うバンドも好きなんやろ?”とか“どうせ、その中のひとつで、すぐ別のバンドにいくんやろ”みたいに思ってたというか。でも20年以上、応援してくれている人もいるし、本当に年々ファンのみなさんが愛おしくなってて。


▲DAISHI (Vo / Psycho le Cému)

綾小路:それこそ昨日だか一昨日、友達の家でたこ焼きを作りながら、氣志團のDVDを見たんですよ。ドキュメンタリー映像だったから、僕らの背後から撮っていたりするので、ファンの皆さんの表情がしっかりと映っているんです。僕はステージに立っているとき、客席の奥のほうとか上のほうを見ている事が多いので、これまで気付けていなかったんですけど、“あっ、いつも来てくれるあの子、あんな表情で観てくれていたんだ”とか、映像に発見があるんですよ。その子たちが最前とか2列目とかで埋もれながら、一生懸命にキラキラした瞳でステージを見ている姿をドキュメントで目の当たりにすると、本当に感動しちゃって、涙腺が緩んじゃったんですよね。

DAISHI:めっちゃ、分かるわー。

綾小路:“ああ、俺はコイツらのためにもっと頑張ろう”とか“もっとカッコ良くなって、頼もしいとか応援していて良かったと思われたい”とか。そういうポジティブな気持ちに、今さらながらなるんです(笑)。これはPsycho le Cémuもそうだと思うんですけど、バンドを長く続けてきたからこその醍醐味で。昔は変に思い上がっていた時期もあるんですけど、今はかけがえのないファミリーのような、恋人のような、ダチのような、不思議な感じ。それを初めて感じたんです。ファンの気持ちって、地上になかなか存在しない感情だと思うんですよ。バンドマンとファンしか持ちえないものかもしれない。なんて言ったらいいだろう…。

DAISHI:僕らは一度、無期限活動休止してますけど、氣志團は20年以上継続しているから、一層でしょうね。リアルにファンの愛おしさを感じているという。

綾小路:それが、Psycho le Cémuとか僕ら20年選手がやっと辿り着く場所というか。若いうちは、“黙って俺について来い”でもいいと思うんです。むしろファンの顔色をうかがっているようなバンドじゃダメ。やりたいことをやり切っている姿について来てくれると思うし、また、そこに求心力が生まれてくる。僕もそれでいいと思っていたし、そうじゃなきゃいけないと思っていたから。だから当時は、一気にバーンと輝いて、あっという間に終わるんだっていう計画でやっていたんですね。まるで彗星のように(笑)。キャロルは3年しかやってないし、セックス・ピストルズも2年、BOØWYだって実質7年の活動ですよね。そういう刹那なものに憧れていたんですけど、まさか、こんな20年以上も。来年僕ら、四半世紀ですよ。そもそも、そんなに長く学ラン着てて良いのかって(笑)。

DAISHI:はははは。伝説のミュージシャンと比較したら、僕らは長生きしすぎですね(笑)。

綾小路:そう、もう全然ダメ(笑)。だから、モヤモヤした期間もあったんですよ、“ただただこんなこと続けてていいのかな?”とかね。でもね、数年前に当時JUN SKY WALKER(S)の寺岡呼人さんに言われたんです、「続けているってことだけで、それはバンドマンにとって、一番の勝利だよ。君たちは勝ってる」と。そう言われたとき、実はあまりよく分からなかったんですよ。長く続けることが正義だとは全然思っていなかったし、ただ年寄りバンドになっていくのもイヤだったから。でも、ほんの少しだけ、呼人さんに言われたことが見えてきた気がしているというか。ここ最近ですけど。俺たち、長くやっていることに意味があるんだみたいな。


▲Psycho le Cému

──そもそも20年以上も続けることができているバンドなんて、ほんの一握りですし、20年前はそんなバンドほとんどいなかったですし。

綾小路:そうですね。ファンの皆さんへの感情とか、メンバー同士のこともそうで、ここまで来ないと分からない。僕はお節介ですから、今まで“アイツらの弱いところを強くしたい”とか思ってきたけど、いい意味で諦めました(笑)。むしろ“どうやってそこを愛していこう”とか“どうやっておもしろくしちゃおうかな”とか。そういう感じになってきたことが、またおもしろいんですよ。未だにトンチンカンなあの連中の発言や行動に、時々はカチンと来たりもするけど(笑)、それも踏まえて俺たちだなって思えるところに来ている。新たなフェーズに来ているなってことが感じられるんです。

DAISHI:長いこと続けていたら、本当にいろんな奇跡みたいなものもありますよね。たとえば、<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>初日のゲストとして、KISSのジーン・シモンズさんが来たんですよ。周りのバンドマンはみんなキッズ時代に戻って、「一緒に写真を撮ってください」って楽屋裏に人垣ができていたくらい。そのとき僕らはステージ衣装を着ていたんですけど、僕らを見つけたジーン・シモンズさんが、そのバンドマンの人垣をかき分けて、「一緒に写真を撮ってください」って言ってきたんです(笑)。まさか、あのジーン・シモンズさんからそんなこと言われるとは思ってもいないわけで。そのときは、“続けていたら、こんな嬉しいこともあるんだな”と思いました(笑)。

綾小路:ジーン・シモンズと仲が良いことで知られる我らがYOSHIKIさんですら、そこまで熱狂的に彼に撮影を頼まれたことはないと思いますよ(笑)。世界中のほとんどのバンドマンが「撮ってください!」ってお願いする側なわけで。

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