【対談】DAISHI [Psycho le Cému] ×綾小路 翔 [氣志團]、地元とファンへの愛を語る「僕ら20年選手がやっと辿り着く場所」

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氣志團の結成は1997年。Psycho le Cémuの結成は1999年。いずれも20年選手として音楽シーンを牽引するベテラン的存在であり、ほぼ同期の2組は20数年にわたりシーンの移り変わりを肌で感じ取ってきた。そのフロントマンである、氣志團 團長 綾小路 翔とPsycho le Cému ボーカリスト DAISHIの初対談が実現した。DAISHIが経営するプライベートジム“MIRO”に團長が通っていることもあって、このコロナ禍で両氏は急接近。團長曰く、「去年、僕が一番会ってる人ってDAISHIくんなんですよ」とのことだ。

◆Psycho le Cému × 氣志團 画像

また、氣志團は自身主催<氣志團万博>の地元開催をはじめ、木更津への愛を公言してはばからない。一方のPsycho le Cémuは8月14日に地元・姫路での凱旋公演<Psycho le Cému 理想郷旅行Z ~二十年後の僕たちへ…~>を控えており、先ごろ公開したDAISHI × michi.[ALICE IN MENSWEAR] × TAKA [defspiral]鼎談では将来的に姫路フェス開催も目指していることが語られた。そのお手本のひとつとなるのが<氣志團万博>だろう。

現在、<氣志團メイジャーデビュー20周年記念 センチメンタルライブハウスツアー2021『緊急密会宣言』>開催中の綾小路 翔を迎えて行われた対談では、コロナ禍におけるバンド活動の現状、今改めて実感しているファンへの愛、20数年間バンドを続けるということ、そして、それぞれの地元愛を語り合ってもらった。10000字を超えるロングでディープなトークセッションをお届けしたい。※この対談は<氣志團万博2021>開催中止発表前に行われたものです。

   ◆   ◆   ◆

■マスクをしてても表情で伝わります
■目は口ほどに物を言うというのは本当

──コロナ禍による大変な状況は現在も続いています。それでも前へ進むために、去年2020年に<氣志團万博2020 〜家でYEAH!!〜>は配信という形で行ないました。やり終えて、どんな手応えや感想を抱きましたか?

綾小路:初めてのことで右も左も分からなくて、どうしたものかなと思ったりしたんですが、やったことには意義があったなと思っています。おかげさまで多くの人達にも観てもらえて、興行的にもなんとか成立したし。ただ、野外でのフェスが余計に恋しくなったというのも事実ですね。


▲氣志團 團長 綾小路 翔

──Psycho le Cémuもいち早いタイミングで映像配信などをスタートさせてましたね。

DAISHI:そうですね。“RPGの世界観もある映画のようなオープニング映像から始まって、8ビットのゲーム映像になったメンバーが終盤に敵を倒していく”というアイデアが浮かんだので、それを基盤に作っていったんです。<氣志團万博2020>も、僕は観させてもらったんですよ。翔さんもエンターテイナーなんで、オンラインを敢えて楽しみながらうまく利用していて。お互いに音楽だけじゃない部分にもアンテナ張っているんで、すごく勉強になりましたね。

綾小路:ありがとうございます。<氣志團万博2020>に関しては、全ての予算をカメラに掛けようという感じで、本来ならばライヴハウスには絶対入れられないだろうというカメラ台数を使ったんです。それによってテレビ番組とも全然違う画作りができたのは、自分のなかでもひとつ達成感があって。その後、氣志團は<お持ち帰りGIG>っていう新たな試みをやっているんですが、これはツアー先の会場に入ってから帰るまで、裏側をずっと追っている映像を観られるというもので。しかも最大10カメぐらいで撮っているので、スワイプすると、リハーサルをドラムセットの背後から観られたり、それぞれのメンバーだけを追い続けている映像も楽しめるんです。反省会もやるんですけど、メンバーそれぞれを一台ずつが狙った、いわゆるファンカムがあったりするんで、例えば綾小路は嫌いでも、好きなトミー(西園寺瞳 / G)だけを見続けながら、ファンの方も反省会に参加できるという(笑)。こんな期間じゃないと生まれなかった面白いアイデアもあるなと思って、今は超楽しんでます。

DAISHI:ただ、オンライン時代になって、メンバーもファンの方々もじっくりとアーカイブが観られる環境になってしまったので、歌の音程が外れていたとか、ギターソロにミスピッキングがあったとか、観られたくないこともいろいろ浮き彫りになってしまい(笑)。うちのバンドは結成して22年なんですが、演奏と歌が上手くなりました、今さら感はありつつ(笑)。

綾小路:いいことですよ、それは。

DAISHI:そうなんですけど、ちょっと恥ずかしいんです。アーカイブが理由で上手くなったというのが(笑)。

綾小路:アーカイブはみんな冷静に見ちゃうものなので、ある意味、ごまかしが利かないですからね。だからミュージシャンのレベルが上がるっていう。僕らもいくつかアーカイブされる配信ライブをやったので、時々モヤモヤしたり(笑)。でも、“何を大事にしなきゃいけないのかな?”と思ったとき、KISSES(氣志團ファンの総称)の方々の中には医療従事者の方々をはじめ、どうしてもツアーやライブ会場には来られない方々も沢山いらっしゃるので、その人達のためなら、えんやこらですよね。

DAISHI:本当にそう思います。

綾小路:氣志團は最近、ファンクラブ限定でDVD(『俺達の旅はハイウェイ』/<氣志團結成21周年御礼参りツアー「あいにいく I・NEED・YOU! おあいにく I・LOVE・YOU!」>収録ロードムービー)を発売したんですよ。3年前のライブハウスツアーのドキュメンタリーなんですけど、これが何回観ても泣けるんです。ライブハウスにパンパンにお客さんがいて、みんなが大声出して、大騒ぎしているんです。“そっか、ついこの前までこんなライブやっていたんだ”と。ツアーの移動中にはメンバーでソフトクリームの回し食いとかしていて、“これも今はできないのか…”とか。当たり前が当たり前じゃなくなったことを考えていると、KISSESの皆さんに喜んでもらえるなら、ちょっとぐらいムチャしようって考え方になっているんですよね。


──無観客配信ライブだと、お客さんもいない、歓声もない、寂しくてしょうがない、という話もよく聞きます。お二人はどうですか?

DAISHI:最初、これはダメだなと思ったんですよ。“テレビ番組とも違う、レコーディングとも違う。何だろう、これは?”と。でも、3回目のオンラインライブぐらいから、だんだんとファンの姿をカメラ越しに感じれるようになってきましたね。以降はオンラインでも、歌の正確さなんて二の次になって、ブチッと切れてテンション高くいける感じが出せるようになりました。

綾小路:僕らは、無観客配信というのは<氣志團万博2020>までやったことがなかったし、その後に一度行なった今ツアー初日の配信GIGは、基本的にお客さんが入っていて、それを配信でも観ることができるという形で実施しているんです。でも、無観客の良さもすごくあって。僕は、目の前にお客さんがいると、とにかくアドレナリンが出まくっちゃうんですよ。それがいいときもあれば、悪いときもある(笑)。無観客では、いい感じに落ち着いてやれるんですよ。これはこれでいいもんだなと<氣志團万博2020>で思ったり。でも、やっぱりお客さんのいる生がいいですよね。

DAISHI:分かります。

綾小路:今、氣志團は30ヵ所60公演の全国ライブツアー<氣志團メイジャーデビュー20周年記念 センチメンタルライブハウスツアー2021『緊急密会宣言』>の真っ只中なんですけど、もちろんお客さんは歓声を出せないし、マスクをしている。でも、お客さんの表情ってちゃんと分かるんですよ。MCでスベった瞬間も、お客さんの表情で伝わりますから(笑)。"あいつ無理して拍手パチパチしてるな"とか、忖度していることも分かる(笑)。目は口ほどに物を言うというのは、本当のことだなと(笑)。

DAISHI:確かにマスクしていても表情は分かりますね。あとオンラインとか制限付きのライブになって変わったのは、ミドルテンポの曲が多くなったことで。激しくもなく、バラードでもない曲って、今までPsycho le Cémuのライブではあまりやらなかったんですよ。ノリもないし、聴かせるタイプでもないから。でも、配信をやり始めたら、年齢的なものもあるのか、ミドルテンポが心地よくなってきて(笑)。自分が気持ちよく歌えたら、みんなも気持ちいいんじゃないかな?って感じで、歌えるようになったのは最近かもしれないです。

綾小路:配信公演となれば、勢いだけでは通じないんで、以前より確実にハードルが上がっていると思うんですよ。バンドマンはその分、演奏に対して重きを置くようになったと思うし、今までだったら表面化してなかった“差”みたいなものが露わになっちゃってるんじゃないかなっていう。つまり、これまでだったらライブハウスでキャーッとやってもらえればよかったものが、冷静に見ると、ちょっと物足りないと感じられてしまったり、逆に、“この人たちはこういう演奏もしっかりできているんだ”って新たな発見があったりとか。


▲氣志團

──團長自身もそれを実感していますか?

綾小路:つい先日、<京都大作戦2021 〜中止はもう勘弁してくだ祭(マジで)〜>に出演させてもらったんですけど、モッシュやダイブが起こるのが当たり前のフェスでは、氣志團ってキッズが一番求めているバンドではないんですよ。でも、今回はモッシュもダイブもできない状況下だったので、お客さんの反応が新鮮でしたね。みんな、暴れられない分、俺たちのGIGをちゃんと聴いてくれているなって、今までと違う手応えが感じられたんです。若い世代のお客さんたちに、そういう見方をしてもらえたのは収穫でした。

──その<京都大作戦2021 〜中止はもう勘弁してくだ祭(マジで)〜>のステージでは、“コール&ハミング1/3”という、新しい様式の“コール&レスポンス”を発明してましたね。

綾小路:飛沫を防ぐために声が出せないのなら、口を閉じてハミングをしようっていう。しなくてもいいんですけどね、ただ“コール&ハミング”って言いたいだけなので(笑)。3月から8月まで開催中の全国ツアー<緊急密会宣言>でも、いろいろな新しいギグ様式が生み出されています。だから、やっぱり自分たちはステージを止めちゃいけない。こういう期間だからこそ成長することや、ひらめくこともあると思っているんです。今、心の健康はそのツアーによって保たれていて、そして身体の健康はDAISHIくん (Private Gym MIRO代表としてプロのトレーナーでもある)に見てもらっているんで(笑)。心身ともに充実してます。

DAISHI:素晴らしい(笑)。

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