【インタビュー】TERU(GLAY)、ニューSGから見えた音楽観「70歳を超えてみないと分からないことがある」

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8月18日、59thシングル「BAD APPLE」をリリースしたGLAY。あいみょんやYUKI、トータス松本といったアーティストを手掛けるTomi Yoをアレンジャーとして初起用し、どこかノスタルジックな匂いを湛えつつも最先端のエレクトロサウンドを構築。GLAYの新機軸を感じさせる透明感のあるポップチューンであり、Tomi Yoとのコラボレーションを熱望し自らアプローチしたというTERUの、かつてないほどに柔らかな歌声にハッとさせられる。

◆ミュージックビデオ

GLAYは5月から5か月連続で楽曲の先行配信をスタートしており、このシングルリリースを間に挟み、10月6日には16thオリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』をリリースする。3月からは4か月連続の配信ライブシリーズを実施、各回のプレゼンターをメンバーごとに務め、全く内容の異なる4回のエンターテインメント体験を送り届けた。

このインタビュー取材直後、11月にアリーナツアーを開幕することを発表し、更には9月に開催されるB‘z主催の対バンライブ第一弾<B’z presents UNITE♯01>に出演することも立て続けに明かした。コロナ禍においても走り続け、これからもその勢いが増していくGLAY。ヴォーカリストにしてフロントマンTERUにその想いを訊く。

   ◆   ◆   ◆

■「スタジオへ行くのが楽しみ」という雰囲気づくりは自分でしていかなきゃいけない

──8月18日(水)、配信と同時にシングルパッケージとしてリリースされる新曲「BAD APPLE」。TERUさんの歌声に驚かされ、特に歌い出しの部分は一瞬「誰だろう?」と思ってしまうほど新鮮な魅力を感じました。歌唱面で新たな挑戦を、という意識はあったのでしょうか?

TERU:最初にTAKUROから受け取ったデモの仮歌を聴いた時に、自分の中では昭和の時代を思い起こすような、懐かしさを感じたんです。僕としても今まで通りの歌い方ではなく、「また違った新しいGLAYの方向性が見つけられたらいいな」と。以前から注目していたアレンジャーであるTomi Yoくんの存在がその時閃いて、「この曲、絶対に合う!」と思ったので、直接Facebookを通じてメッセージを送ってみたんです。

──全く面識もなく、TERUさんから直々にアプローチされたのですか?!

TERU:そうなんですよ(笑)。Tomi Yoくんは、あいみょんの楽曲などで昭和の良さ、ポップさを全面に打ち出してディレクションしていて、そのアレンジ力に僕は注目していたんです。シンプルなんだけれども懐かしさを感じる音づくり、というか。Tomi Yoくんには、「いろいろな楽曲のアレンジを聴かせてもらい、是非とも1曲だけお願いしたいGLAYの曲があるんですが……」と相談したところ、快諾いただいたんです。最初にTAKUROからもらった原曲に僕が歌を入れる時、「今まで通りの音楽性に合わせて歌って、そのデモをTomi Yoくんに送るのもなぁ……新たな可能性が失われるんじゃないか?」と思ったので、自分が「こういうふうになってくれたらいいな」と想像する音楽性に合わせた歌い方をして、そのデモを送ったんですね。それで、その僕の仮歌とアレンジされたバックトラックがTomi Yoくんから返って来たら、原曲とはまるで違う世界に変わっていたんです。それを聴いた時にはメンバー全員が「新しい感じがするね」と言っていました。

──TERUさんが新たなアプローチをされた仮歌が新アレンジの道標になった、ということでしょうね。

TERU:「これはもう、本チャンもこの歌い方で行こう」ということで、本番の歌入れでもそういう方向性で歌って。歌い方がこれまでとは変わったような印象になるのは、たぶんそういう経緯があったからでしょうね。

──Tomi Yoさんの参加によって、GLAYワールドが更に拡張された感じがします。

TERU:そうですね。アレンジャーによってどんどん姿を変えられるのがGLAYの良さなんじゃないかな?と思いますし、いろいろな方と仕事をすることでいろんな可能性が見えてくるんじゃないかな?というのを、今回のコラボで再認識できました。

──後ほど『FREEDOM ONLY』についても詳しく伺うつもりなのですが、アルバムには、‘97年ぐらいに原型の存在していたものから2020年に出来たものまで、幅広い年代の曲が収められているとのこと。「BAD APPLE」はいつ頃の曲なのですか?

TERU:「BAD APPLE」のデモはごく最近聴いたばかりなので、ここ2、3年ぐらいで出来た曲なんじゃないかな?と思います。でも、TAKUROの作詞作曲の仕方としては、10年前に出来たAメロ、Bメロ、サビの一節というのを「今だったら合うんじゃないか?」と引っ張り出すような形でつくっていくと話していたので、パーツ単位で言えば10年、20年前のものも入ってるんじゃないかな?とは思いますね。



──なるほど。近年、TERUさんは故郷・函館に2018年につくられたスタジオでヴォーカルレコーディングをされていますが、「BAD APPLE」もやはり、函館で録られたのですか?

TERU:この曲に関しては早めにボーカルを録らないといけないとう事情があり、東京のスタジオで歌いました。その他のアルバム収録曲に関しては函館のスタジオでボーカルレコーディングを行ってます。前作(『NO DEMOCRACY』)では、レコーディングの順番を自分の中で構築して、「『はじまりのうた』は一番初めに歌うんだ」と決めたりしていて。今回も「最後の曲は(レコーディングでも)最後に歌いたい」とか、そういう想いがあったから、スケジューリングも自分の気分で変えてレコーディングすることができたのは良かったですね。函館でレコーディングする、という気持ちの部分は、今回のアルバムにも注ぎ込めたんじゃないかな?と思います。ファンの子たちも「函館で録った歌を聴きたい」と期待してくれていますからね。だから、なるべくスケジュールを調整して、函館で録るようにしたいと思っているんです。「永遠を名乗る一秒」に関しては、自宅で(2020年の第1回目の緊急事態宣言中に)リモート・レコーディングしたデモ段階の歌をあえてそのまま使用していたり。そういう意味で、今回は、“コロナ禍だからこそできた楽曲”も多いんじゃないかな?と思います。

──「BAD APPLE」の中の歌詞にも、“疫病”と書いて“やまい”とルビを振るなど、昨今の時代を反映した空気感が漂います。TAKUROさんが書かれた歌詞についてTERUさんはどのように受け止めましたか?

TERU:コロナの状況によってTAKUROは一言一言丁寧に歌詞を書き変えていたので、その時々で感じたコロナとの戦い方とか、ウイルスに関する自分なりの答えとかを探っている感じはしましたね。コロナとオリンピックが同時に自分たちの生活に影響を及ぼすというのもなかなか経験しない事態だと思うので、それに対する自分なりの想いをすごくストレートに伝えている感じはします。

──今の時代に対する生々しい感情が潜みつつも、歌詞の言葉遣いは少し古風で奥ゆかしく、そのギャップもユニークです。

TERU:「BAD APPLE」に関しては、“「もういいかい?」 「まぁだだよ」”というパートは最後の最後に決まった歌詞で。童話だったり、日本の昔ながらの子どもの遊びであったりのイメージですね。この曲は仮タイトルが「かくれんぼ」だったんですけど、そういった、自分たちが昭和という時代に生まれ育ったからこその言葉、生活してきた中での印象的な言葉は活かしていますね。かくれんぼって、たぶん今の子たちはあまりしないですもんね。

──“落ちた林檎”というのは様々なものの象徴だと感じるのですが、TERUさんはどう解釈しておられますか?

TERU:「BAD APPLE」のジャケットをPERIMETRONの方々と一緒につくっている時に、TAKUROから若き才能に対して想いをぶつけていたのを、メンバーみんなが参加したリモートミーティングの時に聴いてはいたんですね。林檎という果物には、アダムとイブの話はもちろんいろいろな物語がありますけども、自分の中ではApple社の印象が一番大きくて……(笑)。「BAD APPLE」で描かれる林檎に関しては、腐敗した世界というイメージが強いかな? 自分が思う林檎、禁断の果実をどう捉えるか?というのは、聴く側の皆さんがそれぞれに感じてもらえればと思いますね。

──J-POP、J-ROCKを担うバンドとして、GLAYの皆さんは平成という時代を駆け抜けてきた存在です。アルバム『FREEDOM ONLY』を聴かせていただき、メンバーの皆さんが少年時代から慣れ親しんできた、80年代、90年代の音楽へのリスペクトを感じるサウンドになっている、と感じました。

TERU:今回はそれが濃厚に出ているんじゃないかな?と思います。僕らが10代に聴いていたり、影響を受けたりした音楽が大きく反映していると思う。例えばギターフレーズ一つ取っても「これって、あの曲の雰囲気に似てるよね?」とか、オマージュ的なものを感じる曲も多くて。特にHISASHIのギターソロの音、イントロの弾き始めには、僕らが14、5歳だった頃に聴いていたJ-ROCKのサウンドに近いものがあるので、懐かしさを感じるんですよ。HISASHIもそういうところを狙ってやっているんじゃないかな?と思います。サウンド面も、TAKUROが強い影響を受けた日本の良き時代のポップソングを意識してつくっていたりするので。そういう点ではTAKUROが亀田(誠治/アレンジャー兼プロデューサー)さんと打ち合わせをしながら、「こういう音にしたい」「こういうコード進行がいい」とか、そういった話をよくスタジオでしているのを聞いていましたね。

──TERUさんの「BAD APPLE」の歌い方については、TAKUROさんや亀田さんから何かリクエストはあったのですか?

TERU:いや、歌い方に関してはほとんどなかったですね。あれほど力を抜いて歌うことはこれまでなかったので、自分としても挑戦ではあったんですけども。どこかしら最後に(音程が)上がって、(声を)張ってくれないと「GLAYらしくないんじゃないかな?」と思うところもあったんですけども。そこはやっぱり、自分が50代を迎えるというタイミングでもあり、「これから先、どういう歌を歌っていきたいんだろう?」ということも考えていて。最近ではファルセットを多く使ってみるなど、無理のない発声をしつつも印象に残るような……そういう歌い方には変えてきてはいますね。

──TERUさんはそのように、歌い方をどんどん新規開拓していかれていますよね。

TERU:年相応の歌い方をしていきたいな、とは思いますよ。ポール・マッカートニーの歌を聴いていても、そんなに無理して声を出している感じでもないし。70歳を超えても歌っていきたいなと思うと、どんどんそういった“長く歌える歌”について考えるようになっていきますね。GLAYはデビューして27年目で、昔から言っていましたけども、僕は“続けることに意味がある”という答えを早くから出しているヴォーカリストで。「ロックはそんなに長く続けるもんじゃない」とか、美しい時に散ることに美学を感じる人たちもいるような時代ではありましたけどね。スポーツもそうですけど、続けてみなければ分からないことも多々あるし、今後“70歳にしか見えない景色”が絶対にあると思う。僕のロック観、バンド観、音楽観というのは、「70歳を超えてみないと分からないことがある」なので、「だからこそそこまで、何が何でも続けていきたい」という美学はあります。


──活動を続けていく上で、飽きないこと、ご本人たちが楽しみながら取り組むというのも大事なことなんでしょうね。

TERU:そうですね。だからこそ函館にスタジオを建てたと思うんです。やっぱり、20数年続けていくと、ライブも楽曲制作も生活の一部となっていくし、それは良いことでもあるんですよね。“日常のできごと”と捉えられるのは音楽家としてすごく幸せなことだとは思うんですけども、新鮮味とか、「スタジオへ行くのが楽しみ」という雰囲気づくりは自分でしていかなきゃいけないな、とも思っていました。アルバム1枚つくるとなると同じスタジオに1か月間通うことになるので、その日々をいかに新鮮な気持ちで過ごすか?というのは、ミュージシャンにとって大きな課題ではあると思うんですよ。そのために、例えば海外でレコーディングする、という試みによって気持ちを切り替えたりしてきたんですけども、もっと先の未来を考えていくうちに、「函館にスタジオを建てて、レコーディングする楽しみがまた甦ればいいな」という想いが湧き、実際に建ててレコーディングするようになったら本当に楽しくて。今回のレコーディングでは、歌を歌い終わったらすぐみんなで釣りに行くという生活でした(笑)。

──楽しそうですね!

TERU:それが毎日続くという日々を過ごせたのは良かったと思います。今後函館でどういうレコーディングをしていくのか?については課題もあるし、いつかドラムなどのレコーディングもできるようなスタジオにしていきたいとは思っていて。今回ドラムセットを組んでみようという話も実はあったんですけども、コロナ禍であり、緊急事態宣言中でもあるのでそういう実験はまた次回、余裕のある時にしてみよう、と。なので今回は歌だけにしたんですけどね。

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